セダンからSUVに需要が移行、米国市場で問われる日本車の戦略

セダンからSUVに需要が移行、米国市場で問われる日本車の戦略

2017.01.31

日本の自動車メーカーにとって“ドル箱市場”とも呼ぶべき米国に変化の兆しだ。自動車販売台数はピークアウトしたとの観測が浮上。需要の中身もセダンからSUV(多目的スポーツ車)を含むトラック系へとシフトしているという。トランプ大統領の動向も気になるところだ。

セダンからSUVへと需要がシフトしている米国。本田技研工業の「CR-V」は1997年のデビュー以来、米国のSUVセグメントで20年近くもベストセラーの地位を守り続けている(画像は本田技研工業より)

米国で売るクルマは米国で作れ

トランプ大統領は、その就任の第一声から「アメリカ・ファースト」を連呼し、選挙中と変わらぬ保護主義とポピュリズム一辺倒は「やはり」といった感じだった。

さらに「日米自動車貿易は不公平だ」と主張し、日本の自動車業界を困惑させている。「1980年代ならいざ知らず、日本からの対米自動車輸出よりも現地生産の拡大、現地化が定着している。日本市場も激戦の中で、米国の自動車メーカーは売る気がないから売れないだけだ。昨年でフォードは日本事業から撤退しているし、東京モーターショーにも数年前から米車は出展すらしなくなっているんだからね」とは、ある日本車メーカー首脳の声である。

それにしても、トランプ大統領は国内での雇用創出を念頭に、「米国で売るクルマは海外でなく米国で作るように」と、米国メーカーも含めた自動車業界に求めていることは確かである。

インセンティブ競争で各メーカーは負担増

日本車にとって米国市場は、文字通り“ドル箱市場”なのである。今や、世界の自動車市場は中国がトップとなったが、それでも米国は「自動車大国」であり、日本車にとっては現地生産・供給体制が確立しており、販売量・台当たり収益ともに大きい戦略市場である。

2016年の米国新車販売台数は、1755万351台となり2年連続で過去最高を更新した。これで7年連続の台数増であり、この数字だけを見ると米国自動車市場は好調である。

しかし、2016年夏頃から、それまで右肩上がりだった米国の新車需要に陰りが見え出した。セダンクラスの小型車の売れ行きが落ちてきたのだ。このセグメントでは、インセンティブ(販売奨励金)を積むメーカー間の値下げ競争が激しくなった。必然的に、自動車メーカーとしては収益力が低下する。

結果的に、年間の新車市場は1,755万台と高水準となったが、前年比では0.4%と最近では最も低い伸び率となった。ガソリン安で小型車需要が落ちてきたことで、米国自動車市場全体がピークアウト、減速感が強まっているとの見方が示されてきたのである。

1,700万台レベルは維持の見通し

1,755万台という過去最高の新車販売を記録した米国市場は、さすがにピークを過ぎた感は免れないが、それでも2017年の見通しは「1,720万台程度になる」(トヨタ自動車)、「しばらくは堅調な状態が続き、1,700万台レベルは維持する」(日産自動車)との見方が出ている。

米国の新車市場は、小型車販売にやや陰りが見えてインセンティブ競争が激化した一方で、ガソリン安を背景にピックアップトラックや大型SUVの売れ行きは好調を続けている。昨年のガソリン価格は、全米平均で1ガロン(約3.8リットル)あたり2.143ドル(約248円)とここ数年で最も安く推移した。

米国のSUVセグメントでは日産「エクストレイル」(画像)の兄弟車である「ローグ」も人気だ

金利についても、米国自動車市場はユーザーの8割がローンとリースとされる中で、米連邦準備理事会(FRB)が利上げペースを加速すると、消費に影響する懸念もあるが、「影響は限定的にとどまる」(トヨタ)との見方がある。

むしろ、原油安を背景に大型クラスのSUVやピックアップトラックの需要が旺盛になり、また「ミレニアル世代」と呼ばれる10代後半から30代前半の若者の新規購入が需要を下支えするとの見方も出ている。

米国史上最多の雇用を生み出すというトランプ大統領

トランプ大統領は就任後、「日米自動車貿易の不公平」発言をした直後に、GMやフォードといった米国自動車メーカーの首脳と朝食会を開催。大胆な規制緩和や減税策を進める方針を表明したが、どうも手のひらを返すようなしたたかさを感じる。「米国で売るクルマは米国でつくれ」という考えに、自動車メーカーを寄り添わせるための発言かと思われるのだ。

それでも、米国でクルマが売れるような政策を打ってもらうことが何よりも前提であり、それも雇用につながるのだから、トランプ大統領の米国景気の活況施策に、乞うご期待といったところだろう。

