合従連衡が進む自動車業界、2017年に注目すべき動きは

合従連衡が進む自動車業界、2017年に注目すべき動きは

2017.01.01

2016年は自動車業界にとって激動の1年だった。年初からトヨタ自動車がダイハツ工業の完全子会社化を発表したかと思うと、4月には三菱自動車の燃費不正問題が発覚。5月の連休明けには、日産自動車が窮地に陥った三菱自との資本提携を電撃的に発表した。さらに10月にはスズキとトヨタが提携検討を発表するなど、目まぐるしいほどの動きを示した年となった。

提携を後押しする業界のメガトレンド

その背景にあるのは、一言でいうと自動車をめぐる技術革新のメガトレンドである。それは地球温暖化対応としてエコカーに向かう「電動化技術」と、クルマの宿命的課題である安全対応、つまりは自動運転への「知能化技術」ということだ。

この技術革新で連携していくことが生き残りの道であるとして、自動車メーカーの間では合従連衡が一気に進んだのである。これにより、日本の自動車業界のメーカー構図は、“日本連合”ともいえる大トヨタグループとルノー日産連合に加わった三菱自、単独の本田技研工業(ホンダ)という乗用車3派に集約された。トラックメーカーはトヨタグループの日野自動車といすゞ自動車、独ダイムラー傘下の三菱ふそう、スウェーデン・ボルボトラック傘下のUDトラックスという具合に日本車と外資に分かれる。

2017年の自動車業界は、乗用車3派にトラック4社という構図がさらに激変する可能性がある。トヨタグループの中身の深化、孤高のホンダがどこに向かうのか、トラック4社の方向性なども気になるし、さらには半導体、電池、ITあるいは人工知能(AI)関連などとのアライアンスが活発化することも予想される。

“日本連合”ともなったトヨタグループの動きは

トヨタは先頃、2017年の世界生産・販売計画を発表したが、ダイハツと日野を含む連結対象のグループ全体の世界生産は、1,036万台と過去最高を更新するものとした。しかし、これにトヨタが出資する富士重工業(16.4%、2017年4月からスバルに社名変更)といすゞ(5.8%)、業務提携のマツダ、さらに、2017年には具体的な提携に進みそうなスズキを加えると、トヨタグループ全体の世界規模は1,800万台となり、当然のごとく世界最大となる。

スズキまで含めると1,800万台規模のトヨタグループ(画像はお台場「メガウェブ」の「ヒストリーガレージ」で撮影、歴代のトヨタ車などが展示してある)

トヨタがここまで提携先を広げたのは、豊田章男社長の言う「仲間づくり」の考え方に基づく。いわば日本連合とも言うべき仲間の輪が広がったのだ。トヨタが仲間づくりを進めるのも、電動化や自動運転といった先進技術においては、インフラも含むグローバルスタンダード(世界標準)で先手を打つ必要があるからだろう。同時に、インフラ整備やコストダウンなどでは先進技術の共有化が求められているのだ。

鈴木会長の決断が大きな動きに

2016年10月に開催された、トヨタの豊田社長とスズキの鈴木修会長による「両社提携検討」発表会見は、親子ほど歳の差がある両トップの妙な会見だった。提携は資本提携なのか業務提携なのか、具体的な提携内容も全てこれから検討というものだった。

提携の検討開始を発表する会見に登壇した豊田社長(左)と鈴木会長

ただ、先進技術の進化に対応するため、スズキがトヨタとの連携を望んで申し入れたのは確かで、スズキのカリスマである鈴木会長が、豊田社長の父君でトヨタ名誉会長の豊田章一郎氏に持ちかけたことがきっかけであることが会見で明確になった。そこに、スズキのトヨタグループ入りの決断があり、トヨタグループでのスズキの立ち位置の方向が見えてくる。

半世紀近くもスズキを率いてきた鈴木会長は、いまや世界市場で中国を凌ぐほどの成長性を獲得しつつあるインドにいち早く進出し、圧倒的なトップシェアを握るまで事業を拡大した立役者だ。国内では軽自動車に執念を燃やし、「ミスター軽自動車」とも言われる業界経営者の最長老である。

