クルマの心臓部を一新! トヨタの新パワートレーンが見据えるものとは

クルマの心臓部を一新! トヨタの新パワートレーンが見据えるものとは

2016.12.14

昨年12月に発売された新型プリウスで、トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー(TNGA)に基づくプラットフォームが実用化に移された。TNGAは豊田章夫社長が推進する“もっといいクルマづくり”のための基本概念だ。このTNGAが、パワートレーンにも適用される。今回トヨタ自動車が催した“パワートレーン技術説明会”では、何が語られ、そこから何が見えてきたのか。

電動化に関する説明会かと思いきや…

トヨタ自動車は今年11月17日に、「EV開発を担う社内ベンチャーを発足する」と発表した。電気自動車(EV)の開発にあたって、小さな組織で従来と全く異なる仕事の進め方をすることにより、商品の早期投入を目指すというのである。

それから間もなくの12月6日、今回のパワートレーン技術説明会が催された。ここまでの経緯から、電動化へ向けたさらなる強化の内容であるかと想像したが、中心となったのは、新ガソリンエンジンの効率向上と、新多段変速機(トランスミッション)、そして新エンジンをいかすハイブリッドシステムの説明であった。

画像は「もっといいクルマづくり」の基本概念「TNGA」に基づき刷新されたプラットフォーム(車台)。車台がクルマの骨格だとすれば、駆動装置の集合体であるパワートレーンは心臓部にあたる部分だ

社内ベンチャー発足によるEVの即戦力化は、米国カリフォルニア州で2018年から強化されるZEV規制への対応が差し迫ったことへの対処であろう。2018年には、新車販売の4.5%をEVなど排出ガスゼロ(ゼロエミッション)の車種にしなければならない。従来、ここにハイブリッド車も組み入れることが認められてきたが、2018年からはEV、燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHV)しか勘定に入れられなくなる。なおかつ、規制の比率は毎年増強され、2024年には19.5%に達し、5台に1台はZEVにしなければならなくなる。

既存エンジンの低燃費化も喫緊の課題

これまでトヨタは、究極のエコカーはFCVであり、また低燃費のハイブリッド車を普及させることが気候変動への効果を上げ、一方EVについては、コミューターなど限定的な利用になるとのすみ分けを前提としてきた。だが、FCVの普及は水素ステーションの整備に時間を要して見通せず、ハイブリッド車はZEVの勘定に入れられなくなり、それらに対して、限定的と考えてきたEVの本格的な商品化が待ったなしとなったのである。今回の説明会でも、電動化へ向けた開発者を約30%増強すると述べられた。

同時に、トヨタは世界一の自動車メーカーとして、世界各地で新車販売を行っている。トヨタの決算発表によると、2015年度における同社の連結販売台数は868万1,000台で、ダイハツ工業と日野自動車を含めたグループ総販売台数は1,009万4,000台に達する。連結販売台数のうち、海外での販売は662万2,000台で割合は76%。海外販売のうち283.9万台は北米向けで、次に多いのがアジア向けの134.5万台となっている。

北米のZEV規制対策は急務だが、アジアを含め、それ以外の地域では、まだEVの強制的な導入は起きていない。そうした市場へはエンジン車やハイブリッド車での販売促進が求められることになる。とはいえ、気候変動に対応した高効率で燃料消費の少ない、すなわちCO2排出量のより少ない動力源の投入は不可欠であり、今回の技術説明会となったのであろう。

また、カリフォルニア州を中心としたZEV規制においても、PHVはその勘定にまだ入っており、これにはエンジンが引き続き搭載されることになる。

すなわち、EVの迅速な開発と商品化、それに合わせて従来型内燃機関としてのエンジンや、国内はともかく世界的な普及はまだ道半ばのハイブリッド車の一層の拡販という2本柱が、世界一の自動車メーカーの戦略であるということだ。トヨタならではの数の原理と、原価低減による販売価格の抑制が、この新パワートレーンの核となる。

