“大企業御用達”だけではない! “ベンチャー天国”の顔も持つ「丸の内」の姿

“大企業御用達”だけではない! “ベンチャー天国”の顔も持つ「丸の内」の姿

2016.12.06

東京を代表するオフィス街、丸の内・大手町地区。いや、東京だけではなく日本を代表するオフィス街だといってよい。一般的に、オフィス街というと、単純に企業が入居するオフィスビルが建ち並んでいる印象があるが、この地区に集まるビルは個性が強い。

ザッと点描してみると、まず「三菱一号館」が挙げられる。丸の内で最初のオフィスビルとなったこの建物は、1894年に建築された際の容姿をもとに再建。現在は美術館として機能している。2002年に竣工した新生「丸の内ビルディング」には、高級ブランド店が入居し、オフィスとしてだけでなく、高感度なショッピングのニーズにも応えている。

「大手町フィナンシャルシティ グランキューブ

ユニークなところでは「大手町ホトリア」で、皇居外苑のお堀の水を浄化する機能を有している。また「大手町フィナンシャルシティ グランキューブ」(以下、グランキューブ)は、温泉を掘削しながら建設されたことで有名。温泉付きのフィットネスクラブを備え、近隣のビジネスパーソンに“憩い”を提供している。実はこのグランキューブは、温泉やフィットネスクラブいった機能のほかに、ベンチャー支援・育成という機能も持ち合わせている。

少々、前置きが長くなったが、着目したいのはこのグランキューブに居をかまえる「グローバルビジネスハブ東京」という施設だ。この施設は、一般社団法人グローバルビジネスハブ東京により運営されているもので、2~20人クラスのベンチャー企業に什器込みのオフィス機能を提供している。グランキューブ3階全体、敷地面積約2,726平方メートルという広大なスペースに、海外の成長企業や国内の先端ベンチャー企業が入居している。

什器付きオフィスだけではない。最大200名規模のイベントスペースや会議室、ラウンジなど、成長企業が業務に必要とするスペース、スタッフがリラックスできる空間の提供も行っている。

丸の内・大手町というと、重厚長大な大企業のみに本社機能が許されるオフィス街、というイメージを強く持つ方が多いかもしれない。だが、そうした大企業だけでなく、ベンチャーや海外からの進出企業なども数多く丸の内・大手町地区を拠点にしている。

しかも、こうした流れは実はわりと古くからある。

三菱地所 街ブランド推進部長 相川雅人氏

三菱地所 街ブランド推進部長 相川雅人氏は、「こうした流れはバブル崩壊の頃にさかのぼります」と振り返る。相川氏によると、当時、丸の内・大手町地区は銀行のオフィス需要が非常に高かったそうだ。当時は10以上もの大手銀行があり、丸の内・大手町地区に店舗や拠点をかまえるのが当たり前という風潮があった。

ところが、バブル崩壊がこの風潮を一変させる。バブル崩壊後、銀行の統廃合が急速に進み、当然、この地区に生じていた銀行のオフィス需要は減衰していく。三菱地所としてはこの流れに歯止めをかけるべく、何か施策を打たなくてはならない。

そこで、ブランドショップや有名シェフのレストランといった店舗をテナントに迎え入れ始めたのだ。

「銀行が集まっていたのは、高度経済成長によりこの地区が“ビジネス特化”されていたからです。ですが『ビジネスオンリーでいいのか』という考えが社内に生まれ、ブランドショップやレストランといった店舗に着目しました」(相川氏)。ビジネスパーソンだけでなく、銀座で楽しんでいる客を取り込むねらいもあったという。

そして、2000年代に入り、「丸の内フロンティア」というベンチャー支援組織を組成し、ベンチャー支援に本格的に動き出す。

「もともとこの地区は弁護士や行政書士といった士業の方々が多かったため、起業を目指す方々には都合がよかったのです」(相川氏)。そこで、こうした士業の方々やエリアに協力を得てネットワークを築きました。さらに「東京21c(世紀)クラブ」という会員制ビジネスクラブを立ち上げた。前出の丸の内フロンティアは今もこのビジネスクラブ内で機能している。

こうした支援の結果、数社がIPO(新規公開株)を果たしたが、問題もあった。それはベンチャー向けのオフィス区画が圧倒的に少なかったことだ。

その問題を解消すべく、三菱地所が手を打ったのが、2007年に竣工した「新丸の内ビルディング」内に用意した「EGG JAPAN」という施設。これはベンチャー向けのオーダーメード型の事業開発支援が受けられるオフィススペースで、先に紹介したグローバルビジネスハブ東京の“兄貴分”的な存在だ。

そしてこのエリアが「国家戦略特区」に指定されると、海外企業の取り込みが加速する。この国家戦略特区には国際競争力の強化という役割も与えられるため、海外からの進出企業にも広く門戸を開き、グローバル企業にアジア・パシフィックの拠点として好まれる、シンガポールや香港といった都市に対しようというわけだ。

そうした方針のためかグローバルビジネスハブ東京に入居する企業は44社にのぼるが、そのうち26(企業数は2016年10月時点)が海外企業だという。

相川氏は「グローバルビジネスハブ東京には全50区画ありますが、短期間で現在ほぼ満室稼働となっています、と最後に笑みをこぼした。

左:什器付きのオフィススペース。右:フロアに併設される大会議室

では、どういう企業がグローバルビジネスハブ東京に入居しているのだろうか。

同フロアに入居している3社を取材した。

そのうちの1社がナーブ株式会社だ。

ナーブ 代表取締役CEO 多田英起氏

この会社の強みは、ヴァーチャル・リアリティ(VR)コンテンツのプラットフォームの提供にある。VRというと、ゲームなどとの連携を考える方が多いが、ナーブはそういう方面でのVR活用を考えていない。ずばり、業種に特化せずVRの技術を使い、物理的な距離や時間を超越した“体験”を提供し、様々なビジネスとユーザーニーズを満たせないか考えている。

たとえば、物件探しをしているユーザーに、実際に物件に出向かなくてもVRで部屋の内見ができることを可能にしている。

そのほか、VRによる旅行業や教育産業への進出に対して意欲が強い。VRを使った旅行・教育には高い注目が集まっているだけに、今後の注目企業だろう。

ニュートンジャパン 代表取締役CEO 田中晃氏

ニュートンジャパン株式会社という、アメリカに本拠地を構える、今年の1月に日本での登記が済んだばかりの外資系企業も入居している。この会社は、教育系のIT企業で、アダプティブ・ラーニングプラットフォームを提供している。

「アダプティブ・ラーニングとは、理解度に合わせて学習内容を柔軟に変えるオンライン学習の仕組み。これまでの全員が同じ内容・量・ペースで学ぶことを前提とした学習とは異なり、個別に最適な学習コンテンツをリアルタイムでリコメンドしてくれる学習だ。 ニュートンジャパンでは、株式会社Z会など、教育サービスを提供する企業とパートナーを組んでビジネスを広げている。パートナー企業の教材にシステムを組み込む形で、サービスを提供しており、世界で30社以上、約1000万人を超えるユーザーに活用されているという。

イーダブリュエムジャパン 代表取締役社長 友納健一郎氏

株式会社イーダブリュエムジャパンというベンチャーは、地域の人的資産、物的資産を活用している会社だ。現在の拠点は佐賀と福島県南会津。東京に7名、佐賀に47人、南会津に8人の人員を配置し、ウェブ制作や“ものづくり”を生業としている。

地方で作成したウェブやモノを大都市圏に出荷するのだが、制作者たちは素晴らしい自然環境のなかで仕事できるというメリットを享受できる。

ちなみに南会津では、都立大学の保養所を入手。ここをウェブ制作などの拠点にしているほか、他企業の合宿に提供するといったビジネスも展開している。

このように、グローバルビジネスハブ東京に入居する3社にお話しをうかがったのだが、皆、そろっていうのが、このオフィスの立地のよさ。東京・大手町には、東西線、千代田線、半蔵門線といった地下鉄駅が集約しているところ。JR東京駅も歩いて数分のところにある。

加えて、銀行や大企業が集まっており、そうした企業との取引を行うときに立地的な条件がすこぶるよい。「ベンチャーが入居するのに、これほどの環境はそうそうありません」と、取材させていただいたベンチャーの方々は口を揃えて語る。

だが、こんな声も聞こえてきた。「東京のど真ん中だけに、ランチが高い(笑)」と……。

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。