“ガリバー”ヤマハの牙城を崩せるか!? トヨタとヤンマーがプレジャーボートでタッグ

“ガリバー”ヤマハの牙城を崩せるか!? トヨタとヤンマーがプレジャーボートでタッグ

2016.03.10

3月1日、トヨタとヤンマーがマリン事業分野において業務提携することを基本合意したと発表した。トヨタといえば、誰もが知る自動車産業のトップ企業。マリン事業に進出していることを意外に思う方も多いかもしれないが、1997年から市場に参入し現在に至っている。一方のヤンマーは、産業用ディーゼルエンジンの生産を主軸とし、マリン事業でも確固たる地位を築いている。

トヨタとヤンマーが提携することは、プレジャーボート市場における久々のビッグニュースだろう。過去には大衆車並みの価格設定のヤマハ「SRV」(1995年)のリリースや、ヤマハとヤンマーの共同開発によるボートの登場(2003年)など、意表を突くニュースがあったが、今回の案件はそれ以来の驚きといえる。

ボートショーでコンセプト艇を披露

両社が提携する主なステージは、プレジャーボートのハル(船体)だ。これまでトヨタはアルミ素材をハルに採用してきた。アルミ製ハルは剛性に優れ、走破性・旋回性・静粛性に分があるが、高い加工技術が必要となり生産性に難があった。そこで目をつけたのが、軽量かつ複雑な曲面形状に対応しやすいFRP(繊維強化プラスチック)素材だ。FRPの成型技術で先行するヤンマーと協業することで、「FRP・カーボン・アルミ」の複合素材を採用した「トヨタハイブリッドハル」の開発に成功。このハルを用いたプレジャーボートのコンセプト艇『TOYOTA-28 CONCEPT』を、3月3日から開催された「ジャパンインターナショナルボートショー2016」で披露した。

TOYOTA-28 CONCEPT。全長9.14m✕全幅3.16m、総トン数3.9トン、定員12名となっている
先進的なキャビン内(左)。黒い部分のエンジンはトヨタ製、グレー部分のドライブユニットはヤンマー製だ

ショー開催に先立って行われたレセプションで、トヨタ自動車 専務役員 友山茂樹氏は、「トヨタとヤンマーそれぞれの強みを生かしプレジャーボートの開発を進める。今回披露したコンセプト艇をベースに、10月に商品化したい」と話した。

驚いたのは、コンセプト艇開発の速さだ。ヤンマー 専務取締役 苅田広氏によると、「トヨタとの協業の話が出たのは、昨年のボートショーでのこと。お互いにマリン事業の夢を語り合ったことがスタートだった。斬新な内容のコンセプト艇の開発は困難だったが、異例ともいえるほどの短期間でコンセプト艇を開発できた」と、驚きを交えながら語った。 両社の協業はハルだけにとどまらない。自動車産業で培ったトヨタのエンジンや運転制御システムに、和船・プレジャーボートで長い歴史を誇るヤンマーのスクリューといったドライブユニットが融合。さらには商品開発だけでなく、販売・アフターサービスといった分野でも協業することを視野に入れている。日本のマリン産業に一大勢力が生まれた格好といってよい。

トヨタ自動車 専務役員 友山茂樹氏(左)とヤンマー 専務取締役 苅田広氏(右)
ヤマハ発動機 代表取締役 副社長執行役員 マリン事業本部長 木村隆昭氏

一方、トヨタ・ヤンマー連合を迎え撃つ日本のマリン産業の“ガリバー”、ヤマハ発動機のほうはどうだろうか。こちらは非常に堅調に推移している。2015年の売上高は前年比9.8%増加し、3,034億円となった。営業利益は前年比32%増の602億円。約20%の利益率となり、2015年までの3カ年計画で“高収益ビジネスモデル”に育て上げた。

ヤマハ発動機といえば二輪車事業がメインで、このセグメントの2015年の売上高は1兆159億円となったが、利益は318億円とマリン事業の約半分。ヤマハ発動機のマリン事業がいかに高収益かがわかるだろう。

マリン事業の本部長を務めるヤマハ発動機 代表取締役 副社長執行役員の木村隆昭氏は「今年から始まる3カ年計画においても成長を図り、2018年には売上高3,400億円、利益率20%を目指す」と目標を設定。さらに「総合事業力・信頼性・ネットワーク力をさらに磨き、世界3兆円市場で存在感を示す『グローバルNo.1ブランド』を目指したいとも語った。

ソフト面を強化することがマリン産業のカギ

一方、マリン事業のソフト面においての成果も強調する。ボートをレンタルできる会員制マリンクラブ「Sea-Style」(シースタイル)は、1997年の発足時6,800人の会員数だったが2015年には1万8,700人まで増え、のべ利用回数が2万回を超えた。また、船舶免許取得者が5年連続で伸張し、2015年は5万人を超えた。パソコンやタブレットで船舶免許取得の学習ができる「スマ免」も好評だったという。

加えて、2020年の東京オリンピックに向けて、セーリングチームを結成。オリンピック出場にチャレンジするなど、マリンスポーツの普及に尽力するとした。

係留場不足の解消などもマリンレジャー普及の重要要素だ(写真はイメージ)

確かに、円安の影響や景気回復といった要因で、国内のマリン産業が上向いている傾向にある。だが、長期的にみればレジャー人口の減少によるマリン産業の縮小が容易に予測できる。船舶免許取得者数をいかに増加させるか、個人では所有することが難しいプレジャーボートの楽しみに触れる機会をいかに増やすか……ソフト面での取り組みが重要になってくるだろう。さらに係留場不足やボートの不法放置といった問題の解消も必要だ。

今後、マリン産業が上向いていくためには、ボートメーカー、関係団体、自治体などが協業・協調して市場を盛り上げていく必要があるといえる。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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○森口将之のカーデザイン解体新書
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○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
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○カレー沢薫の時流漂流
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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu