トヨタが“隠れた戦略車”を一新! ライバルの韓・現代自を引き離せるか

トヨタが“隠れた戦略車”を一新! ライバルの韓・現代自を引き離せるか

2016.12.27

トヨタ自動車の2016年の掉尾を飾る新型車発表は、小型バスの「コースター」だった。トヨタは12月22日、コースターを実に24年ぶりにフルモデルチェンジして発表。定員24人から29人乗りのこのクラスのバスは、小型バスとかマイクロバスと呼ばれている。実はこのコースター、トヨタにとって“隠れた戦略車”とでも呼ぶべきクルマなのだ。

トヨタが小型バス「コースター」を24年ぶりにフルモデルチェンジする

商用車分野の世界戦略車

トヨタは、25人程度の乗員が快適に乗ることができる小型バス需要の高まりを受け、1963年にライトバスを誕生させ、1969年のモデルチェンジを機にコースターと改称した。それ以来、コースターは50年以上も世界110以上の国や地域で乗り継がれている。

いわば、トヨタにとって乗用車に比べて地味ではあるが、このコースターは商用車(CV)分野での世界戦略車なのである。

今回の新型コースターは、1993年の3代目モデルから24年ぶりにボディを一新。環状骨格によるボディ剛性の向上、車両安定制御システム(VSC)を日本でクラス初採用し、さらに運転席と助手席に乗員保護補助装置(SRS)エアバッグを標準装備するなど、優れた安全性を獲得している。室内高と室内幅の拡大、静粛性の向上、フラットな乗り心地で、乗客がゆったり過ごせる室内空間も確保した。シンプルでスクエアなキャビンと力強いアンダーボディとの組み合わせにより、モダンかつ様々な環境で使用できるタフなイメージを予感させるスタイルを実現している。

コースターは、前身のライトバスから数えて50年以上と、トヨタでも有数の長寿命モデルになっている。すでにライトバスの時代から海外に輸出を展開しており、その使い勝手の良さから北米や欧州を除く世界の市場で受け入れられている。その競合車は、三菱ふそう「ローザ」、日産自動車「シビリアン」などが挙げられるが、世界戦略でのライバルは韓・現代自動車の「カウンティ」であり、とくに中近東やアフリカで競合しているのだ。

トヨタCVカンパニーはトヨタ車体と一体化、日野とも連動強化

トヨタCVカンパニーのプレジデントを務める増井敬二氏

トヨタは2015年4月から製品軸で7つのカンパニーを設立したが、その1つが「CVカンパニー」だ。トヨタの最初の開発車が「トヨタG1トラック」だったように、CVはトヨタの原点でもある。増井敬二CVカンパニー・プレジデント(トヨタ専務役員兼トヨタ車体社長)は、CVカンパニーのミッションを「世界各地の生活を支え続ける『もっといいCVづくり』と、トヨタの屋台骨として競争力を強化し『地盤をしっかり固める』こと」とする。

つまり、トヨタはCVカンパニー体制でグループのトヨタ車体と一体化し、かつ日野自動車とも従来以上に連携してトヨタCVグローバル戦略の強化に乗り出したのだ。24年ぶりの新型コースターは、その第1弾ということなのだ。

CVカンパニーの幅広い商品群、生産・販売面でも存在感

トヨタのCV商品群は、SUVの「ランドクルーザー」シリーズ、SUV/ピックアップトラックの「IMV」シリーズ、ピックアップトラックの「タンドラ」、「タコマ」、ミニバンの「ヴォクシー」、「ノア」、「エスクァイア」、バンの「コースター」、「ハイエース」に「ウェルキャブ」(福祉車両)と世界各地の生活を支えるクルマとして定着している。

SUVとしてのランドクルーザーは「ランクル」の愛称で海外でも知名度抜群であり、IMV(イノベーティブ・インターナショナル・マルチパーパスビークル)は、その名のとおりトヨタが新興国市場をターゲットとしたCV世界戦略車で、アジア、アフリカ、南米で生産基地化を定着させた。2002年にスタートしたIMVプロジェクトには、日野やトヨタ車体なども連動して参画し、今回のCVカンパニーに繋がるものとなった。

知名度抜群の「ランクル」など、CVカンパニーが取り扱う車両は幅広い

日本国内販売におけるCVカンパニー車種のトヨタ車全体での販売比率は35%だが、世界販売では2015年実績で約262万台に達する。海外生産比率は55%と日本国内での生産を上回るものとなっている。