かつては米GMとの資本提携関係にあって、同氏はスズキの存在感をしっかりと保持してきた。GMがリーマンショックで米国政府の救済を受ける事態となり、同社との提携を解消した後には独フォルクスワーゲン(VW)との資本提携に動いたが、VWの覇権主義に反発し、長い国際係争の末にVWと離婚した経緯もある。

トヨタグループに入っても主体性を維持したいスズキ

鈴木会長も2017年1月30日には87歳を迎える。VWとの資本関係解消となった2015年夏には、社長の座を長男の俊宏氏に譲り、「生涯現役」を唱えながらも経営体制の移行を進めた。技術革新のメガトレンドが急進する中で、スズキの将来方向をトヨタグループ入りに決断したのも鈴木会長の経営勘であろう。2016年は軽自動車燃費データ問題もあり、全国の販売店行脚を精力的にこなしたが、2017年はトヨタとの具体的な提携の道を探ることになる。

そのカギを握るのは、鈴木会長とトヨタの『ドン』である豊田章一郎名誉会長との盟約とみる。つまり、豊田宗家の章一郎氏は、すでに表の経営から身を引いているが、トヨタにおける存在感は依然として強いものがある。両社が業務提携にとどまらず、資本提携に踏み込んだとしても、トヨタはグループにおけるスズキの主体性を尊重していくことになろう。トヨタとしても、A・Bセグメントの小型車協業や、アセアン・インドを軸とする競争基盤の確保、欧州低価格市場での相乗効果を狙い、2017年の早い時期に両社提携の内容も含めて発表に至りそうだ。

正念場を迎える八郷ホンダはどう動く

トヨタを中心とする大グループが形成された一方で、ルノー日産連合に三菱自が加わり、ゴーン流国際アライアンスの一大グループが一気にまとまった。いわば、日本連合と外資主導連合の2派に区分けされたのだ。

3年目を迎えるホンダの八郷隆弘社長はどう動くのか(画像は本田技研工業より)

これに対し、置いていかれた格好のホンダの動向が注目されている。2016年のホンダは、伊東前体制からの修正、品質問題やタカタ問題への対応に終始せざるを得なかったが、八郷体制も2017年には3年目を迎え、業績面でも北米での収益向上を主体に回復に向かう。

ホンダは、かつての英ローバーとの資本提携で痛い経験をしており、それ以来は独立路線を歩んできた。八郷社長も「自動車メーカー同士での資本提携はあまり考えていない」と発言している。だが、「技術開発はオープンマインドでやりたい」とも述べており、技術連携は積極的に進めることになる。

「NSX」を復活させるなど、ホンダらしい動きも出始めている(画像は本田技研工業より)

そこで、注目されるのは米GMとの環境技術提携の拡大だ。ホンダとGMは、燃料電池車(FCV)の技術提携を進めているが、これを広げていく可能性が高い。また、自動運転やAIでの連携には前向きであり、すでにソフトバンクとAI共同研究関係にあるが、新たに米グーグルの自動運転車部門のウェイモと共同研究を開始することも発表した。シリコンバレーでの拠点展開もあり、異業種提携への活発な動きが進みそうだ。

世界規模の覇権争い

自動車業界が、1990年代末から21世紀初頭にかけての世界大再編以来となる激動期を迎えたのがこの2016年だ。2017年はさらなる激動の予感である。

欧州ではドイツのVW、ダイムラー、BMWが、国家を挙げて技術革新の世界基準づくりを進めている。特にVWは、ディーゼル車の排ガス不正問題を受けて電気自動車(EV)への大転換を図り、これに自動運転も連動している。VWは世界最大の市場となった中国でトップシェアを持ち、中国連合のメリットをいかして復権を狙う。

ドイツは国家を挙げて世界基準を取りにいく(画像はフォルクスワーゲンのプラグインハイブリッド車「パサートGTEヴァリアント」)

フランスのルノーは、日産との連合に三菱自が加わり、日本のトヨタグループ、ドイツのVWグループ、米国のGMグループらを追う体制が整った。長期政権のゴーン氏には、さらなる拡大の野望もありそうだ。

米国は、トランプ政権への移行でその政策には不透明な部分もあるが、「強いアメリカの復活」を前面に押し出していることもあり、復活してきたGM、フォードの動きから目が離せなくなりそうだ。加えて、シリコンバレー発のIT企業群(グーグル、アップル、テスラなど)の動向を注視する必要がある。すでにグーグルは、伊フィアット主導のフィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)と自動運転で提携し、FCA製の車両で公道実験を行なっている。

