家電見本市「CES」で車が主役に? 見えてきた自動運転の次のトレンド

家電見本市「CES」で車が主役に? 見えてきた自動運転の次のトレンド

2017.01.10

毎年1月初めに米国ラスベガスで開催されるCES。コンシューマー・エレクトロニクス・ショーの名称で分かるように、本来は家電製品が主役だが、近年は自動車の姿が目立つ。なぜCESにクルマが出るようになったのか。今年のトレンドは何か。現地で感じたことを報告しよう。

CESに自動車関連産業が集まる理由とは

自動車の電化が加速

世界でもっとも早く始まる展示会のひとつであるCES。米国でも日本でも「セス」と呼ばれるこの3文字を、最近になって目にした人もいるかもしれないが、実は今年で50周年を迎える歴史のあるイベントだ。

ただし、家電という広い範囲を対象にしたショーなので、時代によってトレンドが変わってきた。当初はテレビやレコードプレーヤーなどが中心だったが、1970年代になるとビデオデッキが登場し、1980年代には携帯電話が姿を現した。そして1990年代にはパソコンが登場。アナログからデジタルへと主流が移ってきたという流れだ。

ところが2010年代に入ると、自動車が目立つようになってきた。自動車と言えば、ガソリンや軽油を燃料とするエンジンで走る乗り物であり、家電とは言えない。それがこの数年で勢力を伸ばしてきた理由のひとつは、いろいろな部分で電化が進んでいるからだろう。

人とクルマの新たな関係性にも対応

自動車は以前から電気のお世話になってきた。ヘッドライトやワイパーなどは、電装系と呼ばれて欠かすことのできないパーツだ。それなのに、こういった電装品がCESに登場することはほとんどなかった。

自動車業界は国内外を問わず典型的なピラミッド構造で、メーカーが頂点におり、その下にサプライヤーがいくつも層を成しているという産業構造だった。電装品を作る会社もサプライヤーの1社。走りに直接関係しないヘッドライトやワイパーは、付属品という意識があった。

しかしそれが、21世紀を迎えて一変する。電気自動車に自動運転車と、クルマの基本的な走りの部分にまで電気が関わるようになってきたからだ。さらにコネクテッドカーやシェアモビリティなど、デジタル技術の進化によって、これまでにない人とクルマの付き合い方が生まれてもいる。

CESに集まる自動車メーカーに共通する危機感

しかも電気自動車も自動運転車も、火付け役は既存の自動車メーカーではない。人々の目を電気自動車に向けるきっかけを作ったのはテスラ・モーターズだし、自動運転はグーグルが研究開発中であることを表明して一気に火が付いた。どちらも米国の、クルマ作りに関わってこなかった新興勢力だ。

黒船襲来。多くの自動車メーカーはそう思ったことだろう。このままでは業界を乗っ取られてしまうかもしれない。そんな危機感から、既存のメーカーも電気自動車や自動運転車の研究開発に取り組み、その成果をCESで見せるようになったのだと思っている。

自動車メーカーの存在感が増しつつあるCES会場

自動運転の次のトレンドは?

では2017年のCESはどうか。以前から参加している家電メーカーの関係者に聞くと、自動車メーカーの存在感は以前にも増して大きくなっているようだ。しかし近年のトレンドだった自動運転車は、影が薄くなっているという印象を受けた。

理由はいくつかある。今や多くの自動車メーカーが自動運転の研究開発を行なっており、法規や保険などの整備に課題が移りつつあることが1つ。そして、2016年5月にテスラ・モーターズの車両を運転するドライバーが米国で自動運転中に死亡事故を起こしたことで、各国政府が過剰な宣伝競争に歯止めを掛けたことも関係しているようだ。

あるいは、2015年にはシリコンバレーからラスベガスまでを自動運転で走破するなど、メーカーの中でも挑戦的なアピールをしていたアウディが、おそらくはフォルクスワーゲン(VW)グループのディーゼル車排出ガス不正事件の影響で、単独出展を見合わせたことも効いているのかもしれない。

加えて、自動運転の火付け役であるグーグルが最近、自らが開発してきた自動運転技術をウェイモ(Waymo)と呼ばれる新会社に移行させ、どうやら自分自身では車両を作らず、自動車メーカーとのジョイントという方向に舵を切ったことも影響しているのだろう。

各社がコネクテッドのコンセプトカーを展示

代わりに目立っていたのがコネクテッドカー、つまりはインターネットを介してドライバーや他車とつながるクルマだ。今回は地元フィアット・クライスラー・オートモビルズ(FCA)のクライスラー・ブランドとトヨタ自動車、本田技研工業、BMWが、世界初公開のコンセプトカーをお披露目した。

トヨタのコンセプトカー「TOYOTA Concept-愛i(コンセプト・アイ)」(画像左側)とホンダの「Honda NeuV(ニューヴィー)」
クライスラーの「ポータル(Chrysler Portal Concept)」(画像左側)とBMWのコンセプトカー

それだけではない。パナソニックやボッシュなどのサプライヤーも、コネクテッドカーのコンセプトを展示していた。前述したように、彼らは自動車メーカーよりも電気の経験が豊富である。加えてCESは自動車業界のイベントではないので、上下関係を気にせず済みそうだ。こうした立場が、独自のコンセプト展示に結び付いたようだ。

ただ難しいのは、自動運転車はステアリングを取り去ればそれと分かるけれど、コネクテッドカーはそういう表現ができないことだ。ディスプレイを並べるだけなら、現在の車両も実践している。どんな情報を提供し、どんな移動を実現するか。つまり、コネクテッドカーでは「モノ」ではなく「コト」が重要なのだ。

いくつかの自動車メーカーや家電メーカーは、既存の車種にコネクテッド機能を盛り込んだ車両を展示していたが、写真で見ると市販車とほとんど変わらず、分かりにくい。コネクテッドカーに大切なのは「見える化」だと実感した。だから前述の車種に好感を抱いたのだ。

話題を集めたのは意外なクルマ

しかし今回のCESでもっとも話題を集めたのは、残念ながらこのどれでもなかった。地元ラスベガスに工場を持つことになったシリコンバレー生まれのベンチャー企業、ファラデー・フューチャーが持ち込んだナインワン(FF91)という市販電気自動車だ。

主役の座を奪った観のあるファラデー・フューチャーのナインワン

驚くべきはその性能で、最高出力1,050psを豪語し、時速60マイル(約96キロ)までの加速はわずか2.39秒で走り切る。世界最速の加速力を持つ市販車だ。自動運転やコネクテッドにも対応している。それが創業わずか3年のベンチャー企業から生み出されたのだ。

欧州の老舗メーカーに注目が集まりがちなモーターショーであれば、ナインワンはイロモノ扱いされたかもしれない。しかしここは、米国の次世代技術発表の場。ファラデー・フューチャーのような新興勢力が正当な評価を得る場として、CESは申し分のない舞台だと思っている。来年以降も自動車業界に一石を投じるようなモデルが登場することだろう。

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

関連記事
スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

関連記事