【日清食品ホールディングス】国内外でM&Aで攻勢 湖池屋を買収、菓子事業を第2の柱へ

【日清食品ホールディングス】国内外でM&Aで攻勢 湖池屋を買収、菓子事業を第2の柱へ

2017.02.28

【日清食品ホールディングス】国内外でM&Aで攻勢 湖池屋を買収、菓子事業を第2の柱へ

 チキンラーメンやカップヌードルでお馴染みの即席麺メーカー、日清食品ホールディングス<2897、日清HD>。同社のM&Aと言えば、投資ファンドの敵対的買収のホワイトナイト役を演じた明星食品の子会社化が有名である。しかし即席麺の国内市場はすでに圧倒的な首位にあり、伸びしろは大きくない。成長市場である中国やロシアなど海外事業の強化や、菓子など非即席麺事業の育成を狙い、M&Aを仕掛けている。

【企業概要】世界初のインスタントラーメン開発

 2007年に亡くなった安藤百福氏が1948年に「魚介類の加工及び販売、紡績その他繊維工業、洋品雑貨の販売、図書の出版及び販売」を目的として設立した中交総社が、1958年に世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」を開発した後、日清食品に商号変更した。

 1971年には世界初のカップ麺である「カップヌードル」を発売。2005年には日本人宇宙飛行士が宇宙用インスタントラーメン「スペース・ラム」を食したことがニュースとなった。カップヌードル発売40周年にあたる2011年には累計200億食に到達するなど、インスタントラーメンはすっかり国民食として定着している。チキンラーメンを初めとするインスタントラーメンは、例えば公益社団法人発明協会が発表する「戦後日本のイノベーション100選」(http://koueki.jiii.or.jp/innovation100/)のトップ10に入るなど、日本だけでなく世界中に多大な影響を与えている。

 1963年に東京及び大阪証券取引所第二部に株式上場し、1972年に東京及び大阪証券取引所第一部に鞍替えした。2008年10月に持株会社制に移行し、日清HDは東京証券取引所第一部に上場している。

 日清HDは、創業者が掲げた4つの精神である「食足世平」(食が足りて初めて世の中が平和になる)、「食創為世」(食を創り世の為につくす)、「美健賢食」(美しく健康な体は賢い食生活から)、「食為聖職」(食の仕事は聖職である)をもとに、世の中のために食を創造することを追求し、日々クリエイティブでユニークな仕事に取り組み、グローバルな領域で、「食」を通じて世界の人々にハッピーを提供することで、グループ理念である「EARTH FOOD CREATOR」の体現を目指している(「日清食品グループ 中期経営計画2020」より抜粋)。

 日清HDの報告セグメントは、「日清食品」(日清食品における即席麺の製造販売等)、「明星食品」(明星食品における即席麺の製造販売等)、「冷温事業」(チルド食品、冷凍食品の製造販売等)、「米州地域」(北米及び南米における即席麺、冷凍食品の製造販売等)、「中国地域」(中国における即席麺、冷凍食品の製造販売等)、「その他」(菓子等の製造販売、乳製品の製造販売、不動産賃貸管理、ゴルフ場経営等)である。2016年3月期の連結売上は4,680億円、経常利益は307億円、連結従業員数は11,200人となっている。

【経営陣】 創業者一族による経営

 現在の社長である安藤宏基氏は創業者である安藤百福氏の次男である。1981年に長男である安藤宏寿氏が社長に就任するも短期間で百福氏が社長に復帰、宏基氏は1985年に37歳で社長に就任。現在69歳。副社長である安藤徳隆氏は宏基氏の長男である。

【株主構成】 創業者一族色は弱い

日清食品ホールディングスの主要株主
氏名又は名称 所有株式数(百株) 持ち株比率(%)
公益財団法人 安藤スポーツ・食文化振興財団 79,043 6.72
三菱商事 78,000 6.64
伊藤忠商事 54,000 4.59
ステート ストリート バンク アンド トラスト カンパニー 44,450 3.78
安藤インターナショナル 39,455 3.35
みずほ銀行 33,750 2.87
日本トラスティ・サービス信託銀行 30,800 2.62
三菱東京UFJ銀行 26,285 2.23
日本マスタートラスト信託銀行 25,600 2.17
小野薬品工業 24,604 2.09
435,988 37.11
2016年3月末時点、有価証券報告書に基づき作成

