【総合メディカル】調剤薬局、M&Aで急成長 在宅医療も強化

【総合メディカル】調剤薬局、M&Aで急成長 在宅医療も強化

2017.01.24

【総合メディカル】調剤薬局、M&Aで急成長 在宅医療も強化

 総合メディカル<4775>はコンサルティングを中心に医療機関の経営を総合的にサポートしている。医師の紹介や医業継承、医療連携を通じて地域医療の活性化を支援するほか、全国に670店舗以上の調剤薬局を展開している。M&Aによって調剤薬局の店舗数を急激に成長させており、業界大手のなかでも高い成長率を誇る。総合メディカルのM&A戦略を診断する。

【企業概要】医師の開業支援、調剤薬局も展開

 総合メディカルは、1978年に前身である総合メディカル・リースが創立。福岡県福岡市に本社を置く。不動産仲介業、医業承継事業を開始。1988年に調剤薬局のそうごう薬局1号店を設立。その後、調剤薬局数は500店舗を超える全国規模で展開。上場調剤大手として、アインホールディングス、日本調剤、クオール、総合メディカルと並ぶ。薬局事業の2016年3月期の売上高は前期比約20%増と大手4社の中で成長率が高い。

 現在は、医業支援、薬局事業、その他の事業(医療施設の企画・設計・施工、医療・健康情報サービス、住宅型有料老人ホームの運営、介護付有料老人ホームの運営)がある。

 2006年3月期では、医師の開業支援は304件、転職・開業を支援される勤務医DtoD(Doctor to Doctor)登録数は、当期末で62,429名(前期末比5,924名増)となった。薬局部門では、47店舗出店し、うち25店舗はM&Aによるものであり、残り22店舗のうち12店舗は開業支援先への新規出店である。総じて、2016年3月期末では576店舗となった。地域別の内訳は、東日本17店舗、西日本24店舗、九州6店舗である。

【経営陣】坂本社長、昨年4月に就任

 坂本賢治社長は創業5年目の1983年に総合メディカル入社。東日本支社長や管理部門統括などを経て2016年4月に社長に就任した。58歳。

【株主構成】三井物産が筆頭株主

総合メディカルの主要株主
株主名 持株数  (千株) 持ち株比率(%)
三井物産 3,819 25.5
GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL 944 6.3
東京センチュリーリース 722 4.8
福岡銀行 615 4.1
日本トラスティ・サービス信託銀行(信託口) 454 3
小山田 浩定 453 3
北九州銀行 404 2.7
THE CHASE MANHATTAN BANK, N.A. LONDON SPECIAL OMNIBUS SECS LENDING ACCOUNT 300 2
総合メディカル従業員持株会 231 1.6
CBNY-GOVERNMENT OF NORWAY 215 1.4
8,157 54
2016年9月末時点、同社ホームページより作成

 主な株主構成としては、2007年から業務提携している三井物産が25.5%、ゴールドマンサックスが6.3%、東京センチュリーリースが4.8%である。3%を保有する小山田浩定氏は総合メディカルの創立時から専務取締役を務め、1990年から社長、2004年から2012年まで会長を務めた人物である。

