33年越しの悲願達成! 再開発完了にわく新生“ニコタマ”の姿

33年越しの悲願達成! 再開発完了にわく新生“ニコタマ”の姿

2016.03.08

2020年の東京オリンピック開催に向けて、またそれ以降をもにらんで、都内各地の再開発が盛んになってきている。品川・田町地区では山手線新駅やリニア中央新幹線駅などを含む巨大再開発が、渋谷地区でも高さ230mの屋外展望施設を目玉にした駅周辺再開発が計画されている。前者はリニア中央新幹線開業を一応の完成とみれば2027年まで、後者も駅ホームやオフィスビルなどを段階的に開業させ、2027年に完成予定だ。

ともに現在から11年後に完成という、長い年月を見据えた計画だ。だが、33年ともいう膨大な歳月を経て、ようやく再開発が終了した地区がある。二子玉川駅周辺、通称“ニコタマ”と呼ばれる地域だ。

遊歩道の完成をもって二子玉川ライズとしての再開発は終止符

東京急行電鉄 都市創造本部 運営事業部 営業二部 二子玉川営業推進課 タウンマネージメントチーム 課長補佐 菊池歩美氏

「2015年4月に『リボンストリート』が開通したことにより、再開発は一応の完成をみました」と、東京急行電鉄 都市創造本部の菊池歩美氏はいう。実際にはオフィスタワー内や併設ホテルの内装仕上げなどで、2015年半ばごろまで工事作業は続いたそうだが、街の基盤の完成という意味ではリボンストリート開通が終止符ということになるだろう。

ちなみにリボンストリートは、約12ヘクタールにおよぶ「二子玉川ライズ」を東西にわたって貫き、公園、多摩川河川敷へとつづく約1kmの遊歩道。ステーション、ショッピング施設、オフィスビル、レジデンス、そして人を結ぶ、二子玉川ライズの象徴的な存在のひとつといってよい。

歩行者専用の遊歩道リボンストリート。遊歩道に隣接する広場では取材当日スケートリンクが開放されていた

では、そもそもなぜこれほどまで再開発に歳月がかかったのだろうか。

もともと二子玉川は、明治時代より割烹・料亭が多摩川沿いに軒を連ねるなどして発展し、遊園地やプールができて行楽地としてにぎわいをみせていた。そして駅西側は、“日本初の郊外型ショッピングセンター”として「玉川髙島屋S・C」が1969年にオープンしたことで脚光を浴びた。対して、駅東側は1985年に遊園地「二子玉川園」の閉園も重なり、周辺商店街はにぎわいを失った。以降、玉川髙島屋S・Cを中核にした“ファッションの街”としてにぎわう駅西側と、活気を失いつつあった駅東側、線路を挟んで対照的な様相を呈していた。

バブル崩壊が再開発の足かせに

二子玉川園閉園に先立つ1982年、活気を失いつつあった駅東側の都市基盤を再構築しようと「再開発を考える会」が発足した。これが二子玉川再開発の起点となるが、進捗はいっこうにはかどらない。バブル崩壊による経済失速が覆い被さってきたからだ。「あまりにも大規模な再開発であったため都市計画の枠組みづくりに時間がかかったことに加え、バブル崩壊等による経済状況の変化が再開発の速度が上がらなかった大きな要因といえるでしょう」と、菊池氏は話す。

実際、都市計画が決定されたのは2000年、第1期事業着工に取りかかったのは2007年と、「再開発を考える会」の発足からかなりの歳月を経てから具体的な動きになっている。その間、遊園地跡地を「ナムコ・ワンダーエッグ」などのテーマパークに活用。1992年に開園したナムコ・ワンダーエッグは、当初50カ月間の期間限定施設の予定だったが、結局2000年まで営業は続いた。不景気による影響で、いかに再開発が進められなかったかがうかがいしれよう。

楽天グループ本社および二子玉川 エクセルホテル東急などが入居する

だが、2007年の第1期事業着工から一気に加速する。2011年には第1期事業が完成し、西側の玉川髙島屋S・Cと東側を結ぶ商業施設や、オフィスビルがスタートした。そして間髪入れず2012年に第2期事業を着工。この第2期事業の高層オフィスビルに楽天グループが移転を決めた。

楽天グループの本社機能移転は、約10,000人の人口増を生み出した。加えて第2期事業では、シネコン、二子玉川蔦屋家電など大規模テナントが入居するオープンモール型のショッピングセンターも誕生させた。「高級で上質なお買いものができる西側の玉川髙島屋S・Cさん、カジュアルに高感度なショッピングが楽しめる東側の二子玉川ライズS.C.。フタを開けてみれば競合することなく相乗効果で二子玉川全体に活気が生まれました」(菊池氏)。

事実、二子玉川駅の乗降客数はうなぎ登りで、2010年度の駅1日の乗降客数は105,400人だったのが2014年度には約130,000人、2015年度は150,000人に届くという予想もある。さらに、駅西側と東側が協力してイベントも開催。「昨年『ハロウィン』イベントを玉川髙島屋S・Cさんと協力して行い、多くの方にご参加いただきました。また、地元のお祭りの御神輿がライズを横断して街中を回遊するなど、街全体を活用したイベントの盛り上がりを実感しています」と菊池氏はいう。駅の西側と東側が有機的に刺激し合い、街が活性化した事例といえるだろう。

川崎市・高津区から二子玉川ライズをのぞむ。周辺は高い建物がなく、そびえるビルがひときわ目立つ

また、二子玉川ライズの再開発には、“都市型再開発”にはみられない“郊外型再開発”の特徴が多くみられる。その一例が環境性能に配慮した設計だろう。二子玉川ライズ内を歩くと目に付くのが、金網で固定されただけの素朴な構造の石垣。これは、建設用地から出てきた石を利用したもので、多摩川沿いという以前は河原であった立地ならではといえる。さらに用地内に植樹された植物は、すべて多摩川や等々力渓谷等に由来するものだという。商業施設の屋上には「ビオトープ」が設置され、周辺住民の憩いの場ともなっている。

建設用地から出てきた石を使った石垣(左)と、多摩川の植生を生かした庭木(右)。環境性能を重視した街づくりは、米国グリーンビルディング協会による「LEED ND ゴールド認証」を世界で初めて取得した
多摩川の生態系を学べる解説板や昆虫標本が展示してある

楽天という名だたるグローバル企業が入居する高層ビル真下の芝生緑地で、学校の制服を着た子どもたちが“かけっこ”をして遊んでいたのが印象的だった。高層ビルが林立し、付近の道路にクルマがあふれている都市型の再開発の地ではなかなかお目にかかれない光景だ。オフィスビルやショッピングセンターに入居するクライアントだけでなく、周辺地域の住民との調和が郊外型再開発の地では重要なのだなと感じたシーンだった。

大江戸膨張! 東京再開発の現場

●日本橋から新産業を! 熱気あふれるベンチャー支援の現場
●虎ノ門再開発にみる“創業地”に込めた森ビルの強い想い
●33年越しの悲願達成! 再開発完了にわく新生“ニコタマ”の姿
●タワークレーンが消えない街 -“丸の内エリア”の再開発はなぜ終わらないのか【後編】
●タワークレーンが消えない街 -“丸の内エリア”の再開発はなぜ終わらないのか【前編】
NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

ご愛顧いただいた読者の皆様、また関係者の皆様に、編集部一同、誠に感謝いたします。

なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
https://news.mynavi.jp/series/filmat11

○モノのデザイン
https://news.mynavi.jp/series/designofthings

○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu