ライク 保育事業のM&Aに先見の明 幼児から高齢者まで必要な企業へ

ライク 保育事業のM&Aに先見の明 幼児から高齢者まで必要な企業へ

2017.01.19

ライク 保育事業のM&Aに先見の明 幼児から高齢者まで必要な企業へ

 ライク(旧社名ジェイコムホールディングス)<2462>は、もともと携帯電話業界向け人材サービスが主力だった。2005年の株式上場時にみずほ証券によるジェイコム株の誤発注事件が発生、一躍その名が全国に知られるようになった。2009年に保育園の運営企業を買収したことを転機に保育や介護事業にも進出。幼児から高齢者まで人生のどの段階においてもなくてはならない企業に事業ポートフォリオを進化させている。

【企業概要】人材サービス、携帯業界向けが8割

 ライクは1993年、大阪で設立された。当初はパッケージ旅行の企画事業を目的としており、社名も現在とは異なりパワーズインターナショナルと称していた。その後1996年に代理店として携帯電話の販売を開始、他社から代理店契約を譲受したりしながら成長し、1998年に現在の主業となる人材サービス事業を開始するのだが、この沿革から、今現在もライクの人材サービス売上高のうち8割をモバイル業界が占めている。

 2005年に東証マザーズに上場、2007年に東証一部へ市場変更。現在の持ち株会社体制になったのは2009年のことである。2016年5月期の連結売上高は318億4千万円。求職者、スタッフ、保育・介護施設の利用者、 株主様等全てのステークホルダーに愛される企業グループでありたいという気持ちを込めて、2016年12月に社名をライクに変更した。

【経営陣】創業者の岡本氏が社長

 創業者の岡本康彦氏(55)が社長を務める。岡本氏は広島銀行出身。文化倶楽部を経て1993年にパワーズインターナショナル(現ライク)を設立した。取締役8名のうち2名を女性が占める。同社は女性の従業員比率が高いことに加え、保育事業を営むサクセスホールディングスを子会社に持つため、女性の意見を経営に反映する意向があるとみられる。

【株主構成】岡本一族で48%を保有

ライクの主要株主
氏名又は名称 所有株式数(株) 持ち株比率(%)
岡本 泰彦 3,490,900 34.98
日本トラスティ・サービス信託銀行(信託口) 932,700 9.34
有限会社マナックス 840,000 8.42
ジェイコムホールディングス 637,065 6.38
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 303,900 3.04
岡本 久美子 280,000 2.81
テー・オー・ダブリュー 280,000 2.81
岡本 真奈 230,000 2.3
三品 芳機 155,000 1.55
BARCLAYS BANK PLC A/C CLIENT SEGREGATED A/C PB CAYMAN CLIENTS 127,900 1.28
7,277,465 72.91
2016年5月末時点、有価証券報告書に基づき作成

 筆頭株主は岡本康彦社長で保有割合は34.98%。岡本氏の親族及び親族所有の法人の保有割合も合わせると一族での保有割合は48.51%に上り、大きく差をあけて日本トラスティ・サービス信託銀行が9.34%と続く。

【M&A戦略】働く女性を意識、段階買収で保育事業に進出

ライクの主なM&A
年月     内容
2007年3月 人材サービス会社のアトランティス(売上高3億2千万円)の株式100%を5千6百万円で買収。
2007年4月 完全子会社であるアトランティス(売上高3億2千万円)を吸収合併。
2007年10月 体育会系の大学生に特化した就活支援等を手掛けるインダス(売上高2億5千万円)の株式100%を3億3千万円で買収。
2008年5月 パッケージ事業、デジタルプロモーション事業等を行うエクサージ(売上高3千9百万円)の株式50%を2千万円で第三者割当増資引受により取得。
2008年7月 九州地区を中心に体育会学生の就職支援に強みを持つガーディアンシップ(売上高2億8千万円)の株式の45%を1千8百万円で第三者割当増資引受により取得。
2009年1月 関連会社のエクサージ(売上高3千9百万円)の保有全株式を5百万円で売却。
2009年11月 連結子会社のインダス(売上高1億5千万円)の保有全株式(保有割合100%)を5百万円で売却。
2009年11月 保育園等の運営を手掛けるサクセスアカデミー(売上高30億6千万円)の株式20%を1億1千万円で取得。
2011年9月 デザイナーやパタンナー等の人材紹介を行うアイ・エフ・シー(売上高非公開)の株式100%を3千5百万円で買収。
2013年6月 事務派遣、ビジネススクール事業を手掛けるエーススタッフ(売上高非公開)の株式100%を5千5百万円で買収。
2013年9月 子会社のACAヘルスケア・再編1号投資事業有限責任組合を通じて介護施設を運営するサンライズ・ヴィラ(売上高35億8千万円)と食堂・給食の運営受託を行うジャパン・コントラクトフード(売上高14億6千万円)の株式のそれぞれ87%を10億円で買収。
2014年7月 連結子会社のジャパンコントラクトフード(売上高14億6千万円)の保有全株式(議決権84%)を4億2千万円で売却。
2015年5月 TOBにより持分法適用会社のサクセスホールディングス(売上高101億1千万円)の株式23.93%を21億3千万円で買収。

