ついに登場のプリウスPHV、トヨタがエコカーの“大本命”に据える理由

ついに登場のプリウスPHV、トヨタがエコカーの“大本命”に据える理由

2017.02.20

トヨタ自動車は先日の「プリウスPHV」発表会で、エコカーの大本命はプラグインハイブリッド車(PHV)だと言い切った。これまでエコカーの主力はハイブリッド車(HV)と語っていたトヨタが、PHVに舵を切った理由とは何か。PHVを取り巻く状況を踏まえて解説していこう。

TVコマーシャルに出演する石原さとみさんも駆けつけた「プリウスPHV」発表会

「これがトヨタの答え」

2017年2月15日に行われたトヨタのプリウスPHV発表会。 最初に壇上に立ったのは、トヨタの代表取締役会長を務める内山田竹志氏だった。 内山田氏はちょうど20年前にデビューした初代プリウスのチーフエンジニア。「ミスターハイブリッド」が直々にPHVを紹介したのだ。

壇上で内山田氏は、まずHVが1,000万台の販売を達成し、7,700万トンのCO2を削減したことを発表した。合わせてトヨタは、2050年までに販売車種のCO2排出量を90%削減するという目標も掲げた。

この方針の中で、トヨタが究極のエコカーと考えているのが燃料電池自動車(FCV)だ。しかしFCVは、インフラ整備も必要であり普及には時間がかかる。しばらくは石油が自動車用エネルギーの主流であり続けると内山田氏は解説し、その中で大本命のエコカーがPHVだと語った。

壇上背後のスクリーンには、「ハイブリッドの次は、なんだ?」という言葉が掲げられていた。内山田氏はプレゼンテーションの最後でそれに答えるように、「これがトヨタの、答えです。」というメッセージを残した。

ミスターハイブリッドの内山田氏が直々にプレゼンを実施

先代の教訓も糧に

なぜトヨタはここまでプリウスPHV推しなのか。その裏には、2012年1月に発売した先代プリウスPHVが思うような結果を挙げられなかったことがある。

これについてトヨタは、先代プリウスPHVはデビュー当初で約100万円、価格を下げた最終型でも約70万円の差があったにもかかわらず、HVのプリウスとの差別化が少なく、 バッテリーだけで走れる電動走行距離も26.4キロと短かったことなどを理由に挙げていた。しかし筆者は、それに加えて、周辺環境が大きく変わったことが関係していると思っている。

たとえば欧州。EUは2013年に、2021年までに1キロ当たりのCO2排出量を95グラム以下に抑えるという規制値を発表したが、現在の欧州の自動車メーカーの状況を見ると、この数値をクリアするのは難しい。そこで同時に、PHVを優遇する排出係数が用意された。

同じ時期、北米や中国でもこのような優遇策が相次いで発表された。背景に日本が主導権を握るHVへの対抗心があるのは明らかだ。つまり、昨今のPHVブームは戦略という側面が強いことを理解すべきだろう。

さらに2013年、三菱自動車工業が「アウトランダーPHEV」を出したことも大きい。三菱の電気自動車(EV)技術を活用した同車は、大容量バッテリーを搭載することで60.8キロの電動走行を可能としていた。この数字が評価され、同車は2015年に欧州と日本でもっとも売れたPHVになり、60キロ電動走行可能という数字はPHVのベンチマークとなった。先代プリウスPHVは遅れをとってしまったのだ。

電動走行距離は68.2キロ

では新型プリウスPHVはどうか。価格は326万1,600円からと、先代同様にHVとの差はある。しかしスタイリングはHVとは別物であり、バックドアガラスには空力性能に優れたダブルバブルウインドゥ、バックドアには軽量化に貢献するカーボンファイバー製リアゲートなど、新技術も取り入れている。インテリアではインパネ中央の、11.6インチという超大型の縦長ディスプレイが目を惹く。

特徴的なダブルバブルウインドゥ

気になる電動走行距離は68.2キロと、アウトランダーPHEVを少しではあるが上回った。そしてプリウスPHVには、ライバルにはないもうひとつの先進技術がある。ルーフに装着したソーラーパネルだ。

太陽光でクルマが走る時代に?

自動車へのソーラーパネル採用例としては、EVの日産自動車「リーフ」が知られている。しかしリアスポイラーに装着したリーフのソーラーパネルは小さく、エアコンなどの電装品用のバッテリー充電に留まっていた。その点がプリウスPHVは異なる。ソーラーパネルの最大出力は180ワットであり、発電したエネルギーを走行用バッテリーに貯めることができるからだ。

プリウスPHVのソーラーパネル

距離は1日で最大6.1キロ、平均2.9キロとわずかではあるが、休日にしかクルマに乗らないという人であれば、平日5日間がずっと快晴なら30キロ分を充電することも不可能ではない。もちろん電気代の節約になるし、日本は現在、電力の9割近くを火力発電に頼っているから環境対策にもなる。

他の自動車メーカーのPHVやEVも、大急ぎで大容量ソーラーパネル装着へと動いてくるはずだ。特にルーフの長いミニバンやSUVは効果が期待できるだろう。

この流れが進むと、車庫の常識が変わる可能性がある。これまで車庫と言えば屋根付きが格上で、月極駐車場料金も高めだったけれど、屋根が付いていてはソーラー発電ができないわけで、今後は青空駐車が注目を浴びることになるかもしれない。

クルマの充電事情は変えられるか

ただし逆に、その車庫に充電設備が用意されているかどうかという点については、発表会では言及がなかった。PHVは家庭や会社で充電できてこそメリットがある。車庫事情に恵まれない日本は、この点で不利になる。

そんな中で、日産が現在、リーフを対象に用意しているプランは参考になるのではないかと思っている。 そのプランとは、全国に5,600基以上ある急速充電器が、月会費2,000円(税別)で充電し放題になるというもの。今、リーフを新車で買って申し込むと、このプランが2年間無料になるという。

筆者も先月、このプランを取材で使ってみた。近距離を乗るだけだったら、あまりバッテリーは減らないので、たまに食事や買い物をしながら急速充電器で充電をするだけで走り続けることができた。

プリウスPHVのバッテリー容量は、満充電で280キロ走行できるリーフに比べれば小さいので、急速充電だけですべてを電動走行にするのは難しいかもしれない。けれど、自宅や会社に充電設備がない人でも、ある程度はPHVのメリットが享受できるサービスとして、価値があると思っている。

日本でPHVの普及を後押ししそうなプリウスPHVだが、どのように充電するかという点が課題となるかもしれない

当面の注目は、このプリウスPHVがどれだけ売れるか、アウトランダーPHEVの台数を上回るかに掛かっているけれど、個人的には、これを契機としてトヨタグループ、日産/三菱グループともにPHVのラインナップを増やしていってほしい。それによって、集合住宅にも充電設備を付けようという動きが活発になるかもしれないからだ。

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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