エンジン構築要素の統一で開発費を低減

個別に概要を見ていくと、ガソリンエンジンについては、燃焼のアーキテクチャー化を図り、エンジン排気量が異なる新エンジンの開発において、諸元のモジュール化により個別の開発費を抑える開発の仕方を行う。簡単に言えば、排気量の違うエンジン開発においても、エンジンを構築する要素を統一することで、余分な実験や検証を省いて原価を抑えていくということだ。それによって効率の高い省エネルギーなエンジンを開発していき、同時に十分な動力性能も確保する。

今回発表されたエンジンは、排気量が2.5リッターの直列4気筒で、これは中型車以上の上級車種向けであり、従来使われてきたV型6気筒エンジンからの代替であろう。気筒数が減ることで摩擦損失や部品点数を減らすことができ、高効率化と原価低減を両立できる。

新型直列4気筒2.5リッター直噴ガソリンエンジン+新型トランスアクスル

変速機(トランスミッション)は多段化を進め、後輪駆動車用のトランスミッションをトヨタ初の10段変速とする。多段化の目的は、エンジン回転数をあまり上下させなくても十分な動力性能を発揮できるように、細かく変速することだ。それによって、エンジン回転の幅の中でもっとも効率の良い回転数域を常に使うことにより、燃費を改善し、同時に十分な加速性能を手に入れる。簡単に言えば、あまり高い回転までエンジンを回さなくても十分な力を発揮させることで、燃費を抑えるということだ。回転を上げると摩擦損失が増えるので、馬力は出ても燃費は悪化するからである。

ハイブリッドシステムも進化

ハイブリッドシステムについては、これまでトヨタの方式には、歯車の大小を切り替えることで変速するエンジン車のような機械的な機構は用いられてこなかった。しかし今回、「Multi‐stage THSⅡ」には、歯車を使った変速機構を採り入れることにより、エンジンとモーターの最適な回転数をより幅広く調節できることになった。

Multi‐stage THSⅡ

もちろん、これまでもモーターが得意とする低回転域と、エンジンが得意とする中~高回転域をうまく組み合わせることはしてきたが、その最適な範囲は、日本やアメリカなど高速道路での最高速度があまり高くない交通環境での回答であった。今回、機械的な変速機構を採り入れることにより、より高速走行の多いヨーロッパにおいても、動力性能と燃費性能を向上させる手段を手に入れたことになる。したがって、Multi‐stage THSⅡは、高級車向けの後輪駆動用システムとなっている。

加えて、PHV用のハイブリッドシステムも、新しい2.5リッター直列4気筒エンジン用として紹介された。これは、プリウスおよびプリウスPHVの1.8リッター直列4気筒エンジン向けと同様の機構の内容となっている。

TNGAで“仲間づくり”が加速?

今回の技術発表の中で注目されたのは、アイシン精機から昨年4月に専務役員としてトヨタに移り、パワートレーンカンパニーのプレジデントを務める水島寿之氏が、出身の自動車部品サプライヤーの発想で、「(新型パワートレーンは)他のメーカーにも載る技術だ」と述べたことである。

トヨタ専務役員の水島寿之氏

トヨタ以外の他のメーカーについて具体的な発言はなかったが、トヨタと提携関係にある富士重工業(スバル)やマツダ、場合によっては今後提携内容が具体化していくであろうスズキなどへの適用が考えられる。新しいパワートレーンやハイブリッドシステムをグループ内に拡げていくことで、豊田章男社長が言う“仲間を増やしていく”連携の中で、それら仲間の商品構成を支援する根幹技術になっていく可能性があるということだと私は解釈した。

それら自動車メーカーのうち、スズキは独自技術で着実に「エネチャージ」や「S-エネチャージ」、また最新のソリオには新しいハイブリッドシステムを投入しているが、スバルは「XV」に独自のハイブリッド車、マツダは「アクセラ」に前型プリウスと同じハイブリッド車を持つだけで、電動化車両の商品構成は貧弱だ。それでいて、それら自動車メーカーもカリフォルニア州のZEV規制の対象メーカーとなっていくのである。もちろん、すでに述べたように、もはやハイブリッド車はZEV規制に対し何の効力も持たない。