 2007年3月、ライク(当時はジェイコム)が初のM&Aを行う。買収したのは東京を本社とする人材派遣会社のアトランティス。アトランティスはライクと同じく、携帯電話業界向けの人材派遣を主体とする完全な同業である。大阪に本拠地を置くライクは西日本には地盤を築いたが、東日本にはいまひとつ入り込めずにいた。地理的な弱みを補い、進出の足掛かりを作る形の買収だと言える。買収からわずか一ヶ月後にはライクは経営の効率化の為にアトランティスを吸収合併してしまう。

 同年10月に、就活支援等を手掛けるインダスを完全子会社化した。学生の短期就業を含めて若年層をターゲットとするライクにとって、インダスの持つ就職支援メディアや、体育会系学生を企業に橋渡しするという事業モデルにシナジーを見出したとする。

 なお、ライクはアトランティスを5千6百万円で買収しているが、これは当時のアトランティスの純資産4千5百万円からさほど開きはない。キャッシュの潤沢な市場変更直後にしては控えめな買い物という印象を受けるが、その一方でインダスの買収は対照的だ。純資産1千6百万円に対し、売上高をも上回る3億3千万円という値を付けた。3億円もののれんがつくほどにインダスの収益力が高いのかと思いきや、当時の営業利益はわずか6百万円程度である。加えて買収の後には赤字に転じていることから、実質の営業利益の高さも伺えず、やはり高すぎる印象が残る。

 2008年にはIT関連事業を行うエクサージの株式50%と、インダス同様の体育会系学生の就職支援を行うガーディアンシップの株式45%を第三者割当増資で引受けた。ガーディアンシップに関しては、既に買収していたインダスとの地理的な補完も含めてシナジーを狙い買収をした格好ながら、翌2009年にジェイコムホールディングスはインダスをわずか5百万円で売却してしまう。前述通りインダスに関しては高値づかみをしている感が否めないため、採算が合わず手放したと見るべきか。この高値づかみと損切りの潔さにはオーナー企業ならではの大胆さが透けて見える。加えて、インダスほどのインパクトはないものの、同年にライクはエクサージの株式も売却している。取得からわずか一年足らずと、こちらも実に見切りが早い。

 正直ここまではぱっとする買収のないライクであるが、サクセスアカデミーの買収は一つの転機であり、現在のポートフォリオの礎となっている。

 2009年11月、インダスを損切りした直後にライクは保育園の運営や児童向けのサービスを行うサクセスアカデミーの株式の20%を取得し持分法適用関連会社にした。サクセスアカデミーは後に保育業界3位の売上高となるサクセスホールディングスの前身だ。当時ジャフコ等の出資を受けており、上場に向けて準備を整えていたものとみられる。

 携帯電話やアパレル業界への人材サービスを主業とすることから、ライクは若年の女性従業員の比率が高い。保育事業は全くの畑違いでありながら、働く女性の保育への需要を肌で理解していた為に、保育園不足が本格的に騒がれる数年前には既に時代のニーズを先読みしていたようだ。なおかつ、保育分野での人材需要に本業の人材派遣とのシナジーがあるという読みも持つ。

