東芝、半導体やっぱり手放す? 綱渡りの1カ月半に

東芝、半導体やっぱり手放す? 綱渡りの1カ月半に

2017.02.15

東芝が、「お宝事業」ともいえる半導体事業を、いよいよ手放すことになりそうだ。

東芝は2017年2月14日、同社本社で記者会見を開いた。東芝の綱川智社長は、半導体事業を100%売却する可能を問われ、「柔軟に考えていく。なんでもあり得る」と回答。完全に売却する可能性を否定しなかった。

会見に臨む綱川社長。あきらめているようにもみえるが、腹をくくっているようにもみえた

20%未満の外部資本導入のはずが……手放す?

東芝では、経営再建策の柱のひとつとして、半導体メモリ事業を分社化することを発表。20%未満の外部資本を導入するとしていた。

20%未満という出資比率は、東芝が主導権を維持した形で事業運営できるぎりぎりの数字。一部を切り売りしても、あくまでも主導権は東芝が握るという姿勢を明確にしていた。

それを発表したのが1月27日。わずか半月足らずで、この方針を撤回したことになる。

1月の会見では、半導体事業を担当する成毛康雄副社長が、「20%未満という外部資本の出資比率は、東芝のなかでNAND事業が大事な事業であるという位置づけを継続したいという意味を持つ」と説明。分社後も、ストレージ&デバイスソリューション社の傘下に置くことを前提としていたが、これも覆ることになる。

綱川社長は、「半導体事業は、今後のさらなる成長に必要な経営資源を確保し、あわせて東芝グループの財務体質を強化するために、柔軟に考えていく。マジョリティ譲渡を含む外部資本導入を検討している」と発言。「マジョリティ確保にはこだわらない。現在、様々なオファーをもらっており、将来に向けて、一番価値が出るところと組んでいくことになる」と語った。

50%以上の外部資本を導入することについて明言した格好ともいえ、半導体事業の新会社は、東芝の子会社から外れることになる。いわば、半導体事業を手放す覚悟であることを明確に示したともいえる。

綱川社長は、「現時点では、なにも決まったものはない」とするが、その一方で「すべての可能性がありうる」とも語る。

半導体事業を売却するという決断にまで踏み込まざるを得なかった背景にあるのは、2017年3月期に、債務超過に陥る可能性がより高まったことがあげられる。

決算を開示できなかった理由

東芝では、本来、2月14日に、2016年度第3四半期業績を発表する予定であったが、内部統制の不備を示唆する内部通報があり、この調査などに30日間を要すると判断。発表を1カ月先送りした。

元々午後4時から決算会見だったが、延期を受けてとりやめに。開場予定だった午後3時にはの延期の理由を聞きに、報道関係者が集まり会見場に通されたものの、延期理由を説明する会見が開催されるか未定の状態が2時間続く……。午後5時ごろになって、午後6時半から会見を開くと広報から知らされた。写真は午後4時半ごろ

だが、非監査の状態で、同社の見解に基づく見通しとして発表した第3四半期業績では、営業損益は前年同期比3128億円減の5447億円の赤字。その中には、原子力事業ののれん減損としてのマイナス7125億円を含む。また、当期純損益は205億円減の4999億円の赤字。そのうちのれん減損、WEC(ウェスチングハウス)繰延税金資産取り崩しなどで、マイナス6204億円。株主資本は5201億円減のマイナス1912億円と、債務超過になることを示した。

さらに、今回修正した2016年度通期の業績見通しでは、売上高は、11月8日公表値に比べて1200億円増の5兆5200億円としたものの、営業損益は5900億円減の4100億円の赤字、税引前損益は5800億円減の4500億円の赤字、当期純損益は5350億円減の3900億円の赤字とした。

2017年3月期の株主資本は4700億円減のマイナス1500億円。期末時点でも債務超過になることを示した。

これは資本対策前の数字であり、東芝では、今後の半導体事業の売却、また、ウェスチングハウスへの出資比率の引き下げ、他の保有資産の売却、金融機関からの協調融資などを進めることで、債務超過を回避する考えだ。ただし、「グループ会社をほかに売却することは考えていない」(綱川社長)とも語る。とはいえ、すでに家電事業やヘルスケア事業を売却しており、これ以上、他社が触手を伸ばしたい事業が見あたらないというのも事実だ。一時、売却が取りざたされたPC事業は自力での再生を目指しているが、市場が縮小するなかで、高い金額で売却するのは難しいだろう。

東芝は、東証から「特設注意市場銘柄」に指定されており、3月15日にも指定解除の判断を仰ぐことになっていた。

だが、今回の第3四半期報告書は、内部調査の結果をまとめた内部管理体制確認書とともに、3月15日以降に提出されることになっており、そこで、特設注意銘柄からの指定解除についても検討されることになる。しかし、現時点で期末における債務超過を見通しが示されているだけに、指定解除は極めて困難との見方もある。むしろ東証二部への変更さえ視野に入る。

さらに期末の債務超過は、上場廃止の可能性を、より現実味があるものにする。東証の規定でも、期末の債務超過に対しては厳しいルールを適用しており、1年以内に解消できない場合には、上場廃止の罰則も盛り込まれている。

東芝にとっては、まさに瀬戸際にまで追い込まれた状況にあり、半導体事業の主導権維持といった悠長なことは言っていられない事態に陥っているのだ。

第2四半期決算の時は前向きな空気が流れていたのに……

期末の債務超過は回避できるか?

現時点で、半導体事業への出資に名乗りをあげている企業や、出資比率や金額などについては明らかにはしていないが、綱川社長は、「様々なパターンがある」とし、複数の企業からのオファーがあることを示す。

半導体事業の基幹拠点となる四日市工場において協業関係を持ち、最も近い関係にあるウエスタン・デジタルの出資を仰ぐ可能性を指摘する声もあるほか、投資ファンドや外資系企業などの出資の可能性も取りざたされる。綱川社長は、「ウエスタン・デジタルとの関係は悪くない」とコメントするが、今後の行方はわからない。

半導体事業の分社化は、社内カンパニーであるストレージ&デバイスソリューション社の半導体メモリ事業が対象になっている。ここには、主力のNANDメモリのほか、SSD事業も含むことになる。一方で、システムLSIやディスクリート、ハードディスク、イメージセンサーなどは、東芝本体に残ることになる。

綱川社長は、「ディスクリートなど、NAND以外のデバイスはしっかりと本体でやっていく」とするが、成長と利益の源泉となっていたNANDメモリーを手放すことで、半導体市場における東芝の存在感は一気に下がることになる。

東芝は、2017年3月31日付けで半導体事業を分社化する予定であり、期末の債務超過を回避するには、それまでに出資を得る必要がある。

2月9日には、三重県四日市の東芝四日市工場の第6製造棟の着工を行い、2018年夏には第1期の製造棟が完成する予定だ。ここでは、3D NANDメモリの生産を行う予定であり、今後の東芝の半導体事業を牽引する役割を担うはずだった。

第6製造棟の完成イメージ図。着工したばかりだったのに……

報道関係者に公開されたパース図には、白い建屋に、赤いTOSHIBAのロゴが鮮やかに描かれている。だが、製造棟完成時には、「TOSHIBA」ロゴが入った外観を実際に見ることは難しそうだ。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。