 2003年の有価証券報告書を確認すると創業者持分は7%弱であったが、現在の創業者持分は10%強(安藤スポーツ、安藤インターナショナル)である。そのほか、三菱商事、伊藤忠商事などの大手商社やメガバンクが大株主となっている。

【M&A戦略】 海外展開・第2の収益柱 構築狙う


日清食品ホールディングスの主なM&A
年 月      

内容

2004年4月

中国で即席麺等の製造販売を行う河北華龍麺業集団有限公司(売上393億円)の株式33.4%を200億円で買収した。

2006年12月

即席麵事業等を営む明星食品(売上788億円)の株式86.32%を公開買い付けにより319億円で買収した。その後、2007年3月末を効力発生日とする株式交換により完全子会社化している。

2008年7月

麺類、中華点心の製造販売を行うニッキーフーズ(売上145億円)の株式100%を17億円で買収した。

2009年1月

ロシア即席麺メーカー最大手企業の持株会社であるAngleside Ltd.(売上310億円)の株式14.99%を93億円で買収した。

※その後、Angleside Ltd.はMareven Food Holdings Ltd.に商号変更。

2010年12月

Mareven Food Holdings Ltd. (売上224億円)の株式10%を74億円で追加で買収した。これによりMareven Food Holdings Ltd.は持分法適用会社となった。

2011年2月

Mareven Food Holdings Ltd. (売上224億円)の株式8.51%を52億円で追加で買収した。

2012年8月

スナック菓子製造等を行う企業の持株会社であるフレンテの株式13.96%を13億円で取得した。これにより所有割合は19%となった。その後、立会外市場取引にて株式1%を買収し、所有割合は20%となり、持分法適用会社となった。

2014年1月

手延べうどんその他飲食専門店のチェーン経営を行う味の民芸フードサービス(売上51億円)の株式71.1%を飲食店経営を行うサガミチェーン(売上195億円)に9億円で譲渡した。

2014年2月

米菓及びスナック菓子の製造販売を行うぼんち(売上97億円)の株式30%を買収した。

2014年8月

インドネシアで即席麺の製造販売を行うPT INDOFOOD SUKSES MAKMUR Tbkの株式49%を5億円で買収した。これにより所有割合は98%となり、連結子会社となった。

2014年11月

フレンテの株式13.41%を追加で買収した。これにより所有割合は33.41%となった。

2014年12月

シンガポールで即席麺の製造販売を行うNissin-Universal Robina Corporationの株式24%を買収した。これにより所有割合が49%となり、持分法適用会社となった。

2015年8月

ブラジルで即席麺の製造販売を行っているNISSIN-AJINOMOTO ALIMENTOS LTDA.(味の素との合弁会社で株式50%ずつ所有:売上313億円)の株式50%を325億円で買収した。これにより所有割合が100%となり、連結子会社となった。なお、連結子会社化によりNISSIN FOODS DO BRASIL LTDA.に商号変更している。

2016年1月

ぼんち(売上99億円)の株式20.1%を追加で買収した。これにより所有割合が50.1%となり、連結子会社となった。

2016年3月

イギリスで加工食品、調理用ソース及び菓子等の製造販売を行うPremier Foods plc(売上1,500億円)の株式17.3%を買収した(買収金額は非公表)。

 上記の中でも、2006年の明星食品買収は世間を騒がせた。明星食品買収のきっかけは、米国の投資ファンドであるスティール・パートナーズが明星食品に対しいわゆる敵対的TOBを仕掛けたことに対し、日清食品がホワイトナイトとして名乗りを上げたことである。スティール・パートナーズが提示したTOB価格は1株700円であるのに対し、日清食品は1株870円のTOB価格を提示した。その結果、TOBについては日清食品に軍配が上がった。しかし、スティール・パートナーズにとっては日清食品がホワイトナイトとして名乗りを上げ、TOB価格を吊り上げたことで多額の資金を獲得する結果となった※。