 次いで小さな買収を挟んだ後に目を付けたのが介護事業だ。2013年、連結子会社として有するファンドを通じて、有料老人ホームの運営を行うサンライズ・ヴィラ及びそれに付随して食堂・給食の運営受託を行うジャパンコントラクトフードを買収。両社の行う介護事業を通じて、本業の人材サービス業での介護業界向け人材の採用・教育ノウハウも視野に入れる。実際に、相互に連携した人材採用や人材出向により介護分野での売上を伸ばすこととなるが、2014年、本命であるサンライズ・ヴィラの適正な購買を促すためとして、付随事業を行う形であったジャパンコントラクトフードを売却。あくまで介護に注力をする。

 そして現在のポートフォリオへの集大成と言えるのが、2015年、前述のサクセスアカデミー(現サクセスホールディングス)へのTOBによる連結子会社化である。これにより売上に保育事業セグメントが加わり、名実ともに保育分野への進出を果たした。

【財務分析】脱モバイル依存、事業構成が多様化

 ライクの行ったM&Aについて時系列に沿って辿ったが、業績面の推移を見たい。

 上記業績の数値は2007年5月期までは単体、翌期以降が連結のものである。売上・営業利益ともに若干の波はあるものの、パソナやテンプホールディングス等大手の派遣事業者のようにリーマンショックによる大幅な落ち込みは見られない。派遣は派遣でも、上がり基調のモバイル市場のみに特化していたために、リーマンショックのあおりは軽く済んだ様子だ。

 よって、同業他社のように売上を上積みするための買収が必要なかったために、ここ最近まで大型の買収が必要なかったと見ることもできる。

 冒頭にも、ライクの総合人材サービス業におけるモバイル業界への比重が高いことを述べた。それでは、総合人材サービス業自体が全体に占める割合はどれほどか。実は、ライクは2010年5月期までは90%以上を占めることを明言しており、以降2013年5月期までは「総合人材サービス事業以外の事業に関しては重要性が乏しい」としてセグメント情報を開示していない。売上のほとんどを総合人材サービス事業≒モバイル業界向けの派遣事業に依存していたことを裏付けている。

 新たな事業の柱としての保育事業や介護事業を取得したのはごく近年のことであり、理念として掲げる「人生のどの段階においても」なくてはならない企業グループとしての事業ポートフォリオはM&Aによって構築したと言える。

 同時に、バランスシートを見てみよう。2015年5月期まで実質無借金経営であるのだが、もっと言うならば2013年5月期までは有利子負債自体が存在しておらず、名実共に無借金経営を行っていた。ライクのバランスシートに初めて有利子負債が現れたのは2014年5月期、介護事業の買収のための資金調達によるものだ。手元資金で小粒の買収を行う方針から、リスクを取りながらも新規事業の柱としての大型案件を狙う形への大胆な方向転換が見て取れる。直近期ではサクセスホールディングスの買収に費用がかさみ、現預金を有利子負債が上回っている。

【株価】保育事業の収益化を好感

 株価は2015年後半から2016年前半にかけて大幅に上昇している。これは2015年7月にサクセスホールディングスを連結子会社化し、保育事業が収益に貢献し始めた時期と重なる。さらに人手不足を背景に総合人材サービス事業も好調に推移しており、2016年1月に連結業績予想の上方修正と増配を発表したことで株価上昇に弾みがついた。

 大量保有報告書によると独立系運用会社のレオス・キャピタルワークスが2016年4月までにライク株の5%を取得。その後、2016年12月までに9%強まで買い増したことが明らかになっている。ちなみにレオス・キャピタルワークスの藤野英人社長は同年12月、講師を務める明治大学の講座でライクについて紹介している。岡本社長も学生向けに話をするなど(ライクホームページより)、投資家と良好な関係を築いていることが伺える。

 足元では株価の上値が重くなっている。今期の予想PERは約25倍。家電や携帯電話向け人材派遣事業を手掛けるヒト・コミュニケーションズ<3654>の15倍、保育事業のJPホールディングス<2749>の約21倍と比べて割安感は乏しい。しかし、幼児から現役世代、高齢者までカバーする同社の事業ポートフォリオに対する投資家の成長期待は高い。足元の業績は好調に推移しており、中期経営計画で目標に掲げる2019年5月期の売上高552億円、経常利益35億円が視野に入ってくれば、株価は再び上昇に転じる可能性もありそうだ。

