安さと旨さを追求するスシロー、厳選ネタを100円で提供できる秘密

安さと旨さを追求するスシロー、厳選ネタを100円で提供できる秘密

2016.12.01

競争の激しい回転寿司業界。最近ではくら寿司が牛丼の販売に乗り出し、サイドメニューを充実させるなど、各社各様の戦略がありそうだが、あきんどスシローは素材の品質にこだわり、消費者を魅了したいようだ。11月30日から、海外から仕入れたこだわりネタを100円で提供する「世界の海からいいネタ100円PROJECT」を開始、その第一弾としてチリ産のうにを使った「濃厚うに包み」の販売を開始した。

水留浩一社長。同社は素材の品質にこだわった「世界の海からいいネタ100円PROJECT」を開始した

将来は定番化を目指す

新プロジェクトでは「濃厚うに包み」のほか、第2弾として1月中旬から「生キングサーモン」、第3弾として2月下旬から「天然黒まぐろ赤み」を販売する。以降もほぼ月替わりに100円新商品を提供していくという。これらは期間限定で、なくなり次第終了となり、キャンペーン色が強いものだが、将来的には定番化も目指していくという。

すぐ定番化しないのは、理由がある。それは供給の問題だ。養殖ではなく天然素材を活用している素材があること、そして、仕入れ先や加工などの見直しを行って達成できたものであり、養殖であっても、定番化には現場でのスキルの定着など時間を要する素材もあるからだ。

たとえば、うに。チリ産のうには日本でも流通しているが、スシローでは加工工程を見直すことで、歩留まりを向上、100円で流通できるようにした。「チリ人はうにを食べないからか、加工工程でフォークで突き刺してしまう。それでは溶け出してしまいウニがダメになる。そうした加工方法の見直しを供給側と一体となることで(歩留まりが向上し)100円で提供が可能になる」(執行役員 商品本部長 堀江陽氏)。

プロジェクト第1弾のチリ産のうに。加工工程を見直して提供可能となった「濃厚うに包み」

サーモンはどうだろうか。これまでは空輸したノルウェー産のアトランティックサーモンを販売してきたが、それ以上においしいものがあるのではないか、というゼロベースからの見直しを行った。注目したのが既存のサーモンよりも脂が約2割も多くのったニュージーランド産のキングサーモンだ。ただし、キングサーモン自体は、生産量が少なく限りがあるという。価格自体も高くなるため、大トロは180円、それ以外を100円で販売するといった工夫もしたようだ。もちろん、既存のサーモンよりも脂が多くのっているので、100円で販売する部位でもうまみを多く感じられるという。

プロジェクト第2弾のニュージーランドで養殖した「生キングサーモン」。
プロジェクト第3弾の「天然黒まぐろ赤身」。アイルランド沖で捕獲し蓄養した黒マグロ

おいしさの追求

おいしさの追求は、今回のプロジェクトに始まったことではない。同社では企業理念に「うまいすしを、腹一杯。うまいすしで、心も一杯。」を掲げている。筆頭株主が幾度も入れ替わった社歴のなかで、その理念が忠実に実行されてきたかはわからないが、現在はおいしさの追求にこだわりをもっているようだ。

水留浩一社長は次のように語る。「期初に組織を変更して、商品企画部を新設した。おいしさを追求しつづけていくことをミッションとした部署であり、昨年度は、定番メニュー、マグロ、鮮魚、えび、卵に磨きをかけた」。

その具体例が次のようなものだ。鮮魚の皮引きを店舗で実施したり、通常は26スライスにカットされる卵を20カットに変更して、厚く、卵の味が感じられるようにした。マグロは地中海から空輸して取り寄せ、冷凍せずに店舗で提供するといった取り組みも進めたという。

こうしたおいしさの追求の延長線上にあるのが今回の100円プロジェクトである。仕入れ先や加工法の見直しを行い、スシロースペックとも呼ぶ独自のやり方を進めていくことで、水留社長は「本当にいいものを調達しよう。それを今年度は拡大する形で成果につなげていきたい」と意気込む。そして、こうしたやり方については、余地があるとのことだ。

あくまで100円のおいしさにこだわり

とはいえ、素材にこだわれば原価も上がるのが常。スシローではサーモンの例で挙げたように、部位ごとに値段設計を変えるといった工夫もするが、今回の取り組みでは「少し原価は高くなる」(堀江氏)というのが実情のようだ。

原価が上がるなら値段相応にすればいいのでは? とも思える。しかし、水留社長はあくまで100円にこだわりたいようだ。「お客の多くは100円の商品を中心に食べている。選び抜いて自信をもった商品を食べて欲しい」「売上比率を見ると、高価格帯の比率が少し増えすぎているかもしれない。そうしたことから100円を充実させていこうとなった」と話す。

なぜ100円にこだわるのか。集客力の向上はどれほど見込むのか。原価の上昇をどこで吸収するのか。100円にこだわる背景や核心までは捉えきれず、疑問も多々として浮かぶが、「100円の商品を充実させ、おいしさを追求する」というのが、業績拡大に向けてスシローが出した答えのようだ。

回転寿司業界を見れば、最近、くら寿司が牛丼の販売に乗り出したし、牛丼を見れば、吉野家が居酒屋を意識したサービスを展開している。しかも、安く、おいしくという流れは続いている。外食産業を広く見れば、同業をライバルとして捉えるべきではなく、もはや外食産業全体が競争相手と言っていい状況だろう。

そうしたなかで本業に立ち返り、企業理念を追求していくのも、ある意味スシロースタイルといえるかもしれない。スシローが追求する100円のおいしさは消費者を満足させ、さらなる業績拡大につながっていくだろうか。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

NewsInsightは、諸般の事情により記事更新を終了いたします。

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なお、NewsInsightに掲載中の記事につきましては、引き続きマイナビニュース(https://news.mynavi.jp)へと掲載場所を移管いたします。

掲載中の連載記事につきましても同様に、マイナビニュースへ移管いたします。各連載記事の新しい掲載URLにつきましては、以下となります。

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https://news.mynavi.jp/series/andy

○森口将之のカーデザイン解体新書
https://news.mynavi.jp/series/cardesign

○清水和夫の自動運転ソシオロジー
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○ゲームとともに振り返る“平成”という時代
https://news.mynavi.jp/series/game_heisei

○岡安学の「eスポーツ観戦記」
https://news.mynavi.jp/series/e-Sports_review

○企業戦士に贈る「こむぎのことば」
https://news.mynavi.jp/series/komuginokotoba

○藤田朋宏の必殺仕分け人
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○「食べる」をつくる科学と心理
https://news.mynavi.jp/series/food_science

○阿久津良和のITビジネス超前線
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○山下洋一のfilm@11
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○モノのデザイン
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○知って納得、ケータイ業界の"なぜ"
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○文具ソムリエール・菅未里の「新しいコンパス」
https://news.mynavi.jp/series/bungu

○活字・写植・フォントのデザインの歴史 - 書体設計士・橋本和夫に聞く
https://news.mynavi.jp/series/font-history

○カレー沢薫の時流漂流
https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu

最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu