MVNOは第3ステージへ、個性と網羅性が求められ始めた格安通信

MVNOは第3ステージへ、個性と網羅性が求められ始めた格安通信

2016.12.03

「格安スマホ」という言葉とともに認知度も普及率もアップし、全国で500社を超えるというMVNO(仮想移動体通信事業者)。景気低迷の中、高止まりで家計を圧迫する通信費削減の切り札として、総務省なども大いに期待する存在だ。そんなMVNOは加熱する価格競争というフェーズを終え、新たな競争の段階に入っている。

MVNOの数は500社を超える。今年9月にはLINEがMVNO参入するなど話題に

第1ステージ:料金競争の終焉とサービス開拓への移行

自社で通信網を持つキャリア(MNO)に対し、MNOから回線を借り受けて、独自の価格設定やサービス内容で展開するのが「MVNO」だ。日本でMVNOが注目され始めたのは、スマートフォンが主流になってから。MNOのスマートフォン向け通信プランは比較的高額なこともあり、それよりだいぶ安い価格設定のMVNOは「格安スマホ」として認知度を上げてきた。

MVNOの普及初期は、低価格が最大の魅力として考えられてきた。特にMVNOがユーザーごとの回線速度を制御できる「レイヤー2接続」が可能になってからはその傾向が顕著になり、MVNO各社は積極的に安さをアピールするようになった。

結果として、今ではデータ通信のみであれば月額500円未満という超低価格なサービスも提供されており、MVNO同士で利益を削りあって争う、体力勝負となってしまった。

MVNOの仕組みとして、MNOからの回線レンタル料以下に料金を下げることはできず、価格競争には限界がある。このためMVNO各社は料金競争から付加価値競争へと舵を切ることになった。

第2ステージ:独自サービスの模索と模倣

MVNOは当初、データ通信のみのサービスが多く、ユーザー側もメインの通話用回線としてキャリアの携帯電話を契約し、MVNOのSIMを挿したスマートフォンはデータ通信専用に使う、といった使い分けをしていた。しかし、LINEや各種ソーシャルゲームなど、SMSをユーザー認証に使うサービスが増えたことなどにより、オプションでSMSや音声通話のついたサービスも登場してきた。

単純な価格競争では疲弊するだけだと悟ったMVNO各社は、他者との差別化を図るための独自サービスの提供へと進むことになった。独自サービスの提供は、MVNO自身が開発力や資本力など、競合他社と比べて傑出した部分があることを示すひとつの指標になる。これが2015年前後から始まった、MVNOの第2ステージとも言える状況だ。

独自サービスにもさまざまな形態があるが、主にシェアが高めな大手MVNO各社が力を入れたのがサポート体制だ。第1ステージでは、MVNOユーザーは自分で情報を集め、問題に当たれるITリテラシーの高いユーザーが多かった。

ところがMVNOの知名度の上昇に伴って増えてきた、ITリテラシーの低いユーザーに対するサポート体制の充実が急務とされてきたのだ。これは実際に顧客にトラブルが発生した場合だけでなく、購入時に対面販売などで安心感を売る、ということも含まれる。MNOが高くても多くのユーザーを惹きつけている理由の一つに、実店舗が各地にあり、トラブル時には持ち込んで修理やサポートを受けられるという安心感がある。SIMだけを店頭に並べて販売しているMVNOは、いくら安くとも心理的な障壁が高いわけだ。

こうした施策は、もともと全国的な販売網を持つ「イオンモバイル」や、CD/DVDのレンタル・販売「GEO」と提携した「OCN モバイル ONE」が先行して着手し、「FREETEL」や「mineo」のように、大手家電量販店に対面カウンターを設置する、数は少ないものの対面販売が可能な直営店舗を大都市圏に作る、といったところも出てきた。

直営店を設けるMVNOも出てきた

サポートという点では、口コミの力やユーザー同士の情報交換も一種のサポートリソースとなりうる。「mineo」はウェブ上に会議室を設けるなどしてユーザー同士が助け合う互助組織を構築したり、「IIJmio」はユーザーと開発者が直接対話できるイベントを開催することで、キャリアによるバイアスのない、ユーザーの忌憚ない意見がやり取りされるようになり、初心者からベテランユーザーまでを広く惹きつけている。

別の方向性でもユーザーに訴求したのが「楽天モバイル」や、TSUTAYAで販売される「TONE」だ。これらのサービスは利用することで楽天ポイントやTポイントが貯まりやすくなっており、ECサイトなどでの買い物で貯めたポイントを電話料金の支払いに充当するといったことも可能。自社の経済サイクルに組み込むことで、サービスの魅力を高めている。

