大躍進のファーウェイ、SIMフリースマホ市場で人気となった理由

大躍進のファーウェイ、SIMフリースマホ市場で人気となった理由

2016.12.16

MVNOの急速な伸びによってSIMフリースマートフォン市場が拡大する中、カメラ機能に力を入れた「HUAWEI P9」「HUAWEI P9 lite」のヒットで人気を高めているのがファーウェイだ。12月には新しいフラッグシップ「HUAWEI Mate 9」を投入するファーウェイだが、同社が今年大きく躍進したのにはどのような理由があるのだろうか。

SIMフリー市場の先駆者でもあるファーウェイ

今年は、大手キャリアから回線を借りてモバイル通信サービスを提供するMVNOが、一層の躍進を遂げた1年といえるだろう。MVNOは昨年から注目されてきたが、中でもMVNOの利用者を大きく伸ばす要因となったのが、総務省の影響だ。

総務省は4月に「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を打ち出し、携帯電話大手3社のスマートフォンに対するによる行政指導を実施したことで、スマートフォンの実質0円販売が事実上禁止された。大手キャリアの端末価格が上昇したことが、より安価な料金を求めてMVNOへと流れるユーザーを増やしたといえる。

そのMVNOの躍進に伴って、人気を高めているのがSIMフリーのスマートフォンを提供するメーカーだ。中でも今年、大きな伸びを示しているのがファーウェイである。ファーウェイは日本におけるSIMフリースマートフォンメーカーの先駆的存在であり、2014年には「Ascend G6」を発売してSIMフリー市場に参入している。

だが参入当初のファーウェイ製スマートフォンは、日本の主要周波数帯に一部対応していないなど、日本向けに対応の弱さが目立ち、それがASUSなど後発のライバルメーカーにシェアを奪われることへとつながってしまっていた。しかしながら昨年発売した「HUAWEI P8lite」で、弱点の日本向け対応をしっかり進めたことで、ヒットを獲得して息を吹き返し、今年に入ってからは「HUAWEI GR5」「HUAWEI Y6」などミドル・ローエンドクラスの端末を相次いで投入して市場での存在感を高めてきた。

日本向け対応が弱かったファーウェイのSIMフリースマートフォンだが、「HUAWEI P8lite」でその問題を解消したことで、ヒットモデルを生み出す土壌が出来上がった

そして6月には、HUAWEI P8liteの後継モデル「HUAWEI P9 lite」と、その上位モデルである「HUAWEI P9」を投入。P9はライカと共同開発したレンズを用い、一方がカラー、一方がモノクロという独自のダブルレンズ機構を採用。美しいモノクロ写真やボケ味のある美しい写真などが簡単に撮影できることから、大きな注目を集めた。

ファーウェイが今年発売した「HUAWEI P9」。カラーとモノクロのセンサーを採用したカメラを1つずつ用意するダブルレンズ機構を備えていることが注目された

P9、P9 liteは共に発売直後から、SIMフリー市場で他社のモデルを抑えヒットを記録。MVNO市場拡大の勢いに乗って販売台数も大幅に伸ばしており、スマートフォン市場全体でもファーウェイのシェアを大きく押し上げているようだ。ちなみにファーウェイ側の発表によると、家電量販店や併売店を主体とした一部の調査では、日本のスマートフォン市場全体でファーウェイの販売台数シェアが4位に上るとのことだ。

厳しい競争を勝ち抜いた武器は「ダブルレンズ機構」

だが今年は、他のSIMフリースマートフォンメーカーも日本市場に向けて多くの特徴ある新製品を投入しており、競争が非常に激しくなっている。そうした中にあって、なぜファーウェイは躍進を遂げることができたのだろうか。

最大の要因は、やはりヒットモデルとなった端末自体の魅力にあるといえよう。特にP9は、アップルの「iPhone 7 Plus」に先駆けていち早くダブルレンズ機構を採用。スペック競争が続いていたカメラ機能に新たな提案を持ち込み、撮影する楽しさをもたらした点を評価する声が多く聞かれた。

