東芝は毒まんじゅうを買った? 見抜けなかった原発リスクの正体

東芝は毒まんじゅうを買った? 見抜けなかった原発リスクの正体

2017.02.21

2017年2月14日に東芝が発表した原子力事業におけるのれん減損は、7125億円と大きなものとなった。これにより、2016年度通期(2016年4月~2017年3月)の営業損益は4100億円の赤字、最終損益も3900億円の赤字になるとの見通しを発表した。株主資本はマイナス1500億円となり、債務超過の事態に陥る。

記者の厳しい質問に答える綱川智社長。2月14日

東芝の綱川智社長は、「米国の4基の原発を受注したことが、今回の減損のきっかけである」と語る一方、ウェスチングハウスの買収についても、「いまの数字を見ると、その判断は正しいとは言いにくい」と悔やしさを滲ませる。そして、2015年末に完了したS&Wの買収は、東芝の経営の屋台骨を揺るがす結果になった。

将来の成長を担うはずだった原子力事業は、東芝を「解体」に向かわせる引き金になってしまうのだろうか。

どうしても手に入れたかったウェスチングハウス

東芝がウェスチングハウスを買収したのは2006年のことだ。当時の社長は、西田厚聰氏。追加出資を含めたウェスチングハウス買収に伴う投資は6600億円にも達している。これは、その当時、市場からは、その半分でも高いと言われる投資規模だった。それにも関わらず、東芝が買収に踏み切ったのは、原子力を軸とした社会インフラ事業を成長戦略に掲げ、売上高で2桁成長という意欲的な成長を計画していたことが見逃せない。西田氏の後任に、原子力事業出身の佐々木則夫氏を据えたことも、それを強く感じさせた。

(左) 西田厚聰氏。(右) 佐々木則夫氏

佐々木氏が社長に就任後、2009年8月に初めて発表した東芝の中期経営計画では、「原子力事業のさらなる強化」を社会インフラ事業グループの基本戦略のトップ項目に掲げ、2015年までに、全世界で39基の受注を見込む方針を示し、同事業だけで1兆円の売上高を目標に掲げていた。

2009年8月発表の中期経営計画では、2015年までに39基の受注を見込み、売上高1兆円を目指すことを示した

当時の資料では、米国では32基以上の新設計画があり、中国では50基以上の新設計画があること、そして、日本でも12基の原発計画があるとしており、旺盛な原子力発電所の建設計画が、東芝の業績を引き上げるものとみられていた。日本の政府も、2006年に原子力立国計画を発表するなど、原子力事業を後押しする姿勢があっただけに、東芝にとっては、ウェスチングハウスは、今後の成長に向けて、なんとしてでも手に入れたい会社のひとつだったといえる。

福島第一原発事故のあとに行われた2011年5月の会見でも、目標は先送りするものの数値目標には変更はなかった
当時のウェスチングハウスのダニー・ロデリック会長

だが、2011年3月11日の福島第一原発の事故以降、原子力事業の勢いにはブレーキがかかる。それでも東芝は、2015年11月の会見では、「全世界では約400基以上の建設計画があり、2029年度までに64基の受注を目指す」(当時のウェスチングハウスのダニー・ロデリック会長)と、強気の姿勢は崩さないままだった。

実はこのときに、ウェスチングハウスののれん減損が、2012~13年度において、1156億円にのぼることが明らかになり、これを減損することを発表した。東芝では、「減損テストの結果、事業の公正価値が帳簿価額を上回っていたため、のれんの減損は認識されなかった」と説明したが、この時点で東芝の認識の甘さが露呈したともいえる。

いや、それどころか、これが東芝の隠ぺい体質を象徴するものであると指摘する声もあったほどだ。

2015年11月の会見で初めてウェスチングハウスの業績を公開した

実質的な評価価格を上回る買収をもとにしたウェスチングハウスののれん減損は、東芝の財務諸表を痛めることになるのは明らか。米国会計基準を採用している東芝は、これを先送りにすることで、財務諸表を良化させていたともみられるからだ。

ちなみに、2006年度以降のウェスチングハウスの買収後の業績を公開したのはこの時が初めてであり、それまではアナリストなどの要請があっても非公開の姿勢を続けていた。

見えてきた「落とし穴」の正体

しかし、ウェスチングハウス買収を発端とした「落とし穴」はもっと深かった。米国の建設プロジェクトにおける課題が噴出。それに伴って買収したS&Wが持つ財務的な問題により、東芝はさらに深い穴に落ちていった。

