逆風をものともせず、ドコモが決算好調を維持できるのはなぜか

逆風をものともせず、ドコモが決算好調を維持できるのはなぜか

2017.01.30

NTTドコモが発表した2016年度第3四半期決算は、営業利益が22.9%増となるなど増収増益で、非常に好調な内容であった。低価格のサービスが伸びるなど市場環境が厳しくなる中にありながら、一層の好調ぶりを見せているのには、NTTドコモのこれまでの施策が功を奏しただけでなく、環境の変化も影響しているようだ。

今期も好調な伸びを記録

携帯大手3社の先陣を切って、最大手のNTTドコモが1月27日に2016年度第3四半期決算を発表した。その内容を見ると、営業収益は前年同期比2.5%増の3兆4,669億円、営業利益は22.9%増の8,423億円と、非常に好調な内容となっている。

好調な決算を発表したNTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏

さらに内訳を見ると、主力の通信事業は営業収益が前年同期比1.8%増の2兆8,140億円、営業利益が20.8%増の7442億円。コンテンツや決済などを含めた「スマートライフ領域」は、営業収益が前年同期比5.8%増の6,768億円、営業利益が41.9%増の982億円と、いずれの事業も好調に伸びていることが分かる。特に、いずれの事業も利益が大きく伸びていることから、利益の改善傾向が鮮明な様子がうかがえる。

足元の数字を見ても、携帯電話契約数は前年同期比6%増の7359万台となっているが、より伸びが著しいのが、2014年に導入された料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」、そして固定ブロードバンドの「ドコモ光」の契約数だ。いずれも前年同期比1.3倍、2.7倍と大きく伸びており、これらの伸びがARPUの伸び、ひいては通信事業収入の拡大へとつながっていることは確かだろう。

「ドコモ光」などの伸びによってARPUの拡大傾向も続いている

スマートライフ領域に関しても、「dマーケット」のコンテンツサービスだけでなく、スマートフォンの安心・安全を実現するサービスをパックにした「あんしんパック」が伸びており、それらが利益拡大に貢献しているとのこと。中でもあんしんパックを主体としたあんしん系サポートは、スマートライフ領域の利益増加の半分を支えるなど、非常に大きな存在になっているようだ。

スマートライフ領域も順調な伸びを示しているが、中でもあんしん系サポートサービスの伸びが、利益拡大に大きく寄与しているとのこと

しかしながら現在NTTドコモを取り巻く環境を見ると、MVNOなど低価格のサービスが急増しているのに加え、総務省の施策影響から端末の実質0円販売が困難になるなど、行政の施策によって市場環境が劇的に変化している。またNTTドコモ自身も、最近は料金プラン変更など目立つ施策を打ち出しているわけではない。にもかかわらず、NTTドコモが好調な業績を上げている理由はどこにあるのだろうか。

苦しい時期に打ち出した戦略が開花

その要因の1つは、NTTドコモ自体の取り組みが、ようやく成果として実を結んだことにある。先に触れた通り、NTTドコモはカケホーダイ&パケあえるや、ドコモ光の利用者数を伸ばしているが、これらはいずれも、まだNTTドコモが不調だった2014年から2015年初頭の時期に打ち出されたものだ。

「カケホーダイ&パケあえる」「ドコモ光」など、NTTドコモが苦しかった時代に打ち出したサービスの契約者が拡大し、それが通信事業好調の要因となっているようだ

特にカケホーダイ&パケあえるは、急速なビジネスモデルの転換によって大幅な減収をもたらすなど当初のマイナス影響は大きかった。だが現在では料金プランに対するユーザーの理解が深まったのに加え、データ通信の利用が大幅に伸びたことを受ける形で、音声・データのARPUは回復傾向にある。

一方のドコモ光も、当初はNTT東西の「フレッツ光」からの転用が多かったものの、最近では新規契約者も増えているとのことで、契約者の伸びがARPUの伸びへと直結することにより、売上拡大に寄与してきている。またドコモ光の展開によって固定・携帯のセット契約が増えたことで、かつて大きなマイナス要因となっていた、毎月の通信費から端末代を割り引く「月々サポート」の影響を軽減できたことも、NTTドコモにとっては大きいだろう。

そしてもう1つ、特に利益拡大に大きく貢献しているのがコスト効率化だ。NTTドコモは2014年に業績を下方修正して以降、利益向上のためコスト効率化を積極化することを打ち出している。その結果、今四半期までの累計では820億円と、スマートライフ領域の利益に匹敵する規模のコスト効率化を実現。今期目標の年間1,000億円の達成が見えたことから、さらに100億円を追加して年間1,100億円のコスト効率化を実現するとしている。