そしてもう1つ、忘れてはならないのは、楽天モバイルから独占販売されている「honor 8」だ。こちらはオンライン販売限定のモデルながら、P9に近い性能を備え、なおかつライカレンズではないもののダブルレンズ機構もしっかり採用。それでいて、楽天モバイルのSIMとのセット販売により、35,800円で購入できるなどコストパフォーマンスが非常に高いことから、発売以降高い人気を獲得している。

楽天モバイルが独占販売している「honor 8」(写真は海外版)。ダブルレンズ機構を備えながら、コストパフォーマンスが非常に高いことから人気となっている

差異化が難しくなりつつあるスマートフォンの中にあって、十分な基本性能を備えながらも、ダブルレンズ機構というインパクトのある機能を備え、それでいてお得感のある価格設定がなされていた。そうしたトータルバランスの良さが、これらの端末の人気に火を点けたといえるだろう。昨年P8liteがヒットがあったことから、P9 liteがヒットすることはある程度予想できたものの、P9がここまでヒットしたことは、ファーウェイ関係者の間でも予想外だったとのことだ。

そしてこれらモデルの人気には、口コミも大きく貢献したと見られる。特に日本ではここ1、2年のうちに、Instagramなど写真を重視したSNSの人気が急速に高まっている。そうしたサービスを通じてカメラ機能が高く評価されたことが、ユーザー同士の口コミ効果を呼び、さらにユーザーを増やす好循環を生み出したようだ。

ただし、ファーウェイが今年躍進を遂げたのは、端末の魅力だけが要因ではないことは覚えておく必要がある。同社は今年、国内でのサポート強化にも乗り出しており、4月に東京・銀座にカスタマーサービスセンターをオープンしているのだ。

SIMフリースマートフォンは、大手キャリアと比べ自社でサポートする必要があるため、サポート面での弱さが以前より指摘されていた。だがファーウェイは、電話などでのサポートだけでなく、あえて専用のサポートセンターを設け、直接ユーザーが訪れる形でのサポートも実現している。サポート体制の有無は購入後の安心感に大きくつながってくるだけに、サポートに注力する姿勢が、ファーウェイの評価を高めたことは確かだろう。

「Mate 9」の投入で勢いに乗ることができるか

SIMフリースマートフォン市場で高い人気を獲得し、勢いに乗るファーウェイは、12月13日にもう1つのフラッグシップモデル「Mate」シリーズの新機種、「HUAWEI Mate 9」を発表。さらなる攻めの姿勢を見せている。

こちらは5.9インチディスプレイを採用した大画面・高性能モデルで、4000mAhものバッテリーを搭載するほか、ダブルレンズ機構も1200万画素のカラーセンサー搭載カメラと、2000万画素のモノクロセンサー搭載カメラを用いたものへとパワーアップ。ビジネスパーソンをターゲットにした、一層高い性能を求める人に向けた内容となっている。

それでいて、Mate 9は、市場想定価格が60,800円と、P9の当初の価格に近く、昨年同社が発売したフラッグシップモデル「HUAWEI Mate S」(7万9,800円)と比べると2万円近い設定がなされている。P9がヒットした勢いを受け、高価格帯のモデルをよりリーズナブルな価格で提供し、販売拡大を進めようとしていることが分かる。

新しいフラッグシップモデル「HUAWEI Mate 9」。バッテリーやカメラなどでP9より一層高い性能を備えながら、6万円程度とこのクラスでは入手しやすい価格を実現

ファーウェイはグローバルではハイエンドからミドル、ローエンドまで幅広いラインアップを揃えており、市場に適したモデルを投入できることを強みとしている。P9でハイエンド市場の開拓に成功しただけに、今後はミドルハイ~ハイエンドクラスの比較的高価格なモデルを、日本市場に積極投入してくる可能性が高いといえそうだ。

だが一方で、日本市場に向けた対応に関しては弱い部分がまだ存在する。その直近の課題となるのがVoLTE対応、ひいてはau回線に向けた対応だ。

今年後半からいくつかのメーカーがVoLTE対応を進め、これまでほとんど対応機種が存在しなかった、「UQ mobile」などau回線を用いたMVNO向けの対応を積極化するようになってきている。だがファーウェイは、先行するASUSやTCLコミュニケーションなどと比べると、au回線向けの対応には遅れがあるようだ。