今回の会見では、綱川社長が、「原子力事業における損失発生の概要と対応策」として、買収に至る経緯や、問題となった米国におけるAP1000建設プロジェクトの概要、そして、今後の対応策などについて説明した。

綱川社長が言及したように、東芝が、原子力事業でのれん減損を計上した背景には、米国で受注した2サイト4基のAP1000建設プロジェクトが大きく影響している。

この2サイトの契約は、いずれも2008年春に結ばれたものであり、米国内では約30年ぶりとなる原発の新規建設として注目を集めたプロジェクトであった。

このプロジェクトは、ウェスチングハウスが原子炉、タービン系の設備を担当。設計、機器、試運転などを担い、これを東芝が親会社として保証提供するという内容であった。また、建設や土木、ヤード設備などはS&Wが担当。これを、のちにCB&Iが買収するShawが親会社保証を提供。ウェスチングハウスとS&Wがコンソーシアムを組んで、プラント建設を一括で受注するという仕組みとなっていた。

だが、航空機追突対策による設計変更や、追加安全対策の実施、許認可審査のやり直しなどにより、工事が遅延。さらに、これを発端として、コスト負担の分担や納期変更に向けた協議がまとまらず、顧客であるGeorgia Power Company(米Southern電力の100%子会社)との訴訟。South Carolina Electric & Gas Company(米SCANA電力の子会社)との訴訟懸念が発生。「これを解決するために、早期にプロジェクト完成に注力できる体制構築を目指した。

加えて、コスト増や納期延長による損害賠償請求の回避も目指した」(東芝・綱川社長)ことを理由に、S&W(現WECTEC)を買収した。当時は、顧客だけでなく、パートナーであるCB&Iからもコスト負担に関する訴訟懸念があったのだ。綱川社長は、「C&Wの買収によって、30%のコスト改善が図ると見込んだ」というが、これも達成できなかったことを悔やむ。

東芝では、この買収とともに、関係当事者との和解案を提示。クロージング時点まで当事者間の相互のクレームをリリースし、両電力会社からの契約金額の増額と完工期日の延期や、連接期間中の裁判によらない紛争解決策の導入を進め、同時に、原子力発電所の建設工事に関する知見と経験を持つ米Fluorと工事サービス契約を結び、工事を委託することで建設工事の完遂を目指した。

しかし、S&W買収後に、買収時には認識されていなかったコスト見積もりの必要性が判明した。東芝は、これらを示す詳細見積もりを、S&Wの買収後に入手。工事作業効率性の想定にもギャップがあることも買収後にわかったのだ。

会見では、記者から「S&Wの親会社であったCB&Iに騙されたということなのか」という質問が飛んだが、「それについてはこの場では答えられない」と言葉を濁した。同社では、「CB&Iは上場企業であり、しっかり監査も受けた諸表であり、それを信じて判断をした」と説明する。買収後に重大な懸念要素を知ったことは東芝の脇の甘さを示すものだが、騙されたという意識が関係者の間にあったことは容易に想定できる。

2015年10月にS&Wの買収を取締役会で承認。2015年末に、S&Wの買収が完了し、2016年1月からは新体制での工事が開始された。それ以降、プロジェクトコストの見積もりを改めて行うなど、プロジェクトは新たな局面を迎えたが、その一方で、東芝は、買収価格の調整として、運転資本調整額をS&Wの親会社であったCB&Iに請求。しかし、両社の見解に差があり、協議を行ったものの整わず、訴訟に至ることになった。現在、CB&Iの提訴は棄却されているが上訴中であり、第三者会計士による運転資本額の評価手続きが進行中だ。これも2016年度内には解決を想定していたが、2017年度に持ち越すことになっている。

だが、新たなプロジェクト体制での建設コストの見積もりにおいては、コストが大幅に増大。当初想定した作業効率改善が進まず、作業効率が低下するとの判断のほか、物量の増加、直接人員および間接人員の増加などの労務費で37億ドル、設備の購入価格上昇や下請け業者への支払い増加で調達コストが18億ドル、工事総額に対して一定率で積み増す予備費として6億ドルの合計61億ドルが増加。さらに、これらのコスト見積もりに必要な物量算定に時間を要することもマイナス要素となっている。

この結果、S&W買収に伴うのれん計上額は6253億円に達し、ウェスチングハウスによる既存ののれん残高の872億円を加えて、7125億円ののれん減損を計上することになった。

