コーヒー刷新で反撃開始? 業績回復に向け正念場のマクドナルド

コーヒー刷新で反撃開始? 業績回復に向け正念場のマクドナルド

2017.01.19

2016年の新メニュー攻勢が記憶に新しい日本マクドナルド。業績も回復基調で、2017年は完全復活に向けた正念場となりそうな同社だが、今年の新メニュー戦略として打ち出したのは「おいしさ向上宣言」というテーマだ。まずはコーヒーを刷新するというが、そこから同社の方向性を探ってみたい。

「おいしさ向上宣言」を打ち出した日本マクドナルドのカサノバ社長

2017年の新メニュー戦略は

日本マクドナルドは2017年1月12日、六本木ヒルズ大屋根プラザでプレミアムローストコーヒーのリニューアル発表会を行った。

冒頭、同社の社長兼CEOであるサラ・L・カサノバ氏は、「昨年までの取り組み(ビジネスリカバリー戦略)では一定の成果をあげることができた。2017年も引き続きお客様第一を掲げ、お客様と心でつながるモダン・バーガー・レストランの実現を目指していく」と語り、その一環として「2017年はコアメニューを“Great Tasting Menu”として展開する。お客様の満足にコミットするため、“おいしさ向上宣言”と題して、いままでに体験した以上のおいしさ(even more delicious)を提供していく」と発表。その第一弾として、プレミアムローストコーヒーをリニューアルするとした。

マックが発表している数値からも復活の兆しは見てとれる。2016年12月は既存店売上高が対前年同月比17.0%の増加。全店売上高でも対前年同月比15.6%の増加を達成している。

カサノバ氏がコメントの中で体験(Experience)という言葉を使ったことから、単なる商品戦略にとどまらない今後の発表に期待してください、というメッセージを読み取ることができた。反転攻勢に向けたマックの戦略から今年は目を離せない。

カサノバ氏の次に登場したナショナルマーケティング部の小室武史上席部長からは、「2013年以降、コーヒーに対する嗜好や楽しみ方が変化してきた」という興味深い話が出た。

コーヒー業界で存在感を急拡大させたセブンカフェ

2013年とは、まさにセブンカフェが登場した年のことである。この発言から、マックは今回の新商品に関して、かなりコンビニコーヒーを意識していることがうかがえる。

セブンカフェは2013年1月に発売を開始。同年5月に5,000万杯、7月に1億杯、9月に2億杯、そして年末12月にはなんと3億杯を突破した。翌年2月末には販売数が4億5,000万杯を超えている。

2014年9月には年間目標6億杯を目指して商品を刷新。豆の配合・焙煎を見直し、独自の磨き工程を取り入れることで、さらに華やかな香りと雑味のないすっきりとした後味を実現した。

セブンカフェが顧客の人気をつかんだ要因は、1杯ごとのペーパードリップと挽き立て・淹れたての香り、コク、おいしさである。一部の店舗では、新旧の豆をセットしたマシンを並べて飲み比べと称した販売を展開。これなら商品の変化が一目(一口)で分かるという訳だ。

マックの「コーヒー売りません」キャンペーンとは

コンビニコーヒーの伸張を受けたマックは、プレミアムローストコーヒーの存在感向上を急ぎたいところ。今回のリニューアルにあたり、同社は1月16日から5日間、朝限定でプレミアムローストコーヒーを無料で提供するキャンペーンを実施している。

発表会にはコーヒー通としても著名な俳優の筧利夫さんが駆けつけた

今回のキャンペーンによる店舗側のメリットとしては、従来のキャンペーンのようにクーポン配布の人員(手間)をかけずに済むことが挙げられる。デメリットは通常の顧客とキャンペーン目当ての顧客の導線がクロスしてしまうことだが、店舗によっては、専用コーナーを設置するなどして導線を分けることも可能だろう。

一方、客側のメリットは大きい。アプリやクーポンを持っていなくとも、コーヒーが無料で手に入るからだ。一般的に、通常価格で商品を購入する顧客は、横で並んでいる顧客が同じものをクーポン提示で安価に購入している姿を見ると、ちょっと損をした気分になるものではないだろうか。今回のキャンペーンには、そんな消費者心理も反映しているのかも知れない。

では、新しいマックのコーヒーはどこが変わったのか。まず豆の種類としては、新たに高品質な「エチオピア産モカ」をブレンド。原料豆は4種類に増えて、「マック史上最高にリッチな味と香り」を実現しているという。焙煎は、こだわりぬいた香りやうま味を余すことなく引き出すための焙煎方法を採用。コーヒーマシンにはハンドドリップのような“蒸らし”の工程を取り入れるなど、カフェ業態をほうふつさせるような原材料・工程が説明された。

価格は据え置きのSサイズ100円だ

スターバックスやドトールなどといったカフェ業態や、大手コンビニチェーンのほとんど、そして、ファストフードの店舗やファミリーレストランといったように、身の回りを見渡せば至るところでコーヒーが販売されている。これはコーヒーという飲料が身近になった証左だといえる。その中から、消費者は自分好みの味を提供してくれる店舗を模索している。はたしてマックの新商品は、選ばれる存在になりうるのだろうか。

コンビニに奪われた顧客を自分達の戦場で取り返す?

コンビニコーヒーは単体の魅力も人気の理由だといえるが、コーヒーと一緒に購入できる商品群の幅の広さがコンビニの一番の強みである。言い換えれば、コンビニで販売されている商品は、すべてがコーヒーのサイドオーダーになりうるのだ。

セブンカフェが好調とはいえ、コンビニコーヒーは基本的に持ち帰り(テイクアウト)が中心だ。一部のチェーンでは店内飲食(イートイン)スペースを確保している店舗も見かけるが、決して多くはない。店舗の入り口に位置する専用機器には多くの顧客が並び、機器から立ち上るおいしそうな香りが来店客を迎える。

一方のマックは、新しいコーヒーを通じて同社の原点ともいえる「モダン・バーガー・レストラン」という得意のフィールドに立ち返り、コンビニコーヒーに勝負を挑もうと画策しているのではないだろうか。

発表会ではサンプリングのコーヒーを配ったマック

おいしさ向上宣言、気になる第二弾メニュー

発表会のゲストトークに登場したコーヒーアドバイザーでコーヒー鑑定士の中平直己氏は、「この新しいコーヒーはどんなバーガーにも合う。また、バーガーの味をより引き立てる」と語っていた。中平氏の言葉と、冒頭でカサノバ氏が語った「Experience」。おいしさ向上宣言の第一弾はコーヒーだったが、第二弾以降の商品が消費者の面前に現れるとき、これらの言葉が暗示していた真の意味が見えてくるのかも知れない。

消費者としては、価格が手頃でおいしい商品の選択肢が増えることは至上の喜びだ。マックは今後、どんな価値を消費者に提供するのか。これからの展開がとても楽しみだ。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。