なぜ、ソフトバンクはヤフーとの連携を強化しているのか

なぜ、ソフトバンクはヤフーとの連携を強化しているのか

2017.01.24

ソフトバンクの携帯電話ブランドである「ソフトバンク」と「ワイモバイル」が、EC事業を中心としたヤフーとの連携施策を積極化させている。元々ヤフーとの関係が深いワイモバイルはともかく、ソフトバンクまでもがヤフーの連携に力を入れているのには、どのような理由があるのだろうか。

2つのブランドに共通した戦略とは

携帯電話業界最大の商戦期となる、新入学シーズンを迎える春商戦に向け、ここ最近大手キャリアが相次いで新商品やサービスの発表会を相次いで実施している。ソフトバンクも、同社の2つの携帯電話ブランド「ソフトバンク」と「ワイモバイル」に関して、それぞれ春商戦に向けた発表会を実施している。

ソフトバンクは主にiPhoneを利用する高価格帯のユーザー、ワイモバイルは低価格帯のユーザーと、それぞれターゲット層が異なることから、戦略にもいくつかの違いが見られる。実際、ソフトバンクは今回の春商戦で新端末を1機種も投入していない一方、特定月の毎週金曜に、特定の店舗でソフトバンクユーザーだけ商品がもらえる「SUPER FRIDAY」の第2弾を実施することを発表するなど、体験価値向上を重視した戦略を打ち出している。

ソフトバンクブランドでは昨年好評を博した「SUPER FRIDAY」の第2弾を実施。3月はファミリーマート系列店、4月にはサーティワンアイスクリームで商品がもらえる

一方で、ワイモバイルはAndroidのバージョンアップが保証された「Android One」スマートフォンを2機種投入するなど、端末面を強化。戦略面でソフトバンクブランドと明確に違いがあることが分かる。

ワイモバイルブランドでは端末を強化。Android Oneスマートフォンを新たに2機種投入することを明らかにしている

しかしながら両ブランドの発表内容を見ると、共通した施策もいくつか見られる。1つは春商戦の主要ターゲットとなる学生に向けた「学割」で、内容に違いはあるものの18歳以下を優遇した施策を打ち出していることから、狙いは共通しているといえよう。

そしてもう1つ、戦略面で共通しているのがヤフーとの連携である。ソフトバンクとワイモバイル共に、内容に違いはあれど、ヤフーと連携し、ヤフーのサービス利用でお得になる施策を打ち出しているのだ。

ヤフーとの連携を大幅に強化しお得感を打ち出す

では、各ブランドにおけるヤフーとの連携施策は具体的にどのようなものなのだろうか。ソフトバンクが打ち出したのは、ヤフーが展開する「Yahoo!ショッピング」と、傘下のアスクルがヤフーの協力の下に展開している「ロハコ for SoftBank」で買い物をすると、ポイントが10倍貯まる「ソフトバンクなら いつでもポイント10倍キャンペーン」である。

これは2月1日から5月31日までの期間限定キャンペーンで、ソフトバンクユーザーがスマートフォンで自動ログインできる「スマートログイン」の仕組みを活用し、双方のECサービスで商品を購入すると、通常商品価格の1%分貯まるTポイントが、10倍貯まるようになるというものだ。さらにYahoo! Japanの有料会員サービス「Yahoo!プレミアム」会員限定のポイント特典や、「5のつく日」のポイント特典など、ヤフー独自のポイント特典と併用することで、一層ポイントが貯まりやすくなるとしている。

ソフトバンクブランドでは、Yahoo!ショッピングなどで購入するとTポイントが通常の10倍貯まるキャンペーンを展開することを打ち出した

では、ワイモバイルの連携施策はどのようなものかというと、こちらはさらに一歩踏み込んだ内容となっている。なぜなら、Yahoo!プレミアムと同等の特典が利用できる「Yahoo!プレミアム for Y!mobile」を、2月1日より無料で提供するからだ。

