【メタップス】上場直後から怒涛のM&A データを学習する世界の頭脳へ

【メタップス】上場直後から怒涛のM&A データを学習する世界の頭脳へ

2017.02.17

【メタップス】上場直後から怒涛のM&A データを学習する世界の頭脳へ

 データ分析と決済サービスを運営するメタップス<6172>が2015年に新規株式公開(IPO)して以降、M&Aを立て続けに行い、事業を急拡大させている。あらゆるものがネットにつながり、ビッグデータの収集が可能となるなかで、データによる新たな経済圏の構築を掲げ、人工知能(AI)やフィンテックに集中投資する姿勢を鮮明にしている。まだ上場して間もないベンチャー企業の大胆な投資戦略を読み解きたい。

【企業概要】アプリ開発者向けプラットフォームを運営

 メタップスは、「世界の頭脳になる」というミッションを掲げてアプリ収益化事業を行っており、マーケティング(分析、広告、販促等)、及びファイナンス(決済、投資、融資等)の2つの領域において事業展開している。

 マーケティング領域では、アプリの集客や分析、収益化をワンストップで支援するアプリ開発者向けプラットフォーム「metaps」が主軸であり、アプリ運営に必要なKPI及びデータを一元管理し、またAI(人工知能)を活用して適切なターゲットに対して適切な広告配信を行うことで、収益を最大化することを支援している。

 ファイナンス領域では、オンライン決済サービス「SPIKE」をはじめ、リアル店舗におけるクレジットカード決済サービスの提供、不動産業界における家賃決済等、法人から個人まで幅広い利用者を対象にサービスを提供している。

 2007年9月に設立され、2015年8月に東証マザーズに株式を上場しており、日本、シンガポール、香港、台湾、韓国、中国、米国、英国の8拠点を中心としてグローバルに事業展開している。

【経営陣】佐藤社長は20歳で起業、会長にスクウェア出身者

 佐藤航陽社長は2006年に早稲田大学に入学後、20歳にして2007年9月にイーファクター株式会社(現・メタップス)を設立し、代表取締役に就任。30歳。和田洋一取締役会長は野村証券出身で、スクウェア・エニックス・ホールディングスの社長を務めた後、2015年からメタップス取締役に就任した。また小泉内閣で経済財政担当大臣などを歴任した経済学者の竹中平蔵氏を顧問に迎えている。


【株主構成】佐藤社長、3分の1超を保有

メタップスの上位株主
氏名又は名称 所有株式数(株) 持ち株比率(%)
佐藤航陽 4,430,000 34.40
インテック・アイティ2号投資事業有限責任組合 632,082 4.91
セガゲームス 500,000 3.88
BBH (LUX) FOR FIL LIMITED MARCONI PILOT 384,853 2.99
山崎祐一郎 346,000 2.69
Fenox Venture Company 7, L.P. 300,000 2.33
資産管理サービス信託銀行 251,800 1.96
トランス・コスモス 250,000 1.94
博報堂 250,000 1.94
松井秀紀 200,000 1.55
7,544,735 58.59
2016年8月末時点、有価証券報告書に基づき作成

 上場後も佐藤社長が3分の1超を保有し筆頭株主となっている。その他大株主としては、業務提携をしているセガゲームスやトランス・コスモス、博報堂とともに、一部のベンチャーキャピタルが上場から1年経過しても継続保有している。