復活してきた米国メーカーからも目が離せない(画像はGMジャパンが2017年にも日本に導入する予定の「シボレー カマロ」)

自動車業界にとどまらない提携・連携形成の動き

電動化と知能化という大きな先進技術革新に向けて、自動車メーカー間の提携だけにとどまらない異業種提携も活発化しそうだ。世界の自動車市場は、最大市場である中国が小型車減税を1年間延長(減税幅は半分)したことで失速リスクは軽減された。第2位市場の米国もピークアウト気配でインセンティブ(販売奨励金)上昇トレンドだが、大型車需要を主体とし、市場ボリュームは2016年の規模を維持できそうだ。インドや回復気配のアセアンなど、新興国がグローバル市場の成長を牽引することになるだろう。

一方、米国ではカリフォルニア州のゼロ・エミッション・ビークル(ZEV)規制で求められるZEV比率が厳しくなり、プラグインハイブリッド車(PHV)、EVの導入促進は同州にとどまらないトレンドともなる。このため、EVやFCVの展開に向けた電池の進化・コストダウンは自動車業界にとって喫緊の課題となる。電池メーカーとの連携は、日本や欧州に加え、中国や韓国の企業も絡んで活発化するだろう。

また、欧州のボッシュ、コンチネンタル、ZFなどのメガサプライヤーの動きからも目が離せない。日本ではデンソーやアイシン精機などのトップサプライヤーがトヨタグループとしての連動を強める一方で、技術革新の動きの中で立ち位置が変わっていく可能性もあるのだ。

いずれにしても、自動車の技術革新のメガトレンドを背景とする合従連衡は、業界の構図自体を変えてしまう可能性を秘めていることは頭に入れておかなければならない。自動車メーカーを頂点とする構図に落ち着くとは限らないわけで、IT企業が主導となることもありうるのだ。2017年の“合従連衡の動き”は、何が飛び出すかわからないという意味でも注視していくべきだろう。

SNSでバズを起こせ! メルカリ流 “違和感”マーケティング

SNSでバズを起こせ! メルカリ流 “違和感”マーケティング

2019.01.24

フリマアプリを運営するメルカリが新聞折り込みチラシを配布

なぜリアル店舗のようなチラシ広告を出したのか

理由を聞いていくなかで同社のマーケティング戦略が見えてきた

問:次のアイテムのなかから、フリマアプリ「メルカリ」で販売されたことのあるものを選びなさい。

・ダウンジャケット
・ヒト型ロボット
・トイレットペーパーの芯
・クルマ
・イヤホンの左側

おわかりいただけただろうか。答えは「すべて」である。現時点では売り切れかもしれないが、上記はすべてメルカリで販売された実績のあるアイテムだ。

さまざまな商品が売買されているメルカリとはいえ、まさか「トイレットペーパーの芯」が売られているとは、よほどのヘビーユーザーでなければ知らないのではないだろうか。

もちろん筆者も知らなかったが、2018年12月12日に配布された1枚の新聞折り込みチラシが、その事実を教えてくれた。それは、メルカリが北海道と愛知県で計192万部配布した広告チラシだ。

紙面上では、トイレットペーパーの芯やクルマがメルカリで売られていたことを紹介していたのだが、東京在住の筆者は配られたチラシを直接見たわけではない。「メルカリが新聞折り込みチラシを配布している」という意外性がSNSで話題を呼び、仕事中Twitterをいじくりまわして遊んでいた筆者の元にも情報が届いたのである。

はたして、アプリ上でサービスを展開するメルカリが、なぜリアル店舗のような折り込みチラシを配布したのだろうか。

メルカリが配布した新聞折り込みチラシの例。まるでアパレル広告のようだ
裏面には、初心者でも使えるようにアプリのマニュアルが紹介されている

「スタンダードからいかに離れるか」が、おもしろさを生む

「端的に言えば“お茶の間の会話”を増やしたいと考えたためですね」

株式会社メルカリ 執行役員 CMOの村田雅行氏は、新聞折り込みチラシを配布した理由について、そう話す。

株式会社メルカリ 執行役員 CMOの村田雅行氏

2013年7月にサービスを開始したメルカリのアプリダウンロード数は、世界合計で1億超。また、累計流通額は1兆円を超えており、全国レベルでその名を轟かせている。

「ただ、月間のユニークユーザー数は1100万程度。ダウンロード数を考えるとまだまだ伸びしろがあるはずなのです。そのため、まだ取り切れていない、シニアを中心とするユーザーを取り込むためのアプローチを実施することに決めました」