確かにファーウェイも、UQ mobile向けにP9 liteをカスタマイズし、VoLTEに対応させた「HUAWEI P9 lite PREMIUM」を投入してはいる。だが同社は独自のチップセットを採用しているため、チップセットの変更が必要になるなど独自性が不利に働いているのも事実だ。ファーウェイ関係者によると、今後は独自のチップセットでもVoLTEへの対応は可能だと説明しているが、KDDIはビッグローブを買収するなどしてMVNOの拡大を急速に進めようとしているだけに、販路拡大のためにもau回線向けの対応は急がれるところだ。

ファーウェイはUQ mobile向けとして「HUAWEI P9 lite PREMIUM」を投入しているが、au VoLTE対応のためチップセットを変更するなどのカスタマイズを加えている
「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

2019.01.17

「eBASEBALL」で初代王者を決めるe日本シリーズが開催された

頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ

はたして“もう1つのプロ野球”で頂点に輝いたのは?

1月12日、東京ビッグサイトTFT HALL 500にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」のe日本シリーズが開催された。頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ。はたして初代王者に輝いたのは、どちらのチームか。

3カ月間の戦いの末、頂点を争う切符を勝ち取った2チーム

「eBASEBALL」とは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球 2018(パワプロ)』を使用した、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共同で開催するプロリーグだ。

2018年7月より行われたオンライン予選、西日本、東日本選考会を経て、9月末に実際のプロ野球球団による「eドラフト会議」を実施。ドラフトで指名された選手は、プロゲーマーとして各球団に所属する形になった。

11月からは実際のプロ野球のペナントレースのように、セ・リーグ、パ・リーグに分かれて「eペナントレース」がスタート。そして12月に行われた、eペナントレース上位チームによる「eリーグ代表決定戦」によって、パ・リーグの埼玉西武ライオンズと、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズが、e日本シリーズへの切符を手にした。

パ・リーグ代表の埼玉西武ライオンズは、eペナントレースを13勝2敗の圧倒的な強さで勝ち抜き、eリーグ代表決定戦でも危なげなく、代表権を獲得。対するセ・リーグ代表の横浜DeNAベイスターズは、キャプテンであるじゃむ~選手のデータを活かした戦術と強力打線、そして巧みな投球術でeリーグ代表権をもぎ取った。

埼玉西武ライオンズのなたでここ選手(写真左)、BOW川選手(写真中)、ミリオン選手(写真右)
横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手(写真左)、じゃむ~選手(写真中)、AO選手(写真右)
会場は超満員。立ち見席も出るほどの人気ぶりで、まさに日本一を決定するのに相応しい舞台となった

一発勝負の決勝戦! 最後に笑うのは……?

e日本シリーズでは、各チーム3名による3イニング交代制の試合を1戦だけ行う。そこで勝利したチームがeBASEBALL パワプロ・プロリーグの初代チャンピオンになるわけだ。

『パワプロ』でお馴染みの選手の調子発表

選手の調子を見ると、埼玉西武ライオンズは、主力に不調の選手がおらず実力を存分に発揮できそうなラインアップ。横浜DeNAベイスターズは主砲筒香の好調が嬉しいものの、桑原、ソトの不調が厳しい。どちらかというと調子具合は埼玉西武ライオンズが優位に見られた。

さぁ、いよいよプレイボール。まず1人目、埼玉西武ライオンズはミリオン選手、横浜DeNAベイスターズはヒデナガトモ選手がコントローラーを握る。奇しくも、ペナントレースで最多奪三振のタイトルを獲得した2人の対戦となった。

そのため、激しい投手戦が繰り広げられたが、3回裏に均衡が破られる。豪打を誇る埼玉西武ライオンズとしては珍しいスクイズで1点を先制すると、そこから怒濤の連打で計5点をもぎ取り、序盤にして埼玉西武ライオンズが大量リードを得た。

スクイズ、スチールと小技も冴え、一気に5点を奪うミリオン選手
センターフライの捕球ミスやスクイズの打者をアウトにできなかったなど、ミスが出てしまったヒデナガトモ選手

