IoT普及のカギを握る「LPWA」、2017年は利用広まるか

IoT普及のカギを握る「LPWA」、2017年は利用広まるか

2017.01.12

NB-IoTやLoRaWAN、SIGFOXなど、LPWA(Low Power Wide Area Network)と呼ばれるIoT向けの通信規格導入に向けた動きが相次いでいる。IoT人気の高まりとともに広まるLPWAだが、なぜ今、LPWAが求められるようになったのだろうか。そして2017年、LPWAはどこまで広がると考えられるだろうか。

IoTに適した通信規格の本格導入が相次ぐ

ここ1、2年のうちにIT業界を大きくにぎわせている「IoT」(Internet of Things、モノのインターネット)。あらゆるモノがインターネットに接続することにより、新しい価値が生み出されるという期待感から、IoTが急速に注目を集めるようになったのである。

2016年もIoTに関しては、非常に多くの取り組みがなされていた。中でも最も大きな動きといえるのが、ソフトバンクグループが7月に、半導体設計大手の英ARMを、約3.3兆円もの巨額で買収したことだ。ARMはスマートフォンなどに搭載されているCPUの設計を手掛けており、省電力性に優れていることから、IoT時代の到来によって、より多くのデバイスに採用されることが期待されている。ソフトバンクグループはARMの買収によって、注力分野の1つであるIoTへの取り組みを拡大する狙いがあるようだ。

ソフトバンクグループが英ARMを約3.3兆円で買収したことは、IoTの注目を高める大きな出来事の1つとなった

だが今年、IoT関連で盛り上がりを見せたのは半導体やデバイスだけではない。IoTの「I」の部分、つまりインターネットに接続するネットワークに関しても、大きな動きが相次いで起きている。

そのことを象徴するのがLPWA(Low Power Wide Area Network)の盛り上がりだ。IoT関連のデバイスは、インターネットに接続するといっても、実際にやり取りするデータの量はスマートフォンなどと比べると圧倒的に少ないことがほとんどだ。特に法人向けに関して言うならば、1日1~数回、レポートをテキストで送付するだけで十分というケースも多い。 ゆえにIoTでは、広いエリアで利用できることは重要であるものの、LTE-Advancedのような高速・大容量通信はあまり求められない。もっと低速でいいので、一度に多くの機器を接続でき、よりローコストであること。そしてメンテナンスを減らすため、バッテリーで数年間は動作させられる省電力性を備えることなどが、重視されているのだ。

IoTには速度はあまり求められず、コストが安いことや消費電力が少ないこと、それでいて広いエリアで利用できることが求められる

そうしたIoTに適した「LPWA」と呼ばれる通信規格が、ここ数年のうちに相次いで提唱されてきた。そして今年、LPWAの本格導入に向けた動きが急拡大したことから、大きな注目を集めたわけだ。

大手からベンチャーまで、幅広い企業が導入するLPWA

LPWAの代表的な通信規格の1つとして挙げられるのが「NB-IoT」である。NB-IoTは、既存の携帯電話キャリアが展開するLTEを、IoT向けに低速だが低コスト・省電力で提供できるようにしたもので、2016年に標準化が完了したばかりの規格でもある。

NB-IoTはあくまでLTEの延長線上にあるため、既存の携帯電話キャリアが導入しやすい方式でもあり、採用するのも大手キャリアが主だ。実際、日本でもNTTドコモやKDDI、ソフトバンクがNB-IoTの導入に向けさまざまな取り組みを進めている。

例えばソフトバンクは、2016年11月にNB-IoTの屋外実証実験を実施。NB-IoTのモジュールを搭載したセンサーを駐車場に設置し、駐車状況や課金などを管理する「スマートパーキング」のデモを報道陣に公開している。

ソフトバンクは11月24日にNB-IoTの実証実験を公開したが、トライアルに用いたNB-IoTの通信モジュールは非常に小さく、5ドル程度の価格での提供が予定されているとのこと

だが、LPWAの通信規格はNB-IoTだけではない。LTEのインフラを持たない企業が、他の通信規格を用いてIoT向けのネットワークを提供しようという動きも、2016年にはいくつか起きている。

そのうちの1つが「SIGFOX」である。SIGFOXは、フランスのシグフォックス社が2012年より提供するLPWAの草分け的存在であり、免許不要で利用できる920MHz帯を活用して低価格・省電力で、なおかつ広いエリアをカバーするネットワークを提供するというものだ。