アプリの存在は知っているが、普段からメルカリを使っているわけではない。そんな、シニアをはじめとする“お茶の間ユーザー”を取り込むべく企画されたのが「新聞折り込みチラシ」だった。さまざまなマーケティングを行っている同社ではあるが、新聞折り込みチラシの配布は今回が初めて。そのため、まずはテストマーケティングとして、限られたエリアでの配布が行われた。

だが、シニアへのアプローチは何も折り込みチラシに限らない。テレビCMはもちろん、街頭配布やポスティングなど、ほかにも宣伝手法はあったはずだ。なぜ折り込みチラシにこだわったのだろうか。

「1つのコンテンツとして完結しているところがポイントでした。新聞は、自ら購読して情報を取得する非常にポジティブな媒体。毎日目にするそのコンテンツにメルカリの折り込みチラシを入れることで、“違和感”を生み出したかったのです」

また村田氏は、チラシだからこそ違和感を生み出せたのだと話す。

「今の時代、いかにSNSで話題にしてもらえるかが大事です。そのためには普通とは違うことをやらなければなりません。違和感は、多くの人が認識する“スタンダード”がなければ作れないと考えています。いかに基準から大きな振れ幅があるか。それが驚きやおもしろさにつながるのではないでしょうか。そういう意味で、折り込みチラシには基準があります。『医薬品系だったらこんなチラシ』『スーパーのチラシはこんなもの』というイメージが、多くの人のなかで醸成されているからこそ、イメージからかけ離れたクリエイティブは一層際立つはずだと、新聞の折り込みチラシを実施したのです」

例えば街頭配布であれば、コスプレをしたり、奇抜な宣伝車で商品サンプルを配ったり、アメニティを同封したりと、工夫されているものが多く、普遍的な基準のようなものが思い浮かびにくい。あえて一般的な街頭配布の例を挙げるとすれば、ポケットティッシュと答える人が多いだろうか。だが、ポケットティッシュ以外のものを配っていたら、それだけで大きな話題を呼ぶかと言えば、おそらく難しいはずだ。

つまり、スタンダードがあるからこそ、違和感を与えて記憶に残るような手法を実施できると、数あるアプローチのなかから村田氏は折り込みチラシを選んだというわけだ。

そもそも、実店舗を持たないメルカリが折り込みチラシを配布するというだけで、1つの違和感を与えられるだろう。そして「徒歩0分! スマホの中でオープン!」といった目を引く謳い文句が、違和感をますます際立たせる。

「違和感を与えるために、コピーや商品ラインアップは工夫しましたね。今回、3タイプのチラシを作成したのですが、“メルカリだからこそできるラインアップ”をあえて出すようにしました。例えば、意外性のあるものでは、トイレットペーパーの芯やクルマ。実際にメルカリで売られていたことがあるんです」

今回作成されたチラシは「ファッション」「家電」「スーパー」の3タイプ。意外性のある商品ラインアップに加えて、北海道では日本ハムファイターズのユニフォーム、愛知県では中日ドラゴンズのユニフォームなど、地域に根付いた商品も掲載しており、そのような遊び心も、SNSで話題になるために必要なのかもしれない。

家電パターンのチラシ。「徒歩0分! ~」のコピーが目立つ
「トイレットペーパーの芯」を掲載したパターンのチラシ。2つのチラシをよく見比べると、ユニフォームで使われている写真が違う。なお、北海道と愛知県を選んだ理由は、「地場新聞の影響力が強いエリア」だからだという

結果として、違和感を覚えた消費者は、Twitterにチラシの画像を投稿。狙い通り、SNSでバズらせることに成功した。

しかし、SNSで話題になっても、ターゲットにしているシニア層にはあまり関係がないのではないだろうか。

「シニアや中高年の方々でSNSをやっている人は意外と多いんですよ。積極的に発信をしている人はあまり多くないですが、情報収集として活用している人は少なくないですね」

