自宅で世界一のコーヒー実現! パナソニックのIoT家電ビジネスの新しさ

自宅で世界一のコーヒー実現! パナソニックのIoT家電ビジネスの新しさ

2017.01.23

通信を通じて様々なものにつながるIoT家電が当たり前になりつつある時代になった。そんな中、パナソニックは、新しいタイプのビジネスにたどりついた。

パナソニックがIoTの焙煎機を開発

パナソニックは、プロ仕様の焙煎機を製造しているイギリスのベンチャー企業「IKAWA」社と技術提携し、きめこまかな温度や、風量制御などによって豆ごとの最適な焙煎ができる家庭用の焙煎機を開発した。この焙煎機はBluetooth接続でスマホ(iOS搭載端末のみ対応)につながるようになっている、いわゆるIoT家電だ。

家庭用なのでサイズはコンパクト、ボタンは1つしかない。スマホの画面には、残り時間が表示される

機械の操作は簡単だ。専用のアプリから焙煎プロファイル(焙煎工程のプログラム)を焙煎機にとばし、生豆を準備したらセット完了。1つだけあるボタンを押すと、予熱が始まり、その後焙煎へと進む。この間、工程ごとの残り時間がアプリ上で表示される。

焙煎のプロファイルによるが、会見のデモンストレーションでは、全体で大体20分くらい。アプリから送られたデータによって、本来プロが手間ひまかけて行う焙煎を、簡単に再現できるというのだ。

なぜ、パナソニックはコーヒーの焙煎機に目をつけたのか。

ヒートアップするコーヒーをめぐる市場

日本のコーヒー市場は年々拡大している。大量生産により、安価で一般家庭でも飲めるようになった「第一の波」、米シアトル系のコーヒーチェーン店が広まった「第二の波」、そして豆の産地や種類・抽出にこだわるスペシャルティコーヒーが登場した「第三の波」。消費量とともに質もどんどん上がっている。

そんなコーヒーをめぐる市場では、現在、缶コーヒーや、インスタントコーヒーなどを製造している飲料メーカーから、スターバックス、タリーズコーヒーといった「第二の波」のコーヒーチェーン、セブン-イレブンやファミリマートなどのコンビ二、マクドナルドのファストフード、そしてブルーボトルコーヒーに代表される「第三の波」の新しいコーヒーチェーンなど多様な業界からの参入が起きている市場だ。日本の消費者の舌はどんどん肥えていき、それに応えるように、新しいコーヒーが出てきているのが現状だろう。

ところが、コーヒーのおいしさは、店舗でやっている「豆を挽く」「抽出する」作業の前で9割決まっているそうだ。つまり、今まではわずか1割の中で、各社が味を競っていたということだ。

コーヒーのおいしさは生豆と焙煎で9割決まると言われている……

そして、最近では、「焙煎」もこだわるという流れができている。スターバックスやタリーズコーヒーが焙煎機を備えた店舗展開を始めているのだ。コーヒメーカーを出していたパナソニックからしても、残りの9割にアプローチするという考えはごく自然な流れだっただろう。

家電業だからこその自宅焙煎で「第四の波」を狙う

その豆ごとに最も素材の良さを引き出す焙煎は異なり、プロでないと最適な仕上がりにするのは難しい。家庭用の焙煎機も今まで売っていなかった訳ではないが、プロの味には届かないものだったという。そこで家電メーカーであるパナソニックが思いついたのが、調理家電の技術とIoTを活用し、プロ顔負けの焙煎ができる家庭用焙煎機だったのだ。

ただ、性能のいい機械をつくっても、素材と、IoTで送る焙煎のプロファイルがよくなくては、おいしいコーヒーにはならない。

パナソニックは明治39年に創業し、当初からコーヒーの生豆の輸入事業に注力している石光商事と提携。家庭用焙煎機と石光商事の厳しい安全基準によって選び抜かれたスペシャルティ豆(定期頒布)、そしてその豆に合わせた焙煎プロファイルの3点をセットで提供するサービス「The Roast(ザ・ロースト) 」を、4月上旬からスタートさせる。

3点揃わないと自宅で美味しいコーヒーは焙煎できないそうだ

焙煎機単体だけ売るという予定は、今のところないという。なぜなら、焙煎する良質な豆と、それにあわせたプロファイルがあってこそだからと考えているためだ。自分で買ってきた生豆を、専用豆のプロファイルで焙煎することはできたとしても、味の保証はない。だからセットサービスなのだ。購入は、パナソニックのショッピングサイトPanasonic Store(パナソニック ストア)のみでできる。