そして2016年11月には、京セラコミュニケーションシステムが日本で独占契約を結び、SIGFOXのネットワークを同社が日本で展開することを発表している。同社はMVNOとして法人向けに通信サービスも提供しているほか、企業向けのICTソリューションなども提供している。そうしたノウハウを生かしてSIGFOXのネットワークを展開し、IoT機器への導入を進めるとしている。

京セラコミュニケーションシステムは11月にシグフォックスと提携し、SIGFOXのネットワークを日本で独占提供することを発表している

もう1つ、LPWAの通信規格として注目されているのが、2015年より展開されている「LoRaWAN」だ。LoRaWANもSIGFOXと同様、920MHz帯を用いて広いエリアをカバーするIoT向けの通信規格だが、SIGFOXはシグフォックスが独占提供しているのに対し、LoRaWANは複数企業が参加して立ち上げた「LoRaアライアンス」が提唱する通信規格であるため、オープン性が高く多くの企業が導入しやすいのが特徴となっている。

それゆえLoRaWANを展開する企業は比較的幅が広い。例えばMVNOとしてIoT向けの無線ネットワークを手掛けるベンチャー企業のソラコムが、今年LoRaWANを展開するM2B通信企画という企業に出資してLoRaWANの展開に力を入れている。また固定通信のNTT西日本もLoRaWANの実証実験を進めており、規模を問わず多くの企業がLoRaWANを導入、あるいは導入に向けた準備を進めているようだ。

LPWAの通信規格は共存する?

2016年にLPWAの各通信規格の導入が打ち出されたことから、2017年にはいよいよ、本格的にそれらの通信規格によるインフラが実際に整備され、市場にもLPWAを用いた製品が徐々に出回っていくものと考えられる。

NB-IoT、SIGFOX、LoRaWANと複数の通信規格が急速に立ち上がったことから、各通信規格同士の争いが激しくなるようにも見えるが、実はそうとは限らない。それぞれの通信規格には特長や得意分野が存在するため、ネットワークを提供する企業の側は、むしろ複数の通信方式を使い分けようという考えが強いようだ。

特に通信キャリアは、あくまでNB-IoTを主体としてIoT向けのネットワークを提供するとしているものの、LoRaWANやSIGFOXなども場面に応じて活用していく方針を打ち出している。実際ソフトバンクは、NB-IoTと同時にLoRaWANのソリューション提供にも力を入れるとしており、双方を連携したIoT向けネットワークを提供する考えも示している。またKDDIは、京セラコミュニケーションシステムがSIGFOXの提供を発表した際、そのエコシステムパートナーとして参加し、さらにSIGFOXの活用を協業によって積極推進するとのコメントを寄せている。

一方で、ソラコムや京セラコミュニケーションシステムなど、NB-IoT以外のLPWA規格を採用する企業も、MVNOとしてキャリアからのネットワークを利用し、IoT向けにサービスを提供する動きは今後も継続するものと考えられる。特にカバーエリアに強みを持つNB-IoTがMVNOでも利用できるとなれば、LoRaWANなどだけでなく、NB-IoTを積極活用してサービスやソリューションを提供したいというMVNOは、むしろ増えていく可能性が高いだろう。

IoTが大きな注目を集めたとはいえ、IoTの機器やサービスの本格展開は、まだこれからという企業がほとんどというのが正直なところだ。それだけに2017年、IoT向けのネットワーク利用が爆発的に広まるとは考えにくい。当面は利用が拡大する将来を見越して、まずはサービスを確実に立ち上げ、着実にユーザー獲得を進めるなど足元をしっかり固めていくことが、ネットワークを提供する各社には求められるところだ。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

ご愛顧いただいた読者の皆様、また関係者の皆様に、編集部一同、誠に感謝いたします。

なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

○安東弘樹のクルマ向上委員会!
https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
https://news.mynavi.jp/series/autonomous_car

○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
https://news.mynavi.jp/series/shiwakenin

○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
https://news.mynavi.jp/series/itbiz

○山下洋一のfilm@11
https://news.mynavi.jp/series/filmat11

○モノのデザイン
https://news.mynavi.jp/series/designofthings

○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
https://news.mynavi.jp/series/mobile_business

○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu