2017年に注目すべきモバイル関連キーワードは何か

2017年に注目すべきモバイル関連キーワードは何か

2017.01.09

テクノロジーの進化は日々加速している。米国ではシリコンバレーに限らず、有名な大学がある街で研究開発を加速させるスタートアップがたくさんあり、これが大企業に買収されている。また、1つずつの要素技術を買収もしくはそれらに投資している大企業が、これらの技術を組み合わせて新しい体験を作り出す場面が多く見られる。

2017年は、より新しいものが加速的に登場し、それらを我々がどう受け入れるか、社会との間に生じた問題をどのように解決するか、といった議論が活発になると予測している。

そうした技術について、またその可能性について触れていきたい。ただし、前提として、多くの問題解決を行う窓口は、依然としてスマートフォンもしくはそこで動くアプリを中心に展開されていく点も留意しておくと良いだろう。その理由は、開発する側、利用する側の双方ともにコストが安く、展開しやすいからだ。

データ

我々は呼吸するごとに酸素を取り入れて消費し、二酸化炭素を排出している。二酸化炭素は大気の中に放たれて終わりだが、もしその呼吸に着目すれば、1分間の呼吸数や吸気と排気の時間比率という「データ」を、簡単なセンサで計測できる。

実際にこれをやっているのは、Spireというマインドフルネスと活動量を計測するデバイス企業だ。Spireは呼吸のデータを24時間計測し続けて、リアルタイムにその人の心理状態を教えてくれる。そして、その改善のためのトレーニングを行うことができる。

Spireは呼吸パターンをセンシングする世界初のウェアラブルデバイスと喧伝。Spire stoneと呼ばれる小型センサとスマートフォンを連携させることで呼吸データを取得。それをもとにリラックスした1日が送るようになるという(画像はSpireウェブサイトより)

何か物事をテクノロジー的に解決する際、重要なのはデータだ。アクティビティトラッカーはウェアラブルデバイスで中心的な存在になっているが、自分の健康については人々が知りたいデータであり、かつ企業にとっても、そのデータの解析や活用によってビジネスを作りやすい領域になっている。

多くのシリコンバレーのスタートアップは、他社が持たないデータをいかに取得し、それにどう価値を付けていくかを考えている。新しいデバイスやサービスが登場したとき、まず「どんなデータが発生し、活用されるのか」を考えると、これから起きようとすることを見つけやすいだろう。

アシスタント

Googleアシスタントに「飯田橋に行きたい」とコメントしたところマップと時間などを表示。注目したいのは画面最下部近くに「飯田橋駅について」「車では」など先回りしてくれるところだ

2016年に筆者が最も関心を持ったサービスは、Googleアシスタントだ。音声もしくはテキストでの会話形式で、我々の様々な質問や問題を解決してくれる人工知能のアシスタントで、グーグルがリリースしたPixelスマートフォンでは、誰かとユタ州のリゾートについて会話していたら、そのリゾートについて先回りして検索してくれるような賢さを持つ。 Amazon Echoは、米国で最も人気のある音声認識アシスタントだが、すでに5000を超える機能を声で行うことができるようになった。

Googleアシスタントがユニークだったのは、スマートフォンでは「声」よりも、友人とのチャットや、検索していたこと、今いる場所といった情報を活用してくれる点だ。明示的でなくても、さっと情報を用意してくれる。そんな控えめで有能なアシスタントの姿に好感を持った。

ちなみに、アップルのSiriは音声アシスタントばかりが注目され、他のアシスタントに比べてその有用性を証明できずにいるが、そこには誤解がある。

Siriは音声インターフェイスだけではなく、iPhone内のデータやユーザーの利用パターンを学習するエンジン、そして検索が含まれており、例えば電話帳に登録していない相手からの着信について、メールの検索データと照合して、差出人の名前を「もしかして」と着信時に表示してくれる。また、電話番号での通話ではなく、LINEでの通話をよくする相手には、電話帳を開いたときの通話ボタンで、自動的にLINEを利用する、といった振る舞いをしてくれる。

我々はモバイルにおいて、より多くの時間をアシスタントとの対話や、アシスタントがもたらす情報の利用に費やすことになるはずだ。そこにはコミュニケーション上のニュアンスの齟齬が生じたり、鉄道が止まったなどのトラブル時の判断にも影響してくる可能性があり、普段からアシスタントの特性を知っておく必要が出てくるだろう。

ボットとIoTが描き出す世界

日本ではTwitterで動作するボットが人気だ。好きなアーティストの発言を定期的にツイートするボットや、地震発生時などにそのデータを速報するボットなど、既に実用的な情報手段として、あるいはエンタテインメントのインタフェイスとしてその役割を果たしてくれている。

