【メタップス】上場直後から怒涛のM&A データを学習する世界の頭脳へ

【メタップス】上場直後から怒涛のM&A データを学習する世界の頭脳へ

2017.02.17

【メタップス】上場直後から怒涛のM&A データを学習する世界の頭脳へ

 データ分析と決済サービスを運営するメタップス<6172>が2015年に新規株式公開(IPO)して以降、M&Aを立て続けに行い、事業を急拡大させている。あらゆるものがネットにつながり、ビッグデータの収集が可能となるなかで、データによる新たな経済圏の構築を掲げ、人工知能(AI)やフィンテックに集中投資する姿勢を鮮明にしている。まだ上場して間もないベンチャー企業の大胆な投資戦略を読み解きたい。

【企業概要】アプリ開発者向けプラットフォームを運営

 メタップスは、「世界の頭脳になる」というミッションを掲げてアプリ収益化事業を行っており、マーケティング(分析、広告、販促等)、及びファイナンス(決済、投資、融資等)の2つの領域において事業展開している。

 マーケティング領域では、アプリの集客や分析、収益化をワンストップで支援するアプリ開発者向けプラットフォーム「metaps」が主軸であり、アプリ運営に必要なKPI及びデータを一元管理し、またAI(人工知能)を活用して適切なターゲットに対して適切な広告配信を行うことで、収益を最大化することを支援している。

 ファイナンス領域では、オンライン決済サービス「SPIKE」をはじめ、リアル店舗におけるクレジットカード決済サービスの提供、不動産業界における家賃決済等、法人から個人まで幅広い利用者を対象にサービスを提供している。

 2007年9月に設立され、2015年8月に東証マザーズに株式を上場しており、日本、シンガポール、香港、台湾、韓国、中国、米国、英国の8拠点を中心としてグローバルに事業展開している。

【経営陣】佐藤社長は20歳で起業、会長にスクウェア出身者

 佐藤航陽社長は2006年に早稲田大学に入学後、20歳にして2007年9月にイーファクター株式会社(現・メタップス)を設立し、代表取締役に就任。30歳。和田洋一取締役会長は野村証券出身で、スクウェア・エニックス・ホールディングスの社長を務めた後、2015年からメタップス取締役に就任した。また小泉内閣で経済財政担当大臣などを歴任した経済学者の竹中平蔵氏を顧問に迎えている。


【株主構成】佐藤社長、3分の1超を保有

メタップスの上位株主
氏名又は名称 所有株式数(株) 持ち株比率(%)
佐藤航陽 4,430,000 34.40
インテック・アイティ2号投資事業有限責任組合 632,082 4.91
セガゲームス 500,000 3.88
BBH (LUX) FOR FIL LIMITED MARCONI PILOT 384,853 2.99
山崎祐一郎 346,000 2.69
Fenox Venture Company 7, L.P. 300,000 2.33
資産管理サービス信託銀行 251,800 1.96
トランス・コスモス 250,000 1.94
博報堂 250,000 1.94
松井秀紀 200,000 1.55
7,544,735 58.59
2016年8月末時点、有価証券報告書に基づき作成

 上場後も佐藤社長が3分の1超を保有し筆頭株主となっている。その他大株主としては、業務提携をしているセガゲームスやトランス・コスモス、博報堂とともに、一部のベンチャーキャピタルが上場から1年経過しても継続保有している。