【まとめ】時代をとらえたタイムリーなM&A

 2016年現在、行政指導でスマートフォンの料金が高騰し、販売件数の伸び率への影響が懸念された。結果的にはキャリア及び業界への影響は限定的だとされるものの、一時は紙面を騒がせていた。店舗への人材派遣業に対してどれだけの余波があるかは定かではないが、単一の業界に依存する場合、こうしたリスクは今後も避けられない。

 一方で、与党が一億層活躍社会を掲げる中で多数の待機児童が社会問題となり、保育士の不足が顕著となった。2015年度には1,318億円だった国の保育対策関係予算が2016年度は9,294億円と大幅に増加しており、市場の拡大が見込まれる。ライクはこの市場へいきなり業界3位の地位で参入したわけだから、M&Aの意義は大きい。入口としての買収規模では比べものにならないが、同じく成長市場である介護分野での買収、新規参入という意味では同様だ。単一業界への依存を脱却するのみならず、成長市場へ参入を果たした良いポートフォリオを築いたと言える。

 時代のニーズを上手く捉えても、一から事業を立ち上げていては時流に乗り遅れる可能性もある。財務面での多少のリスクは伴うものの、本業外の成長市場にタイムリーに参入し戦うことが出来るところに、M&Aで時間を買うことの妙味がある。その意味で、ライクはM&Aを活用して本業とシナジーのある成長分野を迅速に立ち上げた好例と言えるだろう。

この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

カレー沢薫の時流漂流 第43回

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

2019.05.20

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第43回は、大津の痛ましい事故で炎上した「マスコミ」問題について

滋賀県・大津市で散歩中の園児の列に軽乗用車が突っ込み、園児二名死亡、多くの負傷者を出す、という事故が起った。

池袋のプリウス事故の衝撃が冷めやらぬまま、また痛ましい事故が起ってしまった。池袋の事故では「高齢者の自動車運転問題」「上級国民疑惑」が大きく注目されたが、今回の事故では全く別のものが炎上した。

マスコミ問題である。

マスコミが保育園を追求したのは視聴者のため?

事件が起こった当日夕方、被害者の園児が通っていた「レイモンド淡海保育園」が記者会見を行ったのだが、そこで質問をした記者の血が青とか紫とかほとんど寒色系じゃないかと、大きく批判された。

記者会見が、どのような内容だったかというと「危険な場所という認識はあったのか?」「保育士が道路側にいたのか?」という、何としてでも保育園側に批があったようにしたくてたまらない質問、「園児たちの様子は普段と変わらなかったのか?」という意図のわからない質問、 「散歩したのは園に庭がないからか?」という「園に庭さえあればこんなことには…」という「ニ兆円さえあれば」に匹敵する、壮大なたられば論などが挙げられ、質問を受けた園長は号泣、それを記者がバッシャバッシャ撮影するという地獄絵図だったそうだ。

記者会見を見た多くの人が「何を食ったらそんな質問ができるんだ」と思っただろうが、この記者会見は、たまたまその場にプラスチックを食って育った選りすぐりのサイコパッシャーが大集結してしまったという、悪い意味でのアベンジャーズだったワケではないと思う。

記者が何故あのような質問をしたかというと、決して趣味ではなく、おそらく「視聴者の見たい画」「聞きたい言葉」を引き出そうとした結果なのではないか。もちろん「あんなもの見たくなかった」という人が大半だと思う。

しかし、池袋プリウス事故で加害者が即逮捕されないことが大きく批判されたことからも、現在の我々視聴者に「悪が一刻も早く、俺たちの目に見える形で処されるところが見たい」という「ニーズ」が少なからずあることが分かっているのだ。

つまり「お客様に一秒でも早く悪が吊るされる様をお届けします!」というニーズに応えようとする企業努力が、「悪くもない保育園をとりあえず悪にして即斬る」という、完全に間違った「悪・即・斬」になってしまったのではないだろうか。

「マスゴミ」問題は視聴者の問題?