“いいクルマ”にリソースを集中させるために

TNGAは、この先のトヨタ車の在り方を決める基本概念である。その第1弾としてプラットフォームが紹介され、新型プリウスを出始めとし、間もなく「C-HR」というクロスオーバー車にも展開され、さらには2020年までにはトヨタ車の半数がTNGAに基づいたクルマになっていく。そしてこのTNGAは、単にプラットフォームのモジュール化ではなく、パワートレーンにもいえることが、今回の技術説明会で明らかにされた。

TNGA導入第2弾となる「C-HR」

クルマの骨格となるプラットフォームと、その心臓部といえるパワートレーンの共通概念化を図ることによって生じる余剰の資源を、「もっといいクルマづくり」の次の一手へ回していくことで、トヨタ車の価値を一層高めるとともに、仲間となった自動車メーカーへもその恩恵が行き渡るようにしていこうという考えが垣間見えてくる。

環境適合性を最先端で高めながら、クルマの魅力をどう消費者に訴求できるか。そこが、これからの自動車メーカーの雌雄を決するという切実な思いと決意を、今回のトヨタのパワートレーン技術説明会から感じるのであった。

訪日外国人と“飲みニケーション”できるマッチングサイトが見いだす価値とは?

先鋭ベンチャー LOCK ON! 第8回

訪日外国人と“飲みニケーション”できるマッチングサイトが見いだす価値とは?

日本の若者が敬遠し始めている“飲みニケーション”

訪日外国人をターゲットとした“異文化飲みニケーション”サービスが誕生

居酒屋がビジネスのヒントを得られる貴重な場になる可能性も

ここ最近、若者に嫌われがちな慣習に「飲みニケーション」がある。

これはいうまでもなく、仕事を終えた後、同僚たちと居酒屋などに集結し、アルコールの力を借りて互いの胸襟を開き、親睦を深めるコミュニケーション手法のこと。しかし、終身雇用や年功序列が崩壊した今や「会社の人とプライベートの時間まで削って仲良くなろう」というモチベーションは薄れた。「“飲みニケーション”って、いらなくね?」というムードが蔓延。令和時代に廃れてしまいそうな慣習ともいえる。

会社に勤める日本人の若者には、風当たりの強い飲みニケーション。それを新たなカタチとしてビジネスにつなげているのが、アシノオトの木村壮介さんだ。では、どんなビジネスなのか、木村さんに聞いた。

アシノオト代表の木村壮介さん。高校卒業後、兄が起こしたグループウェアメーカーにジョインして、エンジニアとして活躍。ウェブマーケティングの会社へ転職し、ウェブコミュニティの開発運営などを経て独立。訪日外国人とローカル日本人をつなぐQ&Aサイト「Hub Japan」を起ち上げ。2017年、同サイト内で「MEET&EAT」をスタートさせた

サービス名はHub Japan「MEET&EAT」。ネット上のプラットフォームを介して知らない者同士がマッチングし、文字どおり、食べて、飲む。”飲みニケーション”で親睦を深める、というわけだ。

もっとも「MEET&EAT」がマッチングするのは上司と部下でも、出会い系的な若い男女でもない。木村さんが飲みニケーションのターゲットにしているのが訪日外国人と日本人。日本を訪れた海外からの旅行者と、日本にいる人たちを居酒屋でつなぎ、親睦を深めさせる。いわば“異文化飲みニケーション”を提供しているのだ。

旅行者の「美味しい」は、アテにならない

きっかけになったのは、木村さんの経験だった。

「新婚旅行のときに覚えた違和感。そこからはじまったんです」(木村さん)

木村さんがイタリアへ行ったのは2015年。奥さんと2人で楽しみにしていたのが本場のイタリア料理だった。旅行に関する大手口コミサイトでみつけた店を、まず巡った。待ちに待った本場の味。それが実にいまいちだった。