M&A戦略】マーケティング、民泊、決済の先端技術を獲得

 IPOでの調達資金を活用し、買収を重ねて事業拡大している当社の戦略を読み解きたい。

メタップスの沿革と主なM&A
年 月     内容
2007年9月 佐藤航陽氏がイーファクター(現メタップス)を設立
2010年6月 東京都新宿区に本社移転
2010年7月 共同購入型のクーポンサイト「TOKUPO(トクポ)」を開設
2011年4月 アプリ収益化プラットフォーム「metaps」のサービス提供を開始
2011年6月 SEO事業をngi group(現ユナイテッド株式会社)へ譲渡
2011年6月 シンガポール子会社、Metaps Pte. Ltd.を設立
2011年12月 イーファクターからメタップスに社名変更
2012年4月 香港駐在員事務所を設置
2012年10月 米国支店、Metaps Internationalを設立
2013年4月 共同購入型のクーポンサイト「TOKUPO(トクポ)」をテレビ東京ブロードバンド株式会社へ事業移管
2013年4月 韓国支店、Metaps Koreaを設立
2013年10月 台湾支店、新加坡商媒達思股份有限公司台灣分公司を設立
2013年12月 中国子会社、盈利点信息科技(上海)有限公司を設立
2014年4月 オンライン決済プラットフォーム「SPIKE」のサービス提供を開始
2014年6月 英国にMetaps Pte. Ltd.の子会社として、Metaps Europe Limitedを設立
2014年10月 東京都新宿区の住友不動産新宿オークタワーに本社移転
2015年5月 国内子会社、デジタルサイエンスラボを合弁で設立
2015年6月 韓国支店を閉鎖し、韓国子会社Metaps Korea Inc.を設立
2015年8月 東京証券取引所マザーズに株式を上場
2015年10月 韓国のモバイル広告プラットフォーム運営会社Nextapps Inc.の株式51.0%を21億円で取得し、子会社化
2016年1月 動画編集アプリ等を展開するAppStairを子会社化
2016年4月 EC決済・実店舗決済などを提供しているペイデザインの全株式を28億円で取得し、子会社化
2016年6月 ショッピング検索サイト運営会社ビカムの全株式を3億円で取得し、子会社化
2016年7月 韓国子会社Nextapps Inc.が韓国子会社Metaps Korea Inc.を吸収合併
2016年8月 韓国子会社Nextapps Inc.からMetaps Plus Inc.に商号変更
2016年8月 民泊関連サービス提供のVSbiasを子会社化
2016年10月 韓国のプリペイドカード/電子マネーの発行管理会社Smartcon Co. Ltd.の株式51.0%を約9.4億円で取得し、子会社化

 上場から2か月後の2015年10月に、韓国でモバイル広告プラットフォームを提供する Nextapps Inc.(現Metaps Plus Inc.、前期売上約 880 百万円、営業利益約 188 百万円)の株式を一部取得し、子会社化した。その3か月前に戦略的業務提携を同社と結んだばかりであり、短期間で子会社化に踏み込んだことになる。Nextapps が持つモバイル広告プラットフォームと、当社のアプリデータ解析のノウハウを組み合わせることで、より収益性の高いサービス提供が可能になると判断したようだ。

 2016年1月には、動画編集アプリ「Film Story」などを展開するAppStairを子会社化している。動画を用いたマーケティングやプロモーションが増加傾向にある中で、動画マーケティング事業の成長を更に加速させていくと考えられる。

 次に2016年4月には、ペイデザイン(前期売上2,535 百万円、136 百万円)を28億8000万円で子会社化している。ペイデザインは、EC決済事業に加え、リアル店舗決済事業、家賃決済事業、電子マネー事業等、幅広いサービスを提供しており、当社の「SPIKE」と合わせ、決済プラットホーム規模が、登録アカウント数で25万件、グループ年間取扱高で1,000億円を超えることとなった。決済プラットホームとしての競争力強化や、付加価値向上の実現に向けてオンライン決済の市場における事業拡大・開発へ取り組んでいくようだ。

 また2016年6月にはビカム(前期売上1,021 百万円、営業利益76 百万円)を子会社化した。ビカムはEC事業者向けに、デバイスを横断した商品データの一元管理や最適な広告配信、オペレーション管理コストの削減をするデータフィードマネジメント技術を保有しており、EC事業者のマーケティングを支援している。eコマース市場は、加速度的に拡大が見込まれる成長市場である一方、マーケティングを行う企業にとっては、デバイスの多様化と消費者の行動変化にあわせたコンテンツ管理や広告配信が必要となり、業務の煩雑化が課題となっている中、今後は、両社の連携によりEC事業者の決済からマーケティングまでをトータルで支援できる体制の強化を推進するとのことだ。