具体的には、ワイモバイルの「スマホプラン」「データプラン」を契約しているユーザーを対象として、月額462円のYahoo!プレミアムと同等のサービスを、毎月無料にするという。それゆえYahoo!ショッピングで買い物した時に付与されるTポイントが5倍になるほか、「ヤフオク!」が制限なしで利用できる、買い物でのトラブル時に最大10万円の補償が受けられる「お買いものあんしん補償」が利用できる、「Yahoo!かんたんバックアップ」の容量が50GB分に増えるなどの特典を無料で受けられるようになる。

加えてワイモバイルでは、Yahoo!ショッピングや「LOHACO」で買い物をした際に、付与されるTポイントが5倍となる「“ワイモバイル”スマホ契約者なら2~3月お買物ポイント+5倍キャンペーン」も提供される。ワイモバイルは元々ヤフーと密接なつながりのあるブランドだけに、サービスもより充実したものとなるようだ。

ワイモバイルブランドでは、Yahoo!プレミアムと同等のサービスを無料で利用できる「Yahoo!プレミアム for Y!mobile」を新たに提供することを発表

最大の狙いはヤフーのEC事業強化のため

ソフトバンクもヤフーも、同じソフトバンクグループの傘下企業であることから、両社による連携施策を打ち出すこと自体は自然な流れといえるだろう。元々密接な関係をもつことから、ワイモバイルブランドの方がヤフーとより歩踏み込んだ連携を進めているが、ソフトバンクブランドでもこれまで、先に触れたスマートログインなど、自身のサービスの利用者に対し、ヤフーのサービスを利用しやすい仕組みを整えてきている。

だが一連の施策を見ると、大きな狙いはソフトバンク側ではなく、ヤフー側にあることが分かる。一言で表すならば、ヤフーのEC事業の強化だ。

ヤフーはオークションサービスでは高い人気を博していたものの、Yahoo!ショッピングを主体としたEC事業は、楽天や米アマゾンの陰に隠れてあまり存在感が大きいとはいえない状況であった。そこでヤフーは2013年に「eコマース革命」を打ち出し、Yahoo!ショッピングの出店手数料を無料にするなど、自社のEC事業の大胆な改革を実施。EC事業への注力を進めることで、2社に対抗する姿勢を明確にしたのである。

その成果は着実に表れており、店舗数は45万、商品数は2.3億と大幅に増加。2016年度第2四半期の流通総額も前年同期比128%の成長を遂げるなど、好調な伸びを見せている。しかしながら一昨年には、アマゾンが日本での売上高1兆円を突破するなど著しい躍進を見せる一方、国内のEC事業では老舗の1社であるディー・エヌ・エーが、KDDIにEC事業を売却するなど、EC事業を取り巻く競争環境は非常に激しくなっている。

「eコマース革命」を実施したヤフーのEC事業は、2016年度第2四半期の流通総額が前年同期比128%の伸びを示すなど、好調に伸びているという

今回のように、ヤフーがソフトバンクの各ブランドと、EC事業を主体とした連携を積極的に進めているのも、EC事業を一層伸ばしたいヤフーの狙いが大きいといえるだろう。古くはiモードの時代から、携帯電話は各種コンテンツやサービスの集客エンジンとして重要な役割を果たしてきた。それだけに、多くの会員を抱えるソフトバンクの顧客基盤を活用し、スマートフォンから便利でお得に利用できる施策を提供することにより、Yahoo!ショッピングでの購買を増やし、グループ全体での売り上げを伸ばしたい狙いがあるといえそうだ。

もっとも、アマゾンはプライム会員に向けたコンテンツサービスの強化や、商品の定期購入を手軽にする「Amazon Dash Button」など新しい施策を次々と日本市場に投入しているし、楽天もMVNOによる「楽天モバイル」を急速に拡大してモバイルでの顧客基盤を強化するなど、大手同士による競争は多角化し、より激しいものとなってきている。それだけにヤフーとソフトバンクは今後一層連携を強化し、ECの利用強化のためあらゆる施策を打ち出してくると考えられそうだ。

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

関連記事
スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

関連記事