 なお、2006年9月期の明星食品の売上は788億円であったが、2016年3月期の日清HDの有価証券報告書によると明星食品の売上は416億円である。2015年の売上が391億円であるので増加はしているが、買収当時から比べると売上が大幅に減少している。

中国でのM&A、活発化の公算

 上記の通り、インスタントラーメンの消費量は中国/香港(以下、中国等)が圧倒的となっている。一方、日清HDのセグメント別売上を確認すると、中国地域の売上はむしろ米州地域の売上より小さい。

 インスタントラーメンにおける中国等の消費量を考慮すると、特に中国地域の売上の増加の余地があるといえる。2016年5月に発表した中期経営計画においても、「BRICs (ブラジル、ロシア、インド、中国) を重点地域として設定」と明記しており、今後も売上の増加を目的として特に中国地域でのM&Aが活発に行われるであろう。

 また、中期経営計画によると、日清HDでは菓子・シリアル事業を第2の収益の柱へ成長させるために技術シナジーによる連携強化、海外事業展開、M&Aの活用を行うとしており、持分法適用会社も含め売上高1,000億円を目指すとしている。2012年より段階的にスナック菓子製造等を行うフレンテ(現、湖池屋)の株式を買収し所有割合を33.41%としている。2016年3月に17.3%取得したプレミアフーズ(英国)も菓子製造を行っている。

 日清HDの2017年3月期菓子・シリアル事業の売上計画は490億円、持分法適用会社である湖池屋の売上が直近の決算期で320億円ほどであるので、合計800億円ほどである。目標である1,000億円を達成するには200億円ほど必要で、短期間で売上を増加させるにはやはりM&Aが必要になるであろう。

【財務分析】 中計達成にM&Aは必須

 2016年5月に発表した中期経営計画では、2021年3月期の連結売上高5,500億円、営業利益475億円を目標としている。この目標値は国際会計基準(IFRS)であり、現在適用している日本基準に換算すると、連結売上高6,000億円、営業利益400億円である。2016年3月期の連結売上高は4,680億円であるので、2021年3月期までに連結売上高を1,320億円増加させることになる。

売上高、明星食品買収で増加

 売上は、2009年3月期に減少しているが、それ以外は順調に増加している。2009年3月期は、国内では「移り香」問題による影響、海外では円高の影響により売上が減少している。2007年、2008年に売上が大幅に増加しているが、これは明星食品をM&Aにて連結子会社としたことが要因である。2007年4月2日発表の業績修正によれば、日清単体の売上は暖冬の影響で大幅に減少したが、明星食品を連結子会社としたことで売上が382億円増加したことで、日清HDの売上は大幅に増加している。日清HDでは明星食品の買収によるシナジーを以下のように説明していたが、超短期的には自身の売上減少を明星食品が補完したという結果となった。

 上記のとおり、中期経営計画で設定した2020年3月期の連結売上高は6,000億円(日本基準)で、そのためには5年間で連結売上高を1,320億円増加させる必要がある。2015年3月期の連結売上高が4,315億円、2016年3月期は4,680億円であるので、連結売上高が365億円増加しているが、第三四半期で連結子会社化したNISSIN FOODS DO BRASIL LTDA.の影響が大きいといえる。中期経営計画を達成するためには、今後も大規模なM&Aが行われることは明らかである。

大型M&Aに対応できる潤沢な資金力

 自己資本比率は70%前後を推移しており、大幅なネットキャッシュでもあり、財務状況は非常に健全であることが分かる。2009年に有利子負債が増加しているが、2008年に買収したニッキーフーズの借入金(財務制限条項付き)の影響で増加しているものである。また、2016年3月期に有利子負債が増加しているのは自己株式取得のための資金調達(取得総額141億円)の影響であると推測される。今後も大規模なM&Aを行うための資金的余裕は十分であるといえる。