ポイント制度を武器にユーザーへの訴求を図るところも出てきた

多彩なサービスでの差別化が進む第3ステージ

サポートやサービスの強化で勝負でききるのは、現時点でシェアがそれなりに大きく、経営母体の体力に頼れるMVNOが中心となる。こうした母体がないところは別の手段で対抗することになる。第1ステージですでに料金競争が限界に達していると説明したが、そこをうまく突いた形のサービスが登場している。

FREETELなどが開始し、「LINEモバイル」らが追従しているのが、特定のアプリの通信のみをパケットに課金しないで済ませるサービスだ。TwitterやFacebookといった人気SNSやポケモンGOのようなゲームをパケット課金対象から外すことで、トータルの利用料金を安くするというわけだ。値引きという体力勝負には変わらないが、純粋に技術力だけで実現する施策であり、メリットも強調しやすい。

特定のアプリの通信をカウントしないサービスも登場

ただしこのサービスは、通信対象を見分ける行為そのものが通信の秘密の保持に抵触する可能性がある、といった指摘や、LINEモバイルのような人気アプリの提供元自体が割引対象を決めるのは不公平ではないか、など、さまざまな懸念が払拭しきれていない。人気のサービスだけに、総務省などがどういった判断を下すかが注目されている。

端末も魅力のひとつに

端末の魅力もサービスの一種と数えてもいいだろう。MNOは最新鋭の端末を安価に購入できるよう、サポート割引制度などを使い、通信料金と端末代を一緒に払うことで端末が実質0円に近い価格で入手できるような、大幅な割引を適用できるようにしている。これがiPhoneなどの高級スマートフォンが日本でたくさん販売される要因だったが、総務省などから指導が入り、あまりに大きな値引きができなくなった。

MVNOの場合、SIMフリー端末が基本ということもあり、どこも同じような端末を扱う事態になっている。しかしそんな中でも、楽天モバイルが「ファーウェイhonor 8」を専売にするように、特定のMVNOでなければ手に入らない端末が登場しており、こうした端末と電話料金をセットにしたプランも登場している。MNOの販売方法と被っており、ある意味MVNOのMNO(キャリア)化という皮肉な見方もできるが、ユーザーにとってはわかりやすい販売方法がとられるようになったと言ってもいいだろう。

楽天モバイルが「ファーウェイhonor 8」を国内独占専売するといった動きも

またFREETELのように、端末価格込みのプランに、自社販売のスマートフォンを一定期間の間自由に機種変更で選択できるサービスを用意したところもある。メーカーならではのサービスだが、機種変更後は前の端末の残債を支払わなくていい、という大胆なプラン内容になっており、画面のひびなどが気になりつつも残額があってなかなか機種変更できなかったユーザーにとっては嬉しいサービスだ。

第3ステージはMVNOごとの体力や特徴に応じて提供されるサービスも実に多彩であり、特にシェア上位を占める十数社の中ではかなり特徴がはっきり現れている。傾向としては、上位に行こうとすれば特徴的な一芸だけでは足りず、あれもこれもと、網羅的にさまざまなサービスを提供できるところがやはり人気を集めている、という点だ。これではMVNOのMNO化に他ならず、体力が低い下位のMVNOにとっては厳しいものがある。そろそろMVNOの合併・統廃合などが起き出すことになりそうだ。

MNOはサブブランドで攻める

3大キャリアのうち、MVNOに最も積極的なのは業界最大手であるNTTドコモだ。ドコモは回線の貸し出し料金も他社の半分以下と安く、現在MVNOといえばドコモ回線を使っていると言い切ってしまっても、ほとんど問題ないほどだ。MNPでもドコモは基本的に転出する側であり、転出した先がライバル2社になるよりは、自社ネットワークを使うことで間接的にドコモの設備利用率を上げてくれるのであれば好都合ということだ。

一方、ドコモを追う立場のau、ソフトバンクの2社はMVNOにあまり積極的ではない。しかし両社とも回線の貸し出し料金はドコモより高く、MVNOは価格では勝負できない。auもソフトバンクも、MNPで転出されれば、先は多くの場合ドコモになるため、できるだけMVNOへの転出は避けたいと感じるのも無理はないだろう。

そこでauとソフトバンクが注力しているのが、MVNO的な低価格のサービスを提供するサブブランドの存在だ。auの場合は関連会社であるWiMAX2+サービスを展開するUQコミュニケーションズと、au回線を使ったMVNOである「KDDIバリューイネーブラ(KVE)」を合併させ、「UQモバイル」ブランドでのMVNOサービスを展開している。見かけ上は別会社だが、実質auの低価格ブランドとして扱われている。

