アップルを抜きにかかる中国ファーウェイ、弱点の米国を攻略できるか

アップルを抜きにかかる中国ファーウェイ、弱点の米国を攻略できるか

2017.01.18

日本でも人気の「格安スマホ」市場で、楽天モバイルなど主要な事業者と組みシェアを拡大する中国ファーウェイ。世界のスマホ市場でも破竹の勢いを見せる同社の弱点は、米国展開が遅れていることだ。米ラスベガスで開催された家電見本市「CES 2017」で、ファーウェイはどのように巻き返しを図ったのだろうか。

鬼門だった米国市場に本格参入を狙う

2017年1月5日から8日まで、米ラスベガスで開催された家電見本市「CES 2017」。その基調講演に、ファーウェイのコンシューマー事業を統括するリチャード・ユー氏が登壇し、同社の最新状況について語った。

ファーウェイ コンシューマービジネスグループCEOのリチャード・ユー氏

米国でのファーウェイは、2012年に米議会からネットワーク機器に安全保障上のリスクがあると指摘され、大きくイメージダウンした経緯がある。だが、いまや世界のスマホシェアはサムスン、アップルに次ぎ、ファーウェイは三番手につけている。ユー氏が掲げる「アップルを抜いて世界第2位になる」という目標達成のために、米国市場の攻略は避けて通れない課題だ。

2016年には1億3900万台のスマホを出荷し、世界トップ3に

米国のスマホ市場で2強といえるのがサムスンとアップルだ。サムスンは家電最大手として確固たるブランドを築いており、バッテリーの発火問題が世界的に非難を浴びた「Galaxy Note7」の失敗後も、その屋台骨は大きく揺らいでいない。CES 2017でもサムスンブースやVR体験エリアは大盛況となった。

とはいえ、サムスンはバッテリー問題を完全には克服できておらず、攻めに転じることが難しい。「王者」が足踏みしている間、ファーウェイにとっては絶好のチャンスといえる。

研究開発への投資額ではアップルを上回る

なぜファーウェイはスマホ市場でシェアを急拡大できたのだろうか。一般には、最近のスマホはどれも似たり寄ったりで、価格の安い中国製が有利、というイメージがあるかもしれない。

実際のところ、ファーウェイ端末が性能や品質に比べて安価であることは国内メーカー関係者も認めるところだ。だが、ファーウェイは基幹部品であるSoCを自社で開発し、カメラでは独ライカカメラと提携するなど、要素技術でも他を圧倒している面がある。

また、今日のスマホはハードだけでは売れない。「デュアルカメラ」はブームになっているが、2つのカメラをどう活用するかはソフトウェア次第だ。世界的に人気の「自撮り」(セルフィー)も、肌を美しく描写するモードが女性を中心に受けているが、これもソフトウェアの力がなせる技である。

さらにファーウェイはスマホなど端末事業に参入する以前から、携帯電話の基地局などインフラ事業で定評がある。ユー氏が「あまり知られていないが、世界人口の3分の1をつないでいる」と語る通り、ネットワークインフラを支える裏方の企業でもあるのだ。

世界人口の3分の1をつなぐファーウェイ

これらのインフラ事業を含め、ファーウェイは研究開発への投資が盛んな企業としても知られており、2016年は92億ドルで世界第9位とアップルを上回った。今後は研究開発への投資額で世界トップを目指すという。

研究開発への投資額で2016年には世界第9位に

グーグルとアマゾンの協力で、イメージ払拭なるか

CES 2017でファーウェイは、最新モデルの「HUAWEI Mate 9」を米国で発売することを発表した。大画面で高性能、最新ソフトウェアのデュアルカメラを搭載しており、先行して発売した日本では売り切れが続出した。最近のファーウェイの躍進を象徴するようなモデルだ。

米国でも発売した「HUAWEI Mate 9」

ただし、米国でも同じようにうまくいくかどうかは未知数だ。安価なプリペイド端末とは異なり、ハイエンド端末ではブランドへの信頼度も重要になってくる。消費者にファーウェイというブランドを訴求していく上で、過去のマイナスイメージを払拭するところから始めざるを得ないのは厳しい状況だ。

CESの基調講演では、期待を抱かせる一幕もあった。グーグルのVRプラットフォーム「Daydream」とアマゾンの音声アシスタント「Alexa」に対応することを表明し、両社の幹部がステージに登壇したのだ。Daydream対応のスマホはサードパーティ端末としては数えるほどしかなく、Alexaを標準搭載したスマホは世界初になる。米国を代表するグーグルとアマゾンという強力な援軍を得たことで、まずは米国市場に足がかりを作ったといえるかもしれない。