ちなみに、肝心の折り込みチラシの効果は、「すべての数字の集計が終わっているわけではありませんが、チラシを投下したエリアでは、いい成果が出ています」とのこと。データとしても、チラシの影響を確認できたという様子だった。

攻める姿勢が生み出したもう1つの広告

今回のようなアプローチは、SNSが普及した今だからこそ可能な新しいマーケティングだ。そして、メルカリではSNSでのバズを狙った取り組みがもう1つ。2019年1月1日からスタートした『#はじメル』だ。

はじメルは、「三日坊主でもいいから、とにかく新しいことをはじめる人を応援する」というコンセプトで展開しているキャンペーン。特設サイトを開設し、1月3日には新聞の一面広告を、1月5日からはテレビCMを放送開始した。

そのなかで、一体なにがSNSで話題になったのかというと、これまたアナログな「新聞広告」である。

「一般的に1つのクリエイティブで進める新聞広告を、あえて3タイプ制作し、首都圏・東日本・西日本で分けて配布しました。3枚の新聞広告をつなげるとメルカリの『m』が浮かび上がるというデザインなのですが、1枚だけ見ても、“つなげたら何か起きそう”なデザインにすることで、それを発見した人がTwitterに思わず投稿したくなるような仕組みを作っています」

新聞広告を3枚並べると「m」の文字が浮かび上がる

思わせぶりなデザインにするという“ヒント”を提供しておき、あとは何も言わずにユーザーの反応を待つ。離れたエリアの新聞を手に入れるのは難しいので、ほかのデザインが気になった場合は、自然とオンライン上での情報収集が開始されるだろう。そうして、SNSで活発なやり取りが発生するというわけだ。

「最初はもっと控えめのデザインだったのですが、それじゃダメだと言いましたね」

穏やかな口調ではあったが、村田氏の言葉からはクリエイティブに対してのこだわりを強く感じた。

「折り込みチラシのときもそうですが、守りに入ったら企業は終わると考えているので、常に攻め続けたいと考えています」

クリエイティブに対して攻めの姿勢を崩さない村田氏。それを象徴するエピソードとして、折り込みチラシのプロジェクトのキックオフ時には、「私をクビにする覚悟で仕事をしてほしい」とメンバーに伝えたのだという。

「もちろん、ほんとうにヤバいときは止めますよ。ただ、メンバーがリスクを考えてしまうと、どうしても“置きにいく”ようなアイデアになりがちです。責任なら私が取るので、どんどん攻めてほしいというメッセージですね」

置きにいくクリエイティブでは、SNSでバズらない。メンバーが自由にアイデアを出せる環境整備こそ、尖ったクリエイティブを生み出すのに必要なことなのだろう。

2019年はメルカリの内面を伝える年に

今回、折り込みチラシと新聞一面広告で、SNSでバズらせるマーケティングを実施したメルカリ。折り込みチラシに関していえば、まだテストマーケティングが終わった段階である。今後は全国的に折り込みチラシの配布を行うのだろうか。

「明確な方針はまだ決まっていませんが、折り込みチラシについては、読み物としてお客さまから期待されるコンテンツにしていきたいと考えています」

ただし、「今日は○○が特売」「○○が新発売」といったように、新聞チラシは日々情報が更新されるから読み物として成立する。タイムリーな情報をチラシで打ち出せないメルカリは、どのようなコンテンツにしていくのだろうか。

「今回折り込みチラシで意識したことの1つに、商品をたくさん入れるという点がありました。実際にメルカリで何が売られているかまでは知らない人が意外と多いんですね。そのような人からすると、トイレットペーパーの芯が売れることは1つの発見になるでしょうし、自分の家にある家電がいくらで売れるかということも新しい発見です。そのように、ほかにも、まだまだ知られていない情報があるので、継続的にチラシをやると決まったら、もっとメルカリの内側を知ってもらう情報を提供していきたいですね」

