伊藤園はお茶だけでない コーヒー・乳製品にも進出 M&A駆使し総合飲料メーカーへ

伊藤園はお茶だけでない コーヒー・乳製品にも進出 M&A駆使し総合飲料メーカーへ

2016.12.27

伊藤園はお茶だけでない コーヒー・乳製品にも進出 M&A駆使し総合飲料メーカーへ

 お茶製品、野菜飲料、コーヒー飲料を扱う飲料メーカーの伊藤園<2593>。1980年、世界初の「缶入りウーロン茶」を開発。1985年に販売開始した「缶入り煎茶」を1989年に「お~いお茶」に名称変更したことで販売数が増加し、2003年に全ての茶系飲料の中で販売量No.1ブランドとなった。茶系飲料のイメージが強い伊藤園について主にM&Aの観点から分析する。






【企業概要】 茶系飲料への依存度高く

 代表取締役会長である本庄八郎氏が、兄である正則氏と共に設立したフロンティア製茶が1969年に商号変更により伊藤園となった。

 伊藤園の経営理念は「お客様第一主義」、全てのお客様(消費者、株主、販売先、仕入先、金融機関、地域社会)を大切にすることを経営の基本としている。

 伊藤園の経営理念は営業にも表れている。伊藤園の営業の特徴として「ルートセールス」が挙げられる。飲料メーカーの多くは問屋を経由し卸しているが、伊藤園では創業当初より問屋を経由せず直接小売店に卸す仕組みを採用している。小売店はもちろん自動販売機も店であるとし、一軒一軒営業担当が訪問している。対面で顧客と話すことで、顧客が何を欲しているか、どのような商品が売れているか等の情報を直接入手することができるのが強みである。余談だが、自動販売機については商品配置の変更はもちろん、自動販売機周辺の清掃や空き缶回収も営業担当が行っているという。

 上記の経営理念をもとに、伊藤園は1996年に東証二部に上場、1998年に東証一部に鞍替えした後も順調に業績をのばし、2016年4月期の連結売上高は4655億円、経常利益は150億円、子会社36社、関連会社3社、連結従業員数8044人となっている。

伊藤園は総合飲料メーカーを目指して商品ラインナップの充実を図っているが、「お~いお茶」のイメージが強いのが実情である。今後は茶系飲料への依存度を低下させることが一つの課題となる。

【経営陣】 創業者一族による経営

 創業者である本庄八郎氏が会長、同じく創業者である本条正則氏の長男である大介氏が社長、八郎氏の長男である周介氏が副社長となっている。いずれも代表取締役であり、創業者一族による経営が行われているといえる。本庄大介氏は2009年に社長に就任、53歳。

【株主構成】 創業者一族の影響が強い

 伊藤園の筆頭株主及び第2位は創業者一族が代表であるグリーンコア、本庄国際奨学財団、第4位には代表取締役会長である本庄八郎氏となっており、創業者一族の持ち株比率は27%ほどとなっている。

【M&A戦略】 品揃え拡充へ買収を重なる

 伊藤園は「お~いお茶」を筆頭に茶系飲料ではすでに高シェアを占めているが、総合飲料メーカーとしての地位を確立するため、品揃えを充実させることを目的にM&Aを行っている。すでにコーヒー飲料市場には参入していたが、2007年にコーヒー飲料強化を目的にタリーズコーヒーを経営する会社を買収した。2011年には乳製品市場に参入するため中堅乳業メーカーのチチヤスを買収した。

 飲料メーカー業界においては近年、M&Aが活発に行われている。特に日本国内においては人口の減少が始まっており、限られたパイを得るために国内の同業を買収するケースがある。一方、海外に目を向けて外国の飲料メーカー等を買収するケースも多い。ここで、主な飲料メーカーの売上高及び時価総額をグラフにしてみる(売上高は直近の有価証券報告書上の金額、時価総額は2016年11月末時点)。

 アサヒグループホールディングス(以下、アサヒ)とサントリー食品インターナショナル(以下、サントリー)が他社を圧倒しているのが分かる。アサヒ、サントリーはいずれも積極的に大型のM&Aを手掛けている。2社の直近の主なM&Aは以下の通りである。伊藤園もM&Aは行っているが、M&Aの規模としては上位2社のM&Aに比べ相当小さいといえる。

アサヒ

サントリー

2016年、ABインベブより東欧5カ国でのビール事業を8800億円で買収 2015年、JTの飲料事業を1500億円で買収
2016年、欧州ビール事業を3300億円で買収 2014年、米国ウイスキーメーカーを1兆6500億円で買収
2014年、マレーシア乳製品メーカーを334億円で買収 2013年、英国飲料事業を2106億円で買収
2013年、インドネシアの飲料水メーカーを189億円で買収 2009年、フランス清涼飲料水メーカーを3500億円で買収
2012年、カルピスの全株式を1200億円で買収 2008年、ニュージーランドの飲料大手を750億円で買収
2011年、ニュージーランド・豪州酒類販売会社を976億円で買収

 アサヒ及びサントリー以外の飲料メーカーの時価総額は3000億円台が多い。アサヒ及びサントリーが過去手掛けたM&Aの金額だけみると、今後国内飲料メーカーが買収される可能性も否定できない。

