SUVブームの決定版? “深化”したマツダ新型「CX-5」の大物感

SUVブームの決定版? “深化”したマツダ新型「CX-5」の大物感

2017.02.28

現在のマツダ人気の礎を築いたSUV「CX-5」が初めてのモデルチェンジを実施した。「スカイアクティブテクノロジー」と「魂動(こどう)デザイン」という2本柱はそのまま。ではどこが変わったのだろうか。実際に試乗することで、「進化」ではなく「深化」だとマツダが語るモデルチェンジの成果を検証した。

新型「CX-5」

新世代商品群は2巡目に突入

2016年12月に発表されたトヨタ自動車の新型SUV「C-HR」が人気だ。日本自動車販売協会連合会が発表した2017年1月の新車乗用車販売台数ランキングでは、9,000台以上を売って第4位に入った。

そのC-HRがデビューした翌日には、同じクラスのSUVであるCX-5がモデルチェンジした。CX-5は2012年、マツダの新世代商品第1弾として登場。スカイアクティブテクノロジーと魂動デザインを組み合わせ、国産車では初めてクリーンディーゼルエンジンを主力に据えた。

その後のマツダは、「アテンザ」や「デミオ」など、ラインナップを次々に新世代商品に切り替え、一昨年にモデルチェンジした「ロードスター」で世代交代を完了した。つまり新型CX-5は、新世代商品群2巡目のトップバッターなのである。

“深化”に現れたマツダのブレない姿勢

スカイアクティブテクノロジーと魂動デザインという2本柱は今回も不変だ。ゆえに正常進化、キープコンセプトと言われることが多い。インパクトという点ではC-HRのほうが上かもしれない。

しかし、それは当初から想定していたこと。旧型は新世代商品のトップバッターとして、世界的な人気車種になった。ゆえにマツダは初めてのモデルチェンジで、走る歓びの深化をコンセプトとして掲げた。「進化」ではなく「深化」としたところに、ブレない姿勢が現れている。

旧型CX-5では、ドライバーは走る歓びを堪能できたものの、同乗者にとっては乗り心地が荒かったり、室内の質感が今一歩だったり、気になる部分があった。新型はその点を改善し、同乗者にも歓びをもたらすクルマ、つまりCX-5に乗るすべての人に歓びを与えるために開発したという。

あのスポーツカーがデザインモチーフ

デザインについては「CAR AS ART」、つまり美しい、きれいと感じてもらえる形を目指したという。モチーフになったのは、2015年の東京モーターショーに展示されたコンセプトカー「RX-VISION」だった。

コンセプトカー「RX-VISION」

たしかにそう言われてみると、細いヘッドランプ、ラインに頼らないボディサイドなど、RX-VISIONに通じるところがある。次世代型ロータリーエンジンを積んだスポーツカーのコンセプトと多くの人に受け入れられた同車だったが、実は今後の魂動デザインを示す一作でもあったのだ。

RX-VISIONに通じる新型CX-5のデザイン

新世代商品のイメージカラーであり続けてきた鮮やかな赤も、「ソウルレッドプレミアムメタリック」から「ソウルレッドクリスタルメタリック」と名を変えたことで分かるように、新しい色に変わっている。

横浜で行われた試乗会に足を運ぶと、新旧の赤を並べたパネルがあった。新型のソウルレッドのほうがメリハリが明確だった。そういえば前出のRX-VISIONも、従来の赤とは微妙に違う色を選んだと言っていた。カラーも受け継いでいるのかもしれない。

インテリアはSUVらしい力強さをインパネなどに受け継ぎながら、表面をソフトなパッドで覆い、ダブルステッチを各所に施すなどして、質感を向上していた。センターコンソールを高く幅広くしつらえたのも同じ理由だという。

走りの面でも、とくにクオリティ向上に力が注がれている。具体的には静粛性と乗り心地だ。

インテリアの質感が向上

より静かに、より快適に

静粛性アップには、音源の抑制、車室内への侵入遮断、車室内吸音の3つのポイントがあるそうで、最初の項目についてはワイパー周辺のボディ形状を見直し、最後の項目では壁や天井での反射音を消すため内装素材を工夫したという。またディーゼルエンジンについては、他のマツダ車で導入しているナチュラルサウンドスムーザーという技術を投入している。

今回は運転席だけで過ごしたが、たしかにかなり静かになった。以前から輸入車に比べて静かかつ滑らかだったディーゼルエンジンはスムーズさに磨きが掛かり、ロードノイズなど、それ以外の音までひとクラス上のクルマを思わせるレベルに抑えてあった。

乗り心地対策としては、フロントサスペンションのダンパーに大型のバルブを使うとともに、リバウンドスプリングを入れている。瞬間的な動きにも滑らかに対処しつつ、大きなショックを確実に受け止めるようにしたそうだ。

加えてシートのクッションも一新。試乗会場では新旧のクッションを並べ、上からボールを落とすデモンストレーションもあって、新型のほうがすぐに弾みを抑えていた。ショックの吸収が優れている証拠だ。

これらの改良のおかげで、しっとりした乗り心地が得られるようになった。この面で定評のあるフランス車では、「シートもサスペンションの一部」という考えが一般的。新型CX-5でマツダは、日本車としては珍しく、それに近い考えを取り入れたようだ。

アクセラなどに搭載した新技術も導入

ハンドリングはまず、ステアリングのダイレクトかつスムーズな反応が印象的。ステアリングギアボックスの固定ポイントを変えるとともに、ブッシュを使わずに固定したことが効いているようだ。

続いて車体が素直に向きを変え、コーナーに入っていく。旧型のディーゼルエンジン搭載車で感じたノーズの重さは気にならなかった。

こちらはアクセラやデミオなどに続いて採用した「G-ベクタリング コントロール」、つまり路面状況や走行状況に合わせてエンジントルクを微妙に制御することで、滑らかな曲がりを実現する技術のおかげだろう。

車速追従機能付きクルーズコントロールが停止まで作動するようになり、LEDヘッドライトは対向車周辺だけロービーム、それ以外をハイビームとすることで夜間走行時の視認性を高める機構が採用されるなど、予防安全装備もレベルアップしている。

あらゆる面で深化したCX-5

数字では測れない深化の深さ

デザインが激変したわけではなく、プラットフォームやエンジンが一新したわけでもない。新型CX-5の深化は数字に表すことができない部分が多いので、伝わりにくい部分があるかもしれない。その点では斬新なスタイリングと新世代プラットフォームを採用したC-HRのほうがインパクトはある。

しかしマツダの新世代商品群はこれまでも、スカイアクティブテクノロジーや魂動デザインといった数字に表しにくいポイントを主役に据えながら、多くのユーザーから支持されてきた。美しい形と走る歓び。人の気持ちに訴えたクルマづくりが評価されたのだ。

その路線を受け継いで、深化を目指した新型CX-5。今回もまた、クルマ好きの心を揺さぶる、いいクルマに仕上がっていた。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。