急成長企業だからこそ?! 楽天が抱える女性活躍の課題とは

急成長企業だからこそ?! 楽天が抱える女性活躍の課題とは

2016.11.04

「女性活躍推進法」が施行され、ますます女性が活躍する社会が期待されている。しかし企業によってその進捗度合いはまちまち。主役となる女性も現場で様々な悩みを抱えている。そこで本連載は、自身も子育てをしながら企業に勤めた経験を持ち、現在は「女性のリーダーシップ」育成研修など、企業の女性活躍推進のサポートを行う杉浦里多が、企業が乗り越えてきた課題と、そこで働き続ける女性社員の生の声を通じてビジネスの現場で起こり得る課題を提示、解決のヒントを提示する。今回で連載は3回目となる。

第一回「P&Gの経営戦略に女性活躍が必要だった理由」
第二回「創業135年のOKIが短期間で女性活躍に舵を切れた理由」

1997年創業の楽天は、ECモールを中心としたベンチャー企業から、金融やスポーツの分野までそのすそ野を広げる大企業へ変貌した。企業の急激な成長とともに、社員のグローバル化、多様化が進む中、女性管理職の登用にはまだ課題が残る。活躍の機会は公平なのになぜ……? 急成長企業だからこその課題に迫る。

楽天本社

職場復帰後の女性に「活躍」を支援

楽天は、「男女関係なく、能力のある人がキャリアアップする」という考え方のもと、活躍の機会は男女公平に与えられている。女性活躍に関しても、「『長く休みスローダウンするよりも、活躍して欲しい』という意図から、敢えて法定以上の制度は取り入れない(育児休暇は1歳まで。時短勤務は3歳まで)」と明確なポリシーを持つ。

育児休暇や時短勤務の期間を延ばす、正反対の施策を充実させる企業も多いが、長く休みすぎるとかえって復職しづらくなるという“復職の壁”を考えると、女性の「活躍」という観点では至極、理に適った方針だ。同社の復職率は97%と数字もそれを物語る。

【楽天のダイバーシティの歩み】

(グローバル化によるダイバーシティ)
2010年、社内公用語英語化への移行開始

(女性活躍取り組み強化)
2014年、社員のボランティアによるワーキングマザーのコミュニティが発足
2015年、人事部内に専任組織「ダイバーシティ推進課」を設置
女性活躍推進法で2019年までに女性幹部社員比率を22%にすると設定(現在18%)
・意識醸成:ダイバーシティに関する社内情報サイト開設、セミナー実施
・成長支援:上司とともに、キャリアやアクションプランのセッションの実施
・早期復職戦力化:託児所、搾乳室(マザーズルーム)、休職前・復職前セミナー実施

三木谷浩史氏が創業した楽天は、わずか20年で売上収益7000億円超えの企業に成長。「楽天経済圏」と名付けたビジネスモデルは、今やオンラインだけ、日本だけにとどまらず、リアルへもグローバルにも突き進む。2010年、社内の公用語を英語にするとの宣言が記憶にある人も多いだろう。その時代を読むスピード感をもって、社員の多国籍化(60か国以上)など、積極的にダイバーシティに取り組む様子がみえる。女性活躍については、社内に託児所を設置したり、制度の拡充などで両立支援を講じたりしている。しかし、数字で見える現実は、新入社員の男女割合が半数なのに対し管理職以上の女性の割合が18%であり、課題もある。

楽天が女性活躍推進に本格的に取り組み始めたのは2015年。人事部内に専任組織「ダイバーシティ推進課」を設置、2019年までに女性の管理職以上の割合を22%にすることを掲げた。理想は、「女性が性別やライフステージにかかわらず、自分の能力を生かしたキャリア形成ができている状態」だという。

公平なキャリアのチャンスがあるとはいえ、女性は出産などといったライフイベントがあり、配慮すべきことが多い。これまでは、必要性を感じた社員が声を上げ、経営者層が動くというボトムアップにより、託児所や搾乳室の設置など、女性の活躍のサポートが実現されてきた。その成果もありワーキングマザーの人数も急激に増加しているため、会社が経営戦略として、体系的に女性活躍を進める時期に来たと考えているのだ。

「今までは、社員が声をあげるボトムアップで物事が進んできた。大企業となった今、これまでの多様化から次のステージに来ている」(ダイバーシティ推進課担当者)と、会社の組織規模の変化による文化変容の視点でもその必要性を示唆する。

そこで求められるのが、楽天の考える“女性活躍”を体現する「ロールモデルの存在」だ。

林亜紀子さん

ママ管理職としてのロールモデルの存在

ロールモデルとして、期待されている社員の一人にECカンパニーサービス管理部の林亜紀子さんがいる。現在、7歳と3歳の男の子を育てながら、企画グループのマネージャーとして、楽天市場のバックオフィス業務オペレーション改善のマネジメント業務に携わっている。