【M&A戦略】調剤薬局買収、在宅医療のノウハウ取得

総合メディカルの主なM&A
年月      内容
2007年8月 三井物産と業務提携
2007年9月 三井物産を割当先とする第三者割当増資を実施、32億円を資金調達。うち、7億円は調剤薬局
2007年10月 調剤薬局250店舗へ。
2009年9月 調剤薬局のとりせんファーマシーの全株式を取得。
調剤薬局8店舗、ドラッグストア2店舗、介護事業所1か所経営。群馬県・栃木県での店舗展開につなげる。取引価格は非公表。
総合メディカル・ファーマシー関東に商号変更
2010年6月 調剤薬局300店舗へ。
調剤薬局のあおば調剤薬局の全株式を取得。
2010年10月 100%出資会社:総合SMOと、メディクオールを吸収合併
2011年1月 100%出資のエス・エム・イーを設立
2011年10月 調剤350店舗
調剤薬局の前田産業の全株を取得
2011年11月 100%出資の総合ケアネットワークを設立
2012年1月 新鵠薬局の全株を取得
2012年3月 有限会社ひばり薬局の全株を取得
2012年6月 サンヴィラの株式を取得
2012年10月 100%出資の新鵠薬局と有限会社ひばり薬局を吸収合併
2012年11月 ヤタヤ薬局の全株式を取得
2012年12月 調剤薬局400店舗
有限会社すみれ堂薬局の全株を取得
2013年4月 100%総合メディカル・ファーマシー関東を吸収合併
2013年8月 タイコー堂薬局本店と、株式会社ティ・エム薬局の全株を取得。大阪、和歌山での店舗展開へ。取引価額は非公表。
2013年12月 有限会社ケアメディカルの全株を取得
2014年3月 ビューティドラッグサイトウと、有限会社中野薬局の全株を取得
2014年4月 調剤薬局500店舗
100%出資の総合ヘルスケアサービスを吸収合併
2014年8月 松村と有限会社暁調剤薬局の全株を取得
2014年9月 100%出資の有限会社すみれ堂薬局を吸収合併。さいたま市内での出店強化へ。
2014年10月 100%出資の株式タイコー堂薬局が、100%出資のティ・エム薬局を吸収合併
2015年3月 医療・健康情報サービスの保健同人社の株式を61.6%取得。
調剤薬局との連携により、各種健康サービス事業の提供を図る。取引価額は非公表。
2015年5月 有限会社ファーマシステムズの全株式を取得
2015年6月 祥漢堂の全株取得。大阪府6店舗・兵庫県15店舗のうち1店舗は第三者へ事業譲渡。
本取引により、大阪・兵庫エリアでの出店強化を図る。取引価額は非公表。
2015年7月 有限会社ドラドックの全株を取得
2015年8月 総合メディアサプライの全株を譲渡
2015年10月 100%出資の松村と有限会社暁調剤薬局を吸収合併
2016年1月 100%出資の有限会社ケアメディカルを吸収合併
2016年2月 医療施設内装工事のジィ・エムの株式75%取得
2016年8月 100%出資の有限会社ドラドックを吸収合併
2016年11月 みよの台薬局グループを子会社化。一都六県、三重、大阪での91店舗展開へ。みよの台グループの在宅調剤ノウハウを獲得。取引価額約80億円。

 総合メディカルは、2014年4月から2017年3月までの3か年中期経営計画を立てて、既存事業である医業支援事業と薬局事業の強化を図ってきた。

 医業支援事業では、開業支援の強化や会員サービスの向上とストックビジネスの拡大、DtoDをベースに医業支援を行っている。

 主力である薬局事業では、M&Aも含めて規模拡大に注力している。平成28年4月の調剤報酬改定を受け、「在宅支援の強化」「専門性の向上」「患者サービスの向上」を軸に、店舗展開と既存事業の深堀りを目標としている。2016年11月に行ったM&Aでは、在宅医療にノウハウを持つ「みよの台薬局」のグループ10社すべての株式を約80億円で取得した。総合メディカルが展開する全ての調剤薬局で在宅調剤に対応できるよう、薬剤師の専門性向上を目指す。2016年11月現在で、総合メディカルが展開する調剤薬局は約670店になる。

【財務分析】医療モールの進化で業績伸ばす

 2017年3月期で、中期経営計画の最終年度となり引き続き新規事業への挑戦と、既存事業の深化に取り組む。次期では、薬局部門の調剤報酬改定のマイナスの影響を医業支援の増収でまかなうことを目指す。

 総合メディカルは、3つの経営方針を軸に売り上げを伸ばしている。①医療モールの進化と深化②地域包括ケアシステムの構築支援としての「病院の経営支援」③価値ある薬局の創造、を掲げている。

 年々順調に売上高を伸ばしており、業種別だと経営方針である「①医療モールの進化と深化」では、様々な診療科のクリニックや薬局を集約している医療モールを積極出店している。17年3月期までに計13件の開設を目指す。

 医業支援として「①医療モールの進化と深化」「②地域包括ケアシステムの構築支援としての「病院の経営支援」」を掲げており、こういった医療機関向けのコンサルティング事業は好調であり、診療報酬改定による収入減を補っている。

 地域別だと、医療モール開設案件や病院の経営支援など東日本地域を中心に医業支援が好調であり、薬局既存店の処方箋単価減少による売上減で売上高は微増にとどまっている。首都圏に攻勢をかけており、医療モールを開設すると薬局収入の拡大につなげる。