スマートライフ領域の利益に匹敵する規模のコスト効率化も、利益拡大には大きく貢献してる

なお今年度の営業利益は、有形固定資産の償却方法が変更したことや、「ずっとくりこし」の減収影響がなくなったことなどを加味した値となるため、昨年度とやや基準が異なることも忘れてはならない。これらの影響を除いた場合、営業利益は前年同期比11.9%増の7,673億円となるが、それでも利益が大きく伸びていることに変わりはない。

総務省施策がNTTドコモに有利な方向へ

もう1つの好調要因となるのは、外的環境の変化である。先にも触れた通り、現在の携帯電話市場の競争環境を大きく変えているのは総務省だが、端末の実質0円販売を事実上禁止し、MVNOの競争力拡大に力を入れるという一連の総務省の施策は、必ずしもキャリアに対してマイナスに働いているわけではない。

特にキャリアにとっては、実質0円販売ができなくなったことで端末の割引額が減少し、それが現在は利益拡大へとつながっている。NTTドコモもその例外ではなく、前年同期との利益比較では、「端末販売関連収入」が715億円減少する一方、端末機器原価と代理店手数料の合計を示す「販売関連費用」が、前年同期に比べ292億円減少。結果として販売関連収支がマイナス280億円(前年と前々年同期の比較ではマイナス592億円)と、マイナスの幅が大きく減少している。

前年同期と営業利益を比べた場合、販売関連費用が大幅に減少しており、それが利益拡大にも大きな影響を与えている

もっとも現在は、MVNOなど低価格サービス同士の争いが激化しており、総務省のガイドラインに抵触しない形でのキャッシュバック施策がなされるなど、販売競争も激しさを増してきている。だがNTTドコモは、ソフトバンクやKDDIのように自身、あるいは傘下企業が安価なサービスを提供するのではなく、外部のMVNOに回線を貸し出しているに過ぎない。それゆえ低価格帯の競争に関して、販売に係るコストを直接自社で支払う必要がないというのも、NTTドコモにとっては有利な点といえるだろう。

とはいえ、NTTドコモにとって今後大きな課題となるのは顧客の流出だ。特にNTTドコモのライバル企業が展開する低価格サービスは、NTTドコモのフィーチャーフォンユーザーにターゲットを定め、価格面で訴求することにより自身のサービスに乗り換えてもらうことを狙っている。

それゆえNTTドコモでは、フィーチャーフォンからスマートフォンへ乗り換えると、最大2年間基本使用料が半額になる「はじめてスマホ割」を展開。これが功を奏し、他キャリア系の低価格サービスへの流出を小規模に留めることができたという。またNTTドコモは今回の決算発表と同時に、5分間の通話がし放題となる「カケホーダイライト」を拡大し、データ定額サービスの中で最も低価格な「データSパック」でも利用可能にする新たな施策を発表。低価格ユーザーの繋ぎ止めを進めている。

NTTドコモは今後、割引や長期利用者優遇施策などユーザーの継続利用につなげる施策をさらに拡大する方針で、通年規模で1500億円の「お客様還元」を実施することも決算では明らかにしている。最も多くのユーザーを抱えるNTTドコモは、ユーザーの流出を減らすことこそが最大の攻撃になると捉えていることから、今後低価格サービス競争はMVNOに任せ、自身では売上の要となるユーザーを維持するよう、守り固めを徹底していくものと考えられそうだ。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

2019.01.22

セブン、ローソンに続きファミマも成人誌を販売中止

インバウンドの増加、オリンピックの開催も影響か

コンビニ最大手のセブン-イレブンと業界3位のローソンが成人向け雑誌の販売中止を発表したのに続き、業界2位のファミリーマートも同様の方針を打ち出した。大手3社の足並みがそろい、日本国内のほとんどのコンビニ店頭から成人誌が消える。

国内のセブン-イレブン店舗数は2万店を超え、ローソンとファミマが1万5,000店前後でこれに続く。それぞれ今年の8月末までに取り扱いを原則中止するという。これまで一部店舗で成人誌の販売を中止していた例はあったが、今回は各社全店舗で取り扱いを中止する。業界では昨年1月から、ミニストップが他社に先駆けて全店で取り扱いを中止していた。

もともと諸外国にくらべ、女性や子どもの目につきやすいコンビニ店頭などに成人誌が置かれている日本のゾーニングの現状は特殊であるとの批判があった。また、インバウンドで訪日外国人が増え、この論調に拍車がかかっていたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、イメージ低下を防ぐ要請が強まっていたという背景がある。

コンビニでの成人誌の購買層は近年、高齢男性に偏るとともに売り上げの減少も顕著であったといい、ゾーニングの問題が取り扱い中止の大義名分になったという見方もある。ある出版関係者は、「一部では電子版などネット展開を強化している流れはあるが、今でもコンビニは重要な販路なので、相当な混乱があるだろう」と話す。どちらにせよ、日本の成人誌は岐路に立たされることになる。