 なお、中期経営計画において、2016年3月期での時価総額5,500億円に対し、2021年3月期では「時価総額1兆円」の目標を設定している(2017年2月時点の時価総額は約7400億円)。時価総額1兆円を達成するためにも、M&Aの活用は必須であるといえる。

【株価】6000円を挟んでボックス圏に

 株価は2014年の後半にかけて大きく上昇したが、その後、6000円を挟んでボックス圏の値動きとなっている。インドネシア、シンガポールなど新興国における即席麺会社の買収、フレンテの株式の追加取得などM&Aが発生した時期は株価が堅調に推移する傾向がみられる。

 今期の予想PER(株価収益率)は29倍と、同業の東洋水産<2875>の約21倍と比べて高くなっている。カップヌードルなどの高いブランド力を背景に新興国など海外展開余地が大きいことがPERの高さにも反映しているとみられる。

【まとめ】1000億円のM&A枠、有効活用なるか

 日清HDは今までもM&Aは実施してきたが、2016年に中期経営計画で設定した2021年3月期における目標(売上6,000億円、第2の収益の柱の構築、時価総額1兆円など)を達成するためにはさらなるM&Aは必須である。日清HDは中計期間中の5年間で1000億円のM&A(事業投資)枠を設けており、その実行力が試される局面となる。


この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

文:M&A Online編集部

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

カレー沢薫の時流漂流 第43回

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

2019.05.20

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第43回は、大津の痛ましい事故で炎上した「マスコミ」問題について

滋賀県・大津市で散歩中の園児の列に軽乗用車が突っ込み、園児二名死亡、多くの負傷者を出す、という事故が起った。

池袋のプリウス事故の衝撃が冷めやらぬまま、また痛ましい事故が起ってしまった。池袋の事故では「高齢者の自動車運転問題」「上級国民疑惑」が大きく注目されたが、今回の事故では全く別のものが炎上した。

マスコミ問題である。

マスコミが保育園を追求したのは視聴者のため?

事件が起こった当日夕方、被害者の園児が通っていた「レイモンド淡海保育園」が記者会見を行ったのだが、そこで質問をした記者の血が青とか紫とかほとんど寒色系じゃないかと、大きく批判された。

記者会見が、どのような内容だったかというと「危険な場所という認識はあったのか?」「保育士が道路側にいたのか?」という、何としてでも保育園側に批があったようにしたくてたまらない質問、「園児たちの様子は普段と変わらなかったのか?」という意図のわからない質問、 「散歩したのは園に庭がないからか?」という「園に庭さえあればこんなことには…」という「ニ兆円さえあれば」に匹敵する、壮大なたられば論などが挙げられ、質問を受けた園長は号泣、それを記者がバッシャバッシャ撮影するという地獄絵図だったそうだ。

記者会見を見た多くの人が「何を食ったらそんな質問ができるんだ」と思っただろうが、この記者会見は、たまたまその場にプラスチックを食って育った選りすぐりのサイコパッシャーが大集結してしまったという、悪い意味でのアベンジャーズだったワケではないと思う。

記者が何故あのような質問をしたかというと、決して趣味ではなく、おそらく「視聴者の見たい画」「聞きたい言葉」を引き出そうとした結果なのではないか。もちろん「あんなもの見たくなかった」という人が大半だと思う。

しかし、池袋プリウス事故で加害者が即逮捕されないことが大きく批判されたことからも、現在の我々視聴者に「悪が一刻も早く、俺たちの目に見える形で処されるところが見たい」という「ニーズ」が少なからずあることが分かっているのだ。

つまり「お客様に一秒でも早く悪が吊るされる様をお届けします!」というニーズに応えようとする企業努力が、「悪くもない保育園をとりあえず悪にして即斬る」という、完全に間違った「悪・即・斬」になってしまったのではないだろうか。

「マスゴミ」問題は視聴者の問題?