2人目は埼玉西武ライオンズがBOW川選手、横浜DeNAベイスターズがじゃむ~選手と、キャプテン対決。じゃむ~選手が2点を返すも、BOW川選手が1点を追加し、スコア「西武 6-2 DeNA」で最終プレイヤーにバトンが渡された。

埼玉西武ライオンズのキャプテンを務めるBOW川選手
横浜DeNAベイスターズの軍師ことじゃむ~選手

最後は、ペナントレースで急成長した埼玉西武ライオンズのなたでここ選手と、横浜DeNAベイスターズ無敗のエースAO選手の対戦となった。

最優秀防御率のタイトルを獲得し、eペナントレースでの失点はわずか3点と脅威の安定感を持つAO選手は、e日本シリーズでもその実力を発揮。打撃3冠を獲得したなたでここ選手をみごとに完封した。しかしながら、3イニングでは1点を返すのがやっとで、最終スコアは「6対3」。埼玉西武ライオンズが優勝し、e日本シリーズを制した。

今回の大会で急成長したなたでここ選手
横浜DeNAベイスターズのエースとしてチームを牽引したAO選手
ペナントレースから実況を担当した清水久嗣アナはe日本シリーズの実況も担当
解説を務めた元ヤクルトスワローズ監督の真中満氏
同じく解説を務めた元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏
ゲーム解説を務めるぶんた氏
パワプロ・プロリーグ初代チャンピオンの埼玉西武ライオンズ

埼玉西武ライオンズも横浜DeNAベイスターズも、打撃、特に本塁打に期待できる選手が揃っており、その打撃力で勝ち進んでいたなかで、e日本シリーズではホームランが「ゼロ」という、頂上決戦に相応しい緊迫感のある試合だったといえよう。

e日本シリーズでは博多激獅会も応援に駆けつけ、プロ野球さながらの応援が飛び交った

試合終了後は、優勝の表彰とともに、各個人タイトルの表彰も行われたので、その様子も紹介しよう。パ・リーグでは、首位打者、本塁打王、打点王、最優秀防御率の4冠を埼玉西武ライオンズのなたでここ選手が獲得。最多奪三振は埼玉西武ライオンズのミリオン選手が獲得した。

また、セ・リーグでは、首位打者と本塁打王の2冠を広島東洋カープのカイ選手、打点王と最優秀防御率の2冠を横浜DeNAベイスターズのAO選手、最多奪三振を横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手が獲得。そして、MVPには、4冠獲得のなたでここ選手が選出された。

パ・リーグの最多奪三振を獲得したミリオン選手
セ・リーグの首位打者と本塁打王を獲得したカイ選手
セ・リーグの打点王と最優秀防御率の2冠を獲得したAO選手
セ・リーグの最多奪三振を獲得したヒデナガトモ選手
パ・リーグの首位打者、打点王、本塁打王、最優秀防御率の4冠、そしてMVPを獲得したなたでここ選手
e日本シリーズでは12球団のマスコットがそろい踏み。スポンサーであるSMBCのキャラクター「ミドすけ」も登場した

eBASEBALLは試合を重ねるごとに盛り上がりを見せ、決勝の舞台でもあるe日本シリーズでは立ち見が出るほど多くのファンが駆けつけた。プロ野球ファンにとって、オフシーズン時期の楽しみの1つとして、eBASEBALLが定着しそうな気配も感じる。

最後にNPB(日本プロ野球機構)コミッショナーの斎藤惇氏による締めの挨拶にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2019」の開催も発表された。来シーズン、さらなる飛躍と盛り上がりに期待したい。

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

2019.01.17

フォルクスワーゲンの「パサート オールトラック」に試乗

これは意外? クルマ好きも納得のスポーティーなクルマ

ステーションワゴンとSUVの“いいとこ取り”

昨今のSUVブームはとどまることを知らない。コンパクトからラグジュアリーまで多様性もみられ、さらに「RAV4」の日本復活など、いくつかの新型車投入のニュースも届いている。しかし、SUVが必ずしも全てのユーザーにとってベストな選択肢とはいえないはずだ。

