脅威の追い上げで年間販売トップテンに! 日産「ノート」が売れる理由

脅威の追い上げで年間販売トップテンに! 日産「ノート」が売れる理由

2017.01.25

日産自動車が昨年11月に投入した新型「ノート」の売れ行きが好調だ。乗り味と同様、販売面での加速も良好で、同車は日産を久々の月販台数トップの座に押し上げた。このクルマ、どのあたりが購入者に受けたのだろうか。

売れ行きが好調な日産の新型ノート

サニー以来、30年ぶりの月間販売トップに立った日産

2016年11月、軽自動車を含む車名別の月間販売ランキングで、1万5784台を販売したノートがトップに立った。ご参考までにお伝えすると、2位は本田技研工業「N-BOX」(1万4813台)、3位はトヨタ自動車「プリウス」(1万3333台)、4位はダイハツ工業「ムーヴ」(1万3201台)、トヨタ「アクア」が5位(1万2409台)だった。日産車が月販台数で首位になったのは、“トラッドサニー”と呼ばれた6代目「サニー」の1986年9月以来、実に30年ぶりだ。

6代目サニー(通称:トラッドサニー)

そして翌12月。首位はダントツでN-BOXの1万4967台だったが、乗用車で2カ月連覇となるかが注目されたノートは1万2403台で、1万2776台を販売したプリウスにわずか373台差で敗れた。なお、4位のムーヴが1万1702台、5位のアクアが1万1449台とこちらも僅差だ。

ちなみに、もしもノートが2カ月連続で乗用車の月販首位を達成していたとしたら、日産車としては45年ぶりであった。ご参考までに、前に2カ月連覇を達成した車種は2代目の「B110型サニー」で、初のSOHC(Single OverHead Camshaft)エンジン搭載モデルが人気を博し、カローラに競り勝ってのことだったという。

2016年1月~12月の乗用車と軽自動車を合わせた累計販売台数の上位10台は以下の通り。

6位以下は僅差だ(表は日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会が発表している統計データをもとに編集部で作成)

マイナーチェンジで飛躍した販売台数

2016年を通して、たしかにノートは日産の乗用車の中ではもっとも売れていたが、こうして見ると、ラスト2カ月の出来事が、いかに快挙であったかがご理解いただけよう。そのうち、新たに追加された電動パワートレーン「e-POWER」を搭載したモデルは初期受注の8割近くにも及んでおり、ノートの月販首位はe-POWERなくしてありえなかったことになる。

それにしても、日産ほどのメーカーが、30年間も月販首位から遠ざかっていたという事実にも驚いたのだが、その突破口となったのが、いくらマイナーチェンジを実施し、e-POWERを追加するなどしたとはいえ、ニューモデルではない、登場から5年も経ったノートだったというのも興味深い。

では、そのe-POWERとは、一体どういうものなのだろうか。

エンジン車と電気自動車の“いいとこ取り”

大まかにいうと、e-POWERは電気自動車(EV)の「リーフ」と同じ電気モーターに、発電専用のガソリンエンジンと小容量のバッテリーを組み合わせたものだ。駆動力を生み出すのは100%電気モーターのみ。エンジンはバッテリーの残量や車速に応じて適宜動いて発電するので、外部電力からの充電も不要となる。

e-POWERのシステム

e-Powerを積んだノートは既存のクルマと同じように、給油さえ行えばずっと走行しつづけることができる。バッテリーの役目は、主に減速時に回生ブレーキにより発電した電力を蓄えることであり、実はバッテリーがなくても十分にクルマとしては成立するのだが、回生ブレーキを行なっていることや将来的なR&Dを念頭に、バッテリーを搭載したようだ。

日産としてはこれを「電気自動車の新しいカタチ」と表現しており、メディアでも「レンジエクステンダー付き電気自動車」と表記する向きもあるが、外部充電機能はなく、バッテリー容量も小さいことから、システムとしてはあくまで「シリーズハイブリッド」であると日産もアナウンスしている。

独特の加速感が購入を後押し

シリーズハイブリッド車の市販化は日本初。むろんこれまでなかったものであり、実のところ、どれぐらいのユーザーがちゃんとe-POWERの仕組みを正しく理解して購入しているのかというと、あまり多くはないと日産自身も分析しているようだ。しかし、e-POWERが全く新しいものであり、モーターがいい仕事をしていることや、燃費がよいということはしっかり伝わっているようだ。