日本車メーカーにとって、米国を中心とする北米は、かつての輸出主体から現地化推進の流れにシフトしているとしても、グローバル戦略の要であることに変わりはない。

トヨタは投資計画を発表

世界販売で独フォルクスワーゲン(VW)と首位争いにしのぎを削り、VWと共にいまや世界のビッグ2であるトヨタにとっても、北米戦略は重要な位置づけとなっている。北米はトヨタの世界販売の3割を占め、利益面でも営業利益の4割を占めるグローバル戦略の稼ぎ頭だ。

そんななか、トランプ大統領がメキシコ工場建設の件でトヨタに名指しで難くせをつけたことは話題となった。豊田章男社長は「デトロイトショー2017」における発表で、「米国で今後5年間に100億ドル(約1兆1700億円)を投資する計画」であることを明らかにして対応。一方でメキシコ新工場は「米国の雇用を減らすものでなく、計画は続行する」ことも表明した。

むしろ、トヨタとしては大型SUVの需要シフトに遅れていたこともあり、その後はペンス副大統領の地元であるインディアナ工場での大型SUV、ピックアップトラックの増産投資と雇用増大を表明している。加えてデトロイトショーでは、新たな設計・開発手法の「TNGA」でプラットフォームとエンジンを一新した新型「カムリ」を発表。2017年夏からケンタッキー工場で増産し、かつての全米ベストセラーカー復活を目指して米国販売での巻き返しを期すことにしている。

新型カムリ(画像はトヨタ自動車より)

日産とホンダの事情は

日産は、米国で需要シフトが鮮明なSUVセグメントに新型「アルマーダ」、「ローグ」などを持つ。販売は好調に推移しており、昨年を上回る計画を示している。ただ日産は、日本車の中でいち早くメキシコに生産進出した企業であり、メキシコを北米生産基地としているため、トランプ大統領による北米自由貿易協定(NAFTA)見直しへの動きは気になるところである。

ホンダは元々、日本車のなかで先行して米国オハイオに生産進出した歴史がある。かつては「ホンダの米国一本足打法」と揶揄されたほど、米国の生産、販売、利益面における寄与率が高かった。

ここ最近は一時ほどの北米依存度ではなくなっているものの、米国のほかカナダとメキシコにも生産拠点があり、2016年の米国販売ではピックアップトラックや大型SUVで堅調な販売を示している。復活した新型「NSX」は、米国で開発・生産して世界市場に供給する体制をとったほどだ。ホンダにとって米国は、開発、生産、販売の全てでグローバル重要拠点の位置づけを強めている。

日本車の中堅メーカーでこのところ、独自の勢いを示しているのが富士重工業(スバル)とマツダだ。

米国で絶好調のスバルは現地生産増強

2017年4月には社名とブランドが共通になるスバルは、米国ブランド戦略と新型インプレッサに代表される商品戦略の強化が奏功し、米国市場で「タマ不足で現地のスバルディーラーから怒られている」(吉永泰之社長)ほどの売れ行きを示している。スバルの米国販売は、他のメーカーがインセンティブを積み増しする中で、高い利益率をキープしている。

こうした中、2016年11月からは米国インディアナ工場で生産増強に乗り出し、現地での好調販売に対応する増産を進めている。トランプ政権でも当面の間は、現地工場の増強により、懸念材料がなく好調販売を継続していく格好である。

北米仕様の新型インプレッサ(画像は富士重工業より)

メキシコ生産のみが気がかりなマツダ

一方のマツダも、独自のクルマづくりを進化させて復活してきた面ではスバルと似たものがある。北米戦略では元々、かつての資本提携先であるフォードと合弁生産(デトロイト郊外のフラットロック工場)を行っていたが、フォードとの提携解消を受けていったんは現地生産から撤退。その後はトヨタとの包括業務提携を足がかりとし、トヨタブランドへのOEM(相手先ブランド生産)供給を含めたメキシコ生産に乗り出して、NAFTAを活用して米国市場に供給してきた。

マツダの場合、メキシコ工場と日本からの米国向け輸出ということで、トランプ政権のNAFTAの見直し交渉いかんが、最も気にかかることになるというわけである。この他、三菱自動車は2015年11月に米国イリノイ工場生産から撤退している。

いずれにせよ、日本車にとって米国市場は、グローバル戦略の中で収益面も含めた重要拠点であることに変わりはない。米国市場が1,700万台レベルの高水準をキープする中で、さらに意欲的な戦略を進めていくことになるだろう。ただ、トランプ新政権の動向がプラスとなるか、マイナスに影響するかが大きな関心事である。

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。