トランプ大統領就任 米国でM&Aに動きそうな企業は?

トランプ大統領就任 米国でM&Aに動きそうな企業は?

2017.01.04

トランプ大統領就任 米国でM&Aに動きそうな企業は?

 2017年1月20日、米国でドナルド・トランプ大統領が就任する。トランプ氏が掲げる大胆な減税とインフラ投資の拡大、規制緩和は米経済や企業活動を活性化させ、M&Aにも好影響を与えると予想される。米国でM&Aを検討する日本企業にとっても好機となりそうだ。






 私は金のために取引をするわけではない。金ならもう十分持っている。一生かかっても使い切れないほどだ。私は取引そのものに魅力を感じる。キャンバスの上に美しい絵をかいたり、素晴らしい詩を作ったりする人がいるが、私にとっては取引が芸術だ。

 トランプ氏は自身の著作「トランプ自伝―不動産王にビジネスを学ぶ」で取引についてこう述べている。大学卒業後、デベロッパーである父の下で働いたが、大きな取引を夢見てすぐにニューヨークに移住。マンハッタンに超高層ビル「トランプ・タワー」を建てたほか、ニュージャージー州のアトランティック・シティでカジノ経営にも乗り出し、不動産王と呼ばれた。

 派手な発言で知られるトランプ氏だが、取引を成立させる過程では、市から減税措置を引き出したり、銀行から有利な条件で資金調達したりと契約の細部にこだわりを見せていた点も見逃せない。そんなトランプ氏が大統領になれば、不動産開発や金融機関が活動しやすくなるような減税や規制緩和策が講じられる可能性が高いだろう。トランプ氏が本拠とするニューヨークを中心に地価の上昇期待も生まれそうだ。

 追い風になりそうな日本企業の1社が三菱地所<8802>だ。三菱地所は2015年1月、米国子会社であるロックフェラーグループ・インターナショナル社を通じて米国内において投資マネジメント事業を展開するTAリアルティ社を買収した。同社が組成した不動産ファンドを通じた米国での不動産投資額は10億ドル(約1050億円)に達している。

 同ファンドでは三菱地所だけでなく、第三者の投資家の資金も活用。ボストンやワシントンD.C.にあるオフィスやロサンゼルスの物流施設などに投資している。三菱地所はロックフェラーグループ・インターナショナルなどを通じて米国での不動産開発事業や投資事業を拡大していく方針だ。

三井住友・SOMPO、買収タイミングよく

 米国でインフラや不動産投資が活発になることで恩恵を受けそうなのは三井住友フィナンシャルグループ<8316>。米国向けの貸出金、出資金等の残高は2016年9月末時点で2008億ドル(約20兆円)とメガバンクでは最大規模だ。

 同グループは米国で金融事業だけでなく、リース事業も展開している。2013年に傘下の三井住友銀行が米国大手の貨車リース会社を買収。さらに2016年12月、米貨車リース会社のアメリカン・レールカー・リーシングを買収すると発表した。米著名投資家のカール・アイカーン氏が率いるファンドから2017年前半に全株を取得する。

 米国の鉄道輸送はトラック輸送等ほかの輸送手段に比べて輸送効率や環境保護の観点から存在感が高まっている。今回の買収によって三井住友グループは5万両超を保有する全米第6位の貨車リース会社となる。トランプ氏は米国内のインフラ投資拡大を予定していることから鉄道輸送の需要は堅調な伸びが期待できそうだ。 

 保険業界で注目されるのはSOMPOホールディングス<8630>。米大統領選に1ヶ月先立つ昨年10月、総額6394億円の巨額買収を発表した。米保険会社のエンデュランス・スペシャルティ・ホールディングスの全株を17年1-3月期に取得する。

 エンデュランスは米国を中心に元請け・再保険をバランス良く手がけ、特に農業保険では米国第5位の実績を持つ。買収価格は1株あたり93ドル、買収プレミアムは過去3ヶ月間の平均株価の40%に相当する。買収価格の妥当性については判断が難しいところだが、米大統領選以降は米株高・円安ドル高が急速に進んだだけに良いタイミングの買収だったと言えるのではないだろうか。