「『こんなものかな…』とも思ったけれど、2日目に偶然仲良くなった地元のおばちゃんが『昨日はどこで食べた? 駅前の店? ダメダメ。行くならあっちの店よ』と教えてくれたんです。すると今度はめちゃくちゃ美味しかった。それが衝撃でした」(木村さん)

美味しさに対する衝撃だけじゃない。圧倒的な集合知を誇るネットの口コミサイトが、地元のおばちゃんのアナログな知見に勝てないことにこそ、木村さんは感銘を受けた。

「考えてみたら当たり前なんですけどね(笑)。世界中の質の高いユーザーが口コミを書き込めたとしても、書き手が旅行者である以上、底はしれている。地域にずっといる人の知識には敵いませんから」(木村さん)

そこに着想の芽があった。

ならば「地元の人と海外からの旅行者をQ&Aでつなぐローカルコミュニティサイトがあったら喜ばれるのでは?」と考えた。ヤフー知恵袋のような巨大なQ&Aサイトや、SNSで直接つながったコミュニティサイトはあるが、越境してローカルの人と旅行者をつなぐQ&Aサイトは意外と見つからない。

それまでグループウェアの制作運営や、企業向けのコミュニティサイトの開発運営を手がけるITエンジニア・ディレクターだったが、独立起業の潮目を感じた。個人的に「社会課題の解決につながるような事業で独立したい」と考えていたことも後押しになったという。

「どんな課題か? “グローバリゼーション”とそれに伴う文化の均質化“への危惧ですね。なんていうと大げさですけど、目立たないけれど素敵なスポットや、小さくても美味しいお店が、情報の均質化で目立たず消えていく。盛りあげないともったいないなって、感じていたのです」(木村さん)

そして2016年に独立。自らプログラムを書けること、奥さんもWebデザイナーだったこともあいまって、すぐさまシンプルなQ&Aサイトを立ち上げた。名前は「Hub Japan(ハブ・ジャパン)」。訪日予定、あるいは訪日中の外国人ユーザーが英語でクエスチョンを書き込むと、日本のローカルユーザーがアンサーを書き込んでくれるシンプルな仕組みだ。

たとえば「東京でオススメの穴場の寿司屋は?」「サクラを見に大阪へ行くが、気温は? 上着は持参したほうがいいか?」といった具合に欧米を中心に訪日予定の人たちから英語で書き込む。すると、サイトに埋め込んだGoogle翻訳エンジンが日本語に変換してくれるので、日本人も気兼ねなく「現地の声」を書き込める。その日本語は、書き込んだユーザーが読めるように、英語に変換されるわけだ。

「ただオンラインだけだとつまらないのでリアルでも何かやりたいと考えた。そこで『体験の仲介サービス』をやろうとしたんです。訪日外国人が興味のありそうな、着物の着付けとか、お茶の体験とか、いろいろ試しにやってみたら……」(木村さん)

そうしたなか、圧倒的に参加者の好評を得た体験イベントがあった。「居酒屋探訪」ツアーがそれだ。

日本人には当たり前の居酒屋に価値があった

赤提灯や縄のれんが目印の大衆居酒屋から、高級割烹ぜんとした高級店まで、バラエティに富む居酒屋レストランは、日本全国に23万店以上あるといわれる。日本独自の酒とつまみが効率よく味わえるうえ、日本の生活文化や日本人とふれあう機会もあるため、今や訪日外国人にも人気のスポットだ。

ただ興味はあれど、観光客が海外の夜の街に繰り出して、初めての居酒屋に入るのはハードルが高い。ボッタクリ店などにあたるリスクもある。しかし、勝手知ったるローカルの日本人が薦める店に、しかも一緒に入って楽しめるとあれば、安心感が高まる。

「一方で居酒屋などの飲食店も、訪日外国人のお客様を呼び込みたいけれど、お店を知ってもらえていないというのが、多少の機会損失になっていた。なので、飲食店の販促の仕組みとして活用してもらえると考えたんです」(木村さん)