プロの味をつめこんだプロファイルの重要性

焙煎士の後藤直紀氏

今までに述べてきてわかるように、かなり重要な役割を果たすのが、このプロファイルだ。

セットに入る焙煎のプロファイルは、2013年に焙煎の世界大会でチャンピオンになった、焙煎士の後藤直紀氏が作成。送られてくる生豆パックについているQRコードをスマホにかざすと、アプリにその生豆のプロファイルが読み込まれる。それを焙煎機にとばせる仕組みなのだ。浅煎りから深煎りまで豆ごとに2、3パターンのプロファイルがあり、同じ豆でも焙煎度による味や香りの違いを楽しむことができる。月ごとに違った産地の生豆が送られてくる(2種類セットと3種類セットがある)が、追加の購入も可能だ。このサービスを利用すれば、自宅で手軽に、プロの焙煎士が焙煎したのと同じ味を体験できる。

コーヒーの自宅焙煎という「第四の波」となれるか。それは、いれたコーヒー味の質がいかに高いか。それを、自宅の中で体験できるということに、いかに高い価値を感じてもらえるか。そこにかかっているだろう。パナソニックは、潜在需要を3~4万世帯としているが、新しいビジネスなので、まずサービスの認知を広めるところからだろう。

IoT家電によって技術を再現、体験を売るサービス

調理家電の技術とIoTを活用し、プロでないと実現できない技、そしてそれにふさわしい食材をセットにすることで、本来であれば、自宅ではできない食体験を提供する。この食の体験サービスを今後は、コーヒー以外にも展開していくという。

多種多様なIoT家電が、世に出ているが、それによって、その場に行かないと得られないプロの技を“再現”できる。遠くにいても“体験”できる。そういう“つながり”を生むものは、なかったのではないだろうか。これは家電メーカーだからこそできる、新しいサービス提供のあり方だろう。次はどのような新しい食サービスが出てくるか。今後の展開が楽しみだ。

「選択と集中」が進みすぎた、日本の科学技術への投資

藤田朋宏の必殺仕分け人 第1回

「選択と集中」が進みすぎた、日本の科学技術への投資

2018.11.15

ちとせグループCEOの藤田朋宏氏による新連載

巷を賑わす”ヘンな出来事”の問題点を、独自の解釈で洗い出す!

第1回は、「日本の科学技術投資」について

バイオベンチャー企業群「ちとせグループ」のCEOを務める藤田朋宏氏による新連載。“手段と目的の違い”によって生じた「ヘンな出来事」の問題点を、独自の視点で語ります。第1回は、「日本の科学技術投資」について。日本の科学技術への投資の問題点とはいったい何なのでしょう?

才能と“伸びしろ”に投資する、日本サッカー協会

先日、クアラルンプールに出張したときのこと。宿泊先のホテルが偶然にもサッカーの日本代表と同じだった。「日本代表」と言っても、同じホテルに泊まっていたのは本田や長友ではなく、U-16アジア選手権に参加している若い選手たち。

そこで彼らを見ていて、ふと考えた。日本サッカー協会の「選手への投資」は、実は凄く効率がいいのではないか。どうしてそう思ったのか、順を追って説明したい。

ホテルに置いてあったU-16アジア選手権のバナー

チェックインを済ませ、「部屋の準備があるから、ちょっとだけそこで待っていて」と指示するホテルマンに従い、ひとりロビーに放置されている間、何となしに選手の情報を調べてみた。それから一時間半。23名の選手一人ひとりの顔だけでなく、利き足まで覚えるくらいの時間が経っても、僕はまだロビーで放っておかれたままだった。まぁ、東南アジアではよくあることなので、腹は立たなかった。

ところで、「過去のU-16日本代表がその後、何度も日本代表に選ばれる割合はどれほどだろうか」と疑問に感じ、調べてみたところ、各年20数名の代表選手のうち、現役で活躍している選手は約1人であることが分かった。確かに16歳の段階では身体の発達に差があるし、試合で活躍できるかは運の要素も絡む。コーチとの相性やケガの問題もあるだろう。

そうは言っても、16歳の時点で日本代表に選ばれるだけのポテンシャルを持つ選手のうち、その数%しか将来も活躍できる選手がいない、という事実には驚いた。実際、長谷部、本田、岡崎、長友……など、この10年で活躍している選手たちの多くは、16歳時点ではそこまで期待されていなかった選手ばかりだ。

ではなぜ、そういった選手が後に日の目を浴びられたかというと、それは彼らにも「チャンス」を与えられていたからだろう。日本サッカー協会は、16歳時点で選抜したトップ選手だけに集中投資するだけではなく、同年代の他の有望選手にもしっかりとチャンスを与え続けられるような仕組みをつくれたのだと思う。