 さらに2016年8月には、VSbiasの子会社化を行った。VSbiasは物件選定から物件運用までワンストップで提供する「エアリノベ」や複数民泊サイトを横断した物件管理サービス「All in BnB」を中心に、コンサルティング事業・運用代行事業・PMS(Property Management System、予約から客室管理、請求までを処理する宿泊施設の基幹システム)事業など不動産会社・個人オーナーが保有する物件の収益化を支援するサービスを提供している。今後は、両社の連携によりマーケティングから決済まで不動産関連事業をトータルで支援できる体制の強化を推進していくようだ。

 そして2016年10月に韓国最大級のプリペイドカード・プリペイド型電子マネー 発行管理会社Smartcon Co. Ltd.を子会社化した。Smartconは、韓国においてオンライン上で利用できるプリペイドカード及びプリペイド型電子マネーの発行・管理事業を展開している企業であり、Smartconのプリペイドカードや電子マネーの発行・管理の知見と当社のマーケティングやオンライン決済の知見を融合させることで、新たな決済ソリューションの開発を目指していくと考えられる。

 メタップスはM&Aを重ねてどのような未来を描いているのだろうか。読み解くカギとなるのが、2016年10月に発表した中期経営方針「データノミクス構想」だ。

 あらゆるものがインターネットにつながるIoTの時代を迎え、個人の行動パターンなどの膨大なデータが入手できるようになりつつある。そして人工知能(AI)が一段と進化し、従来は人間がやっていた多くの仕事をコンピューターが代わりにやってくれるようになる。

 メタップスはデータとAIを軸とした経済圏の構築をめざす。対象はファイナンス(決済・金融)、マーケティング(分析・広告)、コンシューマ(EC・メディア)の3分野。自社の製品から発生するデータをすべて集約して統合管理しAIに学習させる。AIが各事業の成功と失敗のパターンを学習させ、サービス改善に生かす。さらに決済インフラを共通化してお金の流れを自社グループで完結させることで経済圏を形成する。

 この経済圏の実現に向け、2017年はフィンテックとAIに集中投資する方針だ。フィンテックでは決済を軸に融資や投資、保険、資産管理などあらゆる領域に参入していく。単独で参入が難しい分野は既存の金融機関と提携する。2016年、みずほフィナンシャルグループと新たな決済サービスの提供に向けた業務提携で合意した。

 AIでは東京大学の第一線で活躍するAI研究者を技術顧問に迎え、100種類以上のデータを学習してお金の流れを予測するAIの研究開発体制を強化する。

 事業拡大に向けては状況に応じて内製、M&A、JV(合弁会社)を使い分けて最速での成長をめざす。M&Aについては、企業として成熟しており割安での買収が可能な場合、経済圏に融合させることで再成長が可能な場合に活用する。買収後はグループで決済手段を統一したり、本社でデータを分析したりして相乗効果を早期に実現する。

 JVを検討するのは、参入障壁が高く、M&Aが困難な場合で、候補分野として、エネルギー、宇宙、生命を上げている。2016年9月にはニチガスとAI活用によるエネルギーの効率化に向けた提携を行った。

【財務分析】売上高2倍速で成長、採算も好転

 スマートフォン向け広告市場の拡大を背景に、また2016年8月期は特にペイデザインとビカムの買収により、売上高は右肩上がりに成長している。ただしM&Aによるのれん・減価償却費や、人員拡大による人件費の増加、ファイナンス領域での積極的な先行投資を実施したことが影響し、営業利益は3期連続の赤字となった。なお、2016年8月期の第4四半期では、四半期ベースで上場後初となる営業黒字を達成しており、今後の通期黒字化が期待される。

 2017年8月期の売上高は前期比約2倍の180億円、営業利益は7億円を予想する。同社は最重要指標として成長率を掲げる。先にシェアの拡大を行い、ある程度の規模に達した段階で利益率を高める戦略だ。中期経営方針では、2020年に取扱高1兆円、売上高1000億円、営業利益100億円を目標に掲げている。実現には年率8~9割の成長率が必要で、M&Aなしには達成が難しいかなりチャレンジングな目標と言える。

