追い風吹けど盛り上がらず、格安スマホが抱える課題とは?

追い風吹けど盛り上がらず、格安スマホが抱える課題とは?

2016.03.16

おなじみの大手携帯会社よりも、ぐんと安くスマートフォンが使えるのがMVNO(仮想移動体通信事業者)のサービスだ。"格安スマホ"、"格安SIM"の利用者は増加の一途をたどり、追い風も吹く。しかし、本格的な盛り上がりは、まだこれからだ。MVNOはどんな課題を抱えているのか。

格安の通信サービスを提供するMVNOが抱える課題とは

大手携帯キャリアの実質ゼロ円端末の自粛の影響は?

格安なモバイル通信サービスを提供するMVNO。そのMVNOに今、サービスの普及を促進する追い風が吹いている。総務省が昨年12月に公表した指針(スマートフォンの料金負担の軽減及び端末販売の適正化に関する取組方針)が風を送り込んだ。

この指針は、昨年9月に安倍首相の指示のもと、家計に占める通信料金の負担軽減を目指し、有識者、業界関係者の議論を経て、総務省が取りまとめて公表したもの。そこにMVNOのサービス普及・拡大を後押しする材料がいくつか盛り込まれている。大手携帯会社3社が2月から実施した実質ゼロ円以下での端末販売をストップしたのは、まさに、同指針の流れを受けたものである。

これによって生じたのは、1月と2月におけるスマートフォン販売台数の劇的な変動だった。1月末までは従来どおりの販売を行ったため、駆け込み需要が発生、2月以降は、その反動が生じた。BCNの調査結果によると、1月のスマートフォン販売台数は、大手携帯会社3社ともに前年同月比3割の大幅増となった。しかし、2月には一転、同約3割減となっている。

KDDIの田中孝司代表は2月初頭に「(前年同月比で)2月は確実に2割は落ちている。店舗によってはもっと影響も出ていると思う」などと発言したが、それ以上の悪い結果となったわけだ。

携帯キャリア別スマートフォン販売台数。2016年2月は前年比で大幅減となった(出展:BCN)

2月になって販売が低迷し始めた大手携帯会社のスマートフォン。大手が失ったユーザーの行き先は、通信料金の安いMVNOとなりそうだ。BCNでの調査結果では、MVNOのサービスが伸びていることがわかる。しかし、MVNO各社としては「今は販売に結びついていない」というのが共通の感覚。そもそも母数が少なく、例月増加傾向にあり、極端に増えているとは実感できないのだろう。MMD研究所の調査結果によると、格安SIMの利用者はわずか6.9%、増加傾向にあるとはいえ、まだ少数派なのだ(2016年1月「格安SIM利用者意識調査」)。

追い風吹けども盛り上がり切れない、それが今のMVNOだ。大元の原因として、2年間の継続利用を前提に基本料金を割り引く、いわゆる"2年縛り"の存在がある。契約後、2年経過後の一定期間外(更新月以外)の契約解除は、1万円近い違約金の支払いが必要になるというルールだ。

現在は、このルールがMVNOへの移行を鈍らせる足枷のひとつになっている。いわば、MVNOへの移行を促す追い風は吹いているが、2年縛りという衝立(ついたて)が風通しを悪くしているのである。

とらえどころのない課題

普及・拡大に向けては、MVNO各社の努力も必要となる。格安SIM、格安スマホという言葉が広まったのは2014年。すでにかなりの月日が経過しているが、現在のターゲットはまだ、情報感度の高い"アーリーアダプター"。一般層への普及はこれから、というのがMVNO各社の見方だ。

では、ターゲットの取り込みに向け、どんな課題があるのか。端的にまとめると、実にとらえどころのない課題だったりする。なぜなら、"漠然とした不安の解消"だからだ。

ターゲット層は現在、「格安SIM」「格安スマホ」という言葉を認知したに過ぎない。MVNOには「よくわからない。だから不安」「今使っているアプリがそのまま使えるならいい」といった声が届くという。言葉の認知からの先が進んでいないのだ。

あの手この手で対応するMVNO

そのため、MVNO各社はあの手この手を尽くしている。解決策のひとつが、リアル店舗での対応だ。2015年あたりから、MVNO各社は家電量販店を中心に専用ブースを設置、アンテナショップを設けて、対応を進めているところもある。いずれも、顔が付き合わせながら、見込客の不安をひとつずつ解消していくのがひとつの狙いだ。

キャンペーンからもその一端が伺える。「OCN モバイル ONE」を展開するNTTコミュニケーションズ、「mineo」を展開するケイ・オプティコムなどでは、「お友達紹介キャンペーン」を実施。「近しい人からの意見や後押しがターゲットの不安解消につながる」(NTTコミュニケーションズ担当者)と見ている。

「mineo」を展開するケイ・オプティコムは、別の角度からも攻める。企業からの情報伝達では、"何か裏があるのではないか"といった疑念を抱かせてしまう場合がある。誤解を避けるためにも、コミュニティサイトの「マイネ王」をうまく活用している。同サイトによって、リアルユーザーの本音を伝達し、不安解消の効果を見込むほか、そこでの声を拾ってサービス改善にも役立てているという。

コミュニティサイト「マイネ王」

機が熟すのはまだ先

こうしてMVNOの状況を見ていくと、追い風は吹きつつも、流れに乗るには、まだ時間がかかりそうだ。

足枷の"2年縛り"については、ドコモが解約期間の延長を3月に発表。無料での解約期間を従来の1カ月から2カ月に引き伸ばした。さらに今春以降、携帯キャリア3社が順次、新たなルールを策定し、条件を改善する方向にあるとされている。しかし、いずれもMVNOへの流れ込みが期待できるのは先の話だ。"漠然とした不安の解消"についても、根気のいる取り組みになるだろう。

先に述べた、大手の実質ゼロ円以下での端末販売の自粛も、端末価格が体感的に値上がりすることで、「利用者に端末料金を意識してMVNOに目を向けるきっかけになりそう」「端末を長く続ける流れになりそう。2年縛りが切れた段階で、訴求したい」(MVNO幹部)とするが、これも効果がでるのはまだ先のことだ。今はただ、機が熟すのを待つ。そんな状況にMVNOは置かれているのではないだろうか。

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2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
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