オーナー企業と好相性、ソフトバンク・日本電産など有力か 

 ところで「米国の国益を最優先」する姿勢を示すトランプ氏にとって、他国の企業が自国の資産や企業を買収することについてどう思うのかが気になるところだ。

 トランプ氏は著書「トランプ自伝」で、自身が建てたトランプ・タワーのアパート販売時に買い手として現れた外国人について以下のように語っている。

 もう一つの新しい買手グループは日本人だ。日本人が自国の経済をあれだけ成長させたことは尊敬に値するが、個人的には、彼らは非常に商売のやりにくい相手だ。まず第一に、六人、八人、多い時は十二人ものグループでやってくる。話をまとめるためには全員を説得しなければならない。二、三人ならともかく、十二人全員を納得させるのは至難のわざだ。その上、日本人はめったに笑顔を見せないし、まじめ一点張りなので取引をしていても楽しくない。幸い、金はたくさん持っているし、不動産にも興味があるようだ。

 トランプ氏は日本人がお金を持っていることに対しては一目を置きつつも、商売ではやりにくい相手と感じているようだ。サラリーマン社長が経営する一般的な日本の大企業よりは、創業者が健在なオーナー企業の方がトランプ氏と気が合うかもしれない。

 それでは今後、米国で買収に動きそうな企業はどこか。過去に米国で比較的大きなM&Aを実施した企業(計画中も含む)をピックアップしてみた。

ソフトバンクグループ  2013年7月 米携帯電話会社スプリント・ネクステルを216億ドル(約1.8兆円)で買収
日本電産  2016年8月 米エマソン・エレクトリックのモータ・ドライブ事業および発電機事業を12億ドルで取得すると発表
ダイキン工業 2012年 米国の住宅用空調メーカー、グッドマンを総額37億ドル(2960億円)で買収

2016年4月 米国のエアフィルターメーカー、フランダース社を4億3000万ドル(507億円)で買収

セブン&アイ ホールディングス 2016年5月 米国のガソリンスタンド・コンビニチェーンから79店舗を取得
日本ペイントホールディングス 2016年12月 米国の建築料塗料大手、ダン・エドワーズを2017年3月をめどに買収すると発表

 なかでもソフトバンクグループ<9984>の孫正義社長は昨年12月、ニューヨークのトランプ・タワーでトランプ氏と会談。米国に総額500億ドル(約5兆円)を投資し、5万人の雇用を生み出すと表明したと報じられた。トランプ氏は米国の雇用創出につながるような投資計画には歓迎する意向を見せている。ちなみに孫社長とセブン&アイ ホールディングス<3382>の井坂隆一社長は1957年の酉年生まれの経営者でもあり、二重の意味で注目される。

 ただ「ジャパンマネー」が相次いで米国の名門企業や優良資産の買収に動くと、トランプ氏が保護主義に傾くリスクもある。米国にとって友好的な買収かどうかという政治的意義を強調できるかどうかも買収の成否を左右しそう。日本企業トップの「トランプ詣で」も増えるかもしれない。

まとめ:M&A Online編集部


打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

2019.01.22

セブン、ローソンに続きファミマも成人誌を販売中止

インバウンドの増加、オリンピックの開催も影響か

コンビニ最大手のセブン-イレブンと業界3位のローソンが成人向け雑誌の販売中止を発表したのに続き、業界2位のファミリーマートも同様の方針を打ち出した。大手3社の足並みがそろい、日本国内のほとんどのコンビニ店頭から成人誌が消える。

国内のセブン-イレブン店舗数は2万店を超え、ローソンとファミマが1万5,000店前後でこれに続く。それぞれ今年の8月末までに取り扱いを原則中止するという。これまで一部店舗で成人誌の販売を中止していた例はあったが、今回は各社全店舗で取り扱いを中止する。業界では昨年1月から、ミニストップが他社に先駆けて全店で取り扱いを中止していた。

もともと諸外国にくらべ、女性や子どもの目につきやすいコンビニ店頭などに成人誌が置かれている日本のゾーニングの現状は特殊であるとの批判があった。また、インバウンドで訪日外国人が増え、この論調に拍車がかかっていたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、イメージ低下を防ぐ要請が強まっていたという背景がある。

コンビニでの成人誌の購買層は近年、高齢男性に偏るとともに売り上げの減少も顕著であったといい、ゾーニングの問題が取り扱い中止の大義名分になったという見方もある。ある出版関係者は、「一部では電子版などネット展開を強化している流れはあるが、今でもコンビニは重要な販路なので、相当な混乱があるだろう」と話す。どちらにせよ、日本の成人誌は岐路に立たされることになる。