被災地支援から生まれた「Looop」 - 電力自由化で加速する自然エネルギー普及

被災地支援から生まれた「Looop」 - 電力自由化で加速する自然エネルギー普及

2016.03.11

2016年4月から、電力の小売全面自由化がスタートする。「我が家はおトクになるのかしら?」と各社を比較してリサーチしている家庭も多いことだろう。東京電力や関西電力といった地域の電力会社、ガス会社、通信会社などが熾烈な価格競争を繰り広げているなか、ちょっぴり異色な会社が満を持して参入した。それがLooop(ループ)である。

「電気も、自然派でいこう。」がキャッチコピーのLooopでんき。当初は東京電力と中部電力、関西電力管内でサービスを提供していく(画像は3月10日時点のホームページ)

エネルギーを選べるように

おさらいしておくと、電力の小売全面自由化とは、「どの会社からどの料金プランで電気を買うか」が家庭でも選べるようになるということ。すでに、2000年には大規模工場やデパート、オフィスビルなどの「特別高圧」、2004~2005年にかけては中小ビルなどの「高圧」が自由化されており、今回は家庭や商店向けの「低圧」が対象となる。

8兆円を超える電気小売市場に200以上の企業が参入する。となると、価格競争が起こるのは必然であり、消費者にも恩恵がもたらされることだろう。今より安いプランを選べる、ガス料金や通信費とセットでおトクになる、使用料金に応じてポイントをもらえる、電気の使い方を診断してより良いプランを提案してもらえる……このようなメリットのほかに、太陽光や風力、水力、地熱、バイオマスなどの自然エネルギーを中心に発電している会社も選べるようになる。

Looopはその自然エネルギーをさらに普及させるべく、4月から「Looopでんき」をスタート。特別高圧と高圧では、すでに2015年7月からサービスを提供しているが、今回低圧でもLooopでんきを開始して自然エネルギーの使用拡大を図る。

Looopでんきは、供給電力の約1/4(※)を自然エネルギーでまかなっている。そう聞くと、さぞ電気料金がかかるんだろうなと思われるかもしれないが、Looopでんきは自然エネルギーの供給と低料金を両立しているのが特徴だ。
※構成は再生可能エネルギー26%(うち、国の固定価格買取制度に基づいて調達したFIT電気が20%)、そのほか74%

第2回電力自由化EXPOにて撮影

Looopでんきでは、一般家庭向けの「おうちプラン」、事務所や商店向けの「ビジネスプラン」を用意。いずれも、5月31日までに申し込めば基本料金が0円となる(ただし、期間を延長する可能性あり)。従量課金部分はおうちプランが26円/kWh、ビジネスプランが27円/kWh。ちなみに、東京電力の一般的な料金プランである「従量電灯B・C」の従量課金部分は、最初の120kWhまでが19円43銭/kWh、120kWh~300kWhまでが25円91銭/kWh、300kWh~が29円93銭/kWhとなる。

従量課金部分のみを単純に比較すると高く感じるが、Looopでんきは基本料金が0円というのがポイント。火力発電所や原子力発電所などの大規模な施設を持たないため固定費が少ない、というのが理由だ。加えて、独自の需給管理システムで発電量と需要量をそれぞれ高精度で予測し、最適な調達量を計算できるため、コストが高くなりにくい。

おうちプラン、ビジネスプランともに申し込み受付は3月11日から。この日付にはLooopの思いが込められている。

Looopのルーツ

Looop 代表取締役社長 中村創一郎氏

前ページではLooopでんきについて紹介したが、そもそもLooopとは自然エネルギーを発電のスタンダードにするべく、さまざまな取り組みをしている会社だ。会社名のLooopは「循環(ループ)」型社会を目指していることを示し、3つ並んだ「o」は太陽光と風力、水力をメインに事業を行う姿勢を表しているという。

創業は5年前の2011年。東日本大震災の被災地に太陽光パネルを設置するボランティア活動から生まれた。

Looopの代表取締役社長 中村創一郎氏は、東日本大震災が起こったとき、中国・上海に住んでいたが、「被災地では電力が分断されていると知り、日本のために何かできないかと思いました」と当時を振り返る。「ソーラーパネルを製造している友人に相談したら、パネルさえ持って行ければ、電気を使えるようになると教えてもらいました」(中村氏)。