100%EVのリーフも、満充電1回あたりの走行可能距離には難があるが、走りの評価は高い。その点では日産としても、「ひと踏み惚れ」と表現するe-POWERの加速性能には自信を持っており、興味を持った人にはそれを味わってもらえるよう、積極的に乗る機会を設ける努力をしているという。今までEVに触れたことのなかった人も多く、あの独特の加速感を味わい、まさしく“ひと踏み”で気に入ってしまって、購入に至るというケースも非常に多いそうだ。

新型ノートの発表会に駆けつけた“クルマ好き”で知られる柳沢慎吾さんも、e-POWERの加速のよさには太鼓判を押していた

加速フィールが絶対的な強みに

実際、競合するハイブリッドカーの多くは、あまりリニアではなく、遅れがあってから駆動が立ち上がるのに対し、モーターが生み出す加速フィールは極めてリニアである。これは100%モータードライブのe-POWERの絶対的な強みに違いない。そして、このクラスでこれほど強力な加速を味わわせてくれるクルマというのは、ちょっと他に思い当たらない。

それでいて、使い方が従来のクルマと変わらず、充電する必要もなく、給油のみで走行できて、価格もリーズナブルなのだから、ノートのe-POWER搭載モデルがそれなりに売れるのもうなずける。

さらには、アクセルオフ時に回生ブレーキを強めにきかせることで、あまりブレーキペダルに踏みかえることなく運転できるという、ワンペダルドライブもe-POWERの特徴で、その評判も上々とのことだ。

また、ノートがもともと持っている強みとして、とくに競合車のアクアに対しては、ボディサイズのわりに車内が広くて実用性に優れ、内外装が上質に仕立てられていることも挙げられる。これまでノートのことを知らなかったけれど、e-POWERの登場をきっかけにノートのことを知り、こんなにいいクルマがあったのかと気づいて購入に至ったという人も、少なくないのだという。

e-POWERをきっかけにノートというクルマを知り、購入に至った顧客もいるという

かくして、2016年の中盤まで圧倒的に強かったプリウスやアクアをしのぐほどの販売を見せたノート。e-POWERという新しい魅力的な記号性も加わり、当面は目の離せない存在になりそうだ。

メルカリ出し抜くラクマ、売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が5億円を突破

メルカリ出し抜くラクマ、売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が5億円を突破

2019.01.22

ラクマ売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が累計5億円に

同様のサービスを構想しているメルカリを先行する形に

楽天は1月21日、フリマアプリ「ラクマ」において、取引で発生した売上金のうちオンライン電子マネー「楽天キャッシュ」へチャージした累計額が2018年12月末に5億円を突破したと発表した。

ラクマでの売上金を楽天キャッシュへチャージする機能は、2018年7月より提供開始されている。チャージした電子マネーは、楽天会員向けのグループ各種サービスで利用できるほか、ローソンやファミリーマートなど「楽天ペイ」対応店舗での決済でも利用可能だ。

2017年8月1日から開始されたローソンでの支払いに続いて、2018年12月4日からはファミリーマートでも楽天ペイが使用できるようになった

同じくフリマアプリを展開するメルカリは、100%子会社「メルペイ」で同様のサービスを構想している段階であり、この分野においてはラクマが1歩先行する形になった。

現状、メルカリで得た売上金をメルカリ以外で使う場合は、一度口座に振り込む必要がある。また、売上金には180日という「振込申請期間」が設定されており、その期間中に「口座に振り込む」か、メルカリ内で使える「ポイントを購入」するか、選ばなければならない。ただし振込の場合、1万円未満だと210円の手数料が発生する(2018年1月21日時点)。ラクマの売上金チャージ機能と比較すると、どうしても見劣りしてしまうだろう。

ちなみに筆者もメルカリユーザー。現状、売上金が合計1万円に満たないため、振込手数料を発生させずに現金に換えるためには、あと1540円分の売り上げが必要になる (画像はメルカリアプリより)

しかし、少し古いデータではあるが、2018年5月31日のニールセン デジタルの発表によると、スマートフォンからの利用率の高いオークション/フリマサービスは、1位がYahoo! オークションで25%、2位がメルカリで23%、3位がラクマで11%であることがわかっており、同じフリマサービスであっても、ラクマの利用率はメルカリの半分であるのが現状だ。