 16年3月期末時点で、全国で医療モールを65件展開しており、17年3月期に13件新設し、18年3月期には計100件を計画する。新設する医療モールは、ほとんどを首都圏に集中させる計画である。首都圏に集中させる意図として、少子高齢化がすすみ、特に首都圏では医療需要が高まっている。17年3月期では1625億円の売上高の拡大を目指す。

 また、顧客獲得にも多角化を図っている。新しい試みとして、福岡市天神の調剤薬局店舗に「バーチャルショップ」を開設した。バーチャルショップは、スマホアプリを利用して、ポスターやパネルに掲載された商品のQRコードを読み込み、購入ボタンを押すだけで決済・発送の手配がされるものである。総合メディカルブランドの健康食品など、医師の処方箋を必要としない商品を扱ったり、休業日・営業時間外にも利用してもらったりすることで、新しい顧客を開拓する狙いがある。また、薬の処方以外にも薬局に足を運んでもらうための取り組みとして、都内店舗にて認知症テストを実施する。正答率により、かかりつけ医の相談を勧めたりと結果は医療機関に伝え、薬剤師が食事改善などを助言する。

【株価】薬局グループ買収を好感、高値圏に

 株価は2014年初めから2015年にかけて大幅に上昇している。薬局事業の収益が順調に伸びていることが背景にある。2016年以降は上値が重くなっていたが、11月24日にみよの台薬局グループの買収を発表して以降は再び上昇している。同グループは調剤薬局を91店舗運営しており、M&Aによって一気に店舗数を拡大できることが好感されている。

【まとめ】薬局が順調なら利益上振れも

 既述したように、東日本を中心とした医業支援は好調である。また、薬局事業は、M&Aにより、調剤薬局の店舗数を増やしてきている。しかし、処方箋単価減少により売上高は微増にとどまる。かかりつけ薬剤師の影響で、人件費など販管費を吸収しきれず、営業、経常で減益の可能性があるが、損失計上が減り、最終増益は確保している。薬局が順調なら利益上振れもある。今後、在宅調剤に対応できるよう薬剤師の専門性向上、人件費の増加はあるものの、医業支援事業での増収を達成していくことにより増収効果で販管費率を吸収していく。


この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部

SNSでバズを起こせ! メルカリ流 “違和感”マーケティング

SNSでバズを起こせ! メルカリ流 “違和感”マーケティング

2019.01.24

フリマアプリを運営するメルカリが新聞折り込みチラシを配布

なぜリアル店舗のようなチラシ広告を出したのか

理由を聞いていくなかで同社のマーケティング戦略が見えてきた

問:次のアイテムのなかから、フリマアプリ「メルカリ」で販売されたことのあるものを選びなさい。

・ダウンジャケット
・ヒト型ロボット
・トイレットペーパーの芯
・クルマ
・イヤホンの左側

おわかりいただけただろうか。答えは「すべて」である。現時点では売り切れかもしれないが、上記はすべてメルカリで販売された実績のあるアイテムだ。

さまざまな商品が売買されているメルカリとはいえ、まさか「トイレットペーパーの芯」が売られているとは、よほどのヘビーユーザーでなければ知らないのではないだろうか。

もちろん筆者も知らなかったが、2018年12月12日に配布された1枚の新聞折り込みチラシが、その事実を教えてくれた。それは、メルカリが北海道と愛知県で計192万部配布した広告チラシだ。

紙面上では、トイレットペーパーの芯やクルマがメルカリで売られていたことを紹介していたのだが、東京在住の筆者は配られたチラシを直接見たわけではない。「メルカリが新聞折り込みチラシを配布している」という意外性がSNSで話題を呼び、仕事中Twitterをいじくりまわして遊んでいた筆者の元にも情報が届いたのである。