そうした有用なボットが、IoTデバイスによって、タイムラインやスマホの画面の外の世界に登場したらどうだろう。多くのIoTデバイスはセンサを持っており、アクティビティトラッカーが我々の身体データを集めるように、IoTデバイスはその場所や特定の事象のデータを蓄積している。IoTデバイスは、そうした現実世界の事象をデータ化する役割を持つ。データ化されれば、今までサーバの中で動いていたボットが現実世界の事象を扱えるようになる。

IoTデバイスも汎用化が進んでいる。例えばRaspberry Pi財団は、Raspberry Pi ZEROという5ドルの基盤型コンピュータをリリースした。これとなんらかのセンサを組み合わせれば、自宅でなんらかのデータを取り続けるセンサを1,000円以下で作っておくことができるようになる。これによって、ボットのための栄養分であるデータはさらに多く作り出され、我々はより多く、即座に世の中のことを知ることになるだろう。

ライブ

2016年のモバイルのトレンドとして注目していたのは、ライブ放送だ。これまでもPeriscopeやLiveStream、日本ではニコニコ生放送、Ustream、ツイキャスといったサービスが花開いてきたが、米国で動いたのはFacebookだった。2016年4月にFacebookは同社のSNS上でライブ配信を行うことができる仕組みを披露、発展させた。

また、Snapchatはストーリーという機能を備え、リアルタイム性の高い情報を世の中から切り取る仕組みを作り出した。Facebook傘下のInstagramは、Snapchatのストーリーとともに、Facebookのようなライブ配信を行う仕組みをアプリに入れた。

Twitterは、Periscopeを買収し、Twitterアプリ自体でライブ配信を可能にした。またアメリカンフットボールや大統領選挙など、米国で注目が集まるイベントについて、Twitterアプリ内でライブ配信を見ながらツイートができる仕組みを実現した。

2016年のソーシャルメディアでのトレンドは間違いなくライブであり、2017年はケーブルテレビ局などの大手メディアがさらに力を入れてくる分野になると考えている。

その際に期待されることは2つだ。

1つ目は、コンテンツの制作方法だ。YouTubeでのコンテンツ作りや人気チャンネル作りのテクニックは収斂しつつあるが、ライブのコンテンツ作りのノウハウが蓄積していくのはこれからだ。Vidpressoなどの企業は、ライブコンテンツをビジネス化したり、より多くのコミュニケーションを作り出すためのツールを提供し成長している。

2つ目は、ライブと他の技術との融合だ。例えばライブ放送とVRが紐付けば、多くの人がその場所に行ったかのような疑似体験ができるようになる。またライブとアシスタントの組み合わせは、映像や音声から自動的に周辺情報を提示してくれるコンテンツを作り出せるかもしれない。

セキュリティとパーソナリティ

2016年12月から、米国にビザなし渡航する際に取得するESTAに、ソーシャルメディアのアカウントを登録する欄が追加されている。もちろん現在はオプション扱いであるが、将来的には必須になる可能性もある。

国家安全保障上の措置であることは理解できるし、例えばテロリストがすんなりとこの情報を登録することはないだろうということも想像に難くない。しかしSNS情報の提出が、より安全な人物であると証明する情報の提供、つまりホワイトリスト入りのための条件になるとすれば、それはプライバシーや人権の問題として見過ごすことができない。

前述のようにSNSには、友人とのつながりや体験したこと以外にも、様々なデータが紐付けられていくことになる。同時に、どんなデータが蓄積されているのか、我々で管理することが難しくなってきている。

データの流失のリスクとともに、SNSに記録されたデータが、本人とは異なるパーソナリティを発揮することも考えられる。前述の例であれば、ちょっとおふざけで撮影したハロウィンのコスチュームの写真が、「なんらかの軍事訓練の風景」と機械的に判断されれば、事実とは異なるフラグが立ち、入国の障害になることも考えられるからだ。

これは現在見えていないが、突発的に発生する可能性があるリスクであり、2017年にこうした問題に関する議論と、その解決策に向けた動きがどのように進展するか、注視していく必要がある。

複数技術の組み合わせによる「体験」が加速する年に

人工知能や機械学習といわれても、何が起きるか、すぐに想像できる人は少ない。確かにこれまでもこれからも注目されていく技術であるが、「何に使うか」「どんな問題を解決するか」が重要であり、その技術だけがあっても何も起きないのだ。目的と、それを達成するためのデータが必要になる。

同じように、ARやVR、ロボット、IoT、センサなど、ここで挙げる様々な要素技術は、それだけあっても多くの人が何かに気づくことは難しいのだ。ただ、これらの技術を組み合わせて「体験」を作り上げることで、人々を惹きつけ、また新しい時代を感じさせることに成功する。