ソフトバンクの場合は、1.7GHz帯でサービスを展開していたイーモバイル、2.5GHz帯でサービスを展開していたワイヤレスシティプランニング(旧ウィルコム)が合併した「ワイモバイル」を吸収合併。「ワイモバイル」のブランドだけ残し、低価格サービスを展開している。

UQモバイル、ワイモバイルに共通するのは、「MNO未満・MVNO以上」といった価格帯にサービスを投入し、MVNOへ流出する可能性の高いユーザーを手前で引き止める役割だ。3年前の型落ちとはいえ人気端末である「iPhone 5s」も導入し、MNOへ不満のある層を一定の割合で繋ぎ止めている。

UQモバイルは価格と価値のバランスをとった第3極を目指す

MNOの3社は長期利用ユーザーへの還元策などを打ち出しつつ、サブブランドで足元を固めるなどしてMVNOへの流出をできるだけ防ごうとしている(ドコモ自体はサブブランドを持たないが、格安端末「MONO」でSIMフリー端末への流出を防ごうとしている)。

MVNOの普及が始まって数年、MVNOはMNOにできないサービスと低価格を武器に、総務省などの施策も追い風としながら、ようやく「らしさ」を打ち出せるようになってきたが、全体としてMNOが圧倒的に支配的である状況はまだ変わらない。ユーザーがより安価に、より自由にネットワークを利用できるようになるよう、行政のさらなる施策などを期待したい。

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

総務省施策が追い風に? 携帯分離の「歴史的チャンス」狙うファーウェイ

2019.03.20

モバイル業界を変える「携帯値下げ議論」が過熱

ファーウェイは日本を取り巻く環境を「歴史的チャンス」と発言

コスパ高いミッドレンジ端末でシェア拡大を目指す

20日、NTTドコモが特定の端末の購入を条件に通信料金を割り引く「docomo with」、購入する端末に応じて通信料金を割り引く「月々サポート」を終了する方針を固めたという報道が話題となっている。

国内のモバイル業界では携帯電話料金見直しが進んでおり、3月5日には総務省が中心に進めてきた端末代金と通信料金の分離が閣議決定された。NTTドコモは分離プランを軸とした新料金プランを4月に発表する見込みだ。

日本のモバイル市場を大きく変えるこの動きを「歴史的チャンス」と見ているのがファーウェイだ。2018年末から米中対立が加速する中、ファーウェイが打ち出すメッセージも語気を強めている。果たして日本市場でシェアを拡大できるのだろうか。

逆風吹けども、依然として業績は好調

今年に入り、ファーウェイの周辺が騒がしい。3月7日には、ファーウェイは米国政府を相手取って訴訟を起こした

さらにその内容をFacebookでライブ配信するなど、米国以外の世界市場に向けたメッセージにもしており、そのメッセージをまとめたウェブサイト「Huawei Facts」は、わざわざ日本語版も用意している。

2018年末から続く米中対立を巡る報道は、ファーウェイの業績にどのような影響を与えたのか。MWC19でインタビューに応じたファーウェイ・ジャパンの呉波氏は、「一部の消費者は影響を受けたが、2019年に入ってから売上は大幅に伸びている」と語った。

ファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波(ゴ・ハ)氏

話題の「折りたたみスマホ」でもファーウェイは先行する。

ファーウェイに先立って折り畳みスマホを発表したサムスンだが、こちらはMWCではガラスケース内での「展示」のみにとどまったのに対し、ファーウェイは「Mate X」の実機を用いて報道関係者に折り曲げを試させるなど、製品化で一歩先を行っていることをアピールした。

ファーウェイの折りたたみスマホ「Mate X」。報道陣には手に取って折り曲げてみる機会も用意された

Mate Xは次世代移動通信の「5G」にも対応しており、日本では5Gサービスの開始を待って投入時期を見極める方針だという。

ちなみに3月26日に発表予定のフラグシップ機「HUAWEI P30」シリーズは、例年通りのタイミングで日本市場に投入するようだ。SIMフリーでの発売だけでなく、ドコモが採用した「HUAWEI P20 Pro」のように大手キャリアによる採用があるかどうかも注目したい。

分離プランを「歴史的チャンス」と捉えるワケ

一方、2019年の国内モバイル市場で話題となっているのが携帯料金における「分離プラン」の導入だ。KDDIとソフトバンクはすでに導入済みだが、NTTドコモは4月に発表する新料金プランから本格導入するとみられている。

分離プランの特徴は、NTTドコモの「月々サポート」のように回線契約と紐付けた端末の割引が禁止される点だ。端末の割引自体が禁止されるわけではないというものの、大幅な割引は難しくなる。その結果、10万円を超えるようなハイエンド機ではなく、3〜4万円で一括購入しやすいミッドレンジ機の需要が高まるとの見方が有力だ。