はたして、アプリ上でサービスを展開するメルカリが、なぜリアル店舗のような折り込みチラシを配布したのだろうか。

メルカリが配布した新聞折り込みチラシの例。まるでアパレル広告のようだ
裏面には、初心者でも使えるようにアプリのマニュアルが紹介されている

「スタンダードからいかに離れるか」が、おもしろさを生む

「端的に言えば“お茶の間の会話”を増やしたいと考えたためですね」

株式会社メルカリ 執行役員 CMOの村田雅行氏は、新聞折り込みチラシを配布した理由について、そう話す。

株式会社メルカリ 執行役員 CMOの村田雅行氏

2013年7月にサービスを開始したメルカリのアプリダウンロード数は、世界合計で1億超。また、累計流通額は1兆円を超えており、全国レベルでその名を轟かせている。

「ただ、月間のユニークユーザー数は1100万程度。ダウンロード数を考えるとまだまだ伸びしろがあるはずなのです。そのため、まだ取り切れていない、シニアを中心とするユーザーを取り込むためのアプローチを実施することに決めました」

アプリの存在は知っているが、普段からメルカリを使っているわけではない。そんな、シニアをはじめとする“お茶の間ユーザー”を取り込むべく企画されたのが「新聞折り込みチラシ」だった。さまざまなマーケティングを行っている同社ではあるが、新聞折り込みチラシの配布は今回が初めて。そのため、まずはテストマーケティングとして、限られたエリアでの配布が行われた。

だが、シニアへのアプローチは何も折り込みチラシに限らない。テレビCMはもちろん、街頭配布やポスティングなど、ほかにも宣伝手法はあったはずだ。なぜ折り込みチラシにこだわったのだろうか。

「1つのコンテンツとして完結しているところがポイントでした。新聞は、自ら購読して情報を取得する非常にポジティブな媒体。毎日目にするそのコンテンツにメルカリの折り込みチラシを入れることで、“違和感”を生み出したかったのです」

また村田氏は、チラシだからこそ違和感を生み出せたのだと話す。

「今の時代、いかにSNSで話題にしてもらえるかが大事です。そのためには普通とは違うことをやらなければなりません。違和感は、多くの人が認識する“スタンダード”がなければ作れないと考えています。いかに基準から大きな振れ幅があるか。それが驚きやおもしろさにつながるのではないでしょうか。そういう意味で、折り込みチラシには基準があります。『医薬品系だったらこんなチラシ』『スーパーのチラシはこんなもの』というイメージが、多くの人のなかで醸成されているからこそ、イメージからかけ離れたクリエイティブは一層際立つはずだと、新聞の折り込みチラシを実施したのです」

例えば街頭配布であれば、コスプレをしたり、奇抜な宣伝車で商品サンプルを配ったり、アメニティを同封したりと、工夫されているものが多く、普遍的な基準のようなものが思い浮かびにくい。あえて一般的な街頭配布の例を挙げるとすれば、ポケットティッシュと答える人が多いだろうか。だが、ポケットティッシュ以外のものを配っていたら、それだけで大きな話題を呼ぶかと言えば、おそらく難しいはずだ。

つまり、スタンダードがあるからこそ、違和感を与えて記憶に残るような手法を実施できると、数あるアプローチのなかから村田氏は折り込みチラシを選んだというわけだ。

そもそも、実店舗を持たないメルカリが折り込みチラシを配布するというだけで、1つの違和感を与えられるだろう。そして「徒歩0分! スマホの中でオープン!」といった目を引く謳い文句が、違和感をますます際立たせる。

「違和感を与えるために、コピーや商品ラインアップは工夫しましたね。今回、3タイプのチラシを作成したのですが、“メルカリだからこそできるラインアップ”をあえて出すようにしました。例えば、意外性のあるものでは、トイレットペーパーの芯やクルマ。実際にメルカリで売られていたことがあるんです」

今回作成されたチラシは「ファッション」「家電」「スーパー」の3タイプ。意外性のある商品ラインアップに加えて、北海道では日本ハムファイターズのユニフォーム、愛知県では中日ドラゴンズのユニフォームなど、地域に根付いた商品も掲載しており、そのような遊び心も、SNSで話題になるために必要なのかもしれない。

家電パターンのチラシ。「徒歩0分! ~」のコピーが目立つ
「トイレットペーパーの芯」を掲載したパターンのチラシ。2つのチラシをよく見比べると、ユニフォームで使われている写真が違う。なお、北海道と愛知県を選んだ理由は、「地場新聞の影響力が強いエリア」だからだという

結果として、違和感を覚えた消費者は、Twitterにチラシの画像を投稿。狙い通り、SNSでバズらせることに成功した。

しかし、SNSで話題になっても、ターゲットにしているシニア層にはあまり関係がないのではないだろうか。

「シニアや中高年の方々でSNSをやっている人は意外と多いんですよ。積極的に発信をしている人はあまり多くないですが、情報収集として活用している人は少なくないですね」