こうして被災地入りしてソーラーパネルを設置し始めた。ボランティアにとどまらず、Looop(設立当時はソーラーバンク)という会社を立ち上げたのは2011年4月4日と、震災があってから1カ月も経っていない。かなりスピーディーな印象だ。

被災地へソーラーパネルを設置するボランティアがLooopの始まり

甚大な被害をもたらした津波のような自然エネルギーを有効利用できないか? と考えたのが、ボランティアから起業しようと思ったキッカケ。そういう類の技術はこれからの日本に必要なものだと確信したという。以来、Looopは「自然エネルギーをあなたのそばに」という理念のもと、成長を続けている。

中村氏は「自然エネルギーは不安定だし、これまでも限定的にしか使われていない。ただ、僕自身はその不安定なエネルギーをテクノロジーの力でコントロールすれば活用できると思っています。目指すのは自然とテクノロジーの融合です」と話す。

パッケージ化された"発電所"

自社の太陽光発電所も設置するとともに、被災地支援でのノウハウを生かした「MY発電所キット」の販売を開始。MY発電所キットとは、ユーザーが自分で設置できる太陽光発電所だ。必要な部材はパッケージ化され、DIY感覚で組み立てられる。自身で設置するため、導入時のコストも抑えられるのが特徴だ。中村氏は「FIT制度(固定価格買取制度)がスタートしたことでニーズが拡大したのが成長のキッカケでした」と説明する。なお、MY発電所キットの販売実績は、2015年9月時点で1,391件。kW数に換算すると110,225.54kWに上る。会社の売上高は2014年度で109億円。現在は太陽光だけでなく、風力発電や地熱発電にも積極的に挑戦しているところだ。

Looopの自社発電所
MY発電所キットの設置イメージ

中村氏に今後の野望を尋ねてみると、「世界で一番安い自然エネルギーを作り続ける会社になりたいです」とシンプルな回答が返ってきた。「電気代が安くなる、もしくはフリーになることで人類の創造性がもっとブレイクして、今までできなかったようなことが実現可能になると思っています。寒冷地にドーム型の人工都市を建設したり、海の中に龍宮城を作ったり……あの天空の城ラピュタも作れるようになるかもしれない。人類が未来を開拓していく一助になれるような会社にしていきたいです」(中村氏)。その先がけとして、Looopはまず国内No.1を目指し、5年以内の海外展開もねらう。

2016年は「自然エネルギー普及元年」になれるか

冒頭でも触れたとおり、4月1日の電力小売全面自由化に向けて各社の料金プランが出揃ってきた。大手の事業者が積極的に広告宣伝をしているので、「電力自由化」という言葉はだいぶ浸透してきたように思う。

多様な選択肢から自然エネルギーを積極的に選ぶ層は一定数いるだろう。しかし、ほか多数の人にとって、自然エネルギーは「不安定」であり「コストが高い」もの。ここをどうやって切り崩していくかが自然エネルギー普及の試金石だ。

特別高圧と高圧の顧客にLooopが評価されている点は「まず価格、次に安定」(中村氏)だそうだ。低圧への参入で同じ評価を得られれば、2016年は「自然エネルギー普及元年」になれるかもしれない。

ドコモがQR決済に本気、「d払い」の全国普及なるか

ドコモがQR決済に本気、「d払い」の全国普及なるか

2019.05.22

NTTドコモがスマホ決済の「d払い」を強化する

競合ひしめくなか、ドコモはどこに勝機を見出したのか?

NTTドコモは、夏モデル発表会においてスマホ決済の「d払い」の強化を発表した。送金やミニアプリなど新機能を追加し、ドコモの会員基盤をベースにキャッシュレスを普及させるビジョンを示した。

ドコモがスマホ決済「d払い」を大幅強化

PayPayを始めとするスマホ決済各社は、還元キャンペーンや加盟店開拓などで競争を繰り広げている。ドコモはどこに勝機を見出したのだろうか。

「d払い」が送金やミニアプリに対応

電子マネー「iD」やクレジットカード「dカード」を展開するドコモが、2018年4月に始めたスマホ決済が「d払い」だ。FeliCaの搭載が必要だったおサイフケータイとは異なり、バーコードやQRコードを用いるd払いはほとんどのスマホに対応できる。

d払いアプリのダウンロードは2019年5月に500万DLを達成し、2019年度は1000万DLを目標に掲げた。利用箇所はiDとdポイント、d払いの合算で2019年4月に100万箇所。2021年度末の目標は200万箇所とした。

d払いの強みは、「dポイント」との連携だ。ドコモの利用料金やdカードからの還元だけでなく、キャリアに関係なく持てる「dポイントカード」でポイントが貯まる。2018年度の利用総額は1年間で1600億ポイントに達し、d払い利用者の53%が支払いにdポイントを利用しているという。