M&A戦略】マーケティング、民泊、決済の先端技術を獲得

 IPOでの調達資金を活用し、買収を重ねて事業拡大している当社の戦略を読み解きたい。

メタップスの沿革と主なM&A
年 月     内容
2007年9月 佐藤航陽氏がイーファクター(現メタップス)を設立
2010年6月 東京都新宿区に本社移転
2010年7月 共同購入型のクーポンサイト「TOKUPO(トクポ)」を開設
2011年4月 アプリ収益化プラットフォーム「metaps」のサービス提供を開始
2011年6月 SEO事業をngi group(現ユナイテッド株式会社)へ譲渡
2011年6月 シンガポール子会社、Metaps Pte. Ltd.を設立
2011年12月 イーファクターからメタップスに社名変更
2012年4月 香港駐在員事務所を設置
2012年10月 米国支店、Metaps Internationalを設立
2013年4月 共同購入型のクーポンサイト「TOKUPO(トクポ)」をテレビ東京ブロードバンド株式会社へ事業移管
2013年4月 韓国支店、Metaps Koreaを設立
2013年10月 台湾支店、新加坡商媒達思股份有限公司台灣分公司を設立
2013年12月 中国子会社、盈利点信息科技(上海)有限公司を設立
2014年4月 オンライン決済プラットフォーム「SPIKE」のサービス提供を開始
2014年6月 英国にMetaps Pte. Ltd.の子会社として、Metaps Europe Limitedを設立
2014年10月 東京都新宿区の住友不動産新宿オークタワーに本社移転
2015年5月 国内子会社、デジタルサイエンスラボを合弁で設立
2015年6月 韓国支店を閉鎖し、韓国子会社Metaps Korea Inc.を設立
2015年8月 東京証券取引所マザーズに株式を上場
2015年10月 韓国のモバイル広告プラットフォーム運営会社Nextapps Inc.の株式51.0%を21億円で取得し、子会社化
2016年1月 動画編集アプリ等を展開するAppStairを子会社化
2016年4月 EC決済・実店舗決済などを提供しているペイデザインの全株式を28億円で取得し、子会社化
2016年6月 ショッピング検索サイト運営会社ビカムの全株式を3億円で取得し、子会社化
2016年7月 韓国子会社Nextapps Inc.が韓国子会社Metaps Korea Inc.を吸収合併
2016年8月 韓国子会社Nextapps Inc.からMetaps Plus Inc.に商号変更
2016年8月 民泊関連サービス提供のVSbiasを子会社化
2016年10月 韓国のプリペイドカード/電子マネーの発行管理会社Smartcon Co. Ltd.の株式51.0%を約9.4億円で取得し、子会社化

 上場から2か月後の2015年10月に、韓国でモバイル広告プラットフォームを提供する Nextapps Inc.(現Metaps Plus Inc.、前期売上約 880 百万円、営業利益約 188 百万円)の株式を一部取得し、子会社化した。その3か月前に戦略的業務提携を同社と結んだばかりであり、短期間で子会社化に踏み込んだことになる。Nextapps が持つモバイル広告プラットフォームと、当社のアプリデータ解析のノウハウを組み合わせることで、より収益性の高いサービス提供が可能になると判断したようだ。

 2016年1月には、動画編集アプリ「Film Story」などを展開するAppStairを子会社化している。動画を用いたマーケティングやプロモーションが増加傾向にある中で、動画マーケティング事業の成長を更に加速させていくと考えられる。

 次に2016年4月には、ペイデザイン(前期売上2,535 百万円、136 百万円)を28億8000万円で子会社化している。ペイデザインは、EC決済事業に加え、リアル店舗決済事業、家賃決済事業、電子マネー事業等、幅広いサービスを提供しており、当社の「SPIKE」と合わせ、決済プラットホーム規模が、登録アカウント数で25万件、グループ年間取扱高で1,000億円を超えることとなった。決済プラットホームとしての競争力強化や、付加価値向上の実現に向けてオンライン決済の市場における事業拡大・開発へ取り組んでいくようだ。

 また2016年6月にはビカム(前期売上1,021 百万円、営業利益76 百万円)を子会社化した。ビカムはEC事業者向けに、デバイスを横断した商品データの一元管理や最適な広告配信、オペレーション管理コストの削減をするデータフィードマネジメント技術を保有しており、EC事業者のマーケティングを支援している。eコマース市場は、加速度的に拡大が見込まれる成長市場である一方、マーケティングを行う企業にとっては、デバイスの多様化と消費者の行動変化にあわせたコンテンツ管理や広告配信が必要となり、業務の煩雑化が課題となっている中、今後は、両社の連携によりEC事業者の決済からマーケティングまでをトータルで支援できる体制の強化を推進するとのことだ。

 さらに2016年8月には、VSbiasの子会社化を行った。VSbiasは物件選定から物件運用までワンストップで提供する「エアリノベ」や複数民泊サイトを横断した物件管理サービス「All in BnB」を中心に、コンサルティング事業・運用代行事業・PMS(Property Management System、予約から客室管理、請求までを処理する宿泊施設の基幹システム)事業など不動産会社・個人オーナーが保有する物件の収益化を支援するサービスを提供している。今後は、両社の連携によりマーケティングから決済まで不動産関連事業をトータルで支援できる体制の強化を推進していくようだ。

 そして2016年10月に韓国最大級のプリペイドカード・プリペイド型電子マネー 発行管理会社Smartcon Co. Ltd.を子会社化した。Smartconは、韓国においてオンライン上で利用できるプリペイドカード及びプリペイド型電子マネーの発行・管理事業を展開している企業であり、Smartconのプリペイドカードや電子マネーの発行・管理の知見と当社のマーケティングやオンライン決済の知見を融合させることで、新たな決済ソリューションの開発を目指していくと考えられる。