 領域別にみると、2015年8月期ではマーケティング領域の売上がほぼ全てを占めるも、2016年8月期は、ペイデザインを買収したことによりファイナンス領域での売上が約35倍に急伸している。地域別にはマーケティング領域の売上高の約6割が海外で稼ぐ。特に中華圏、韓国での売り上げが伸びているという。

【株価】M&A効果が業績、株価を押し上げ

 IPO時は公開価格3,300円のところ、初値は3,040円とやや出遅れた。2015年11月に一時的に公開価格を超えた後は低迷していたが、2016年12月に再び3,000円を突破し、回復傾向にある。

 株価が持ち直してきた背景にはフィンテックやAIといった成長分野への集中投資を鮮明にしたこと、業績も好転していることがある。決算説明資料によると、2016年8月期の第4四半期で稼いだ売上高32億9000万円のうち、およそ10億円程度が直近のM&Aの効果とみられる。まだ売上高の拡大に伴って販管費比率が低下するなど、収益構造が改善している。

 今後の株価は四半期業績の推移や注力するフィンテックやAI分野で新たなM&Aが生まれるかどうかに影響を受けそうだ。

【まとめ】売上高1000億円へ高水準のM&Aが続く

メタップスはコンピューターにあらゆるデータを学習させ、人々の最適な意思決定を支援する頭脳になることを目指している。2020年までの中期経営方針によれば、2017年はフィンテックとAIに対して集中投資し、2018年以降はマーケティングおよびファイナンスの事業資産(様々なデータ)を活用したコンシューマ関連サービスを強化すると掲げる。目標とする2020年の売上高1000億円を達成するために今後も当該分野でのM&Aが続くと予想される。今後はベンチャーならではのスピード感を維持しつつ、買収後の統合管理(PMI)の強化など組織体制をさらに充実させることも課題となりそうだ。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

文:M&A Online編集部

自動運転とMaaSが世界の共通言語に? 「CES 2019」で自動車会社は何を語ったか

清水和夫の自動運転ソシオロジー 第14回

自動運転とMaaSが世界の共通言語に? 「CES 2019」で自動車会社は何を語ったか

2019.01.23

テックの祭典に見る自動車業界の現在地

キーワードは自動運転とMaaS? 自動車大手は何を語ったか

日本では産官学の自動走行システム研究が進行中

テックの祭典といわれる「CES 2019」を取材するため、新年早々から米国・ラスベガスに飛んだ。CESはもともと家電ショーの位置づけだったが、最近は自動運転やAIなどのテック系イベントに様変わりしている。

アウディはコネクト技術を披露、日系サプライヤーも健闘

今では自動車産業とIT企業が押し寄せるショーになったが、自動車メーカーがCESに参加するようになったのは2011年頃からだ。当初はドイツのアウディが電気自動車(EV)「e-Tron」のコンセプトカーを発表して話題となった。私が初めてCESを取材したのは2014年だが、その時もアウディが「ヴァーチャルコックピット」という新しいアイディアを提案していた。

今年のCESではアウディだけでなく、メルセデス・ベンツや韓国のヒュンダイにも勢いがあった。さらに、大手サプライヤーも独自の技術を披露していた。CESの常連であるアウディはサーキットを使い、バーチャルリアリティーを体験できるイベントを開催。そこそこのスピードで走る「e-Tron」の後席に座ってヘッドギアを付けると、視界に入ってくるのはサーキットの景色ではなく、異次元のサイバー空間だった。

アウディは電気自動車「e-Tron」を使ってヴァーチャルリアリティー体験を提供

アウディの狙いは、コネクト技術を使うことだ。車内でいろいろなエンターテイメントが楽しめるのに、実際のクルマの動きとサイバー空間で繰り広げられる動きが同期しているから、車酔いを起こさないというのが売りになっている。この映像システムは、ベンチャーのホロライド(holoride)社とコラボして開発したシステムであり、2022年頃には実用化するとのことだった。

日系メーカーではデンソーやアイシン精機がドライバーレスのロボットカーを発表し、自動運転への意欲を見せた。興味深かったのはパナソニックで、電気で走るハーレーのコンセプトモデルをブースに展示していた。実際の事業化はまだ未定とのことだったが、日本のサプライヤーの頑張りは目立っていた。