しかし、「被害者側への無配慮な取材はいらん」というのも、今回の件だけではなく、視聴者側が何度も言い続けている「ニーズ」である。

何故それが無視されてこのような会見が行われるかというと、被害者の声まではいらなくても、やはり我々が平素「センセーショナル」な物を求めてしまっているからではないだろうか。よって記者たちは「とにかく刺激的なものを撮ってこい」と言われ続け、感覚がマヒし、本来配慮が必要なはずの取材にすら「センセーショナルさ第一」で臨んでしまい、まるで不倫記者会見のようなノリの質問が飛ぶことになってしまったのではないだろうか。

やはり報道というのは「視聴者が何を見たがっているか」が反映されるものだ、需要がなければ供給はなくなる。このような記者会見が行われなくするためには、何度でも我々が「こういうのはいらんのや、見んし、お前らの雑誌買わんわ」と言い続けるしかないだろう。

ところで、「質問をした記者を特定して処してやろう」という動きも当然のように起こったらしい。やはり我々の「悪を処したい」「処されるのを見たい」という気持ちは根深い物があるのだ。

ちなみに、今回の事故では当初、車を運転していた52歳と62歳の2人が逮捕された。「また高齢者か」という声も上がったが、この年齢で高齢者と呼べるかは微妙なところだ。結局「車を運転する以上誰でも事故を起こす可能性がある」ということである。

車を運転しない人は「歩道を歩いていて車が突っ込んでくるなんてどうしようもない」という被害者観点から絶望したと思うが、車を運転する人は加害者観点でも恐怖したと思う。

もちろん安全運転に越したことはないが、人間には「限界」と「不測の事態」があることでおなじみである。持病もないのに運転中に突然何らかの発作が起こる可能性だってあるのだ。「どうしようもないこと」で被害者になることもあるが、加害者になることもあるのである。

つまり、車がないと生活できない土地で、私が週一ぐらいしか外出せず、引きこもり続けているのは、近隣住民の命を守る草の根活動でもあるのだ。しかし、それは無職だからできる事業なので、多くの人が、少なからずリスクを負って車を運転しなければいけない。

そのリスクを減らすには、運転者が気をつけることはもちろんだが、何せ限界がある。つまり、人間がこれ以上、進化することなく、むしろ高齢化で退化する一方だとしたら、無機物の方を整備していくしかない。

事故が起りにくい道路作り、そして車だ。

現に、車の事故防止機能はどんどん進化しており、自動運転化の開発も進んでいるという。自動運転が本当に安全なのか不安もあるが、少なくとも老が運転するよりは確実に安全になるだろう。

しかし、今のところそういった事故防止機能がついた車を買うか否かは、任意である。そして、そのような機能がついた車は高くなる。よって私の車は金銭的問題で、タイヤとハンドルがついているぐらいであり、運転手がミスったら、そのミス通り事故を起こしてくれる、素直な仕様である。

現在でも事故防止機能のある車を購入した場合、補助がもらえることもあるようだが、導入が任意な以上、つけない人はつけないだろう。これからの車には、タイヤ、ハンドル、事故防止機能を、もう屋根ぐらい忘れても良いから義務付けるべきではないだろうか。

関連記事
スープラは最高の合作? トヨタ副社長に聞く新型スポーツカーの存在意義

スープラは最高の合作? トヨタ副社長に聞く新型スポーツカーの存在意義

2019.05.20

トヨタが5世代目となる新型「スープラ」を発売

直列6気筒のFRで伝統を踏襲、最上級グレードに予約集中

BMWとの共同開発について気になる点を友山副社長に聞く

トヨタ自動車は新型「スープラ」(GR Supra)を発売した。先代スープラの生産終了から17年ぶりの復活だ。価格は3リッターの直列6気筒(直6)ターボエンジンを搭載する「RZ」が690万円、2リッターの直列4気筒ターボエンジンを積む「SZ-R」が590万円、同「SZ」が490万円。直6+FR(フロントエンジン・リアドライブ)という歴代モデルの伝統を踏襲した5世代目は、トヨタとBMWの共同開発で誕生した。