例えばPokemonGOは、スマホのカメラのプレビュー画面にポケモンが登場することで、実際の街を歩きながらそこポケモンがいるかのようなワクワク感を作り出した。キャラクターとゲームのルール、そしてARという表現の組み合わせによって作り出された世界観だ。

前述のSpireは、呼吸データから割り出した集中やリラックス、ストレスといった状態と、その人がいた場所(位置情報)、見たもの(写真)、会った人(スケジュール)と組み合わせて、どこが仕事に集中できるか、何を見たらリラックスできるか、誰に会ったらストレスを感じるか、といった傾向を教えてくれる。これも、呼吸データの解析とその他の情報との組み合わせによって知ることができる新しい事実だ。

また、Amazon GOは、機械学習、マシンビジョン、センサネットワークを生かして、顧客がカバンに商品を入れて店を出るだけで決済が済む店舗の仕組みを実現した。米国での生活において、スーパーのレジ待ちはいやな時間として筆者も日々経験している。それをなくしてくれるという「体験」によって、こうした技術が何の役に立つのかを知ることができる。

トレンドとなっているが、どんな役に立つのか分からない技術は、実際、体験して初めて、その技術の有用性に気づくことができるのだ。

2017年は、技術の成熟によって、こうした技術の「体験化」が加速していく1年になると予測している。2016年よりも、技術に驚かされ、その意義を実感できる瞬間が増えていくことに期待している。

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

2019.03.20

モバイル業界を変える「携帯値下げ議論」が過熱

ファーウェイは日本を取り巻く環境を「歴史的チャンス」と発言

コスパ高いミッドレンジ端末でシェア拡大を目指す

20日、NTTドコモが特定の端末の購入を条件に通信料金を割り引く「docomo with」、購入する端末に応じて通信料金を割り引く「月々サポート」を終了する方針を固めたという報道が話題となっている。

国内のモバイル業界では携帯電話料金見直しが進んでおり、3月5日には総務省が中心に進めてきた端末代金と通信料金の分離が閣議決定された。NTTドコモは分離プランを軸とした新料金プランを4月に発表する見込みだ。

日本のモバイル市場を大きく変えるこの動きを「歴史的チャンス」と見ているのがファーウェイだ。2018年末から米中対立が加速する中、ファーウェイが打ち出すメッセージも語気を強めている。果たして日本市場でシェアを拡大できるのだろうか。

逆風吹けども、依然として業績は好調

今年に入り、ファーウェイの周辺が騒がしい。3月7日には、ファーウェイは米国政府を相手取って訴訟を起こした

さらにその内容をFacebookでライブ配信するなど、米国以外の世界市場に向けたメッセージにもしており、そのメッセージをまとめたウェブサイト「Huawei Facts」は、わざわざ日本語版も用意している。

2018年末から続く米中対立を巡る報道は、ファーウェイの業績にどのような影響を与えたのか。MWC19でインタビューに応じたファーウェイ・ジャパンの呉波氏は、「一部の消費者は影響を受けたが、2019年に入ってから売上は大幅に伸びている」と語った。

ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波(ゴ・ハ)氏

話題の「折りたたみスマホ」でもファーウェイは先行する。

ファーウェイに先立って折り畳みスマホを発表したサムスンだが、こちらはMWCではガラスケース内での「展示」のみにとどまったのに対し、ファーウェイは「Mate X」の実機を用いて報道関係者に折り曲げを試させるなど、製品化で一歩先を行っていることをアピールした。

ファーウェイの折りたたみスマホ「Mate X」。報道陣には手に取って折り曲げてみる機会も用意された

Mate Xは次世代移動通信の「5G」にも対応しており、日本では5Gサービスの開始を待って投入時期を見極める方針だという。

ちなみに3月26日に発表予定のフラグシップ機「HUAWEI P30」シリーズは、例年通りのタイミングで日本市場に投入するようだ。SIMフリーでの発売だけでなく、ドコモが採用した「HUAWEI P20 Pro」のように大手キャリアによる採用があるかどうかも注目したい。

分離プランを「歴史的チャンス」と捉えるワケ

一方、2019年の国内モバイル市場で話題となっているのが携帯料金における「分離プラン」の導入だ。KDDIとソフトバンクはすでに導入済みだが、NTTドコモは4月に発表する新料金プランから本格導入するとみられている。

分離プランの特徴は、NTTドコモの「月々サポート」のように回線契約と紐付けた端末の割引が禁止される点だ。端末の割引自体が禁止されるわけではないというものの、大幅な割引は難しくなる。その結果、10万円を超えるようなハイエンド機ではなく、3〜4万円で一括購入しやすいミッドレンジ機の需要が高まるとの見方が有力だ。