この動きをファーウェイはどう見ているのか。

呉氏は「非常に重要視している。スマホが登場したときや、SIMフリー市場が始まったときのインパクトに引けを取らない、歴史的な瞬間になる」と興奮気味に語る。

日本のSIMフリー市場でベストセラーとなった「HUAWEI P20 lite」を始め、ファーウェイのミッドレンジ機のラインアップは厚い。モデルによってはフラグシップと同じCPUでミッドハイの価格を実現するなど、コスパの高さも特徴だ。大手キャリア向けにさまざまな提案ができる体制といえる。

フラグシップと同じ「Kirin 980」搭載でミッドハイ価格の「HONOR View 20」

また、5G対応も順調だ。

モバイルWi-Fiルーターに強みを持つファーウェイは、MWC19でも5G対応ルーターを多く出展していた。日本ではまだ周波数の割り当てが終わっていないものの、国内大手キャリアは2019年内にもプレサービスを始める動きがある。5Gスマホが普及するまでの間、5Gルーターの需要は高まる可能性がある。

5G対応のモバイルWi-Fiルーターも出展していた

ミッドレンジ市場の拡大を狙って、今年はシャープやサムスン以外にも、ソニーモバイルの参入も予想されている。

この価格帯が激戦区になることは間違いないが、ファーウェイはその中で高コスパの製品ラインアップや、国内での地道な販促活動やブランドメッセージの打ち出しによって対抗していく構えだ。

ヨドバシカメラ梅田店での販促イベントの様子
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2019.03.20

Googleが新しいゲームプラットフォームを発表

配信方式でゲーム機不要、「ゲーム機」の時代の終焉?

2019年内にローンチ、性能はプレステやXbox以上か

3月19日、米国で開催中のゲーム開発者会議「GDC 2019」の会場で、Googleがクラウドベースのゲーミングプラットフォーム「STADIA」を発表した。特定のゲーム機に縛られず、ネットに接続したスマホやパソコン、テレビを通してストリーミング(配信)形式でゲームをプレイできる。

この事業を担当するバイスプレジデントとして、STADIAを発表するフィル・ハリソン(Phil Harrison)氏。そもそも彼からして、元はソニーのプレイステーション立ち上げの主要メンバーで、その後Microsoftに移りXboxを担当したという経歴の持ち主

かねてより、MicrosoftのXbox事業のトップマネージャーを引き抜いた、ソニーでPlayStationのハード開発にかかわったエンジニアが転職したといった噂が頻繁に流れており、「Googleがゲーム市場に本格参入する」という憶測は強まっていた。実際に2018年には、Googleは「Project Stream」と呼ばれるストリーミング形式のゲーム基盤の計画を発表し、米国内でベータテスターを募って技術テストを行っていた。

STADIAは、Project Streamの延長線上にあるサービスと見られる。ユーザーは特定のゲーム機を持っている必要がなく、従来のゲーム機の役割をするのはGoogleの設置するデータセンターだ。簡単に言えばクラウドサービスのように、実際にゲームタイトルが動作しているのはデータセンター側で、ユーザーはインターネットを介してゲームを遠隔でプレイする。

STADIAのデータセンターから配信されたゲームをパソコンでプレイしている様子
パソコンで遊んでいたのと同じゲームを、タブレットやテレビでも同じように遊ぶことができる

このプラットフォームの特徴によって、例えばYouTubeで新作ゲームのトレーラー動画を見ていて気に入ったときには、そのページ内の「プレイする」ボタンを押すだけで、インストールすら不要で、動画を再生するかのようにそのゲームをプレイできるようになる。

そして、STADIAのデータセンターが持つゲーム機としてスペックは、サービス開始時のものとして、GPUの演算性能は10.7テラFlopsに達するといい、これはPlayStation 4 Proの4.2テラFlopsや、Xbox One Xの6.0テラFlopsを大きく上回る。映像品質も4K/60fpsのストリーミングに対応し、将来は8K/120fps対応も予定しているという。

STADIA用の「STADIAコントローラー」も販売する。SNSアップ用のボタンや、Googleアシスタントボタンが備わっている

Googleは2019年中にSTADIAをローンチする予定で、まずは米国、カナダ、欧州でサービスを開始すると説明している。発表を受けた翌20日の東京株式市場では、任天堂とソニーの株価が揃って大きく下落した。投資家たちが、GoogleのSTADIAによって、Nintendo SwitchやPlayStationのビジネスが脅かされると考えたからだ。

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