しかし、「被害者側への無配慮な取材はいらん」というのも、今回の件だけではなく、視聴者側が何度も言い続けている「ニーズ」である。

何故それが無視されてこのような会見が行われるかというと、被害者の声まではいらなくても、やはり我々が平素「センセーショナル」な物を求めてしまっているからではないだろうか。よって記者たちは「とにかく刺激的なものを撮ってこい」と言われ続け、感覚がマヒし、本来配慮が必要なはずの取材にすら「センセーショナルさ第一」で臨んでしまい、まるで不倫記者会見のようなノリの質問が飛ぶことになってしまったのではないだろうか。

やはり報道というのは「視聴者が何を見たがっているか」が反映されるものだ、需要がなければ供給はなくなる。このような記者会見が行われなくするためには、何度でも我々が「こういうのはいらんのや、見んし、お前らの雑誌買わんわ」と言い続けるしかないだろう。

ところで、「質問をした記者を特定して処してやろう」という動きも当然のように起こったらしい。やはり我々の「悪を処したい」「処されるのを見たい」という気持ちは根深い物があるのだ。

ちなみに、今回の事故では当初、車を運転していた52歳と62歳の2人が逮捕された。「また高齢者か」という声も上がったが、この年齢で高齢者と呼べるかは微妙なところだ。結局「車を運転する以上誰でも事故を起こす可能性がある」ということである。

車を運転しない人は「歩道を歩いていて車が突っ込んでくるなんてどうしようもない」という被害者観点から絶望したと思うが、車を運転する人は加害者観点でも恐怖したと思う。

もちろん安全運転に越したことはないが、人間には「限界」と「不測の事態」があることでおなじみである。持病もないのに運転中に突然何らかの発作が起こる可能性だってあるのだ。「どうしようもないこと」で被害者になることもあるが、加害者になることもあるのである。

つまり、車がないと生活できない土地で、私が週一ぐらいしか外出せず、引きこもり続けているのは、近隣住民の命を守る草の根活動でもあるのだ。しかし、それは無職だからできる事業なので、多くの人が、少なからずリスクを負って車を運転しなければいけない。

そのリスクを減らすには、運転者が気をつけることはもちろんだが、何せ限界がある。つまり、人間がこれ以上、進化することなく、むしろ高齢化で退化する一方だとしたら、無機物の方を整備していくしかない。

事故が起りにくい道路作り、そして車だ。

現に、車の事故防止機能はどんどん進化しており、自動運転化の開発も進んでいるという。自動運転が本当に安全なのか不安もあるが、少なくとも老が運転するよりは確実に安全になるだろう。

しかし、今のところそういった事故防止機能がついた車を買うか否かは、任意である。そして、そのような機能がついた車は高くなる。よって私の車は金銭的問題で、タイヤとハンドルがついているぐらいであり、運転手がミスったら、そのミス通り事故を起こしてくれる、素直な仕様である。

現在でも事故防止機能のある車を購入した場合、補助がもらえることもあるようだが、導入が任意な以上、つけない人はつけないだろう。これからの車には、タイヤ、ハンドル、事故防止機能を、もう屋根ぐらい忘れても良いから義務付けるべきではないだろうか。

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トヨタが5世代目となる新型「スープラ」を発売

直列6気筒のFRで伝統を踏襲、最上級グレードに予約集中

BMWとの共同開発について気になる点を友山副社長に聞く

トヨタ自動車は新型「スープラ」(GR Supra)を発売した。先代スープラの生産終了から17年ぶりの復活だ。価格は3リッターの直列6気筒(直6)ターボエンジンを搭載する「RZ」が690万円、2リッターの直列4気筒ターボエンジンを積む「SZ-R」が590万円、同「SZ」が490万円。直6+FR(フロントエンジン・リアドライブ)という歴代モデルの伝統を踏襲した5世代目は、トヨタとBMWの共同開発で誕生した。

新型「スープラ」。ボディサイズは「RZ」で全長4,380mm、全幅1,865mm、全高1,290mm。こだわったのは「短いホイールベース(前輪と後輪の間の幅、2,470mm)」「幅広いトレッド(左右のタイヤの幅、RZでフロント1,595mm、リヤ1,590mm)」「低い重心高」の3つの基本要素だという