東芝の対応策

東芝は原子力事業における対応策として、原子力事業に対するリスク管理、モニタリング強化を目的に、綱川社長を委員長とする原子力事業監視強化委員会を新設するとともに、原子力事業を社長直轄組織とし、直接リスク管理を行う体制へと移行。

最大の課題となっている米国AP1000プロジェクトにおいて、東芝の原子力事業統括部の東芝プロジェクト監視チームや、ウェスチングハウスの米国AP1000プロジェクト監督委員会などを通じて、プロジェクトの進捗や、コストを管理。是正対策を実施するという。

そして、原子力事業における損失発生に対する経営責任として、綱川社長が、月額基本報酬の返上率を60%から90%に引き上げたほか、取締役代表執行役会長の志賀重範氏が取締役および代表執行役を辞任。エネルギーシステムソリューションカンパニー社長のダニー・ロデリック氏が、同社長および東芝執行役上席 常務待遇を解嘱。原子力事業部長で執行役常務の畠澤守氏が、月額基本報酬の返上率を30%から60%に引き上げた。その他執行役も返上率を一律10%引き上げる。

新設プラントのリスクを軽減する方向

東芝は、今後の原子力事業は、国内においては、再稼働、メンテナンス、廃炉を中心に展開。一方で、海外は、高収益かつ安定したビジネスである燃料・サービスの提供は維持し、新設プラントについては、土木建築部分のリスクは負担せず、機器供給やエンジニアリングなどに特化することになる。

2016年度の原子力事業の見通しでは、燃料・サービス事業の売上高は5065億円で、同事業全体の58%を占める。また、営業利益は387億円。とくに、サービス事業は、10%を超える営業利益率を計上している。「約100基の据え付け実績をベースに、しっかりとサービスで事業を確保していく」と綱川社長は語る。

一方で、新規プラントは、5年連続で赤字を計上する見込みであり、S&Wの買収によって、2016年度見通しでは売上高が2994億円にまで膨れ上がる土木建築は、「今後は受注しない方向にもっていく」(綱川社長)ことになる。

中国で受注している三門、海陽の4基の原子力プロジェクトは土木建築が含まれていないため、そのまま継続するほか、インドでの6基の受注を目指すプロジェクトでは、土木建築のリスクを負担せず、機器供給やエンジニアリングなどに特化。英国で3基の受注を目指す「NuGen(Moorsideプロジェクト)でも、土木建設リスクは負わない前提で活動を検討する。

結果として、S&Wの買収は、それだけで6253億円を占める大規模な減損を発生させ、しかも、今後は、S&Wが得意とする土木建築事業を行わないという決断をした。まさに、東芝にとっては、「毒饅頭」以外のなにものでもなかったといえる。

原発事業は縮小へ

東芝の綱川社長は、1月27日の会見で、すでに原子力事業を「注力事業」から外す姿勢を明らかにしている。

とくに、ウェスチングハウスを中心とした海外原子力事業については、「パートナーを見つけて持分を下げるという方法で検討している」とし、「現在87%の出資比率を50%以下にすることもありうる」とする。また、東芝は英国での原子力プロジェクトのNuGenのプロジェクトオーナーであるNuGenerationに60%を出資しているが、これについても持分売却を進める姿勢を示している。

だが、2月17日には、ウェスチングハウスに3%を出資しているIHIが、出資時に結んでいた東芝に対する株式買い取りを請求できるプットオプション契約の権利を行使。東芝は、この株式を189億円で買い取ることになり、さらに東芝の経営を圧迫することになる。

これにより、東芝の出資比率は90%になり、ウェスチングハウスの出資比率の引き下げを検討している東芝にとっては逆風ともいえる事態。株主資本および純資産において、一定程度の減少が生じる見込みだという。

ウェスチングハウスには、カザフスタン共和国の国営企業であるカザトムプロムが10%を出資しており、2017年10月1日から、プットオプションの行使が可能となる。IHIの契約も、同じく10月1日からの行使となっていたが、一定の条件を満たした場合には、早期に行使可能となっており、それを行使したものだという。今後、カザトムプロムがどんな動きをするのかも注目される。

東芝は、福島第一原発の処理もあり、「社会的責任を継続して果たしていく」(綱川社長)というが、もはや東芝が原子力事業を担うだけの体力が残されていないとの指摘もある。だが、その一方で、原子力事業の最適な売却先が現れるのかどうかも不確かだ。

東芝は原子力事業にどんな決着をつけるのだろうか。

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

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2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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