さらにドコモはd払いに新機能を追加してきた。9月末に提供する「ウォレット」機能では、ドコモ契約者向けだった「ドコモ口座」を誰もが使えるようキャリアフリー化し、チャージや送金の機能をd払いアプリに統合する。

ドコモ口座をd払いに統合する「ウォレット」

複数の加盟店アプリを1つにまとめた「ミニアプリ」は、秋以降に展開する。d払いアプリから加盟店のサービスを呼び出すことで、「ハンバーガーの事前注文」や「タクシーの配車」が可能になる。加盟店の専用アプリを入れる必要がなく、d払いで決済もできるのがメリットだ。

「ミニアプリ」はローソンとマツモトキヨシから開始予定

QRコードの読み取りも強化する。これまでd払いは利用者がスマホ画面のQRコードを店舗側に見せる「CPM」方式に対応しており、コンビニのようなPOS連携が必要になるなど中小店舗にはハードルの高い仕組みだった。

コードを「見せる」「読み取る」の両方式に対応

そこでd払いは、顧客がスマホのカメラで店舗のQRコードを読み取る「MPM」方式への対応を発表。PayPayなど多くの事業者に続き、d払いも6月末には両方式に対応することで、大型店舗だけでなく中小店舗に展開していく体制を整えたというわけだ。

アプリを大幅強化、「マルチQR」にも対応

次々と新機能を追加するd払いでは、アプリも大きく変わることになる。開発中のアプリ画面には、ドコモ口座への入金と送金、ポイント送付、割り勘、ミニアプリなどの機能が所狭しと並んでいた。

d払いアプリを大幅強化

参加企業が増えればミニアプリには多くのアイコンが並ぶことになるが、これにはカテゴリ分けなどで対応していく考えだ。ミニアプリの仕組みは、既存システムとのAPI接続や専用パッケージの提供など、さまざまな方式を検討するという。

また、増え続けるQRコードへの取り組みも発表した。1つのQRコードで複数の決済サービスに対応できるデジタルガレージの「クラウドペイ」に、d払いも対応する。

1つのQRコードで複数の決済サービスに対応

クラウドペイでは、店舗側が支払う決済手数料は一律3.24%(税込)となるものの、固定費や機器の導入は不要で、複数の決済サービスをワンストップで契約できるなどのメリットがある。

全国のドコモ代理店が加盟店開拓へ

今後は全国のドコモ代理店の営業リソースを活用し、加盟店を拡大していくという。最近ではソフトバンクの営業部隊がPayPayの加盟店を次々と開拓する快進撃を続けており、そこにドコモが勝負を挑む構図になりそうだ。

d払いは、スマホアプリを中心にさまざまなサービスにポイントを循環させるビジョンを描いている。ドコモの発表からは、これまで以上にアクセルを踏み込む姿勢が感じられた。dポイントを絡めた「20%還元」など、新たなキャンペーンにも期待したい。

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ここ最近、若者に嫌われがちな慣習に「飲みニケーション」がある。

これはいうまでもなく、仕事を終えた後、同僚たちと居酒屋などに集結し、アルコールの力を借りて互いの胸襟を開き、親睦を深めるコミュニケーション手法のこと。しかし、終身雇用や年功序列が崩壊した今や「会社の人とプライベートの時間まで削って仲良くなろう」というモチベーションは薄れた。「“飲みニケーション”って、いらなくね?」というムードが蔓延。令和時代に廃れてしまいそうな慣習ともいえる。

会社に勤める日本人の若者には、風当たりの強い飲みニケーション。それを新たなカタチとしてビジネスにつなげているのが、アシノオトの木村壮介さんだ。では、どんなビジネスなのか、木村さんに聞いた。

アシノオト代表の木村壮介さん。高校卒業後、兄が起こしたグループウェアメーカーにジョインして、エンジニアとして活躍。ウェブマーケティングの会社へ転職し、ウェブコミュニティの開発運営などを経て独立。訪日外国人とローカル日本人をつなぐQ&Aサイト「Hub Japan」を起ち上げ。2017年、同サイト内で「MEET&EAT」をスタートさせた