日常の使い勝手などを考慮すると、セダンとSUVの架け橋である「クロスオーバーワゴン」こそ、真の“いいとこ取り”なのではないかと思うところもある。今回は、フォルクスワーゲンから登場した「パサート オールトラック」に試乗し、この車種の魅力について再考してみた。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーワゴン「パサート オールトラック」に試乗した

スバルが普及させたクロスオーバーワゴンという車種

フォルクスワーゲンがミッドサイズモデル「パサート」に新グレード「パサート オールトラック」を追加した。このモデルは、パサートのステーションワゴン「パサート ヴァリアント」をベースとし、SUVのエッセンスを取り入れた「クロスオーバーワゴン」と呼ばれるジャンルのクルマだ。つまり、ステーションワゴンとSUVの中間的な存在である。特徴としては4WD、専用サスペンションで高めた最低地上高、SUVを彷彿させるラギッドなスタイルなどが挙げられる。これらにより、ステーションワゴンよりも走破性が高まっている。

「パサート オールトラック」は最低地上高の高さやSUVを髣髴させるスタイルなどを特徴とする。価格はグレード別に「Passat Alltrack TDI 4MOTION」が509万9,000円から、「Passat Alltrack TDI 4MOTION Advance」が569万9,000円からだ

少しだけクロスオーバーワゴンの歴史を振り返りたい。意外かもしれないが、こういったクルマを普及させたのは日本メーカーなのだ。

SUVのニーズが高まっていた1990年代の北米で、SUVを持たないスバルは大苦戦していた。その打開策として、2代目「レガシィ」をベースとするクロスオーバーモデル「アウトバック」(日本名:レガシィ グランドワゴン)を開発。これが大ヒットとなり、北米市場での巻き返しに成功する。

スバルが2代目レガシィをベースに開発した「アウトバック」。意外にも、歴代モデルの中にはセダン仕様が用意されていたこともある。日本では「レガシィ グランドワゴン」の名で登場。その後、「レガシィ ランカスター」と名称を変更した。先々代モデルからは日本でも輸出名を取り入れ、現在同様の「レガシィ アウトバック」となった

アウトバックがヒットした背景には、ステーションワゴンの高性能化が進み、実用車というイメージが変化して、アクティブなカーライフやスポーティな走りが楽しめる多用途なクルマとして認知されだしたことがあった。セダン譲りの使い勝手と走行性能、そこにラフロードにも対応できる走破性を組み合わせた欲張りな存在として人気を集めたのだ。事実、アウトバックの後にはボルボ「XC70」(後のV70 クロスカントリー)や「アウディ オールロード」といったクロスオーバーワゴンの名車が続々と誕生している。

今やクロスオーバーワゴンは、ステーションワゴンの定番となった。そのパサート版が「パサート オールトラック」だ。

パサート版クロスオーバーワゴンはどんなクルマなのか。試乗で確かめた

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすい?

ラギッドなイメージを高めたエクステリアは、パサート本来の上品なデザインの中に、アグレッシブさを感じさせる。主な変更点としては、アンダーガード付きの前後バンパー、ホイールアーチのブラックモール、シルバー仕上げのサイドシルモールなどが挙げられる。サスペンションは標準車+30mmアップとし、最低地上高は160mmを確保した。

ボディサイズは全長4,780mm、全幅1,855mm、全高1,535mm。コンパクトとはいえないが、日本の道路や駐車場には適応しやすいサイズといえる。最大のポイントは、ルーフレールを装備しながらも薄型とすることで、全高を1,550mm以下としているところ。これなら、多くの立体駐車場に入れられるはずだ。

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすいサイズ感だ

基本的にインテリアはパサートと共通だが、グレーのパネル加飾を取り入れるなど、スポーティーな装いにしてある。装備は上級モデルらしく充実していて、全車速追従機能付きのACCや車線内中央維持支援機能「レーンアシスト」、渋滞時追従支援機能「トラフィックアシスト」などの先進安全運転支援機能をはじめとし、スマートキー機能の「キーレスアクセス」やSSDナビ付きインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」、シート&ステアリングヒーター、パワーテールゲートなど快適装備も満載だ。

