一気に電動化が進展? 世界最大の自動車市場・中国はどう動くか

一気に電動化が進展? 世界最大の自動車市場・中国はどう動くか

2017.01.04

2015年の中国自動車市場は、2,460万台の新車販売となり、7年連続で世界第1位の座を獲得した。一方で、近年は1970年代の末から改革開放の政策がとられ、市場経済の導入が行われて以降の伸びに変化が見られだし、経済成長が鈍化している。そうしたなかで小型車減税が導入されたが、その撤廃や、減税率の縮小、あるいは各自動車メーカー間での新車値引き合戦など、中国市場における自動車販売を取り巻く経済情勢が揺れ動いている。

中国は世界の自動車メーカーにとって大きなポテンシャルを秘めた市場だ。画像は2015年5月に独フォルクスワーゲンが湖南省長沙で新工場を稼働した時の様子(画像はフォルクスワーゲンより)

これまで世界一の自動車市場とされてきた米国の人口約3億2,000万人に比べ、中国の人口は約13億7,000万人で、4.3倍近い市場としての潜在能力がある。また、自動車保有率も日米に比べはるかに低い水準にあり、自動車の普及や販売の伸びしろはなお大きいとみられる。こうした中国市場で、新車販売はどのような動きとなっていくのか。

日米欧とは違う独特の市場

中国の経済動向について多くの視点は、この1年でどうか、せいぜい数年でどう動くのかに目が行きがちではないだろうか。しかし世界情勢は日々動いており、なかなかコレといった方向性を明確に示すのは難しい状態にある。

そのなかで、あまり語られない視点として、中国という国の在り方にあらためて目を向けてみる時期に差し掛かっていると私は考える。すなわち、中国は、我々の住む民主主義を根幹とした自由な社会における経済活動とは異なる、共産党一党独裁による国家体制が根底にあるということだ。

中国の改革開放の政策は、あくまで共産党の独裁の下での社会主義市場経済であり、市場経済とは言っても、共産党の意向を強く反映した政策が当然のように採られる統制経済であるということである。決して、自由な市場の動きに国の経済動向を任せることはしない。象徴的なのは、株式や為替へのあからさまな介入がある。あるいは、国有企業がなお多く、鉄鋼の余剰生産なども世界に悪影響を及ぼしている。

中国国内13億7,000万人の生活や消費を、どう制御していくのか。日米欧の国や市場が常識的に考える策とはまったく別次元の政策が、今後の世界経済に影響を及ぼしていくと考えるのが適切ではないだろうか。

CO2削減に舵を切った中国

そして私が注目しているのは、中国がCOP21を批准し、2030年までにGDPあたりのCO2排出量を、2005年に比べ60~65%削減するとしたことだ。経済成長が鈍化してGDP値が下がれば、排出量の削減幅は小さくなる目標であるとはいえ、それでも、COP3以降は開発途上国の立場として、先進国がCO2削減を行うべきとしてきた中国が、世界第2位の経済大国、かつ世界最大のCO2排出国となり、自らCO2削減に乗り出した意味は大きいと考える。

つまり、今は減速傾向にあるとはいえ、経済成長を持続させながら環境問題への対応も行う先進国の仲間入りをしようとする姿勢がうかがえるのである。

それをどう実現するかについては、再生可能エネルギーの導入を、2011年の22%から、2030年には53%、2050年には86%にまで引き上げると、国家発展改革委員会能源研究所と能源基金会による「エネルギー政策のシナリオ」にある。だが、再生エネルギーの導入で先進国といえるドイツでさえ、20数パーセントに達した現段階で、コストとの兼ね合いにあえいでいる。中国の思惑は、とても現実的な将来像とは思えない。

電力供給体制の構築がEV導入の追い風に?

一方、中国には現在19基の原子力発電所が稼働しており、さらに29基が建設中だ。合わせると48基となり、日本国内の43基を超える。さらに計画中とされる数は225基にものぼり、2050年には400基にするとの調査もあるとのことだ。この数字も、どこまで信頼を置いていいかはわからないが、再生可能エネルギーの導入に比べると、現実味のある話ではあると考える。

なぜならば、それら原子力発電所の形態として、既存の軽水炉にとらわれず、高速炉、高温ガス炉、トリウム溶融塩炉など、新たな原発技術も研究開発をしているというからである。

このうち、一例としてトリウム溶融塩炉について解説すると、トリウムとは元素の周期表でウラン、プロアクチニウムに次いで重い元素であり、核分裂を起こせる可能性を持っている。そして、このトリウムが、中国には山のようにあるのである。