試しに「ハブ・ジャパン」をとおして「日本の居酒屋で日本人と語り合おう」というツアーを告知すると、すぐに外国人観光客から応募があった。木村さんが試験的にアテンドをする。奥さんや友達とともに外国人複数×日本人複数で、オススメの居酒屋にむかい「カンパイ!」からはじめると、異様な盛り上がりをみせた。

英語もできず、そもそもコミュニケーションも苦手だった木村さんだが、酒が入り、気持ちが大きくなると「身振り手振りで必死に会話をしている自分」に気づいた。飲みニケーションあなどれじ、だ。

「また、もちろん海外の方々に『日本に来た目的は?』『何を楽しんだ?』などと聞くことも楽しいのですが、実のところ彼らから日本について意表をつく質問をされることにこそおもしろさ、価値を感じました」(木村さん)

「日本で最もポピュラーな宗教は?」とか、「無宗教? ではなぜあれほど神社があり、誰しもお参りしているんだ?」とか、「あなたにとって蕎麦とはなんですか?」とか――。

「蕎麦については、おもしろかった。自分にとって蕎麦とは何か、なんて考えたことなくて(笑)。日本人同士だったら絶対に聞いてこないような質問をどんどん向けられる。結果、むしろ日本のこと、日本文化のことを深掘りせざるを得なくなったんです。また海外の人たちが、日本の何に興味があるのかも肌感覚でわかる。これって観光施策や訪日外国人向けビジネスのヒントが得られる貴重な場になるなって」(木村さん)

だから、日本文化を深掘りしたい「訪日外国人」、質の高いインバウンド客を集客したい「居酒屋」、そして外国人とフランクに交流することで刺激やアイデアを得たい「ローカルの日本人」。この三者を“三方良し”でつなぐプラットフォームとして、2017年末に作った。

仕組みはやはりシンプルだ。ローカルの日本人ならFacebook認証をとおして「ハブ・ジャパン」にまず登録。そこから「MEET&EAT」のサイトに行く。同じようにログインして日本滞在中の「居酒屋で交流したい」と書き込んでいる訪日予定の外国人アカウントをチェック。都合のいい場所や日時、気の合いそうなプロフィールの団体がいたら「マッチング希望」をクリック。返信を待つ。マッチングとなれば、メールでのやりとりができるようになり、「MEET&EAT」内で指定する居酒屋店をチェックして予約。当日、最寄りの駅前で待ち合わせて、予約時間に店にいき「カンパイ!」となるわけだ。

外国Hub Japanの利用者たち。未成年かどうかの判断はFacebook認証で行われる。トラブルが起きないように、基本2~3人ずつしかマッチング登録できない

今はサイト経由で飲食店への予約が発生したときに、紹介料を得る仕組みで運営中。都内数十店舗の居酒屋と契約を結び、月30人程度の訪日外国人からのリクエストに応えている。

「ビジネスの規模はもう本当に小さい。受託の仕事を続けながら、まだまだ手探りの段階です。ただ小さいながら手応えも感じています」(木村さん)

「またぜひ居酒屋で飲みたい」と訪日外国人のリピーターが増えている。「生きた英語を学びたい」「楽しい飲み会を開きたい」というローカル日本人も増加中だ。とくに「企業のインバウンド担当をしているが、本当のニーズがつかめない。ヒントを得たい」「飲食店を経営しているが外国人向けにメニューやサービスを充実させたい。直接リサーチできるのでは」とマーケティング・リサーチの場として価値を見出している人も現れ始めているという。

飲みニケーション、やはりあなどれじなのだ。

「まあ、まだまだ小さい事業で、どこまでできるかわからないけど(笑)」(木村さん)と、取材終盤、木村さんは繰り返した。ただ、目立たないけど素敵なビジネス。盛り上げないともったいない、と……。

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2019.05.21

2018年度のM&A件数は830件、取引総額は12兆7,069億円

「武田薬品のシャイアー買収」は日本企業最高金額に

日本企業が積極的に海外での地盤固めに動いた様子が見られた

平成最後の年度となる2018年度(2018年4月-2019年3月)は、日本の上場企業によるM&A(企業の合併・買収)が活発だった。

国内の高齢化が進み、中小企業の後継者不在の問題はますます深刻になっている。大手企業でも国際競争が激しくなる中で、規模を拡大したり、「選択と集中」で経営を効率化したりする動きが活発だ。こうした経済環境の中で、多くの企業はM&Aに注目し、自社の成長の手段の1つとして積極的に活用し始めている。