車内は広々としており、前後席共に快適なスペースが確保してある。ラゲッジスペースは標準で639Lと大容量。後席を折りたためば最大1,769Lまで拡大可能だ。

インテリアはスポーティーな装い。機能はパサート ヴァリアントの上級グレードに近いもので、充実している
後席は3分割の可倒式。折りたためば最大で1,769Lまで積める

これがベストパサート? スポーティーな乗り味を体感

次にメカニズムを見ていく。エンジンは「AdBlue」(アドブルー、尿素SCRシステムの触媒として用いる尿素水のこと)を使用したクリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載。最高出力は190ps/3,500~4,000rpmで、最大トルクは400Nm/1,900~3,300rpmを発揮する。トランスミッションにはDCTタイプの6速DSGを組み合わせる。

最大のポイントは、現行型パサートで初めて4WDを採用していること。さらに、アクセルやパワステ制御などを変更できる走行モードには「オフロードモード」が追加となっている。オフロードモードでは、急な下り坂で車速を一定に保つブレーキ制御「ヒルディセントアシスト」などが作動する。

クリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載する「パサート オールトラック」

試乗したのはパサート オールトラックの最上級グレードである「アドバンス」だ。一言でいえば、かなりスポーティーなキャラクターに仕立てられている。低回転で最大トルクを発揮するディーゼルエンジンの魅力が存分に味わえて、峠道の上り坂も力強く駆け上っていく。元気さはパサートTDIを上回っている印象だ。出力は同等だが、アクセルなどのセッティングが異なるのだろう。

そこに前後のトルク配分が可変となる4WDの「4MOTION」と電子制御ディファレンシャルロック「XDS」が加わることで、コーナリングもグイグイ曲がっていく。それでいて乗り心地も良いのだ。ラフロードに適応すべく、足回りのしなやかさを重視していることが良好な乗り心地につながっているのだろう。

「パサート オールトラック」の上級グレード「アドバンス」で御殿場周辺の峠道を走った

同じパサートのスポーティグレード「2.0Rライン」は、もっとハードなセッティングで乗り心地もやや硬めとなる。一方で、パサート オールトラックのアドバンスはバランス重視のセッティングなのだが、クルマ好きをも納得させるスポーティーさを持ち合わせている。これがベストパサートだとさえ思ったほどだ。

ただ、アドバンスはオールトラックの標準車が装着する225/55R17タイヤに対し、245/45R18タイヤにサイズアップしている。さらにはXDSやアダクティブシャシーコントロール「DCC」なども追加となっているので、標準車のオールトラックと異なる部分があることは加味しなければならない。

ただ、オールトラックがスポーティなワゴンに仕立ててあることは間違いない。ファミリーカーだけどドライブを楽しみたいというユーザーには、パサートの中で最もオススメできるクルマだ。

ファミリーカーでも走りを楽しみたいという人には「パサート オールトラック」をオススメしたい。確かに509万円からという価格は安くないが、「パサート ヴァリアント TDI」のエントリーモデルのナビ付きが約470万円であることを考慮すれば、納得のプライスといえよう

走りの良さを持ち合わせたSUVも増えてはいるが…

ステーションワゴンがブームとなったきっかけは、実用性の高さに加え、ワンボックスカーやSUVなどでは得られない走りの良さを獲得できたところにあった。しかし、走りの良さを身につけた昨今のSUVは、そのニーズを奪い、ステーションワゴンの領域を食ってしまったといえる。あれほど盛況であった日本のステーションワゴンも激減し、今やスバルの一強となっている。

ただ、輸入車を見ると、ステーションワゴンの顔ぶれはなかなか充実しており、一定の販売台数を確保している。その中には、いくつかのクロスオーバーワゴンが存在する。

クロスオーバーワゴンはステーションワゴンに価値が加わったクルマなので、ベース車と比べれば、やはり値段は少々高くなる。それでも、中身に見どころはあるし、コスパで考えても納得できるものが多いと思う。日常での使い勝手を重視したい人、ワイルドさやスポーティーさを強調するSUVに子供っぽさを感じてしまう人などは、改めてクロスオーバーワゴンに注目してみてはいかがだろうか。