儲からなければ儲かるまで“カイゼン”

新型スープラはBMW「Z4」のプラットフォームとエンジンを使っている。企画とデザインはトヨタが、設計はBMWが担当した。

トヨタでは月間220台の販売台数を想定していたが、2019年3月に予約注文の受付を開始すると、新型スープラには予想を超える数のオーダーが殺到した。事前受注は約1,400台に達したという。予約注文のうち、約7割が最上級グレードのRZに集中したことも予想外だったようで、トヨタは一時的に、同グレードの予約受付をストップしていた。

増産やグレード変更などの生産調整により、現在、RZの受注は再開している。とはいえ、今からRZを注文しても、納車は2020年1月ごろになるそうだ。

「マットストームグレーメタリック」をまとった新型「スープラ」(画像)は限定車。2019年度分の24台については、6月14日までWeb限定で商談の申し込みを受け付ける。商談順は抽選となるそうだ

「モビリティカンパニー」になると宣言したトヨタが、スポーツカーのスープラを復活させる理由については、最近、テレビやラジオのコマーシャルでもしばしば耳にする「馬がクルマに置き換わっても、競走馬は残った」という言葉の通りだ。つまり、電動化や自動化でクルマの在り方が変わっていっても、単なる移動手段ではなく、所有したり乗ったりすることで、喜びを感じられる存在として残るクルマもあるので、そういった製品を作り続けたいというのがトヨタの思いである。

新型「スープラ」はトヨタとBMWが2013年に包括提携を結んでから初の商品となる。生産はマグナ・シュタイヤーに外部委託し、オーストリアのグラーツ工場で行う

とはいえ、スポーツカーは年間何万台も売れるクルマではないし、採算が取れないおそれもある。その点については、新型スープラ発表会に登壇したトヨタの友山茂樹副社長も「スポーツカーは儲からない、売れないという冷ややかな見方があることは事実」と認めるところだ。しかし同氏は、「儲からなければ儲かるようになるまで、売れなければ買ってもらえるようになるまで、歯を食いしばってでもカイゼンを続ける」ことがトヨタ本来の姿であるとし、「クルマは五感で感じるものだというDNAを次の世代に継承しなければならない」との考えを示した。

新型「スープラ」は歴代モデルと違って2シーターだ

「BMW製では?」の声に友山副社長の回答は

気になるのは、スープラがBMWとの共同開発であり、エンジンとプラットフォームというクルマの中心部分がBMW製であるという点だ。「トヨタの思いは分かるけど、結局、BMWのクルマなのでは……」という見方があるのは、おそらく間違いないだろう。

こちらがBMW「Z4」。大きな違いはスープラがクーペでZ4がオープンカーであるところだ。「Z4」の価格を見ると、3L直6エンジンを積む「M40i」が835万円、2L直4エンジンを積むエントリーモデル「sDrive20i」が566万円となっている

そのあたりについて、友山副社長が語ったところをまとめると、まず、「スポーツカーは数(販売台数)が限られる割に、開発には莫大なコストがかかるので、単独で作るのは難しい」とのこと。今回のスープラは企画とデザインがトヨタ、設計がBMWと説明しているが、クルマの開発は「そんなに簡単なものではないし、(明確に役割を)区切れるものでも」なく、企画の段階で、トヨタとしてどんなクルマを作りたいか、どんな味を出したいかといった点については徹底的に詰めたという。それに、これは多少、冗談めかした発言ではあったものの、「BMWが作ったクルマだから」という理由でスープラを購入する顧客もいるそうだ。

トヨタの友山副社長。自身は先代「スープラ」を改造して乗っていて、トヨタの役員駐車場で警備員に止められたこともあるという

スープラを「BMW製」だと見る人たちに対して友山副社長は、「どこ製ということではなく、これは『スープラ』なんです。両社のいいところを組み合わせた最高の合作、それがスープラです。乗ると分かりますが、Z4とは全然違います」とのメッセージを伝えたいそうだ。

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