グーグル、アマゾンから幹部が登壇、ファーウェイとの協力をアピールした
感動に流されがちなスポーツと「プリンセス駅伝、四つん這い走行」

カレー沢薫の時流漂流 第15回

感動に流されがちなスポーツと「プリンセス駅伝、四つん這い走行」

2018.11.12

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第15回は、「プリンセス駅伝の四つん這い走行」問題について

今年は「パワハラ」「黒い交際」「殺人タックル」など、スポーツ界が荒れに荒れた。

スポーツにつきまとう「感動」という尺度

というよりは、今までずっと「わかり哲也」の背景ぐらい荒れ続けていたが、関係者専用のプライベートビーチだったため、一般人の目につかなかっただけのような気もする。

その一方、ワールドカップでは予選を批判した奴は全員死んだのかというぐらい本戦の健闘が称えられたり、夏の甲子園では金足農が秋田県勢として103年ぶりに決勝に進出し大きな注目を集めたりと、感動的なこともあった。

しかし、結果だけを言えば、ワールドカップは1回戦敗退だ。金足農も決勝で敗れ準優勝。逆に優勝したのに金足農の陰に隠れた大阪桐蔭が可哀想なぐらいだ。

つまり、見る側はスポーツに対し、時に結果よりも「感動」を求めがちということだ。金足農が仮に優勝していたとしても、その勝利が「地獄甲子園」式で得た物なら讃えられなかっただろう。

スポーツに感動を求めるのは悪いことではない。私のような、床を這っているコードでこけるような先のない中年は、もはや他人の活躍に乗っかって泣いたり笑ったりするしかないのだ。

だが、「感動した! 痛みに耐えてよく頑張った! 」という言葉があるように、スポーツの感動には「選手が無理をする姿」も含まれていることは否定できない。その無理が「43度の風呂」レベルならまだ良いが、選手生命、さらには最悪命を脅かしかねない時もある。

インターネット大相撲では済まない「プリンセス駅伝」問題

そんな、文字通り「選手が痛みに耐えて頑張った」事件が、先日行われた「プリンセス駅伝」で起こった。女子駅伝だからプリンセス駅伝なのだろうが、私が走者だったら相当居心地の悪いネーミングだ。

その駅伝の中で、10代の走者が中継所の直前で走行不能となったが、何と四つん這いの状態で流血しながらタスキをつないだという。四つん這いで移動した距離は約200メートル。私だったら小一時間かかる、結構な距離だ。その選手がリードの外れた柴犬ぐらいのスピードで四つん這い走行した、というなら制止する間もなくタスキは渡されていたかもしれないが、満身創痍の状態なら相当時間がかかっただろう。

当然、その姿には「誰か止めろよ」と批判が噴出した。しかし、批判がある一方で「感動した!」と、流血四つん這いで走る女子の姿にバッチリ感動した勢がいるのも事実だ。それに対し「怪我しながら走る選手を美談にする勢を許さない勢」が現れ、いつものインターネット大相撲に発展しているのはよくあることなのだが、これはかなり複雑な問題なのである。

監督が倒れた選手に「お前棄権したらわかっとるやろな? 」とアイコンタクトをしたり、観客が「俺たちを感動させるために走れや」と選手を後ろからジープで追い立てたりしたと言うなら論外だが、監督はテレビモニターで「二足歩行が厳しい」という致命的な状態の選手を見て、ちゃんと棄権を申し入れている。

だが、その棄権が現場の審判に伝わった時には、すでにタスキ受け渡し地点の20メートル手前に来ていたそうだ。つまり、満身創痍の選手が四つん這いで180メートル移動してしまうまで棄権の申し入れが審判に伝わらなかった、ということだ。ここでまず連絡体制の不備が指摘されている。

そして、審判は棄権の申し入れを知った後も、「あとちょっとだし」と最後まで走らせてしまったと言う。痛みに耐えて頑張る選手、という「感動」に流され、無理をさせてしまった感は否めない。

そもそも棄権の申し入れがあるなしに拘わらず、現場判断で中止させるべきはなかったのか、という声もある。今、試しに家の中を四つん這いで走ってみたが、これで200メートルはなかなかキツイ。何より見た目が痛々しい。

私の場合、無職の中年が昼間に家の中を四つん這いで走っているというただの「イタい」状態だが、走れなくなった若い選手が流血しながら四つん這いで走る姿は、十分制止すべき痛々しさだろう。実際、棄権申し入れがなくても、現場判断で走れなくなった選手を止める権限が審判にはある。

それでも懸命に走る意志を見せる選手に心打たれて止められなかったのかというと、必ずしも感動だけが理由ではないようだ。企業にとって駅伝というのは非常に重要なものであり、それをチームではなく審判の判断で止めるというのは、審判員側と企業側に大きな禍根を残すことになりかねないのだという。よって審判側は「よほど勇気がないと止められない」そうだ。