 再編が進んでいる飲料事業において伊藤園が一定の地位を保つためにも今後M&Aをさらに積極的に行うべきである。ここで、主な飲料メーカーの現預金と有利子負債の比較をグラフにしてみた。

 主な飲料メーカー8社のうち売上上位4社は現預金に比べ有利子負債の金額が大幅に大きくなっている一方、下位4社は現預金と有利子負債がほぼ同額、または現預金のほうが大きくなっている。下位4社については有利子負債を増やす、つまり資金調達を行う余地は多分に残っていると言える。再編の波にのまれないよう、資金を調達し積極的にM&Aに投じることで会社の規模を拡大し、身を守ることを検討する必要があると思われる。

【財務分析】 業績は堅調、M&A効果は限定的

 伊藤園は中長期計画において2017年4月期の連結売上高5000億円、ROE(自己資本利益率)10%、配当性向40%を掲げていたが、2016年4月期決算発表において公表された2017年4月期の計画は、連結売上高4715億円(前期比1.3%増)、ROE9.1%、配当性向44.5%となっている。茶系飲料メーカーだけあって渋い(手堅い)計画となっている。

①売上高と経常利益

 売上高は2015年4月期に減少しているが、それ以外は順調に増加している。経常利益は2008年4月期、2009年4月期及び2015年4月期に減少している。2008年4月期、2009年4月期は、原材料の高騰や販売促進費の増加が影響している。2015年4月期は全国的な天候不順による影響の他、2014年4月より引き上げられた消費税の影響で売上及び経常利益が減少している。外部的要因(原材料の高騰、天候、税金等)により売上等が左右されることが分かる。

 なお、2007年4月期にフードエックス・グローブ、2013年4月期にネオスを連結子会社としている。2007年4月期は売上が前期比221億円増加、2013年4月期は前期比346億円増加している。

②財務キャッシュフロー

 伊藤園のキャッシュ・フロー計算書の財務キャッシュ・フロー(CF)に注目してみた。2008年4月期、2012年4月期、2015年4月期に大きく増加(資金を調達)していることが分かる。2008年4月期は「株式の発行による収入」(優先株式の発行)により145億円増加している。調達した資金は設備投資に充当する他、コマーシャルペーパーの償還(76億円)にも充当している。このコマーシャルペーパーは2007年6月に実行したフードエックス・グローブの株式の追加投資の際に発行したものである。2012年4月に「社債の発行による収入」により調達した200億円の一部はネオスの株式買収に充当し、2015年4月期に「長期借入れによる収入」により調達した130億円の一部はDISTANT LANDS TRADING CO.の株式買収に充当している。

③自己資本比率と有利子負債

 自己資本比率は70%近くまで上昇したが、徐々に下降し2016年4月期では43.9%まで下がっている。その要因は、上記グラフから明らかで、有利子負債の増加である。2007年にフードエックス・グローブを買収したが、その資金は上記の通り、最終的に優先株式の発行で対応したことで有利子負債は増加していない。2009年4月期まで有利子負債ゼロであったが、2009年からネオスを段階的に買収したこと及び2015年にDISTANT LANDS TRADING CO.を買収したことで有利子負債が増加。これにより自己資本比率も下降している。

④セグメント情報

 2007年4月期から「その他」の金額が徐々に大きくなってきている。これは2006年にフードエックス・グローブの株式を買収したことで飲食関連事業(タリーズコーヒーの経営)の売上が増加したことが要因である。2013年4月期からは、セグメント情報の有用性を高めるため、飲食関連事業を独立したセグメントとして扱っている。M&Aにより獲得した事業が順調に成長していることが伺える。

 しかし、主要セグメントであるリーフ・ドリンク関連事業の割合が圧倒的に大きいため、飲食関連事業が柱となるのは相当先の話であり、現時点ではリーフ・ドリンク関連事業の単一セグメントであるといっても過言ではない。リーフ・ドリンク関連事業は天候等の外部要因で業績が左右されるリスクがあるため、別の柱となる事業をM&Aにより手に入れることが重要であると思われる。

【株価】業績好調を受け、高値圏に

 伊藤園の株価は堅調に推移している。2016年7月には一時4000円台に上昇し、現在も高値圏で推移している。2017年4月期の業績が好調に推移していることが背景にある。12月1日に通期の業績予想を上方修正した。日本茶、健康茶、コーヒー飲料の販売が好調なほか、販売管理の管理強化も奏功している。通期の売上高は前期比2%増の4750億円、経常利益は29%増の195億円を見込んでいる。

 今期の予想PER(株価収益率)は約40倍。約28倍のダイドートリンコや約35倍のヤクルト本社に比べて割高感がある。さらに上値を追うには、既存事業を伸ばすことに加え、新たなM&Aなどによる成長戦略の強化が必要になりそうだ。

【まとめ】再編に備え必要、積極的なM&Aを

 伊藤園は総合飲料メーカーを目指すべくM&Aを行ってはいるが、他社(特に上位2社)に比べまだ消極的であるといえる。業績が順調に推移していることもあり、M&Aに積極的になる必要性が乏しいのかもしれない。しかし、飲料事業は天候不順等の外部要因により業績が左右されるリスクが高いこともさることながら、飲料事業の再編に飲み込まれないためにも、積極的な投資を行うことが必要ではないだろうか。


この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

まとめ:M&A Online編集部

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。