新卒で2003年に入社。ECコンサルタントという店舗をサポートする、いわゆる営業職に就いた。まだ楽天がベンチャー色の濃かった時代、就職先としての選択に、周囲からは「もっと安定したところに行ってほしい」と反対する声もあった。しかし、WEBデザイナーなどインターネットに関わる仕事に就きたいという思いから、楽天を選んだ。職種採用ではなかったため、望んだ職種とは違う営業へ配属されたが、「苦手なことを早く経験しておいた方が成長できるかもしれない」と受けいれた。

林さんのキャリアの転機は、3回ある。

1回目は入社して3年目、一緒にワインジャンルの出店者サポートの部署の立ち上げからやってきた上司が異動となったとき。それまでは、指示通り100%返すことを心掛けていたが、全てを自分で考えてやらなければいけない、過酷なチャレンジを経験した。「最初の4年間で10年分くらいの濃い時代を過ごした」と自身で振り返る日々は、彼女をタフにした。そんな彼女は、ワイン・アルコール事業部を軌道に乗せるという本来マネージャー職(係長級)で担うレベルの業務を任され、結果を出していたことから、同期の中でも出世は早く、入社4年でマネージャーに昇進した。

2回目は、その後結婚、出産を経て、1年後に復職した際、営業企画のリーダーとしてチーム作りに携わったとき。営業という最前線の現場から、今までとは勝手が違う未知の分野で、中長期ビジョンの設定、仕組みづくり、委託先の教育など、全く違う職種をにおけるチャレンジを経験した。しかも育児休暇復帰後という不安を抱えながら。「今までと同じ働き方はできないな」と思い時短勤務を選択したため、自身としては管理職ではなく一般社員として働く覚悟で復職したが、結果的に復職後3ヶ月でリーダーとして新たなチームの立ち上げを任され、順調に組織も拡大していき結果的に復職前よりも規模の大きいチームのマネジメントを経験することになった。

楽天では、時短勤務でも、管理職につけ、一定の格付け以上は給与の減額はない。著者が驚いたこの制度は、“公平な機会提供”として楽天が進める、裁量労働制、評価制度で、時間で働くのではなく、能力・成果主義という考えからだ。ゆえに、時短で働くことが昇進の足かせになることもなく、林さんは、2014年に第2子を出産、復職をしたのち、2015年に、時短のままマネージャー職へ復帰した。

3回目は、昨年マネージャーに復帰したとき。職位があがり、マネジメントするグループや範囲が広がった、新たな管理職としてのチャレンジだ。これまでのゼロから作りだすプロジェクトやチーム管理の経験とは違い、すでに出来上がっているチームをリードすることにプレッシャーを感じていっぱいいっぱいになったこともあった。しかも、2人の育児を1人で行うという、プライベート側の危機もあった(昇進と同時に、夫は海外赴任)。時短で育児と両立を図りながらマネージャー職を担うというチャレンジは、途方もなく大きく感じたのだ。しかし今となっては、そんな困難な転機も「チームと一緒に自身も成長できた」と、好意的に振り返る。

「時短という働き方においては、管理職の方が実はできることが多いと感じる。ビジョンの設定といった中長期的に物事を考えたり進めたりすることが多いから」と管理職になったメリットも大いに感じている。

育児がタスクとして増えた時、どうしたか

そんな何でも卒なくこなすように見える林さんも、第1子出産後の復帰1年目はペースがつかめず、苦労したという。「なぜか遠慮してしまった」と夫に家事や育児の手伝いを頼むことができず、すべてを1人で抱え込んだことを明かした。ついにはストレスが爆発し、夫にエクセルで全てのタスクと頻度と時間をまとめて見せ、現状を訴えたという。

「かなり引いていました」という夫は特別、非協力的な人物というわけではなく、「言わないと気づかない、やらない」そういうものなのだとその時気づいたのだという。その後は、夫と家事や育児を分業し、会社の福利厚生で使える家事手伝いサービスや病児保育支援なども活用しながら、時短勤務の管理職との両立を図る。

考える前にやってみる、経験が自信になる

現在の自分については、「1人目でいっぱいいっぱいだった時よりも、各段に仕事のスピードが上がり、幅が広がっている」と成長を感じている。「不安もあったけれど、考える前にやってみたら、なんとかなるもの。慣れというか、それまでの経験が学びとなって身につき、やり方やスキルも向上している。だから、子どもが2人になりタスク量は増えても、アウトプットが上がり、成長している。」

これまでのキャリアと子育てを振り返ると、「自分の能力が求められるなら、その期待に応えたい。きっとそこには意味がある」「子育て中は、制約条件はあるが、その中でできることを精一杯する、最大限する」気持ちで、果敢に新しいことを受け入れてきた。その結果が、“成長”として自身に還ってきていると思う。そんな林さん。同じ働く女性として「考える前に、不安に思う前に、やってみよう」と女性にエールを送った。