新型「スープラ」。ボディサイズは「RZ」で全長4,380mm、全幅1,865mm、全高1,290mm。こだわったのは「短いホイールベース(前輪と後輪の間の幅、2,470mm)」「幅広いトレッド(左右のタイヤの幅、RZでフロント1,595mm、リヤ1,590mm)」「低い重心高」の3つの基本要素だという

儲からなければ儲かるまで“カイゼン”

新型スープラはBMW「Z4」のプラットフォームとエンジンを使っている。企画とデザインはトヨタが、設計はBMWが担当した。

トヨタでは月間220台の販売台数を想定していたが、2019年3月に予約注文の受付を開始すると、新型スープラには予想を超える数のオーダーが殺到した。事前受注は約1,400台に達したという。予約注文のうち、約7割が最上級グレードのRZに集中したことも予想外だったようで、トヨタは一時的に、同グレードの予約受付をストップしていた。

増産やグレード変更などの生産調整により、現在、RZの受注は再開している。とはいえ、今からRZを注文しても、納車は2020年1月ごろになるそうだ。

「マットストームグレーメタリック」をまとった新型「スープラ」(画像)は限定車。2019年度分の24台については、6月14日までWeb限定で商談の申し込みを受け付ける。商談順は抽選となるそうだ

「モビリティカンパニー」になると宣言したトヨタが、スポーツカーのスープラを復活させる理由については、最近、テレビやラジオのコマーシャルでもしばしば耳にする「馬がクルマに置き換わっても、競走馬は残った」という言葉の通りだ。つまり、電動化や自動化でクルマの在り方が変わっていっても、単なる移動手段ではなく、所有したり乗ったりすることで、喜びを感じられる存在として残るクルマもあるので、そういった製品を作り続けたいというのがトヨタの思いである。

新型「スープラ」はトヨタとBMWが2013年に包括提携を結んでから初の商品となる。生産はマグナ・シュタイヤーに外部委託し、オーストリアのグラーツ工場で行う

とはいえ、スポーツカーは年間何万台も売れるクルマではないし、採算が取れないおそれもある。その点については、新型スープラ発表会に登壇したトヨタの友山茂樹副社長も「スポーツカーは儲からない、売れないという冷ややかな見方があることは事実」と認めるところだ。しかし同氏は、「儲からなければ儲かるようになるまで、売れなければ買ってもらえるようになるまで、歯を食いしばってでもカイゼンを続ける」ことがトヨタ本来の姿であるとし、「クルマは五感で感じるものだというDNAを次の世代に継承しなければならない」との考えを示した。

新型「スープラ」は歴代モデルと違って2シーターだ

「BMW製では?」の声に友山副社長の回答は

気になるのは、スープラがBMWとの共同開発であり、エンジンとプラットフォームというクルマの中心部分がBMW製であるという点だ。「トヨタの思いは分かるけど、結局、BMWのクルマなのでは……」という見方があるのは、おそらく間違いないだろう。

こちらがBMW「Z4」。大きな違いはスープラがクーペでZ4がオープンカーであるところだ。「Z4」の価格を見ると、3L直6エンジンを積む「M40i」が835万円、2L直4エンジンを積むエントリーモデル「sDrive20i」が566万円となっている

そのあたりについて、友山副社長が語ったところをまとめると、まず、「スポーツカーは数(販売台数)が限られる割に、開発には莫大なコストがかかるので、単独で作るのは難しい」とのこと。今回のスープラは企画とデザインがトヨタ、設計がBMWと説明しているが、クルマの開発は「そんなに簡単なものではないし、(明確に役割を)区切れるものでも」なく、企画の段階で、トヨタとしてどんなクルマを作りたいか、どんな味を出したいかといった点については徹底的に詰めたという。それに、これは多少、冗談めかした発言ではあったものの、「BMWが作ったクルマだから」という理由でスープラを購入する顧客もいるそうだ。

トヨタの友山副社長。自身は先代「スープラ」を改造して乗っていて、トヨタの役員駐車場で警備員に止められたこともあるという

スープラを「BMW製」だと見る人たちに対して友山副社長は、「どこ製ということではなく、これは『スープラ』なんです。両社のいいところを組み合わせた最高の合作、それがスープラです。乗ると分かりますが、Z4とは全然違います」とのメッセージを伝えたいそうだ。

関連記事