宣言ひとつで黒字転換! メガネスーパーを変えたコンセプトの力

宣言ひとつで黒字転換! メガネスーパーを変えたコンセプトの力

2016.12.19

世代別検査やフィッティング、保証サービスなどに力を入れるメガネスーパー。これらは"アイケアカンパニー宣言"のもとに広がるサービスだ。アイケアに注力してから同社は大きく変わった。赤字続きから、2015年度決算で9期ぶりに黒字転換し、足元でも好調を維持する。アイケアカンパニー宣言とは何か、どうやって生み出したのか。

2015年度決算で9期ぶり黒字に。同社は変えたアイケアカンパニー宣言とは?

アイケアカンパニー宣言とは

メガネスーパーが掲げるアイケアカンパニー宣言。これは「人々を眼から元気にしたい。」をコンセプトに、長年培ってきた眼に関する知識や技術を活用し、目の健康寿命に関わるアイケアサービスや商品を提供していく取り組みだ。

このアイケアカンパニー宣言は他社との差別化を図るキーワードであり、9期ぶりに黒字転換を果たした理由を探る上で欠かせないものだ。同社のビジネスの根幹であり、利益の源泉となっているからである。

アイケアへの取り組みを重視するメガネスーパー。その考えのもとにトータルアイ検査、パーフェクトフィッティング、HYPER保証システムなどがある

メガネスーパーは近年まで非常に苦しい状況にあった。メガネ販売チェーンがメガネとレンズのセットで1万円を切る価格で販売しており、いかに量をさばくかが近年のメガネチェーンの売り方だった。その売り方にメガネスーパーも巻き込まれていた。その結果として、長年の赤字決算が続いてしまった。

変わり始めたのは、低価格路線をやめ、アイケアカンパニー宣言をしてからだ。方針転換は勇気のいることだが、何がきっかけで、同社は切り替えることができたのか。

方針転換をしたのは2年ほど前。「低価格路線では、もっと有名なチェーンに負けてしまう。しかし、差別化は必要だ。そう考え、メガネスーパーの強みを再考したところ、眼に関する知識が豊富な古参の社員が数多くいた。そこで、彼らの知識を生かし、徹底的に検査と加工と研究に特化しよう。そうすれば、新興勢力が出てきても追随されない」(星崎尚彦社長)。そうして生まれたのがアイケアカンパニー宣言というわけだ。

アイケアカンパニー宣言の効果

アイケアカンパニー宣言は大きな効果をもたらしたようだ。1万円に満たない商品ではなく、3万円代の高価な商品が売れるようになったのが顕著な例だろう。

メガネの世界は奥が深い。単に視力を補うのがメガネの役割だと思ってしまうが、自らに合っていないメガネを使い続けると、肩凝りにもつながってしまう。快適に使い続けるには、パーソナルなデータの反映が不可欠なのだという。

顔幅や眼・鼻・耳の高さといったサイズ、手元にピントを合わせる調整力や正面をむいたまま視線を下げる下方回旋量などの視覚機能といったパーソナルデータをフレーム設計と合わせて作り上げなければならない。特に人によって異なる視覚機能は、スタンダードレンズではなく、より値段の高いプレミアムレンズが必要になるというわけだ。

「メガネは本当の価値を伝えづらい商品だが、僕たちは1カ月後、2カ月後経ったときに、お客様に再度伺う。メガネのレンズにはお金をかけてください、しっかりと検査を受けてくださいとお話する。お客様の筋肉の状態、年齢などを分析して、最適なメガネを作る。そういった取り組みをしていくと、高いメガネでも納得して購入してもらえる」(星崎氏)。

レンズの価値を訴えることで価格の高いプレミアムレンズの購入者が増加

こうした提案には、アイケアカンパニーとして知識と技術が必須となる。同社自身も社員の育成に怠りはない。社員研修を行い、検査・販売・加工・コンタクトなど各分野のスペシャリストも育成、全スタッフの個人別スキルもデータベース化して、店舗ごとにムラが出ないように最適な人員配置も行っている。アイケアスキルコンテストと呼ばれる大会も開催し、社員のスキルアップへの取り組みへ力を入れているようだ。

アイケアカンパニー宣言が新たに広げたビジネス

最近では、メガネ、コンタクト、補聴器などの販売にとどまらず、眼、耳の健康に関するトータルサポート力を持つ人材育成にも注力している。その取り組みのひとつとして、同社は医薬品登録販売者資格の取得を奨励し、資格保有者の「アイケア コンシェルジュ」を増やした。その結果、可能になったのがオリジナルサプリメントの販売だ。「メガネ屋が本気でつくったサプリメント」という触れ込みで、「EYEラックW」を124店舗で12月23日から始める。

もはや説明不要だが、サプリメントの販売も、"アイケア"を重視した結果である。低価格路線を継続していたら、サプリメントの販売にはいたらなかったであろう。

メガネ屋が本気でつくったという触れ込みのサプリメント「EYEラックW」

アイケア重視で培ったノウハウは他社にも応用できる。M&Aやアライアンスを通じて広めていけばいい。これが新たなビジネスにもなっていく。

目の健康プラットフォーム構想と呼ばれるものがまさにそれであり、実際に実を結び始めた。同社は15日にメガネハウスの買収を発表。メガネハウスは富山県内に22店舗を擁するメガネチェーンで、屋号や店舗網を維持したまま、アイケア重視のビジネスモデルを展開し、共同購買や物流を行うほか、アイケア重視の店舗運営を行い相乗効果を図っていくという。

アイケア戦略を他社に展開したり、異業種とのコラボにより商品・サービスの拡大を目指す

ブランドコンセプトが会社を形づける

一連の取り組みを経て、黒字転換を果たしたメガネスーパー。完全復活したと言い切るには早すぎるかもしれないが、アイケア重視の姿勢をもとに、顧客単価が向上し、事業の裾野も広がり、業績も回復しているのは事実である。サプリメントの販売、プラットフォーム構想の進展など、今後期待される事業もあり、うまく行っているように見える。

世の中には価格競争に巻き込まれ、サービスの差別化に苦しむ企業が多数ある。特に小売の場合は、そうなりがちだ。店舗から半径何キロメートル以内といったように商圏が限らてしまい、インターネット通販の拡大を目指そうにも、そこでは価格競争が待っている。おまけに大量の商品を仕入れる資金がない、など悩みも尽きない。

同社の事例は、そうした悩みを抱える企業にとって、サービスコンセプトをもとに、いかにビジネスを変えうるのかを知る手がかりになるのではないだろうか。

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

関連記事
スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

関連記事