増税で逆風の軽自動車市場、復調のチャンスは意外なところに?

増税で逆風の軽自動車市場、復調のチャンスは意外なところに?

2017.01.17

日本独自の車格である軽自動車。お国柄や時代背景にもマッチして日本ではシェアを拡大してきたが、一方で“ガラパゴス化”を指摘されることもある特殊なクルマだ。そんな軽自動車だが、ここ数年で販売台数が著しく落ち込むなど、勢いに陰りが見える。軽自動車税の増税が響いているのは確かだが、変調の要因は他にもありそう。復調への道筋を見出すことはできるのだろうか。

2017年は盛り返せるか

軽自動車の販売台数は減少を続けている。全国軽自動車協会連合会(全軽自協)のデータによると、2016年4~9月の新車販売台数は75万9,970台で、全年同期の90.2%となっている。2014年4~9月は100万4,985台と100万台を超えていたから、2年間で約4分の3に減少してしまったことが分かる。

ちなみに、軽自動車以外の自動車(登録車)のデータを出している日本自動車販売協会連合会の数字と比べて、4~9月の軽自動車のシェアを出してみると、2014年から順に40%、36%、33%と、確かに下がり続けている。

金額以上のインパクトがあった増税

2015年4月に軽自動車税が年間7,200円から1万800円に上がったことは、確かに響いているようだ。増税幅は3,600円であり、1,000cc以下の登録車の2万9,500円と比べればまだ2万円近い開きがあるので、ここまで減らなくてもいいと思うかもしれないが、それ以前に「増税」の2文字に冷静さを失い、増税前に駆け込み購入したユーザーが多いようだ。

主力車種のモデルチェンジが2015年以降なかったことも、販売が落ち込んだ理由に数えられるだろう。自社開発の乗用車に限ると、モデルチェンジしたのはスズキの「アルトラパン」と「エブリイワゴン」、新型車はダイハツ工業の「キャスト」、「ムーヴキャンバス」と本田技研工業の「S660」となっている。

ここ最近は新顔の登場が少なかった軽自動車業界だが、ダイハツ「ムーヴキャンバス」はニッチな商品戦略も含めて注目を集めた

今年はダイハツ「ミラ」やスズキ「ワゴンR」、ホンダ「N-BOX」のモデルチェンジが予定されている。これら新型の登場を待って買い替えを考えるユーザーもいるはずだ。ただ、軽自動車の販売を予想するうえで、気になる状況があるのも事実。人口減少と大都市への集中だ。

都市部と地方で異なる軽自動車の普及率

地方へ行けば、軽自動車は1人1台という感覚で買われ、使われているが、人が減れば当然クルマの数は減るわけだし、そもそも大都市では軽自動車の比率が低い。

全軽自協のデータには、都道府県別保有シェアという項目もある。2016年3月現在の数字を見ると、沖縄県や高知県ではシェアが55%以上に達しているのに対し、東京都と神奈川県では逆に20%台に留まっているなど、大都市と地方で普及率に大差がある。

東京は公共交通が発達しているし、駐車場代が高いので、1人1台という状況は難しい。長距離移動を含め、あらゆる用途に使える車種を選ぶことになり、結果として軽自動車を選ぶ人が少なくなるのではないかと分析している。

また政府では、現在排気量に応じて課税している自動車税を見直す考えで、燃費・環境性能を考慮した課税が有力視されている。これが実現すれば、現在は登録車に比べて税率が格段に低い軽自動車が増税になるかもしれない。

高速道路の制限速度引き上げで小型車が有利に?

もうひとつ、高速道路の制限速度引き上げも関係するのではないかと思っている。警察庁が発表した、現在は時速100キロの制限速度を段階的に同120キロに引き上げるという方針だ。すでに2016年10月から、東北自動車道と新東名高速道路のいずれも一部で、試験的に110キロへの引き上げを実施している。

この引き上げには軽自動車も含まれるが、筆者の経験では、時速120キロで長時間を楽に走り続ける余裕を持つ軽自動車は限られている。その点を考慮して、120キロまで楽に出せる小型車に乗り換える人が出てくるのではないかと考えている。

それを見越してか2015年以降、軽自動車の2大ブランドであるスズキとダイハツでは、登録車の新型車やモデルチェンジが目立つ。具体的にいうと、スズキは「SX4Sクロス」、「エスクード」、「イグニス」、「バレーノ」と実に4車種をリリースしており、ダイハツはトヨタにOEM供給も行う「ブーン」、「トール」を送り出している。

ダイハツ「トール」はスズキ「ソリオ」とシェア争いを繰り広げるトールワゴン。ダイハツからOEM供給を受けるトヨタは、「タンク/ルーミー」の車名で同車を販売している

時代に合わせて変化してきた軽自動車、今後の展望は

軽自動車は敗戦直後で日々を生きるのも大変な状況のなか、できるだけ安価な移動手段が欲しいという国民の声に応えて、1949年に生まれた規格だ。当時は欧州などで普及している超小型モビリティに近いカテゴリーだった。

ところがその後、高速道路が日本でも開通すると、軽自動車も当然のように高速道路を走りはじめた。つまり超小型モビリティとは異なる規格としての歩みを始めた。

一方で1970年代以降は、排出ガス規制や安全対策への対応を迫られることになり、その過程でボディサイズやエンジンの拡大が許された。この結果、1970年代当時には全長3メートル、全幅1.3メートル、排気量360cc以下だった規格は、現在はそれぞれ3.4メートル、1.48メートル、660ccまで拡大され、エンジンについてはターボ付きも用意されている。

おかげで今の軽自動車は、時速100キロ巡航であれば苦もなくできる性能は持ち合わせている。しかし、その過程で最高出力が50年前の約2倍になっていることは、一部の人にとっては不公平税制と映っているかもしれない。

こうした声が2015年の税金の引き上げにつながったのだが、一部の高速道路における制限速度の引き上げに合わせて、税制改定なしでボディサイズや排気量の拡大要望が受け入れられる可能性は低そうだ。それよりも、政府が考えている自動車税の抜本的見直しのほうが筋は通っているように思える。個人的には超小型モビリティに近いクラスと、登録車のコンパクトカーに近いクラスの2段階にするのが、理にかなっているのではないかと思っている。

このように、今後の軽自動車に対する風向きは決して好ましいとは言えない。しかし筆者は、軽自動車が不要とは考えてはいない。

海外展開で活用可能な“軽”の製品と技術

たとえばインドでは、スズキが数世代前の「アルト」を現地生産しており、ベストセラーカーになっている。一方のダイハツは、今年発表した登録車のブーンやトールに軽自動車作りのノウハウを活用しているし、2017年1月にはトヨタとともに新興国小型車カンパニーを設立し、ダイハツのものづくりをベースとした小型車を新興国に投入していくと発表してもいる。

2016年12月に国内累計販売台数500万台を達成したスズキ「アルト」。インドでもベストセラーカーになっている(画像はスズキより)

ただし、いくつかの新興国では経済成長に伴い、上級車種に目を向けるユーザーが増えているという流れもある。たとえば印マルチ・スズキの昨年の販売実績によると、アルトが属するセグメントは減少しているのに対して、それ以上のクラスは順当に伸び、「スイフト」や「バレーノ」が属するセグメントがもっとも多く売れているそうだ。

軽自動車の今後はどうなるか。それは新興国の自動車需要がどう変わっていくかにかかっているような気がする。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。