サービス名はHub Japan「MEET&EAT」。ネット上のプラットフォームを介して知らない者同士がマッチングし、文字どおり、食べて、飲む。”飲みニケーション”で親睦を深める、というわけだ。

もっとも「MEET&EAT」がマッチングするのは上司と部下でも、出会い系的な若い男女でもない。木村さんが飲みニケーションのターゲットにしているのが訪日外国人と日本人。日本を訪れた海外からの旅行者と、日本にいる人たちを居酒屋でつなぎ、親睦を深めさせる。いわば“異文化飲みニケーション”を提供しているのだ。

旅行者の「美味しい」は、アテにならない

きっかけになったのは、木村さんの経験だった。

「新婚旅行のときに覚えた違和感。そこからはじまったんです」(木村さん)

木村さんがイタリアへ行ったのは2015年。奥さんと2人で楽しみにしていたのが本場のイタリア料理だった。旅行に関する大手口コミサイトでみつけた店を、まず巡った。待ちに待った本場の味。それが実にいまいちだった。

「『こんなものかな…』とも思ったけれど、2日目に偶然仲良くなった地元のおばちゃんが『昨日はどこで食べた? 駅前の店? ダメダメ。行くならあっちの店よ』と教えてくれたんです。すると今度はめちゃくちゃ美味しかった。それが衝撃でした」(木村さん)

美味しさに対する衝撃だけじゃない。圧倒的な集合知を誇るネットの口コミサイトが、地元のおばちゃんのアナログな知見に勝てないことにこそ、木村さんは感銘を受けた。

「考えてみたら当たり前なんですけどね(笑)。世界中の質の高いユーザーが口コミを書き込めたとしても、書き手が旅行者である以上、底はしれている。地域にずっといる人の知識には敵いませんから」(木村さん)

そこに着想の芽があった。

ならば「地元の人と海外からの旅行者をQ&Aでつなぐローカルコミュニティサイトがあったら喜ばれるのでは?」と考えた。ヤフー知恵袋のような巨大なQ&Aサイトや、SNSで直接つながったコミュニティサイトはあるが、越境してローカルの人と旅行者をつなぐQ&Aサイトは意外と見つからない。

それまでグループウェアの制作運営や、企業向けのコミュニティサイトの開発運営を手がけるITエンジニア・ディレクターだったが、独立起業の潮目を感じた。個人的に「社会課題の解決につながるような事業で独立したい」と考えていたことも後押しになったという。

「どんな課題か? “グローバリゼーション”とそれに伴う文化の均質化“への危惧ですね。なんていうと大げさですけど、目立たないけれど素敵なスポットや、小さくても美味しいお店が、情報の均質化で目立たず消えていく。盛りあげないともったいないなって、感じていたのです」(木村さん)

そして2016年に独立。自らプログラムを書けること、奥さんもWebデザイナーだったこともあいまって、すぐさまシンプルなQ&Aサイトを立ち上げた。名前は「Hub Japan(ハブ・ジャパン)」。訪日予定、あるいは訪日中の外国人ユーザーが英語でクエスチョンを書き込むと、日本のローカルユーザーがアンサーを書き込んでくれるシンプルな仕組みだ。

たとえば「東京でオススメの穴場の寿司屋は?」「サクラを見に大阪へ行くが、気温は? 上着は持参したほうがいいか?」といった具合に欧米を中心に訪日予定の人たちから英語で書き込む。すると、サイトに埋め込んだGoogle翻訳エンジンが日本語に変換してくれるので、日本人も気兼ねなく「現地の声」を書き込める。その日本語は、書き込んだユーザーが読めるように、英語に変換されるわけだ。

「ただオンラインだけだとつまらないのでリアルでも何かやりたいと考えた。そこで『体験の仲介サービス』をやろうとしたんです。訪日外国人が興味のありそうな、着物の着付けとか、お茶の体験とか、いろいろ試しにやってみたら……」(木村さん)

そうしたなか、圧倒的に参加者の好評を得た体験イベントがあった。「居酒屋探訪」ツアーがそれだ。

日本人には当たり前の居酒屋に価値があった

赤提灯や縄のれんが目印の大衆居酒屋から、高級割烹ぜんとした高級店まで、バラエティに富む居酒屋レストランは、日本全国に23万店以上あるといわれる。日本独自の酒とつまみが効率よく味わえるうえ、日本の生活文化や日本人とふれあう機会もあるため、今や訪日外国人にも人気のスポットだ。