M&A仲介サービス大手のストライクが東京証券取引所の適時開示情報を基に構築したデータベースによると、2018年度のM&A件数は830件、金額(株式取得費用と一部アドバイザリー費用を合わせた取引総額)は計12兆7,069億円となり、いずれも2009年度以降の10年間で最高に達した。

2009年度から2018年度にかけてのM&A件数の推移。ストライクが東京証券取引所の適時開示情報を基に構築したデータベースで集計したもの。※経営権が移動するものを対象とし、グループ内再編は対象に含まない。金額などの情報はいずれも発表時点の情報
2009年度から2018年度にかけてのM&A金額の推移。 ※同上

日本企業最高金額となった「武田薬品のシャイアー買収」

2018年度に注目されたのが取引金額の拡大だ。

武田薬品工業がアイルランドの製薬会社シャイアーの買収に投じた6兆7,900億円は、日本企業が実施したM&Aとしては過去最高額となった。さらに同年は、1,000億円を超える案件がこの10年で最高であった2017年度と並ぶ18件に達するなど、国際競争が激しくなる中で、日本企業がクロスボーダー(国際間案件)のM&Aを活発化させた様子が見てとれる。

武田薬品のシャイアー買収は2018年5月8日に発表され、2019年1月8日に成立した。巨額の買収金額が経営に与える影響を懸念して、創業家一族ら一部の株主が買収に反対したことも話題になったが、臨時株主総会での武田薬品株主の賛成率は9割近くに達した。

武田薬品に次ぐ大型の案件は、ルネサスエレクトロニクスによる米半導体メーカー・インテグレーテッド・デバイス・テクノロジー(IDT)の買収であった。買収金額は日本の半導体メーカーとして過去最高となる7,330億円に達した。自動運転やEV(電気自動車)などの進化に伴い、車載向け半導体の需要拡大が見込まれており、ルネサスエレクトロニクスはIDTの買収によってこの分野の開発力強化や製品の相互補完を目指す考えだ。

それに次ぐ大型の案件は、日立製作所によるスイスABBの送配電事業の買収であり、その金額は7,140億円に達する。日立製作所はABBから2020年前半をめどに分社される送配電事業会社の株式の約8割を取得して子会社化したあと、4年目以降に100%を取得し、完全子会社化する予定だ。再生可能エネルギー市場の拡大や新興国での電力網の整備に伴い、送配電設備に対する需要は一層高まると予想されており、日立製作所は買収により送配電事業で世界首位を目指す。

2018年度(2018年4月1日-2019年3月31日)の取引総額上位10ケース。※金額は株式取得費用と一部アドバイザリー費用を合わせた取引総額 (ストライク調べ)

2019年度も活況続くか

先述したように、金額が1,000億円を超える大型のM&Aは18件あり、武田薬品など金額上位3社のほかに、大陽日酸、三菱UFJ信託銀行、大正製薬ホールディングス、東京海上ホールディングス、JTといった大企業が名を連ねた。

これら18件中17件はクロスボーダーであり、かつ2018年度のM&A件数中、こうしたクロスボーダーは185件(構成比22.3%)に達しており、日本企業が積極的に海外での地盤固めに動いた様子が浮かび上がった。

かつて、日本で企業の投資といえば、研究開発や設備投資が大半を占めていた。しかし、最近の状況を受けて、ストライクの荒井邦彦社長は「全体の成長率が低迷する中で、こうした投資の効果は思うように高まらず、事業戦略としてのM&Aが日本企業でも定着してきている」と分析する。

なお同氏は、2019年度のM&A市場の動向についても「日銀による金融緩和が企業の資金調達環境を改善させており、活況が続きそうだ」と予測している。

出展:M&A online データベース

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