マイクロバス「コースター」の位置づけ

そもそも、マイクロバスの成り立ちは、小型トラックのシャシーにバスボディを架装したものが起源で、現在はバス専用シャシーを採用している。マイクロバスは、日本国内での要件や使用性を拠り所として企画され、その使い勝手の良さから、北米や欧州を除く全世界で販売されている。

国内での要件とは、国土交通省通達でレンタカーとして使えるバスの要件(全長7メートル以下、定員29人乗り以下)と国内生活道路に入れる車幅として狭隘路などで最大幅規制(全幅2.1メートル以下)に対応するものとなっている。国内マイクロバス市場は、長期保有化や委託輸送の拡大、人的輸送の小規模・個別化による使用車両のダウンサイジング化などの影響で、市場規模は縮小しているものの、近年は年間4,000台前後で堅調に推移している。

その中でコースターは、単独で約35%のシェアを握っており、日野へのOEM(日野リエッセⅡ)分を合わせると、トヨタグループで60%以上のシェアを確保している。競合車は三菱ふそうのローザ、日産のシビリアン、いすゞ自動車OEM車となっている。

新興国市場の開拓にも力を発揮

日本でのコースターの使われ方は、飲食店・ホテルでの送迎、企業・学校の通勤通学、商業施設・娯楽施設などの無料送迎、レンタカー、幼稚園バス、貸切チャーター(冠婚葬祭)、請負い輸送、地域コミュティバス、路線バス・ロケバスなどだ。ちなみにトヨタは、プリウスに先立ってコースターのハイブリッド車を投入している。今後、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)展開の可能性もある。

一方、海外マイクロバス市場だが、バス・トラックの台数統計がない国が多く、全世界の市場規模は不明。コースターの世界販売は累計55万台以上となり、2010年以降は増加傾向にある。トヨタは今後も需要の伸びが見込まれるとする。とくに中近東やアフリカの資源国で経済発展・購買力増加により需要が拡大している。また、日本からの中古マイクロバス輸出も増加している。

海外では、日本国内と異なり厳しい使われ方(長期間使用、砂漠・未舗装道路での使用、定員大幅超過、ルーフラックに大量の荷物)をされることが多いので、一般輸出用や香港、台湾、中国向け仕様など、それぞれの国の法規や使われ方にきめ細かく対応していかねばならない。

ライトバス以来の歴史、トヨタ車体の熱い想い

今回、コースターを24年ぶりにフルモデルチェンジしたトヨタCVカンパニーにあって、とくに熱い想いをもって新型車開発に取組んだのが前身のライトバス以来、車体製造を行なってきたトヨタ車体である。トヨタ車体は、2013年9月にコースター50周年の節目として「コースターわくわくプロジェクト」で初代車のレストアを完成させ、「コースター記念誌」を発行している。

このトヨタ車体のコースターわくわくプロジェクトは、当時50年前のコースターの原型となるライトバスが全国のミュージアムなどにも現存していなかったため、50周年記念として開発部門の力を集結し、コースターをレストア(復元再生)して現代に甦らせるというものだった。見事に復元された日本初の量産小型バスは、トヨタ車体の温故知新のものづくり技能の伝承ということで話題になった。

今回の新型コースターは、新たにトヨタ車体の製造子会社である岐阜車体岐阜本社工場に新製造ラインを設けて生産も一新した。

トヨタ車体が熱い想いを傾けるコースター

国内で圧倒的シェアを確保しつつ、海外の新興国で経済発展に寄与

マイクロバス市場は、トヨタ・日野連合軍に日本車では三菱ふそうと日産が競合しているが、海外では欧州系はセミボンネットバスが主流で、客先とニーズが異なるため競合は少ない。

中国製コピー車が中国から新興国などに輸出されてきているが、耐久性・信頼性で日本車の牙城は崩しきれていないのが現状だ。唯一、ライバルとなってきているのが韓・現代自動車の「カウンティ」である。現代自は、日本のマイクロバスの研究をここ数年、積極的に進め、中近東やアフリカの都市部で日本車と競合するようになってきている。韓国は現在、政治経済面で揺れているが、今後は乗用車に続き、この分野でも日本車に追いつき追い越せの方向性が強まりそうだ。

いずれにせよ、トヨタの新型コースターは、日本国内ばかりでなく、経済発展が著しい新興国でも生活を支える交通手段として定着していく。新興国においても安全法規の導入が進んでいるため、車齢が古いクルマやトラック架装のバスから、メーカー完成車に需要が移っていくことも推測される。トヨタの隠れたグローバル戦略車として、コースターの重要性がさらに高まりそうだ。

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。