大手携帯3社の好調を支える光ブロードバンド、そのメリットとは

大手携帯3社の好調を支える光ブロードバンド、そのメリットとは

2017.02.21

好調な業績を記録する携帯電話大手だが、うちいくつかの企業では、業績のけん引役となっているのが携帯電話事業ではなく、光回線による固定ブロードバンド通信事業である。しかしなぜなぜ携帯電話事業者が固定通信に力を入れるようになり、それが業績好調へとつながっているのだろうか。

格安スマホ人気で減少する売上を支える"光"

1月から2月にかけて大手携帯3社の決算が相次いで発表されたが、その内容を見ると、米国でも事業展開しているソフトバンクグループは、円高の影響を受けて前年同期比では減収となったものの、いずれも業績自体は伸びており、利益を大きく向上させるなど好調な決算となっていた。

主力の国内通信事業を見ても、3社ともに売上・利益共に高めており、総務省による端末の実質0円販売の事実上禁止措置や、MVNOなど低価格サービスの台頭などを受けてもなお、好調なようだ。だがその詳細を見ていくと、やはりそれらの影響が随所に出てきており、移動体通信事業に大きな影響をもたらしつつある様子を見て取ることができる。

例えばKDDIは、今回の決算からモバイルの契約数に関して、auの契約数に加え、UQコミュニケーションズやジュピターテレコムなど、連結子会社のMVNOの契約数も含めた「モバイルID数」を評価の対象とすることを明らかにしている。しかもその内訳を見ると、auの契約数は前年同期比38万人減の2530万人と減少傾向にある一方、MVNOの契約数は前年同期比29万人増の35万人と大きく伸びており、低価格サービスにユーザーが移っている様子を見て取ることができる。

低価格サービスへの顧客流出を受け、KDDIはauだけでなく、傘下企業のMVNOの契約数も評価対象とするようになった

またソフトバンクグループ傘下のソフトバンクも、ワイモバイルのユーザーが大きく伸びていることから、ARPUが前年同期比150円減の4530円となるなど、売上の基礎となるARPUが減少するに至っている。NTTドコモも1月27日に実施した決算会見で、昨年1月、2月頃からワイモバイルなどへの流出が多くなっていることを明らかにしており、端末価格の高騰などによる低価格サービスへの顧客流出が、各社に深刻な影響を与え始めていることは確かなようだ。

しかしそうした中にあって、キャリアの業績をけん引している事業がある。それは、光回線による固定ブロードバンド事業だ。中でも2015年よりサービスを開始したNTTドコモとソフトバンクは、いずれも光ブロードバンドが業績けん引に一役買っていることが、決算内容からも見て取ることができる。

「ドコモ光」を展開するNTTドコモの場合、今四半期の契約数は前年同期比2.7倍となる297万契約に達し、1月14日には300万契約を突破したとしている。またソフトバンクも、「ソフトバンク光」の累計契約数が前年同期比2.6倍の314万に達したという。ちなみにこの事業に関しては「auひかり」で先行しているKDDIも、今四半期の光ブロードバンド契約数は前年同期比5%増の388万と、小幅ながら伸びていることが分かる。

ソフトバンクの「ソフトバンク光」は累計契約数が前年同期比2.6倍の314万に達するなど、急成長ぶりを見せている

利点は固定・携帯のセット割による解約率低下

光ブロードバンドの回線契約が増えれば、それだけ月当たりの売上が増えることから、これらサービスの伸びが携帯大手の売上向上に大きく貢献していることは確かだろう。だが携帯各社にとって、光ブロードバンドサービスの存在は、携帯電話事業にもプラスの効果をもたらす存在でもあるのだ。

それを証明しているのが、光やケーブルテレビなどによる固定ブロードバンドを先行して展開してきたKDDIだ。KDDIは同社、もしくは提携する固定ブロードバンドサービスと、auの携帯電話サービスを一緒に契約する契約することで、携帯電話側の料金を割り引く「auスマートバリュー」を2012年より開始しているが、このサービスが携帯電話の解約防止に大きな効果を発揮したことから注目を集めたのだ。