この動きをファーウェイはどう見ているのか。

呉氏は「非常に重要視している。スマホが登場したときや、SIMフリー市場が始まったときのインパクトに引けを取らない、歴史的な瞬間になる」と興奮気味に語る。

日本のSIMフリー市場でベストセラーとなった「HUAWEI P20 lite」を始め、ファーウェイのミッドレンジ機のラインアップは厚い。モデルによってはフラグシップと同じCPUでミッドハイの価格を実現するなど、コスパの高さも特徴だ。大手キャリア向けにさまざまな提案ができる体制といえる。

フラグシップと同じ「Kirin 980」搭載でミッドハイ価格の「HONOR View 20」

また、5G対応も順調だ。

モバイルWi-Fiルーターに強みを持つファーウェイは、MWC19でも5G対応ルーターを多く出展していた。日本ではまだ周波数の割り当てが終わっていないものの、国内大手キャリアは2019年内にもプレサービスを始める動きがある。5Gスマホが普及するまでの間、5Gルーターの需要は高まる可能性がある。

5G対応のモバイルWi-Fiルーターも出展していた

ミッドレンジ市場の拡大を狙って、今年はシャープやサムスン以外にも、ソニーモバイルの参入も予想されている。

この価格帯が激戦区になることは間違いないが、ファーウェイはその中で高コスパの製品ラインアップや、国内での地道な販促活動やブランドメッセージの打ち出しによって対抗していく構えだ。

ヨドバシカメラ梅田店での販促イベントの様子
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2019.03.20

Googleが新しいゲームプラットフォームを発表

配信方式でゲーム機不要、「ゲーム機」の時代の終焉?

2019年内にローンチ、性能はプレステやXbox以上か

3月19日、米国で開催中のゲーム開発者会議「GDC 2019」の会場で、Googleがクラウドベースのゲーミングプラットフォーム「STADIA」を発表した。特定のゲーム機に縛られず、ネットに接続したスマホやパソコン、テレビを通してストリーミング(配信)形式でゲームをプレイできる。

この事業を担当するバイスプレジデントとして、STADIAを発表するフィル・ハリソン(Phil Harrison)氏。そもそも彼からして、元はソニーのプレイステーション立ち上げの主要メンバーで、その後Microsoftに移りXboxを担当したという経歴の持ち主

かねてより、MicrosoftのXbox事業のトップマネージャーを引き抜いた、ソニーでPlayStationのハード開発にかかわったエンジニアが転職したといった噂が頻繁に流れており、「Googleがゲーム市場に本格参入する」という憶測は強まっていた。実際に2018年には、Googleは「Project Stream」と呼ばれるストリーミング形式のゲーム基盤の計画を発表し、米国内でベータテスターを募って技術テストを行っていた。

STADIAは、Project Streamの延長線上にあるサービスと見られる。ユーザーは特定のゲーム機を持っている必要がなく、従来のゲーム機の役割をするのはGoogleの設置するデータセンターだ。簡単に言えばクラウドサービスのように、実際にゲームタイトルが動作しているのはデータセンター側で、ユーザーはインターネットを介してゲームを遠隔でプレイする。

STADIAのデータセンターから配信されたゲームをパソコンでプレイしている様子
パソコンで遊んでいたのと同じゲームを、タブレットやテレビでも同じように遊ぶことができる

このプラットフォームの特徴によって、例えばYouTubeで新作ゲームのトレーラー動画を見ていて気に入ったときには、そのページ内の「プレイする」ボタンを押すだけで、インストールすら不要で、動画を再生するかのようにそのゲームをプレイできるようになる。

そして、STADIAのデータセンターが持つゲーム機としてスペックは、サービス開始時のものとして、GPUの演算性能は10.7テラFlopsに達するといい、これはPlayStation 4 Proの4.2テラFlopsや、Xbox One Xの6.0テラFlopsを大きく上回る。映像品質も4K/60fpsのストリーミングに対応し、将来は8K/120fps対応も予定しているという。

STADIA用の「STADIAコントローラー」も販売する。SNSアップ用のボタンや、Googleアシスタントボタンが備わっている

Googleは2019年中にSTADIAをローンチする予定で、まずは米国、カナダ、欧州でサービスを開始すると説明している。発表を受けた翌20日の東京株式市場では、任天堂とソニーの株価が揃って大きく下落した。投資家たちが、GoogleのSTADIAによって、Nintendo SwitchやPlayStationのビジネスが脅かされると考えたからだ。

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