また、選手にとっても企業の名前を背負っている上、「自分がコケたら皆コケる」という駅伝のルール上、選手には大きなプレッシャーがかかっている。つまり選手も現場も「止まるに止まれないし、止めるに止められない」状況になっていたのかもしれない。

そして結果から言うと、この選手は「全治3~4か月の骨折」となった。あの四つん這いでの200メートルがなかったら、もう少し怪我が軽くなった可能性は大いにある。

このように、無理は早めに止めないと、逆に有望な選手を潰すことになりかねない。

「無茶しやがって…」という展開は漫画などに任せ、ダメな時は「俺たちの戦いはまだ始まったばかりだ」と早々に打ち切り、次のチャンスに賭けるべきだろう。

タイヤ技術でオリパラを支えよ! ブリヂストン、義足の改良に挑む

タイヤ技術でオリパラを支えよ! ブリヂストン、義足の改良に挑む

2018.11.12

オリパラの裏側には、さまざまな最新技術が隠れている

パラアスリートを支える、ブリヂストンの「タイヤ技術」って?

義足用ソールの開発に挑む研究者らに話を聞いた

東京2020年オリンピック・パラリンピック競技大会の開催まで2年を切った。自国開催ということもあり、現地で観戦しようと考えている人も多いだろう。そこで1つ提案したいのが、オリンピック・パラリンピックを「技術」の視点で見ることだ。

2018年の平昌オリンピック・パラリンピックでは世界初の5Gの実証実験サービスが行われ、開会式ではインテルがドローンによる光のパフォーマンスが行われた。このような派手なものに限らず、大会の裏にはいくつもの技術が隠れている。パラアスリートが用いる器具などがその典型的な例と言える。

そこで本稿では、「ワールドワイドパラリンピックパートナー」であるブリヂストンによる、自社技術の活用によってパラアスリートを支援する取り組み「パラアスリート技術支援プロジェクト」に注目。東京2020を支える技術の裏側に迫る。

タイヤ技術でパラアスリートを支えよ! 

パラアスリート技術支援プロジェクトは、同社のオリンピック・パラリンピックのパートナー契約締結を機に『タイヤやゴムの技術をアスリートのために活かせないか』という想いから発足したという。ではその技術で何を作っているのかというと、1つの例が義足用の「ソール」(地面に接する部分、靴底)だ。

今回話を聞いた、ブリヂストン 先端企画本部 先端技術推進部 先端技術企画推進第1ユニット 主任部員の小平美帆さん(左)とオリンピック・パラリンピックマーケティング推進部 アクティベーション推進ユニット 課長 鳥山聡子さん(右)

「当社では、パラトライアスロン選手の秦由加子さんの義足用ソールを開発しました。現在も定期的に本人と話し合いの場を設けながら、当社の技術でサポートできる部分はないか、ということを模索しています」(鳥山さん※以下、鳥山)

秦由加子 選手。1981年生まれ。千葉県出身。3歳から10歳まで水泳を習う。13歳で骨肉腫を発症し、右足の大腿部切断を余儀なくされたが、2007年に障がい者水泳チームで水泳を再開。2013年にパラトライアスロンに転向した。大腿部切断でパラトライアスロンを行っている唯一の日本人選手だ

なぜ同社がソール部分に注目するようになったかというと、「タイヤ技術との親和性の高さ」が理由だと小平さんは語る。

「もともと当社では、タイヤはもちろん、ゴルフシューズや農業機械用のゴムクローラなど、『地面と接する部分』の製品開発に強みを持っております。ソールも同じく、地面と接するモノ。そこで当社の持つ技術との親和性が高いと感じ、注目するようになりました」(小平さん※以下、小平)

さらに、ソールの素材はゴムと高分子の複合体であり、これは同社の製品でもよく使われる素材であった。タイヤ製品で培った技術を活用することで、選手をサポートできるのではないか? と考え、新ソールの開発を始めたというわけだ。

義足イメージ。ランニングシューズの底のように、特有なパターン(模様)の入っている部分が、ブリヂストンの開発したソール

「ランニングシューズを切って、義足に貼る」が当たり前?