光やケーブルテレビなど指定の固定ブロードバンドサービスと契約することで、auの携帯電話料金が割り引かれる「auスマートバリュー」は解約防止に大きな効果をもたらした

というのも、固定ブロードバンドは携帯電話と異なり、一度敷設した後は入れ替えをするのが容易ではないことから、長期間継続的に利用される傾向が強い。それゆえKDDIは、固定・携帯のセット契約による割引を提供することで、当時番号ポータビリティによる競争激化で乗り換えが激しかった携帯電話ユーザーの繋ぎ止めに成功したわけだ。

そうしたことから他の2社も固定・携帯のセット割を展開したかったのだが、固定ブロードバンド回線を全国規模で敷設するには携帯電話事業以上の莫大なコストが必要で、それを実現できているのはNTT東西の「フレッツ光」くらいしかない。KDDIは自社が持つ光回線に加え、全国各地のケーブルテレビ事業者を味方につけることで、投資コストを抑えつつ広いエリアをカバーできたが、ケーブルテレビ事業者は地域による制約が多いため、先行された他社は同様の手法をとることが難しくなっていた。

KDDI以外の企業が全国的にセット割を展開する唯一の方法は、NTT東西の光回線を何らかの形で用いることだが、そもそもNTTグループとライバル企業が提携するのは難しい。また同じグループのNTTドコモも、電気通信事業法の禁止行為規制によってNTT東西と一体での営業ができないことから、やはり長い間、セット割は実現できなかったのである。

だが2015年、NTT東西がフレッツ光のネットワークを卸売りする「光コラボレーションモデル」を開始。これによって自社でネットワークを持たないソフトバンクのような企業が光ブロードバンドサービスを提供可能になったほか、NTTドコモも他社と同じ条件で回線の卸を受けることで、同様のサービス提供が可能となった。そこでようやく2社が、先行するKDDIに追いつくべく固定・携帯のセット割を推進して販売拡大を進めたことで、光ブロードバンドサービスが急速に伸びているわけだ。

NTTドコモは電気通信事業法による規制行為によってNTT東西との連携が禁じられていたことから、光コラボレーションモデルを受け「ドコモ光」を開始したのは悲願でもあった

顧客流出に必死な3社は今後も光に注力

また今後の携帯大手の動向を考える上でも、固定・携帯のセット割はプラスの効果をもたらすものと考えられる。セット割によって固定通信を契約してもらうことは、他社だけでなくMVNOなど低価格なサービスへと安易に流出することを防ぐのにも、一定の効果があると考えられるからだ。

しかもここ数年来、大手キャリアは自社の顧客に向けたコンテンツサービスの充実度を高めており、2月8日にもNTTドコモがスポーツの動画ストリーミングサービス「DAZN for docomo」を開始するなど、動画コンテンツの充実を図っている。そうしたサービスをスマートフォンだけでなく、自宅のテレビやタブレットなど利用する上で、光ブロードバンドは必須となることから、サービスの幅を広げるとともに、それを顧客のつなぎ止めにも活用できるのはメリットだ。

NTTドコモは2月8日にスポーツの動画ストリーミングサービス「DAZN for docomo」の開始を発表。こうしたサービスをテレビで利用する上でも光回線は欠かせない

また固定・携帯のセット割を前提とした一体販売によって、相対的にユーザー当たりの獲得コストが下がるというのもメリットになる。現在は獲得競争が激しいこともあって営業費用は拡大傾向にあるようだが、固定回線の契約は家族まとめての契約拡大にも結び付きやすいだけに、今後はメリットが一層大きくなると考えられそうだ。

総務省の方針によって端末価格は今後も一層高騰すると見られ、低価格サービスへの顧客流出は今後も加速することが予想される。だがその傾向を野放しにしておけば、携帯3社の売上はじり貧になってしまうだろう。それだけに、自社顧客の流出を可能な限り防ぎつつ、売り上げを高めていく上でも、携帯3社にとって光ブロードバンドの存在は重要だといえ、今後も各社は光ブロードバンドサービスの販売、ひいてはセット割の契約拡大に力を入れていくといえそうだ。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。