メルカリの内側を知ってほしいと話す村田氏。実は、はじメルにも同様の意図があったという。

「メルカリを使えば『新しい趣味を始める』ことへのハードルを下げられると伝えたかったのです。例えば、ゴルフを始めようと考えたら、ゴルフクラブのセットを購入する必要がありますよね。それが仮に10万円であれば、『ちょっとやってみようかな』程度に思っている人からすると、やはりハードルは高い。しかし、メルカリを使うことで、まずゴルフクラブを5万円で買える可能性があるのです。そのうえ、5万円で売られているのであれば、それに近い金額で売却できることも意味します」

5万円でゴルフクラブを買ってみたはいいものの「あまりおもしろくないな」と感じた場合、4万5000円で売却できれば、5000円の出費でゴルフを体験できるわけだ。

「また、メルカリにはバーコード出品と呼ばれる機能があって、バーコードを読み取るだけで商品情報を自動入力してくれるんです。値段も提案してくれるので出品が楽なのですが、最近では本を買うときにまずはバーコード出品を行う人が多いようですね。ちょうど読み終わったくらいに売却できて便利なんです。期限を決めることで、読まないといけないというプレッシャーにもなりますし、2000円の本を1500円で売却できれば、500円で本が読めるわけです」

何か買うときに、メルカリでまずいくらで売れるかをチェックする。そして、使わなかったり、一度使って満足したりすると、メルカリで売却するという消費行動が増えているのだ。その結果、購入のハードルが下がるので、二次流通が一時消費を活性化させる可能性もあるだろう。

「このような使い方の訴求は、継続してやっていきたいなと。そしてゆくゆくは、メルカリをライフインフラのようにしたいですね」

村田氏は展望を語る。

「認知はすでに獲得しました。次はメルカリの内面をもっと外に出していくフェーズです」

2018年には株式を上場し、気流に乗るメルカリ。決して“置きにいかない”同社のマーケティング戦略から、次はどんなアイデアが飛び出すのだろうか。2019年も同社の尖った広告が、SNSを騒がせるかもしれない。

上場後振るわぬソフトバンク、次は「行政指導」

上場後振るわぬソフトバンク、次は「行政指導」

2019.01.24

ソフトバンクの通信障害、総務省が行政指導へ

再発防止のためのさまざまな対策立案を支持

上場前後で「運がない」ソフトバンクに求められるもの

総務省は1月23日、昨年12月に大規模な通信障害を起こしたソフトバンクに対して行政指導を行った。

通信障害は、ソフトバンクのLTEに関する交換機の不具合が原因で起こったもの。それによって同社の4G LTE網に障害が発生し、音声・データ通信ともに圏外になる、もしくはつながりにくい状態が長時間続き、大きな話題になっていた。

通信障害は12月6日の13時39分頃発生し、その後同日18時4分頃まで、4時間25分に及び、約3060万人の利用者に影響を及ぼした (ソフトバンク ニュースリリース)

総務省は今回、同社の代表取締役取締役社長執行役員兼CEOの宮内謙氏宛に「電気通信事故に関する適切な対応及び報告について」と題した文書を提出。

ソフトバンクの宮内謙代表

文書では、ソフトバンクが2018年中に同件を含めて3回の重大事故を発生させていることを挙げ、「このような事故の発生は利用者の利益を大きく阻害するもの」とし、社内外の連携体制の改善や利用者への周知内容・周知方法の改善、通信業界内での教訓の共有等の実施を勧告。さらに、それぞれの具体的措置の内容を2月末までにまとめ、報告するよう義務付けた。

携帯電話は、通話やメッセージのやり取りはもちろん、決済サービスや災害時の情報収集ツールとして、今や国民のライフラインになっている。

総務省は同文書で「事故における教訓を業界全体で共有することが重要である」ともしており、今後の再発防止策等の詳細について、ほかの携帯電話事業者に説明し、情報共有する機会を設けることも求めた。

昨年末に鳴り物入りで上場したが、なかなか株価が振るわないソフトバンク。その背景には、通信障害や「PayPay」のクレジットカードの不正利用、さらには同社が通信設備を使用している中国・ファーウェイの米中対立やCFOの逮捕などの問題などが影響していることだろう。

ソフトバンクグループは昨年11月に行われた2018年度第2四半期決算説明会で、「RPA(Robotic Process Automation)の導入により通信事業の人員を削減し、新規事業に力を入れていく」としていたが、新規事業の前に、まずは逆風吹く通信事業の早急な立て直しが求められている。