 メタップスはM&Aを重ねてどのような未来を描いているのだろうか。読み解くカギとなるのが、2016年10月に発表した中期経営方針「データノミクス構想」だ。

 あらゆるものがインターネットにつながるIoTの時代を迎え、個人の行動パターンなどの膨大なデータが入手できるようになりつつある。そして人工知能(AI)が一段と進化し、従来は人間がやっていた多くの仕事をコンピューターが代わりにやってくれるようになる。

 メタップスはデータとAIを軸とした経済圏の構築をめざす。対象はファイナンス(決済・金融)、マーケティング(分析・広告)、コンシューマ(EC・メディア)の3分野。自社の製品から発生するデータをすべて集約して統合管理しAIに学習させる。AIが各事業の成功と失敗のパターンを学習させ、サービス改善に生かす。さらに決済インフラを共通化してお金の流れを自社グループで完結させることで経済圏を形成する。

 この経済圏の実現に向け、2017年はフィンテックとAIに集中投資する方針だ。フィンテックでは決済を軸に融資や投資、保険、資産管理などあらゆる領域に参入していく。単独で参入が難しい分野は既存の金融機関と提携する。2016年、みずほフィナンシャルグループと新たな決済サービスの提供に向けた業務提携で合意した。

 AIでは東京大学の第一線で活躍するAI研究者を技術顧問に迎え、100種類以上のデータを学習してお金の流れを予測するAIの研究開発体制を強化する。

 事業拡大に向けては状況に応じて内製、M&A、JV(合弁会社)を使い分けて最速での成長をめざす。M&Aについては、企業として成熟しており割安での買収が可能な場合、経済圏に融合させることで再成長が可能な場合に活用する。買収後はグループで決済手段を統一したり、本社でデータを分析したりして相乗効果を早期に実現する。

 JVを検討するのは、参入障壁が高く、M&Aが困難な場合で、候補分野として、エネルギー、宇宙、生命を上げている。2016年9月にはニチガスとAI活用によるエネルギーの効率化に向けた提携を行った。

【財務分析】売上高2倍速で成長、採算も好転

 スマートフォン向け広告市場の拡大を背景に、また2016年8月期は特にペイデザインとビカムの買収により、売上高は右肩上がりに成長している。ただしM&Aによるのれん・減価償却費や、人員拡大による人件費の増加、ファイナンス領域での積極的な先行投資を実施したことが影響し、営業利益は3期連続の赤字となった。なお、2016年8月期の第4四半期では、四半期ベースで上場後初となる営業黒字を達成しており、今後の通期黒字化が期待される。

 2017年8月期の売上高は前期比約2倍の180億円、営業利益は7億円を予想する。同社は最重要指標として成長率を掲げる。先にシェアの拡大を行い、ある程度の規模に達した段階で利益率を高める戦略だ。中期経営方針では、2020年に取扱高1兆円、売上高1000億円、営業利益100億円を目標に掲げている。実現には年率8~9割の成長率が必要で、M&Aなしには達成が難しいかなりチャレンジングな目標と言える。

 領域別にみると、2015年8月期ではマーケティング領域の売上がほぼ全てを占めるも、2016年8月期は、ペイデザインを買収したことによりファイナンス領域での売上が約35倍に急伸している。地域別にはマーケティング領域の売上高の約6割が海外で稼ぐ。特に中華圏、韓国での売り上げが伸びているという。

【株価】M&A効果が業績、株価を押し上げ

 IPO時は公開価格3,300円のところ、初値は3,040円とやや出遅れた。2015年11月に一時的に公開価格を超えた後は低迷していたが、2016年12月に再び3,000円を突破し、回復傾向にある。

 株価が持ち直してきた背景にはフィンテックやAIといった成長分野への集中投資を鮮明にしたこと、業績も好転していることがある。決算説明資料によると、2016年8月期の第4四半期で稼いだ売上高32億9000万円のうち、およそ10億円程度が直近のM&Aの効果とみられる。まだ売上高の拡大に伴って販管費比率が低下するなど、収益構造が改善している。

 今後の株価は四半期業績の推移や注力するフィンテックやAI分野で新たなM&Aが生まれるかどうかに影響を受けそうだ。

【まとめ】売上高1000億円へ高水準のM&Aが続く

メタップスはコンピューターにあらゆるデータを学習させ、人々の最適な意思決定を支援する頭脳になることを目指している。2020年までの中期経営方針によれば、2017年はフィンテックとAIに対して集中投資し、2018年以降はマーケティングおよびファイナンスの事業資産(様々なデータ)を活用したコンシューマ関連サービスを強化すると掲げる。目標とする2020年の売上高1000億円を達成するために今後も当該分野でのM&Aが続くと予想される。今後はベンチャーならではのスピード感を維持しつつ、買収後の統合管理(PMI)の強化など組織体制をさらに充実させることも課題となりそうだ。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

文:M&A Online編集部

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。