パナソニックがクルマを作る? 激変の自動車業界で異業種にチャンス

パナソニックがクルマを作る? 激変の自動車業界で異業種にチャンス

2017.01.20

今年で50周年を迎えたCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)に初回から参加する数少ない日本企業、パナソニック。その展示が近年、急速にモビリティ色を深めている。今回は自前のコンセプトカーまで発表。その真意を会場で関係者に聞いた。

モビリティ色を強めるCESでのパナソニック(画像はパナソニックより)

3年でがらりと変わったパナソニックの展示内容

パナソニックといえば、テレビやパソコン、洗濯機、冷蔵庫など、ありとあらゆる分野に製品を送り出している日本の家電メーカーの雄。一方のCESは、日本では「家電ショー」と呼ばれることが多い。

となれば同社のブースは、家電のオンパレードとなっても不思議ではない。ところが今年、パナソニックの広大なブースは、約半分がモビリティ関連の展示で占められていた。

同社のプレスリリースをチェックしてみると、3年前、つまり2014年のCESの展示テーマはズバリ「4K」。つまり映像がメインだった。それが翌年になると、「家電」、「企業向けソリューション」、「車載・デバイス」といった3つの分野を掲げるようになり、初めて自動車関連製品が具体的に登場してくる。それでも、スペース的には全体の6分の1程度だった。

さらに2016年のCESでは、「スマートホーム」、「ビジネス/リテール」、「モビリティ」、「スタジアム」の4つのエリアで提案しており、車載製品から歩を進めてモビリティ、つまり移動そのものに関する製品の展示も始まった。

テスラとの親密ぶりもアピール

このように、CESにおけるパナソニックのモビリティ関連展示は、この3年間で急速に増えてきたのである。その内容は、近くにブースを構えていた、もともとモビリティ分野のサプライヤーとして君臨してきた独ボッシュに匹敵するレベルにあった。

もちろんこれまでも、パナソニックは自動車業界と深い関わりを持ってきた。なかでも最近の動きとして有名なのは、地元米国を代表する電気自動車(EV)メーカーであるテスラ・モーターズのバッテリー生産だ。

テスラとの取り組みを紹介する展示には実車も用意(画像はパナソニックより)

今回のCESでも、もちろんこの分野はメインの1つとなっていて、ガルウイングドアが印象的なクロスオーバー「モデルX」の実車を展示するとともに、同車に使われているリチウムイオン電池のカットモデルを展示し、テスラとの親密な関係をアピールしていた。

移動に関わる幅広い分野に進出

でも、パナソニックが電動車両用バッテリーを供給しているのは、クルマだけではない。台湾生まれの電動スクーター「ゴゴロ(Gogoro)」にも使われている。このゴゴロ、バッテリーをレンタルする形でのスクーターシェアリングとして開発され、ボッシュのスクーターシェアリングサービス「クープ(Coup)」の車両として起用されるなど、注目の1台なのである。

ゴゴロとバッテリー(画像はGogoroより)

驚いたのは、テスラやゴゴロの隣にバス停が設置されていたこと。スマートバスシェルターと名付けられたこれは、巨大なディスプレイで運行状況を確認できるだけでなく、他の交通情報も紹介。バスが遅れているのでライドシェアで目的地に行きたいときは、ここから呼び出すこともできる。日本でもいち早く取り入れてほしい、便利なバス停だった。

さらにブースには、巨大なスマートシティのディスプレイも据えてあった。車両や道路にセンサーを設置することで、より安全で効率的な道路交通を目指すという内容は他社でも見られるが、パナソニックの場合、昨年からコロラド州デンバーなどで実際に実験を行っている点が異なる。消費者や企業のみならず、自治体にも入り込んでいるのだ。

左がスマートバスシェルター。右はスマートシティのディスプレイだ(画像はパナソニックより)

コネクテッドカーにもパナソニックの技術

コネクテッドカーの分野にもパナソニックは関わっている。フィアット・クライスラー・オートモビルズ(FCA)が今年のCESで公開したコンセプトカー「ポータル」もその1つだ。

ポータルはドアの開口部に仕込まれたカメラを使って乗員をチェック。認識するとその人が選んだ色で開口部が光り、迎えてくれる。インパネにもカメラがあり、その人に合った音楽や空調を設定してくれる。このうち音楽は4席別々のソースを楽しむことが可能。さらには移動中にスマートホームの遠隔操作もできるという。

コネクテッド技術は自動車だけでなく航空機にも及んでいる。つまりコネクテッドエアクラフトだ。乗客が所有するタブレットで映画や照明などの操作が可能で、テレビ番組をリアルタイムで見ることもできる。さらに運行面でも、最新の天候状況を航空機に伝えることで、より安全でかつ燃料消費の少ない飛行を目指せるという。

ついに自前のコンセプトカーが登場!

そしてパナソニックは今年、自前のコンセプトカーもお披露目した。2025年の自動運転車のインテリアを予想したという「オートノマス・キャビン・コンセプト」だ。

オートノマス・キャビン・コンセプト(画像はパナソニックより)

このコンセプトカーでは、乗員がそれぞれ独自のタブレットで映画や音楽を楽しめる。それだけではなく、マジックリングと呼ばれるリングをタブレット上に置くと、そこがエアコンの温度やイルミネーションの色などを調節するダイヤルに変身。ドアトリムに張られた薄いウッドパネルの奥からも映像が浮き出てくる。

ロンドンにあるパナソニック・デザイン・センター・ヨーロッパでこの車両のコンセプト作りを担当したシニアデザイナー、山本悠平氏に会場で話を聞くことができた。「今後のクルマは自動運転とコネクテッドが一般的になり、車内でどう過ごすかが大切になっていくと考えたとき、家電の経験をいかせるのではないかと考え、それらを1台にまとめることにしました」。これが山本氏がオートノマス・キャビン・コンセプトに落としこんだ考え方だ。

確かに運転という仕事から解放されたとき、乗員が車内で何をして過ごすかは大事になってくる。こうしたテーマに対して、さまざまな製品で快適な暮らしを提供してきた家電メーカーのノウハウは、役立つような気がした。

オートノマス・キャビン・コンセプトの乗員は、それぞれが独自のタブレットで楽しみを見つける(画像はパナソニックより)

家電メーカーがクルマ作りの主役に?

それとともに、自動運転車やコネクテッドカーでは、これまでサプライヤーの立場にあった家電メーカーが主役の一角を占めるチャンスであることも想定して、コンセプトカーを展示したという見方もできる。

今回のCESではBMWとインテル、モービルアイの提携が発表されるなど、自動運転車やコネクテッドカーの普及を前に、再び業界が動きつつある。日本はこの荒波に乗り遅れるのではないかと危惧する声もある。

そんな中でパナソニックは、クルマを含めたモビリティ全体への進出を、着実に進めつつある。グーグルやアップルに並ぶキープレーヤーになるか、注目に値する存在であることは間違いない。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。