メルカリのダウンロード数は2018年11月14日時点で7500万、ラクマが同年10月時点で1500万と、両サービスの普及率にも差があることからも、日本におけるフリマ市場のバランスがすぐにひっくり返ることはないだろう。

だが、ラクマが売上金をさまざまなサービスに使えるという実用性で、メルカリとの新たな差別化ポイントを生み出したことは、新規ユーザーの獲得に少なからず貢献しそうだ。

ラクマ売上金のチャージ額が5億円突破したことは、ユーザーの「アプリ内の売上金を別の場所で使いたい」というニーズの強さの証明ともいえよう。こうしたユーザー視点に立った機能の追加による消費体験の向上が、フリマ市場にどのような影響をもたらすのか、キャッシュレス決済市場への参入が期待される、メルカリの動向と合わせて注目したい。

1000字の描き直しを越えて ―ナール制作の舞台裏

最初の書体感覚をもち続けることのむずかしさ

写研で書体デザインの責任者を務めていた橋本和夫さんに衝撃を与えた書体、ナール。作者の中村征宏氏が第1回石井賞創作タイプフェイスコンテスト応募時に書いた設計意図は、次の通りだ。

〈縦組みの場合にも、横組みにも字間のバランスがムリなく一つの流れを持つことを念頭におき、ボディータイプとして、従来使用されなかった丸ゴシック系のタイプフェイスを試みた。字面をいっぱいに使い、文字のエレメントを強調し、細い線で構成することによりシンプルさを求めた。字面を大きく使うことが字間の問題に関連し、字間のバランス調整のための切り貼り、字詰めの工程を少しでも短縮することができるのではないかと思う。その結果、組み上がりにおいて、集合の調和が生まれるのではないかと思う。広告制作物などにおいて、コピーやサブ・タイトルなどに適するのではないかと考える。〉(*1)

中村征宏氏の著書『文字をつくる』(美術出版社、1977年)

1970年(昭和45)5月18日にコンテスト授賞式が開催されたのち、写研からの文字盤発売に向けて、同年8月ごろから本格的な書体制作が始まった。必要な文字数は漢字が約5400字、ひらがなとカタカナで約150字、アルファベット約100字、その他(約物、記号など)約200字で、合計約5800字だ。写研の監修を受けながら、原字はすべて中村氏が描いた。監修を担当したのは橋本さんである。

約5800字の原字を描くのは、想像以上に大変な作業だ。橋本さんは語る。

「コンテストに応募するときに描いていただくのは、漢字50字とひらがなカタカナ、そして記号の一部だけです。それを1枚のパネルに構成するので、文字構成としては、まとめやすい。ところが、文字盤化する際には約5800字を1文字1文字描くことになり、完成するまでの年月は2年はかかります。外部デザイナーの方と書体をつくるようになって、われわれが一番苦労したのは、“今月と来月では、仕上がってくる書体の雰囲気が変わってしまうことがある”ということでした」

「文字を増やす際に字種リストを渡すのですが、『何の文字をつくるか』を見るためのリストのはずが、長い間ながめているうちに、つくっている文字がリストの文字に似てきて、当初のデザインと雰囲気が異なってきてしまった。ナールは既成概念をくつがえす、突き抜けたデザインの丸ゴシック体だったはずなのに、描き進むうちに最初のデザイン思想から離れ、持ち味が失われるということが起きたのです」

原字を描き進めるうち、コンテストのオリジナルデザインから、いつのまにか特徴が変わってしまっていたのだ。そのままでは、まるで違う書体になってしまう。結局、途中で1000字分を描き直すことになった。

中村氏もこのことを振り返り、著書に〈人の感覚は徐々に変化するものには気づきにくいものですから、いつも最初の見本と照らし合わせながら書き進めることが大切です。このようなことは、太さだけのことではなく字形とか感覚面でも同じようなことがいえます。感覚もときがたつことによってどんどん変化するものですが、とくに最初の感覚は大切にしていきたいものです〉と書いている。(*2)

悩ましい文字

「もうひとつ、ナールを監修したなかで、ひどく悩んだことがありました。ナールは、字面いっぱいに真四角に描かれた書体です。たとえばひらがなの『り』は通常は縦長、『へ』は横長の形をしていますが、これらの文字すら、できる限り正方形に近づけて描かれている。ぼくが悩んだのは、『々』という漢字でした」