そもそも、義足用のソール開発に力を入れている企業というのはグローバルで見ても少ない。義足を必要とする人は多くいる一方で、切断箇所や筋肉量の違いなど、個人個人によってのニーズが異なるために、高ロットでの生産ができず、なかなかビジネスとして成り立たないことが原因だという。では、秦選手の使用していたソールには具体的にどのような課題があったのか。

「これは秦さんに限らず、ほとんどのパラアスリートに当てはまることなのですが、それぞれが個人に最適化されたツールを使えていないという課題がありました。もともと、多くの種類が市場に出回っているわけではないので、パラアスリート向けの『高品質な製品』自体が少なく、モノによっては、開発されて数十年経っている”最新モデル”もあります」(鳥山)

驚くべきことに、世界大会で活躍する秦選手のような人であっても、ランニングシューズを買って、ソール部分を切り取り、義足に貼り付けて使っていたのだとか。そのように「売られているものを転用して使う」というパラアスリートは少なくないそうだ。

「当たり前ですが、ランニングシューズのソールは、義足を必要とする人向けに開発されたものではありません。地面と接触した際にかかる力は違うし、耐摩耗性が求められる箇所も異なります。秦さんは以前、雨の中でのレースで、『滑るのが怖くて、思い切って走ることができなかった』という経験をしたそうです。そうした意見を聞き、どんな状況であっても安心して走れるようなソールを開発したい、と考えるようになりました」(小平)

タイヤ開発のノウハウを詰め込んだソール開発

しかし、いくら「地面と接するモノ」だからといって、タイヤとソールで求められる技術が一緒だとは思えない。どのようにブリヂストンの持つノウハウをソール開発に適応させたのか。

「はじめはゼロからの挑戦でした。そもそも、『義足のソールに求められることって何? 』という疑問からのスタートなんです。勉強の日々でしたね。どうにか当社の技術を活用できないか、と考え、まずは走る際にかかる力を測るために、タイヤ開発に使用する測定器を使って圧力測定を行いました」(小平)

圧力測定時の様子。ランニング時、ソールへの力のかかり方がどう変化するかを調査した

ほかにも、使用した後の摩耗部分の分析などを行い、グリップ力を上げつつ摩耗を抑えられるソールはどのようなゴム材料・溝形状にすればよいかをひたすら考えたそう。

さまざまなデータから見えた課題に対して「どうブリヂストンの技術を適応させれば良いか」と考え、試行錯誤を重ねた後に、ようやくソールを開発。2017年4月、初めて秦選手に新ソールをつけた義足で走ってもらうことになった。

「私たちのソールで走ってみた秦さんには『全然違う! 』と、すぐに気に入っていただきました。その1カ月後には早速、新ソールで大会にも出場していただきました。その大会もあいにくの雨だったのですが、確実に滑りにくくなっているとのフィードバックをいただき、手応えを感じました」(小平)

小平さんや鳥山さんは、秦選手と密にコミュニケーションを取りながら、フィードバックを元にソールの改良を続けた

さまざまな領域での技術活用も視野

そのレース以来、秦選手は変わらずブリヂストンが開発したソールを使い続けている。現在のソールは2代目で、2017年に開発したモデルから、パターンと材質を変更しているそう。

しかし、いくら製品の改良を実現したと言っても、事業化につなげられなければ、同社の「パラアスリート支援」は一過性のものになってしまう。同社は今後、この取り組みをどのように続けていく予定なのか。

「秦さんとの協力によって生まれた技術が将来、当社製品のブレイクスルーにつながる可能性はあると考えています。将来的には、さまざまな領域での技術の活用も視野に入れております。ですが、何よりこの取り組みは、当社がグローバルメッセージとして掲げる『CHASE YOUR DREAM』を体現するもの。

CHASE YOUR DREAMとは、ブリヂストンが、さまざまな困難を乗り越えながら「夢に向かって挑戦し続けるすべての人を支えていく」という想いを表現したメッセージ

そのため、必ずしも『将来的なリターン』を求めてこの活動をやっている訳ではありません。私たちの取り組みが社内外に広がり、当社の『夢に向かって挑戦し続けるすべての人を支えたい』という想いに触れていただき、一緒にオリンピック・パラリンピックを応援してくれる仲間を広げていくことを目指しています」(鳥山)

「2020東京」まで1歩ずつ、2人3脚で

現在、すでに秦選手用の最新ソールは完成しているそうだが、まだまだブリヂストンの挑戦は続く。

「最新モデルは、秦さんの要望を満たし、かつさまざまなデータから考えられる問題点を解決した自信作。しかし、パラリンピックまではまだ時間があります。今後も本人のフィードバックをもとに、より改良を続けていきたいです」(小平)

パラアスリートと一緒に夢を追い続けるブリヂストン。今回紹介したのは、同社の秦選手との取り組みだけだが、それに限らず、ほかにも多くのアスリートを支援しているそうだ。

オリンピック・パラリンピックでもっとも日の目を浴びるのは選手。しかし、その周りには、選手たちを支えている多くの人たちがいる。来る2020年、パラリンピックでは、選手の義足や車椅子などにも注目し、そこに隠れた技術の背景を想像してみるのも楽しみ方の1つだ。

ブリヂストンと秦選手の挑戦をこれからも応援したい