ただ興味はあれど、観光客が海外の夜の街に繰り出して、初めての居酒屋に入るのはハードルが高い。ボッタクリ店などにあたるリスクもある。しかし、勝手知ったるローカルの日本人が薦める店に、しかも一緒に入って楽しめるとあれば、安心感が高まる。

「一方で居酒屋などの飲食店も、訪日外国人のお客様を呼び込みたいけれど、お店を知ってもらえていないというのが、多少の機会損失になっていた。なので、飲食店の販促の仕組みとして活用してもらえると考えたんです」(木村さん)

試しに「ハブ・ジャパン」をとおして「日本の居酒屋で日本人と語り合おう」というツアーを告知すると、すぐに外国人観光客から応募があった。木村さんが試験的にアテンドをする。奥さんや友達とともに外国人複数×日本人複数で、オススメの居酒屋にむかい「カンパイ!」からはじめると、異様な盛り上がりをみせた。

英語もできず、そもそもコミュニケーションも苦手だった木村さんだが、酒が入り、気持ちが大きくなると「身振り手振りで必死に会話をしている自分」に気づいた。飲みニケーションあなどれじ、だ。

「また、もちろん海外の方々に『日本に来た目的は?』『何を楽しんだ?』などと聞くことも楽しいのですが、実のところ彼らから日本について意表をつく質問をされることにこそおもしろさ、価値を感じました」(木村さん)

「日本で最もポピュラーな宗教は?」とか、「無宗教? ではなぜあれほど神社があり、誰しもお参りしているんだ?」とか、「あなたにとって蕎麦とはなんですか?」とか――。

「蕎麦については、おもしろかった。自分にとって蕎麦とは何か、なんて考えたことなくて(笑)。日本人同士だったら絶対に聞いてこないような質問をどんどん向けられる。結果、むしろ日本のこと、日本文化のことを深掘りせざるを得なくなったんです。また海外の人たちが、日本の何に興味があるのかも肌感覚でわかる。これって観光施策や訪日外国人向けビジネスのヒントが得られる貴重な場になるなって」(木村さん)

だから、日本文化を深掘りしたい「訪日外国人」、質の高いインバウンド客を集客したい「居酒屋」、そして外国人とフランクに交流することで刺激やアイデアを得たい「ローカルの日本人」。この三者を“三方良し”でつなぐプラットフォームとして、2017年末に作った。

仕組みはやはりシンプルだ。ローカルの日本人ならFacebook認証をとおして「ハブ・ジャパン」にまず登録。そこから「MEET&EAT」のサイトに行く。同じようにログインして日本滞在中の「居酒屋で交流したい」と書き込んでいる訪日予定の外国人アカウントをチェック。都合のいい場所や日時、気の合いそうなプロフィールの団体がいたら「マッチング希望」をクリック。返信を待つ。マッチングとなれば、メールでのやりとりができるようになり、「MEET&EAT」内で指定する居酒屋店をチェックして予約。当日、最寄りの駅前で待ち合わせて、予約時間に店にいき「カンパイ!」となるわけだ。

外国Hub Japanの利用者たち。未成年かどうかの判断はFacebook認証で行われる。トラブルが起きないように、基本2~3人ずつしかマッチング登録できない

今はサイト経由で飲食店への予約が発生したときに、紹介料を得る仕組みで運営中。都内数十店舗の居酒屋と契約を結び、月30人程度の訪日外国人からのリクエストに応えている。

「ビジネスの規模はもう本当に小さい。受託の仕事を続けながら、まだまだ手探りの段階です。ただ小さいながら手応えも感じています」(木村さん)

「またぜひ居酒屋で飲みたい」と訪日外国人のリピーターが増えている。「生きた英語を学びたい」「楽しい飲み会を開きたい」というローカル日本人も増加中だ。とくに「企業のインバウンド担当をしているが、本当のニーズがつかめない。ヒントを得たい」「飲食店を経営しているが外国人向けにメニューやサービスを充実させたい。直接リサーチできるのでは」とマーケティング・リサーチの場として価値を見出している人も現れ始めているという。

飲みニケーション、やはりあなどれじなのだ。

「まあ、まだまだ小さい事業で、どこまでできるかわからないけど(笑)」(木村さん)と、取材終盤、木村さんは繰り返した。ただ、目立たないけど素敵なビジネス。盛り上げないともったいない、と……。

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