ちなみに、肝心の折り込みチラシの効果は、「すべての数字の集計が終わっているわけではありませんが、チラシを投下したエリアでは、いい成果が出ています」とのこと。データとしても、チラシの影響を確認できたという様子だった。

攻める姿勢が生み出したもう1つの広告

今回のようなアプローチは、SNSが普及した今だからこそ可能な新しいマーケティングだ。そして、メルカリではSNSでのバズを狙った取り組みがもう1つ。2019年1月1日からスタートした『#はじメル』だ。

はじメルは、「三日坊主でもいいから、とにかく新しいことをはじめる人を応援する」というコンセプトで展開しているキャンペーン。特設サイトを開設し、1月3日には新聞の一面広告を、1月5日からはテレビCMを放送開始した。

そのなかで、一体なにがSNSで話題になったのかというと、これまたアナログな「新聞広告」である。

「一般的に1つのクリエイティブで進める新聞広告を、あえて3タイプ制作し、首都圏・東日本・西日本で分けて配布しました。3枚の新聞広告をつなげるとメルカリの『m』が浮かび上がるというデザインなのですが、1枚だけ見ても、“つなげたら何か起きそう”なデザインにすることで、それを発見した人がTwitterに思わず投稿したくなるような仕組みを作っています」

新聞広告を3枚並べると「m」の文字が浮かび上がる

思わせぶりなデザインにするという“ヒント”を提供しておき、あとは何も言わずにユーザーの反応を待つ。離れたエリアの新聞を手に入れるのは難しいので、ほかのデザインが気になった場合は、自然とオンライン上での情報収集が開始されるだろう。そうして、SNSで活発なやり取りが発生するというわけだ。

「最初はもっと控えめのデザインだったのですが、それじゃダメだと言いましたね」

穏やかな口調ではあったが、村田氏の言葉からはクリエイティブに対してのこだわりを強く感じた。

「折り込みチラシのときもそうですが、守りに入ったら企業は終わると考えているので、常に攻め続けたいと考えています」

クリエイティブに対して攻めの姿勢を崩さない村田氏。それを象徴するエピソードとして、折り込みチラシのプロジェクトのキックオフ時には、「私をクビにする覚悟で仕事をしてほしい」とメンバーに伝えたのだという。

「もちろん、ほんとうにヤバいときは止めますよ。ただ、メンバーがリスクを考えてしまうと、どうしても“置きにいく”ようなアイデアになりがちです。責任なら私が取るので、どんどん攻めてほしいというメッセージですね」

置きにいくクリエイティブでは、SNSでバズらない。メンバーが自由にアイデアを出せる環境整備こそ、尖ったクリエイティブを生み出すのに必要なことなのだろう。

2019年はメルカリの内面を伝える年に

今回、折り込みチラシと新聞一面広告で、SNSでバズらせるマーケティングを実施したメルカリ。折り込みチラシに関していえば、まだテストマーケティングが終わった段階である。今後は全国的に折り込みチラシの配布を行うのだろうか。

「明確な方針はまだ決まっていませんが、折り込みチラシについては、読み物としてお客さまから期待されるコンテンツにしていきたいと考えています」

ただし、「今日は○○が特売」「○○が新発売」といったように、新聞チラシは日々情報が更新されるから読み物として成立する。タイムリーな情報をチラシで打ち出せないメルカリは、どのようなコンテンツにしていくのだろうか。

「今回折り込みチラシで意識したことの1つに、商品をたくさん入れるという点がありました。実際にメルカリで何が売られているかまでは知らない人が意外と多いんですね。そのような人からすると、トイレットペーパーの芯が売れることは1つの発見になるでしょうし、自分の家にある家電がいくらで売れるかということも新しい発見です。そのように、ほかにも、まだまだ知られていない情報があるので、継続的にチラシをやると決まったら、もっとメルカリの内側を知ってもらう情報を提供していきたいですね」