その理由は、中国はレアアースの95%を世界に供給しており、このレアアースはトリウムの鉱山から掘り出している。そして、レアアースを採取したあとの不要なトリウムが廃棄物として山となっているというのである。トリウムはまた、ウラン同様に放射性物質であり、その処置に手が打てていない状況だ。

そのゴミの山が、トリウム溶融塩炉の実用化によって、経済成長を支える電力のエネルギー資源、つまり宝の山に変貌を遂げるのである。

電力供給体制が整えば、EVの普及には追い風になる(画像はBMWの電気自動車「i3」)

現在、中国科学院では、何百人もの科学技術者によって、2025年までに実証を行い、2035年の事業化へ向けて開発が進められている。この計画が順調に進めば、COP21で中国が目標に掲げたCO2削減の数値が、現実味を帯びてくるのではないだろうか。しかも、処理に困っていた廃棄物のトリウムの処分が同時進行で行える。当然ながら、石油を輸入に頼る中国にとって、自国内の資源を使っての電力供給が実現できることになる。

以上の様な原子力発電への傾倒は、中国に次ぐ人口を抱えるインドも同様だ。日印による原子力協定も、そうした流れの1つといえる。巨大な人口を抱える国では、高密度なエネルギー源が、国の成長と経済の発展に不可欠だからである。

ピーク時の電力を補完するEVの使い方

もう1つ、「エネルギー政策のシナリオ」で注目されるのは、電気自動車(EV)の大量普及による電力の平準化策だ。

EVを大胆に導入することにより、EVに搭載されるバッテリーの蓄電機能を活用し、停車中のEVからの電力を他へ回すことで、ピーク時の電力供給を補完しようとするものである。こうした検証は、日本国内でも日産自動車と傘下のフォーアールエナジー社によって実施されている。そして実証実験では、確実にピーク電力を下げる成果を得ている。

日産は電気自動車をピーク時の電力供給に使う実証実験を行っている(画像は日産自動車より)

これまでの中国市場における自動車普及段階においては、EVが一気に市場に増える可能性は見えにくかったかもしれない。だが、たとえば2016年12月半ば、北京の大気汚染に対し「赤色警報」が発令された。これは2015年12月以来のことで、粒子状物質のPM2.5の値が、日本の環境基準の10倍以上に達したことで出された。

大気汚染の原因は、保有台数が増えた自動車の影響もあるだろうが、北京の西部に多くの石炭火力発電所があるためでもある。また市民が使う石炭の暖房も関わっているという。そして、スモッグが滞留する要因として、北京は三方を山に囲まれ、大気が流動しにくい地理的条件もある。山脈によって大気が流動しにくい状況は、米国カリフォルニア州のロサンゼルスも同様だ。今日の自動車排ガス規制の発端が、カリフォルニア州で起きたことは周知のことである。

ベース電源とされている石炭火力が原子力発電に入れ替わっていけば、大気汚染は大きく改善されるはずだ。さらに、そこを走る自動車がEVになれば、大きな2つの要因が解決を見る。また、原子力発電による潤沢な電力が供給されれば、暖房も電化の道を選ぶことができる。

一足飛びのEV化も視野に入れるべき

現行の中国自動車市場を先進国側から見れば、電動化はまだ先で、先進国での進捗をみながら進むだろうと考えられがちだ。だが、すでに中国ではカリフォルニア州で実施されるZEV(ゼロ・エミッション・ヴィークル)規制に相当する、NEV(ニュー・エネルギー・ヴィークル)規制を施行する動きとなっている。この規制に合致するのは、EV、プラグインハイブリッド(PHV)、燃料電池車(FCV)で、その内容はZEVと同じだ。そして2030年には、市場の40%に達する目標が立てられている。

この動きに歩調を合わせ、中国の比亜迪汽車(BYD)は、ギガファクトリーを建設し、リチウムイオンバッテリーの大量生産に乗り出す。

EV導入への動きはそのように急転直下で起きており、まさにそれは共産党の指導による統制経済だからこそ一気に先へ進ませることができるのである。

PHVで、まずはその場しのぎをするとしても、一足飛びのEV化を日本の自動車メーカーも意識していかなければ、米国はもちろん中国の市場からも取り残され、もともと市場での勢力を得られていない欧州を含め、日本車が世界に出遅れる事態となりかねない。

日本の自動車メーカーの中には、「この先まだまだハイブリッド車(HV)やPHVが市場の多くを占め、そこにはエンジンが存在する」との声が根強いが、世界最大の自動車市場の中国と米国が動けば、ほかの市場も動き、そこに消費者の意識転換が加わると、もはやエンジンへの郷愁は吹き飛ぶ可能性もあるのである。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu