国内唯一の財政破綻自治体「夕張市」の浮上策とは?

国内唯一の財政破綻自治体「夕張市」の浮上策とは?

2016.12.09

2006年初夏、耳を疑うようなニュースが駆け巡った。北海道・夕張市の財政破綻が明るみになり、マスコミが報道を過熱させたからだ。それまで、自治体が財政破綻するなど、考えてみたこともなかった。だが、それは現実となった。あれから、およそ10年……、夕張市はどうなっているのだろうか。

2016年12月7日、「北海道夕張市支援プロジェクト」と題された記者発表会が行われた。この記者発表会の主体は株式会社トラストバンクという企業だ。

この企業は「ふるさとチョイス」というウェブ媒体を運営している。ふるさとチョイスとは、「ふるさと納税」を実施している自治体の情報を網羅したサイト。ふるさと納税を利用すると、地方自治体に寄付を行うことになるが、その分、寄付した人の税金が控除される仕組みだ。さらに寄付した自治体から、その地の特産品が届く。

おもに首都圏などの大都市圏で所得を得ている住人から、税収減にあえぐ地方自治体に資金を流す制度といえるだろう。

トラストバンク 代表取締役 須永珠代氏

トラストバンクの代表取締役 須永珠代氏は、地域の経済を活性化させるには「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」が必要と語る。ふるさと納税は、そのうちの“カネ”を地方に送り、そして“モノ”が都市圏に動く制度として注目したという。

ただ、ふるさと納税で唯一、足りなかったのが“情報”だったと指摘する。ふるさと納税という制度が地方活性化に有効だとしても、それを知ることがなければ利用されない。

そんな想いから、ふるさとチョイスを2012年9月に立ち上げ、より一層“カネ”“モノ”の動きを活発化させたいと考えたのだろう。

事実、ふるさとチョイスを立ち上げたあと、全国に1,700以上もある自治体に、その情報を伝えたという。

ふるさと納税を扱う最大級のサイト

立ち上げから4年が経った今、月間約1億PV、約110万人の会員を抱えるサイトに育った。しかも総務省が発表したふるさと納税額、約1,653億円のうち、ふるさとチョイスから寄付された額は約1,368億円だったという。まさに、ふるさと納税のメインポータルサイトとして機能しているといってよい。

ただ、須永氏はこうも指摘する。「ふるさと納税を利用した人は約148万人。納税者全体からみれば、3%ほどでしかありません。もっとふるさと納税を知っていただき、多くの方々に利用してもらうようにしたいです」と、今後の課題を挙げた。

鈴木直道 夕張市長

一方、夕張市はどうか。鈴木直道 夕張市長は、「2006年に財政破綻が明るみに出たあと、2007年に財政再建団体に移行しました」と、当時の経緯を語る。財政再建団体とは、国の管理下のもと、財政再建に努めることを指定された団体のことだ。過去にこの制度を適用された自治体はあるが、現在は夕張市のみである。

2007年から財政再建団体に指定されてからというもの、夕張市は緊縮財政に取り組んできた。これにより、財政再建を着実に推進していったが、大きな問題も生じた。それは、人口の減少である。緊縮財政を続けていれば、市政サービスに手がまわらなくなる。自然、市民はそれを嫌忌し、ほかの地へと移ってしまう。

鈴木市長によれば、「破綻前の数字ですが、全盛期は約12万人の市民がおりましたが、現在では8,700人台まで人口が減少してしまっています」という。

このまま緊縮財政を続けていれば、夕張市は消滅しかねない。事実、夕張市の財政再建を検討する第三者委員会からも、その危険を指摘された。

財政再建だけではなく市の再生を!

そこで、鈴木市長は大きく舵を切ることにした。それは「財政再建と地域再生の両立」。この方針を2016年3月に、夕張市の財政再建を管轄する高市総務大臣に報告をし、了承を得た。

現在、夕張市の自然収入(税収など)は約8億円。これでは、財政再建と地域再生を両立するには心許ない。そこで、目をつけたのが、ふるさと納税による全国からの寄付だ。

「財政破綻時、ふるさと納税は実施されていませんでしたが、現在は幸いなことにふるさと納税という寄付で、全国の方々にご支援いただいております」と、鈴木市長は感謝の念を深めている。

直近では、全国の支援者から2年連続で約2億円が寄付され、さらに2016年から開始された企業版ふるさと納税では、ニトリホールディングスが今後4年間で5億円を夕張市に寄付すると表明した。収入約8億の自治体にとって、全国支援者からの2億、企業からの5億円は何よりもありがたいだろう。

ただ、地域再生を推進するには、さらなる寄付が必要と考えたのだろうか。鈴木市長は1,300億円以上ものふるさと納税を扱う、ふるさとチョイスを運営する、トラストバンクに着目した。

調印式にのぞむ鈴木市長と須永氏。背後には夕張のゆるキャラのアイツが……全然ゆるくない

鈴木市長とトラストバンクの出会いは、なかなかユニークだ。トラストバンクの須永氏は、ある日、テレビで夕張市が財政再建に奮闘する番組を観たそうだ。

「夕張市の番組を観て、トラストバンクでも何かお手伝いできないものかと思いました」(須永氏)。

そんな折、鈴木市長から須永氏に「ぜひ、お目にかかりたい」という連絡が入った。番組で観た夕張市が気になっていた須永氏は、その連絡を受けた際、運命的な何かを感じたという。

そして9月28日、鈴木市長はトラストバンクを訪れ、須永氏と会談した。「通常、自治体の首長が弊社にいらっしゃる際、2~3人の方と来社されるのが普通ですが、鈴木市長は、たったお一人で来社されました」と明かす。東京までの渡航費を少しでも節約したい鈴木市長の心情が伝わってくるようなエピソードだ。

お礼の品を増やして市への寄付を募る

そして、トラストバンクは10月に夕張市に早速向かい、ふるさと納税について何か支援できないか視察。何しろ全国各地、10万点以上もの納税者へのお礼の品を紹介しているサイト、ふるさとチョイスを運営する同社だ。夕張市のお礼の品を提供する事業者を、それまでの夕張市農協のみから8事業者へと広げることができた。

これまで夕張メロンだけだったお礼を50種に増やす

鈴木市長によると、ふるさと納税開始初期には、現在お礼としている夕張メロンはおろか、手紙すら出していなかったそうだ。納税者から「手紙ぐらいは……」と指摘され、お礼の手紙、そして夕張メロンを届けるようになった。ただ、これからは8事業者の協力で、よりバリエーションに富んだお礼を届けられるようになる。

さて、破綻したとはいえ、夕張市には大きな財産がある。それは夕張高校だ。以前、別の取材でお会いした自治体の首長が、「高校がないので子育て世代が居着かない」とこぼしていた。

それを思い出した筆者は鈴木市長にそのことを問うと、「確かに高校があるのは財産です。ですが、手をこまねいていては、それすら無くなります」と危機感をみせた。鈴木市長によると、集まった寄付で夕張高校の“高校魅力化”を推進するそうだ。

なお、あとから知ったことだが、須永氏が観た番組はこの夕張高校の危機を報じたものだった。ぜひとも高校魅力化を推し進め、夕張市の再生のためにがんばっていただきたい。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。