際立って目立つ選手だけではなく、将来の伸びしろがありえる選手にも、最低限のチャンスは回ってくることで、未来のトップ選手の育成が図れる。そうやって日本サッカー協会はこれまで、世界に通用するような選手を輩出してきた。

「科学技術に投資せよ」ではなく、予算配分の再考を

前置きが長くなってしまったが、ここから本題に入りたい。

先日、京都大学特別教授の本庶佑先生がノーベル賞を受賞したというニュースが流れた。「自分がバイオテクノロジー業界で働く人間だから」というのは関係なく、本庶先生と周りのチームの方々の長年にわたる科学に対する貢献が認められたこと、その事実に接した関係者の気持ちを想像すると、とても嬉しい気持ちになった。

ノーベル賞メダル(レプリカ)

 

近年、日本人のノーベル賞受賞が続いている。彼らのような日本の科学業界の仕組みをよくわかった方々は、これまで数多くのご苦労をされてきたことだろう。しかし、1つ残念なこともある。能力はもちろん、人格的にも優れたそういった先生方が、ノーベル賞受賞のタイミングでマスコミに発表する一世一代のコメントが「日本国の科学技術投資、科学技術教育のあり方についての憂い」であることだ。

僭越ながら、先生たちのコメントを解釈すると、よくニュースで取り上げられるような「科学技術にもっとお金を使え」ということではなく、その先にある「国家予算の配分」についての指摘をしていると認識している。

誰がなんと言おうと、日本の科学技術投資の選択と集中は年々進んでしまっているのが現状だ。しかし、先生方のいうような「選択と集中が進みすぎている」という指摘に対して、「日本にはもうお金がないのだから科学技術にばかり投資できない」と答えがずれてしまっている。

これこそが、日本の科学技術投資における問題ではないだろうか。

日本にはびこる「選択と集中こそが正解だよ病」

随分前からずっと不思議なのだが、そもそも「選択と集中こそが正解である」なんて、誰がいい出したのだろう。「選択と集中」の戦略で物事をうまく切り抜けられるようなことは、本当に生きるか死ぬか、背水の陣を敷いている時くらいだと思うのだ。

今の日本の「選択と集中こそが正解だよ病」はなかなか根深く、そもそもの目的を実現することよりも「選択と集中」を行うことそのものが目的になっているんじゃないかと感じることが多い。

今の日本で行われている多くの意思決定の場面で、サッカーの例で例えると、U-16日本代表を選んだ人のメンツを潰さないということが、強い日本代表をつくることよりも優先されてしまっているように思う。

そのため、16歳の時点で選んだ選手だけに集中投資し、16歳の段階で選ばれなかった他の選手のポテンシャルに賭けることもしないというような「選択と集中が正解である」という間違えた進め方で意思決定が行われているようなことが多いように感じる。

サッカー選手の育成でも、科学技術の投資でも初期の段階で選抜してそこだけに集中投資するという戦略を繰り返せば繰り返すほど、全体としての力は落ちる一方になるのではないか。歴代のノーベル賞受賞者の先生方も、そういうことを言いたかったのではないかと思う。

手段であるはずの「選択と集中」が、目的となっている?

私は、「16歳の段階で、将来素晴らしいサッカー選手になる人物を見分けられる」なんて言葉は、伸びしろのある選手に対しておこがましいと感じる。これは科学技術の研究にも同じことが言える。「その研究が将来素晴らしい成果を残すかどうか見分けられる」なんて言葉は、科学者に対しておこがましい。

もっと言ってしまえば、どの研究が将来化けるかの判断は、16歳のサッカー選手の成長を言い当てることより遥かに難しいだろう。なぜならば、サッカーという競技のルール自体は変わらないが、科学と言う競技はルール自体を決めているので、科学研究の将来性をあらかじめ予測するのは16歳のサッカー選手の将来性を予測するより難しいためだ。

そんな中、日本サッカー協会が幅広い底上げに力を入れ、紆余曲折も有りながらも右肩上がりの成長を維持できているにも関わらず、日本の科学技術投資は過剰な「選択と集中」を強めるが故に、科学技術力の相対的な低下を招いているように感じる。

その差はいったい何か? これは1つの仮説でしかないが、日本サッカー協会の強さの秘訣は、会長の独断で物事を決められる側面が強い組織であるために「目的」がハッキリしている点にあるのではないだろうか。

その一方で、日本の科学技術投資のような“数多くの人の善意の組み合わせの上になり立っている意思決定機構”では「選択と集中を進めることが正解である」という、本来手段の一つである価値観が「目的」となってしまっているように感じる。