完全自動運転と安全運転支援を両輪で研究するトヨタ

それでは、自動運転と「MaaS」(モビリティ・アズ・ア・サービス)について、自動車業界の巨人たちは何を語ったのだろうか。ここではトヨタ自動車とメルセデス・ベンツの発表を振り返ってみたい。

昨年のCESでは、移動や物流などの多用途で使えるMaaS専用次世代電気自動車(EV)「e-Palette Concept」をお披露目して話題を呼んだトヨタ。今年のCESで熱を込めて語ったのは、同社が「Toyota Guardian高度安全運転支援システム」(ガーディアン)と呼ぶ自動運転技術だった。プレゼンテーションを行ったのは、トヨタが米国に設立した自動運転や人工知能などの研究機関「トヨタ・リサーチ・インスティチュート」(TRI)のギル・プラット所長だ。

TRIが研究を進める自動運転技術「ガーディアン」とは

TRIでは、システムがあらゆる場面でクルマを運転する完全自動運転を「ショーファー」、基本的には人間(ドライバー)がクルマをコントロールし、危険が迫った時などにシステムがドライバーをサポートする技術を「ガーディアン」と呼び、この2つのアプローチで設立当初から研究を進めている。

社会受容性など、乗り越えるべき課題の多い「ショーファー」の実現にはかなりの時間を要する見通しだが、運転支援システムの延長線上にある「ガーディアン」は、交通事故を減らしたり、より多くの人に移動の自由を提供したりするためにも、一刻も早い実用化を期待したい技術だ。CESでガーディアンの説明に時間を割いたところを見ると、トヨタは自動運転技術の社会実装を、可能なところから進めていこうと考えているようで心強い。TRIでは2019年春、レクサス「LS」をベースに開発した新しい自動運転実験車「TRI-P4」を導入し、ガーディアンとショーファーの双方で研究を加速させるという。

レクサス「LS 500h」をベースとする自動運転実験車「TRI-P4」

一方、メルセデス・ベンツがCES 2019に持ち込んだのは、MaaSを見据えたコンセプトカー「Vision URBANETIC」だった。人の移動にもモノの輸送にも使えるこのEVは、「e-Palette Concept」のメルセデス・ベンツ版といったところ。未来のモビリティについて想像を掻き立てるコンセプトカーだが、このクルマが現実社会を走行する場合、自動運転が実用化していることは大前提となる。

メルセデス・ベンツのコンセプトカー「Vision URBANETIC」

自動運転とMaaSが業界共通の課題、日本の取り組みは

ほんの一部ではあるものの、CESで自動車業界の巨頭が発表したことを振り返れば、彼らが自動運転を喫緊の研究課題と捉えていて、将来の自社のビジネスにとって必須の技術だと考えていることが分かる。ちなみに、CES 2019を見て回った筆者の印象では、自動運転にまつわる技術面の課題は、多くがすでに解決済みであるような気がしている。

自動運転とMaaSの社会実装は、自動車産業を基幹産業とする日本にとっても避けては通れない課題だ。日本国内では、内閣府が「戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)の一環として自動走行システムの実現を後押ししている。

この取り組みでは、産官学が連携して5年にわたる研究・開発を進めてきた。自動車メーカーだけでなく、様々な企業や研究機関が英知を結集し、自動運転の基礎となる技術や、高齢者など交通制約者に優しい公共バスシステムの確立など、移動の利便性向上を目指してきたのである。

SIPにおける自動走行システムの研究成果については、2月6日、7日にTFTホール(東京・有明)で開催される「自動運転のある未来ショーケース~あらゆる人に移動の自由を~」というイベントで触れることができる。筆者も2月6日の「市民ダイアログ」(17時30分から)に参加して、自動運転で交通社会はどこまで安全になるかを議論し、市民の皆さんからも自動運転に対する様々な意見を頂戴する予定だ。この機会に是非、自動運転の最新技術とモビリティの未来像を体感してほしい。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。