メルカリの内側を知ってほしいと話す村田氏。実は、はじメルにも同様の意図があったという。

「メルカリを使えば『新しい趣味を始める』ことへのハードルを下げられると伝えたかったのです。例えば、ゴルフを始めようと考えたら、ゴルフクラブのセットを購入する必要がありますよね。それが仮に10万円であれば、『ちょっとやってみようかな』程度に思っている人からすると、やはりハードルは高い。しかし、メルカリを使うことで、まずゴルフクラブを5万円で買える可能性があるのです。そのうえ、5万円で売られているのであれば、それに近い金額で売却できることも意味します」

5万円でゴルフクラブを買ってみたはいいものの「あまりおもしろくないな」と感じた場合、4万5000円で売却できれば、5000円の出費でゴルフを体験できるわけだ。

「また、メルカリにはバーコード出品と呼ばれる機能があって、バーコードを読み取るだけで商品情報を自動入力してくれるんです。値段も提案してくれるので出品が楽なのですが、最近では本を買うときにまずはバーコード出品を行う人が多いようですね。ちょうど読み終わったくらいに売却できて便利なんです。期限を決めることで、読まないといけないというプレッシャーにもなりますし、2000円の本を1500円で売却できれば、500円で本が読めるわけです」

何か買うときに、メルカリでまずいくらで売れるかをチェックする。そして、使わなかったり、一度使って満足したりすると、メルカリで売却するという消費行動が増えているのだ。その結果、購入のハードルが下がるので、二次流通が一時消費を活性化させる可能性もあるだろう。

「このような使い方の訴求は、継続してやっていきたいなと。そしてゆくゆくは、メルカリをライフインフラのようにしたいですね」

村田氏は展望を語る。

「認知はすでに獲得しました。次はメルカリの内面をもっと外に出していくフェーズです」

2018年には株式を上場し、気流に乗るメルカリ。決して“置きにいかない”同社のマーケティング戦略から、次はどんなアイデアが飛び出すのだろうか。2019年も同社の尖った広告が、SNSを騒がせるかもしれない。

上場後振るわぬソフトバンク、次は「行政指導」

上場後振るわぬソフトバンク、次は「行政指導」

2019.01.24

ソフトバンクの通信障害、総務省が行政指導へ

再発防止のためのさまざまな対策立案を支持

上場前後で「運がない」ソフトバンクに求められるもの

総務省は1月23日、昨年12月に大規模な通信障害を起こしたソフトバンクに対して行政指導を行った。

通信障害は、ソフトバンクのLTEに関する交換機の不具合が原因で起こったもの。それによって同社の4G LTE網に障害が発生し、音声・データ通信ともに圏外になる、もしくはつながりにくい状態が長時間続き、大きな話題になっていた。

通信障害は12月6日の13時39分頃発生し、その後同日18時4分頃まで、4時間25分に及び、約3060万人の利用者に影響を及ぼした (ソフトバンク ニュースリリース)

総務省は今回、同社の代表取締役取締役社長執行役員兼CEOの宮内謙氏宛に「電気通信事故に関する適切な対応及び報告について」と題した文書を提出。

ソフトバンクの宮内謙代表

文書では、ソフトバンクが2018年中に同件を含めて3回の重大事故を発生させていることを挙げ、「このような事故の発生は利用者の利益を大きく阻害するもの」とし、社内外の連携体制の改善や利用者への周知内容・周知方法の改善、通信業界内での教訓の共有等の実施を勧告。さらに、それぞれの具体的措置の内容を2月末までにまとめ、報告するよう義務付けた。

携帯電話は、通話やメッセージのやり取りはもちろん、決済サービスや災害時の情報収集ツールとして、今や国民のライフラインになっている。

総務省は同文書で「事故における教訓を業界全体で共有することが重要である」ともしており、今後の再発防止策等の詳細について、ほかの携帯電話事業者に説明し、情報共有する機会を設けることも求めた。

昨年末に鳴り物入りで上場したが、なかなか株価が振るわないソフトバンク。その背景には、通信障害や「PayPay」のクレジットカードの不正利用、さらには同社が通信設備を使用している中国・ファーウェイの米中対立やCFOの逮捕などの問題などが影響していることだろう。

ソフトバンクグループは昨年11月に行われた2018年度第2四半期決算説明会で、「RPA(Robotic Process Automation)の導入により通信事業の人員を削減し、新規事業に力を入れていく」としていたが、新規事業の前に、まずは逆風吹く通信事業の早急な立て直しが求められている。