本来考えるべきは、「日本の科学技術をどうするべきか」ということであるにも関わらず、その手段と目的が逆転しまっているのではないだろうか、と思うのだ。

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

2018.11.14

音楽に特化した「YouTube Music」が日本でスタート

有料会員になれば、広告なし再生やオフライン再生が可能

YouTube Premiumでは、オリジナルコンテンツの配信も開始

仕事や作業をする際、周りのノイズをカットして集中するために、音楽を聴くという人は多いだろう。わかる。よくわかる。フロアが騒がしいと作業に全く集中できない。周りで仕事している人がいるということがわからないのだろうか、と疑問に思うが、まぁそれは置いておいて、パソコンで作業する場合、手軽に好きな音楽を聴けることから、YouTubeで音楽を聴くという人も多いのではないだろうか。

そんなYouTubeユーザーに朗報である。11月14日、Googleは音楽に特化したストリーミング再生サービス「YouTube Music」を日本でローンチすると発表したのだ。

好みやシーンに応じて楽曲をレコメンド

YouTube Musicは、音楽再生に特化したアプリ。YouTubeにある公式の曲やプレイリスト、歌ってみた、弾いてみたなど、さまざまな音楽動画を視聴することができる。

また、機械学習が活用されているのも特徴の1つだ。視聴履歴などからユーザーの好みを把握するだけでなく、「いつどこで何をしているのか」を類推して、シーンに合わせた楽曲をレコメンド。家でリラックスしているときにお勧めの曲や、仕事中にお勧めの曲などを、自動でピックアップしてくれるという。

さらに、あいまいなカタカナ発音で洋楽を検索したり、CMタイアップ曲などから検索したりすることも可能で、聴きたい曲をスムーズに探すことができそうだ。

サービスの発表会において、YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏は「オーディエンスに着目した結果、今出ているアプリでは満足できていない層があることがわかり、そのユーザーに音楽サービスを届けようとこのサービスをスタートしました。YouTube Musicは、ユーザーの利用シーンや好みに合わせた曲を、YouTubeにある膨大なミュージックカタログからレコメンドするユニークさを持っています」と、サービスの魅力を強調した。

YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏

無料でも利用できるが、有料のYouTube Music Premiumに登録すると、「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」などが可能になる。料金はWeb/Androidが月額980円で、iOSが月額1280円(ともに税込み)だ。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏は「日本ユーザーの方は通勤通学などで音楽を聴くことが多いと思います。オフライン再生機能では、前日の夜に自宅のWi-Fiで翌日聴くべき曲を自動で更新し、通信なしで聴けるようになります。データの通信量などを気にする必要もないので、非常に便利な機能だと思います」と、オフライン再生のメリットを訴求した。

なお、同サービスには著作権管理システムが働いており、YouTubeと同様に適切な権利コントロールが可能だという。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏

「YouTube Originals」が日本でも始動

また今回、「YouTube Premium」という新しい有料プランもスタートする。料金はWeb/Androidだと月額1180円で、iOSだと月額1550円(ともに税込み)だ。YouTube Music Premiumの機能に加えて、YouTubeでも「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」機能が使えるようになる。

さらに、YouTube Premiumの会員は、12月から日本でも配信される予定のYouTubeオリジナルコンテンツ「YouTube Originals」を視聴することも可能だ。すでに世界30カ国でコンテンツを展開しているが、このたび、日本でも制作がスタート。SEKAI NO OWARIとMARVLEがコラボしたミュージックビデオ制作の裏側に迫るドキュメンタリー「Re:IMAGINE」、YouTuberのはじめしゃちょーが主演する連続ドラマ「The Fake Show」、YouTubeで人気のクリエイターが手がけた「隙間男:Stalking Vampire」の3つだ。

「YouTube Music Premium」と「YouTube Premium」で利用可能な機能
日本で制作される「YouTube Originals」のコンテンツ

発表会には「The Fake Show」に主演する、YouTuberのはじめしゃちょーが駆けつけた。

はじめしゃちょー

「今回僕が出演するのは、今までなかったYouTuberをテーマにしたドラマ。アカウント乗っ取りや炎上など、問題に直面しながらも夢に向かって進んでいく姿が描かれているので、僕の動画を見たことない人にも見てほしいですね」と動画の紹介をするとともに、YouTube Musicについて「普段、広く浅く、さまざまな音楽を聴くので、非常に楽しみなサービスです。ぜひ使ってみたいと思います」と期待を述べた。

なお、YouTube Musicは「Google Home」「Google Home Mini」にも対応予定。そのほか、現在「Google Play Music」を利用しているユーザーは、追加料金なしで移行することができるという。