ナールでは、縦長の「り」、横長の「へ」も正方形にかなり近い

「時々」「常々」「佐々木」など、同じ漢字を繰り返すことを表すときに用いられる「々」の字だ。

「常識的にいえば、この字は他の漢字よりも小さく描きます。では、通常は縦長、横長など固有の形をもつひらがなですら正方形に近づけているナールでは、どういう大きさにすればよいのか? 最初は『々』も他の漢字と同じ大きさで、真四角にするのがよいと思ったのですが、いざつくってみると、やはり少しは他の漢字より小さくしなければ『々』に見えないとわかりました」

「他の書体をつくるときにも『々』をどういう大きさにするか、いつも考えるのですが、ナールのときにはとりわけ悩んだものでした」

また、こうした試行錯誤を経て、「文字を図形化する際も、かなと漢字の使い方に意味のあることをあらためて認識しました」という。

新聞雑誌、広告から、道路標識まで

途中で1000字の描き直しなどがあったものの、コンテストから2年後の1972年(昭和47)、ナールは写研写植機用の文字盤として発売された。書体名は、「中村」の “ナ” と、丸みを表す言葉である「ラウンド」の頭文字 “R” をとって「ナール」とつけられた。(*3)さらに、ナールと組み合わせて使うことを想定した中太の「ナールD」の文字盤も1973年(昭和48)に発売された。

ナールD(上)とナール(下)

中村氏はコンテスト応募当時、ナールを本文書体と考えていたが、いざ発売されてみると、広告や雑誌、新聞などの見出しなどに使うディスプレイ書体として大人気となった。ポスターや広告のキャッチフレーズ、テレビの字幕、道路標識などに幅広く使われ、一世を風靡した。

「タイポスによってデザイナーのつくる書体が注目され、少女たちが丸文字を書くようになっていく流れのなかで登場したナールは、『時代に乗った』ともいえますが、むしろ『時代をつくった』書体といえるでしょう。写植の文字はナールの登場によって、それまで職人が手描きしていたレタリング文字の分野に浸透していった。“新書体ブーム”の幕開けでした。そうして写植の機械は、単に文字を印字するだけでなく、多彩なディスプレイ書体によって雑誌や広告にファッション性を生み出す手段のひとつとして、とらえられるようになっていったのです」

(つづく)

(注)
*1:中村征宏『文字をつくる』(美術出版社、1977年)P.80
*2:同書 P.21
*3:『文字に生きる〈写研五〇年の歩み〉』(写研、1975年)P.127

話し手 プロフィール

橋本和夫(はしもと・かずお)
書体設計士。イワタ顧問。1935年2月、大阪生まれ。1954年6月、活字製造販売会社・モトヤに入社。太佐源三氏のもと、ベントン彫刻機用の原字制作にたずさわる。1959年5月、写真植字機の大手メーカー・写研に入社。創業者・石井茂吉氏監修のもと、石井宋朝体の原字を制作。1963年に石井氏が亡くなった後は同社文字部のチーフとして、1990年代まで写研で制作発売されたほとんどすべての書体の監修にあたる。1995年8月、写研を退職。フリーランス期間を経て、1998年頃よりフォントメーカー・イワタにおいてデジタルフォントの書体監修・デザインにたずさわるようになり、同社顧問に。現在に至る。

著者 プロフィール

雪 朱里(ゆき・あかり)
ライター、編集者。1971年生まれ。写植からDTPへの移行期に印刷会社に在籍後、ビジネス系専門誌の編集長を経て、2000年よりフリーランス。文字、デザイン、印刷、手仕事などの分野で取材執筆活動をおこなう。著書に『描き文字のデザイン』『もじ部 書体デザイナーに聞くデザインの背景・フォント選びと使い方のコツ』(グラフィック社)、『文字をつくる 9人の書体デザイナー』(誠文堂新光社)、『活字地金彫刻師 清水金之助』(清水金之助の本をつくる会)、編集担当書籍に『ぼくのつくった書体の話 活字と写植、そして小塚書体のデザイン』(小塚昌彦著、グラフィック社)ほか多数。『デザインのひきだし』誌(グラフィック社)レギュラー編集者もつとめる。

■本連載は隔週掲載です。

これまでの記事一覧ページはこちら