"生体認証"の普及団体「FIDO」、主要メンバー務めるドコモの狙い

2016.12.23

認証にパスワードを使う必要なく、指紋などの生体認証を活用して認証できる仕組みを実現する「FIDO」。スマートフォンだけでなくWindowsでの採用も予定されているなど、幅広い分野で採用が進められつつあるFIDO Allianceに、昨年から積極的に関与しているのがNTTドコモだ。同社はFIDOへの関与によって何を目指しているのだろうか。

生体認証などの普及に向けた標準化を目指す

指紋や目の虹彩などを使って認証する、いわゆる「生体認証」。かつてはあまり一般的なものではなく、採用していたのも法人向けのパソコンや、一部メーカーの携帯電話などに限られていた。だがアップルが「iPhone 5s」で指紋認証を取り入れて以降、スマートフォンに生体認証の仕組みを搭載する動きが急加速。それに伴って、他のデバイスにおいても生体認証を採用するケースが増えてきている。

そうした生体認証を、デバイスだけでなくサービスなど幅広い分野に取り入れるため、技術の標準化に取り組んでいるのが「FIDO Alliance」という非営利団体である。FIDO Allianceは2012年に設立されて以降、Webサービスなどの認証に、一般的なパスワード認証より安全な、生体認証を活用する技術の標準化を進めている。

そのFIDO Allianceが定めた技術仕様「FIDO 1.0」は2014年12月に公開。生体認証を用いて認証する「UAF」(Universal Authentication Framework)と、パスワードでの認証に加え、もう1つ別の手段を用いた2要素認証、いわゆる「2段階認証」を実現するU2F(Universal 2nd Factor)の、2つの認証プロトコルが標準化されている。

既にUAFやU2Fを用い、FIDO 1.0の認定を受けたソリューションは250を超えている。また同じくFIDO 1.0の認定を受けた生体認証を採用するスマートフォンも多く、富士通やソニーモバイルコミュニケーションズ、シャープ、サムスン電子など主要メーカー製のAndroid端末が、FIDOの認定を受けているとのことだ。

FIDO 1.0の認定を受けた、生体認証を搭載するスマートフォン。ソニーモバイルコミュニケーションズやサムスン電子などの大手企業が採用していることが分かる

そのFIDO Allianceは12月8日、新たに認証に利用できるデバイスを追加した「FIDO 1.1」を発表している。FIDO 1.1ではU2Fで新たにNFCやBluetooth Low Energyをサポートし、これらに対応したスマートフォンを用いるなどして、2段階認証ができるようになるとのことだ。

FIDO 1.1では、新たにU2FでBluetooth Low EnergyやNFCをサポート。スマートフォンなどを用いた2段階認証が可能になっている

さらにFIDO Allianceでは今後、W3Cと共に、FIDOの仕様を基にしたWebの認証に関する仕組みの仕様検討を進めていくとのこと。ChromeやFirefox、Edgeなどがこれに対応するとしており、実現すればWebサービスにログインする際、パスワードの入力をすることなく、生体認証でログインなどができるようになるという。そうした仕様はFIDO 2.0で反映される見込みで、マイクロソフトはFIDO 2.0をWindows 10に採用することを表明していることから、将来的にはスマートフォンだけでなく、パソコンでもFIDOの認証が広く用いられる可能性が高い。

ボードメンバーとしても積極関与するドコモ

FIDO Allianceにはマイクロソフト、グーグル、クアルコムなどIT企業大手が多く参加している。だが日本でもFIDOに積極的に取り組む企業は比較的多いようで、大日本印刷や富士通、楽天、ヤフーなど多くの企業が参加している。

中でも、FIDOに積極関与している日本企業の1つとして挙げられるのがNTTドコモだ。NTTドコモは2015年5月からFIDO Allianceに加入しており、加入当初からボードメンバーを務めるなど、積極的に関与している。さらにNTTドコモは、2015年の夏モデルからFIDO 1.0の認証を受けた生体認証機能を搭載したスマートフォンを販売。生体認証でスタンダードな指紋認証だけでなく、富士通製の「ARROWS NX F-04G」のように、虹彩認証を採用した端末も提供している。

NTTドコモは2015年5月よりFIDO Allianceに加入。当初からボードメンバーを務めるなど、積極的な取り組みを見せている

ハードだけでなく、同社のオンラインサービスにもFIDO 1.0の仕様を適用し、生体認証への対応を積極的に進めている。「dTV」「dヒッツ」など「dマーケット」の主要コンテンツを、生体認証によるdocomo IDでのログインに対応させたのはもちろん、「dデリバリー」「dトラベル」などでは「ケータイ払い」、いわゆるキャリア課金にも生体認証を利用できる仕組みを整えている。

NTTドコモはハードだけでなく、サービス面でもFIDO 1.0準拠の生体認証を取り入れており、dマーケットなど多くのコンテンツや決済で生体認証が利用できる

さらにNTTドコモは今年3月、iPhone/iPadに対しても、FIDO 1.0に準拠した形で、Touch IDを利用したオンライン認証を実現。アップルはFIDO Allianceに参加していないため、同社のハードはFIDOの認証を受けていない。だがTouch IDのAPIが公開されていることから、それを活用する形でFIDOに準拠したサービスを実現しているようだ。

NTTドコモはフィーチャーフォン時代より生体認証を採用した端末を提供しており、モバイルサービスの認証に関しても、以前より生体認証を利用する方策を検討していたという。だが独自で展開するには運用面での難しさを伴うことから、生体認証の仕様を公開しているFIDOの採用を決め、通信事業者の立場から標準化にも積極参加するに至ったようだ。

まずは地道な普及活動が求められる

そうしたNTTドコモの積極的な取り組みに加え、早い段階からFIDOの認定を取得する企業が多く現れたことなどもあって、世界的に見ると日本はFIDOの導入がいち早く進んでいる国・地域の1つとなっているようだ。実際、2015年のFIDO Alliance内貢献賞を受賞した25社のうち、日本からは5社が選ばれているという。

しかしながら一方で、FIDO 1.0の仕様が公開されてから約2年しか経過しておらず、国内でFIDOをサポートする体制が完全に整っている訳ではない。FIDO Allianceに積極関与できる企業ならともかく、そうではない企業がFIDOの導入を検討していたとしても、日本語で情報を得て、サポートを受けるのは難しいという現状が存在するのも事実だ。

そこでFIDO Allianceでは、今年に入り、それぞれの国や地域にワーキンググループを設け、現地でFIDOに関するコミュニケーションやサポートを提供する仕組み作りを積極化している。既に中国とインドにワーキンググループが設置されているが、10月24日には日本にもワーキンググループを設置したとのことだ。

FIDO Allianceは10月に日本でもワーキンググループを設置。日本語でのサポートや、日本でのイベント実施などに取り組んでいくとのこと

こうしたFIDOの活動においても、ボードメンバーであるNTTドコモは大きな存在感を発揮しているようだ。実際、日本のワーキンググループ初代座長は、同社のプロダクト部 プロダクトイノベーション担当部長である森山光一氏が就任している。国内でFIDOのサービスを取り入れる事業者が増えれば、NTTドコモのデバイスやサービス活用の幅も広がってくるだけに、同社は今後も積極的な関与を続けていくと考えられそうだ。

もっともFIDO自体がまだ新しい存在であるため、中小問わず多くの企業がFIDOを積極導入するには、まだ時間がかかるだろう。当面は普及に向けた地道な取り組みが求められるといえそうだ。

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メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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