経営トップの苦い経験から生まれた人材ベンチャーのビジネスモデル

経営トップの苦い経験から生まれた人材ベンチャーのビジネスモデル

2017.01.30

以前、ある取材先で“既卒者や第2新卒に特化した求人紹介・就活サポートが中心のベンチャーがある”と耳にした。「スワッ。ニートや引きこもり対策の切り札か!?」と、心の中でイメージをふくらませ、いずれ取材さていただこうと考えていた。

そのベンチャーが「UZUZ」(ウズウズ)。実際にお話をうかがうと、イメージとは若干異なっていたが、ユニークなビジネスモデルなのでレポートしよう。

UZUZ 代表取締役 今村邦之氏

東京・西新宿に居をかまえるUZUZのエントランスに入ると、代表取締役 今村邦之氏と、専務取締役 川畑翔太郎氏が出迎えてくれた。年齢はうかがわなかったが、お二人とも若く、おそらく“アラサー”ぐらいだろう。過去にもベンチャーを取材させていただいたが、経営のトップが若いビジネスパーソンという場合が増えている。今回のUZUZ取材も、そのベンチャーならではの傾向を改めて感じさせてくれるものだった。

では、なぜUZUZを設立したのか。これは、代表取締役 今村氏の経験によるところが大きく占める。

激務が続き一時的にニートに

今村氏は高校卒業後、米国の大学にてマーケティングを専攻。学年3位の成績をおさめ、飛び級で大学を3年半で卒業した経歴を持つ。エリートともいえる足跡だが、ここから苦労が始まる。当時、大企業を含む複数社から内定を得たが、起業への憧れや当時の自信からベンチャー企業への就職を決める。

実はそこがいわゆる“ブラック”だった。早朝出勤や深夜業務は当たり前で、今村氏は約9カ月で体調を崩し退職。体調を戻すためにいたしかたないとはいえ、一時的に“ニート”というような状態になった。日本では、短期間で離職した場合、企業の採用部門はその人材を警戒する傾向が強い。今村氏も例外ではなく、再就職には多くの壁が立ちはだかったそうだ。この当時の経験が、UZUZ設立の原動力になったのはいうまでもない。

さて、冒頭で“筆者のイメージと若干異なっていた”と記したが、それはどういうことか。まず筆者のイメージは「引きこもりや就業経験のないニートに職を斡旋するところ」だったが、今村氏も川畑氏も「就業意欲のない方に企業を紹介することはありません」と口をそろえていう。「結果的にニートと呼ばれる方が弊社の求人紹介や就活サポートを受けられることはあります」(今村氏)。そう前置きした上で、こうも説明する。

つまりこういうことだ。UZUZはウェブに登録してもらって初めてユーザーにアプローチするサービスだ。登録後、まずは電話にて簡単に就活状況や現状の仕事選びの条件をヒアリングする。その際に就業意欲が低いと感じた場合は、面談を設定しないため、就業意欲の高い人材のみを企業に紹介している。たとえば、就業意欲が低いと感じる言動には「働きたくないけど就職しないと」や「とにかく楽で稼げる仕事がいい」といったものがある。

もちろん、ヒアリングで就業意欲を確認した求職者は、面談という次のステップに進む。

人材企業とは思えないカジュアルなエントランス。面談者が利用できる本棚には、ビジネス書・実用書を中心にギッシリ。だが、コミックが用意されていたり、人気キャラクターのフィギュアがディスプレイされていたりとユニーク

“スクール”による研修型の就活サポート

既卒者や第2新卒、あるいは就業経験のない方々にターゲットを絞っているほかに、もうひとつ大きな特徴がある。それが「ウズウズカレッジ」という研修型就活サポートだ。カレッジや研修型という言葉からもわかるとおり、平たくいえば“スクール”だ。

仮に就職経験がない方が就活をする場合の気持ちを忖度してみよう。就活を行う際、“ビジネス未経験の自分の社会常識は?”“ビジネススキルなしでも相手をしてくれるのか”といったことからくる不安が、彼らの就活へのハードルを高めていることが考えられる。 だが、ウズウズカレッジでは社会人としての基礎研修はもちろんのこと、「ITエンジニアコース」や「営業コース」が用意され、求職者の希望や適性などにより専門スキルが学べる。基本的には4週間ほど学ぶという。今村氏は「基礎知識や専門スキルを教えますが、“働くことのマインド醸成”にも力を入れています」と話す。それを裏付けるかのように「働く自信をつけていただくためにこの取り組みを始めました」と川畑氏が付け加えた。今後はこの事業を成長させていく方向だという。

そのほか、PRエージェンシーと業務提携し、それまで別々に行われていた“企業PR”と“採用戦略”を結びつけ、採用の効率を高める「リクルーティングPR」も昨年12月にローンチした。

さて、ウズウズカレッジでスキルを磨いたのち(入学しない人もいる)、就活に移るのだが、どのような企業が紹介されるのだろうか。もっとも多いのがIT企業だという。そのほか広告系、メーカー、商社、機械系などで、ある意味ライバルともいえる人材系も紹介する。マイナビも紹介の対象になっているそうだ。

紹介企業の選定は慎重に行っている。企業からUZUZに掲載オファーがあった際、同社の営業スタッフが依頼先の社内雰囲気をチェックするのだという。もちろん、給与や休日数といった公開されている情報も調べるが、生で職場を観察し、働きやすいかどうかの判断材料にする。「ごくまれですが、営業中に怒号が聞こえてきたこともあります」(川畑氏)。 紹介企業を吟味するのは、やはり今村氏の原体験が影響しているのだろう。“ブラック”な職場を紹介してしまい、ユーザーがすぐ辞めてしまうということを極力避ける姿勢が伝わってくる。

UZUZ利用者の声

では、本当にユーザー目線に立った企業紹介は行われているのか。実際にUZUZを利用して就活をしたユーザー(IT業界、匿名希望)の声を聞いてみた。

就職を決めた方の写真が並ぶ。熱気が伝わってくるようだ

この方は高校卒業後、PCが好きだったこともあり、情報系専門学校に進学したそうだ。だが、学校での課題が増えるにつれ、PCへの情熱を失い1年で退学。フリーターとして3年を過ごしたという。だが、両親の心配や「このままでよいのか」という焦りから、ある製造業の契約社員に就いた。2年半続けたところで、再びIT業界への情熱が湧き、UZUZへ登録したという。

UZUZで魅力に感じたのが求人紹介だけでなく研修がシッカリしていた点。IT業界の知識を身につけられる場が整っていること、苦手としている面接のトレーニングが受けられたことがメリットだったようだ。そして何より、地元の友人が就職して数年経ち就職について相談しづらくなるなか、同じような境遇の方に会えたことが安心できたそう。今では念願のIT企業に就職し、一刻も早くプロフェッショナルになれるよう、精進している。

さて、ここまで読んで多くの方が気づかれたと思うが、「うずうず」とは「ある行動をしたくて、じっとしていられないさま」(デジタル大辞泉の一部を引用)を表す擬態語だ。「仕事がしたくてウズウズしている」という求職者の“道しるべ”になる企業名として、「UZUZ」とは絶妙なネーミングといえよう。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。