社員の声から改革が進む社風

入社間もなくから活躍している林さんのように、同社は社員一人一人が戦力となることを期待し、その機会を公平に与えることを大事にしている。

林さんも自身が活躍できた背景を、実例から制度ができる柔軟な会社の対応にあったと感じている。実例からとは、現場の声から制度ができるということ。楽天は、復職前後のセミナーや、託児所、搾乳室の設置など様々な両立支援が行われているが、それらすべては、社員たちが自発的に始めたり、上層部に声をあげたことで実現してきた。

これを可能にしているのは、社員が声をあげやすい、社員の声を吸い上げやすい機会(朝礼やメールによる相談窓口、ヒアリングの場など)を会社側が意識的につくり、それをスピーディに実現してきた実績だ。会社が応えてくれたという信頼が、また社員が声をあげやすくする。こういった働きかけが好循環を生んできたのだろう。

社員の声から実現。楽天の女性活躍がボトムアップで進められてきた背景には、同社の公平性、オープン、実現のスピードという社風があるといっていいだろう。

「もっと活躍」のために

ベンチャーから大会社へと、会社も人も大きく変貌してきた楽天。会社の成長と並走するように歩んできた林さんも「会社っぽい会社になった」と話す今、ベンチャー時代の自走する社員とは違い、“大会社”が引きつける人材は様変わりしている。楽天の抱える多様化の課題は、国籍や性別などの違いというよりも、人の性質や文化の違いにある。 これからの成長を加速させるために、「ボトムアップ」を大切にしつつ、会社としてのメッセージの発信も強化していく。トップのコミットメントを高くし、経営戦略の1つなのだと社員に伝えていきながら、女性活躍のためのソフト面ハード面のサポートを体系立ててやっていかなければいけない。

新たなチャレンジをスタートさせたばかりであるが、スピーディにベンチャーから大企業に大成した同社であるから、「女性活躍の目標達成も実現していける」とダイバーシティ推進課担当者は自信をのぞかせた。

【楽天の女性活躍のポイント】

1:早期戦力化のサポート
2:ロールモデル提示による意識醸成
3:会社のメッセージ発信と体系化

杉浦里多(すぎうらりた)
人材育成の研修などを行う株式会社DELICE(デリィス)代表取締役社長。P&Gジャパンでのマーケティング・広報渉外部での経験をベースに、マーケティングや経営戦略の教鞭をとる傍ら、最近は特に女性のリーダーシップについての研修、講演に力をいれる。著書に「1年で成果を出すP&G式10の習慣」、「がんばりが評価される女性の仕事術」などがある。杉浦里多ブログ会社HP

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

メルカリ出し抜くラクマ、売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が5億円を突破

メルカリ出し抜くラクマ、売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が5億円を突破

2019.01.22

ラクマ売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が累計5億円に

同様のサービスを構想しているメルカリを先行する形に

楽天は1月21日、フリマアプリ「ラクマ」において、取引で発生した売上金のうちオンライン電子マネー「楽天キャッシュ」へチャージした累計額が2018年12月末に5億円を突破したと発表した。

ラクマでの売上金を楽天キャッシュへチャージする機能は、2018年7月より提供開始されている。チャージした電子マネーは、楽天会員向けのグループ各種サービスで利用できるほか、ローソンやファミリーマートなど「楽天ペイ」対応店舗での決済でも利用可能だ。

2017年8月1日から開始されたローソンでの支払いに続いて、2018年12月4日からはファミリーマートでも楽天ペイが使用できるようになった

同じくフリマアプリを展開するメルカリは、100%子会社「メルペイ」で同様のサービスを構想している段階であり、この分野においてはラクマが1歩先行する形になった。

現状、メルカリで得た売上金をメルカリ以外で使う場合は、一度口座に振り込む必要がある。また、売上金には180日という「振込申請期間」が設定されており、その期間中に「口座に振り込む」か、メルカリ内で使える「ポイントを購入」するか、選ばなければならない。ただし振込の場合、1万円未満だと210円の手数料が発生する(2018年1月21日時点)。ラクマの売上金チャージ機能と比較すると、どうしても見劣りしてしまうだろう。

ちなみに筆者もメルカリユーザー。現状、売上金が合計1万円に満たないため、振込手数料を発生させずに現金に換えるためには、あと1540円分の売り上げが必要になる (画像はメルカリアプリより)

しかし、少し古いデータではあるが、2018年5月31日のニールセン デジタルの発表によると、スマートフォンからの利用率の高いオークション/フリマサービスは、1位がYahoo! オークションで25%、2位がメルカリで23%、3位がラクマで11%であることがわかっており、同じフリマサービスであっても、ラクマの利用率はメルカリの半分であるのが現状だ。

メルカリのダウンロード数は2018年11月14日時点で7500万、ラクマが同年10月時点で1500万と、両サービスの普及率にも差があることからも、日本におけるフリマ市場のバランスがすぐにひっくり返ることはないだろう。

だが、ラクマが売上金をさまざまなサービスに使えるという実用性で、メルカリとの新たな差別化ポイントを生み出したことは、新規ユーザーの獲得に少なからず貢献しそうだ。

ラクマ売上金のチャージ額が5億円突破したことは、ユーザーの「アプリ内の売上金を別の場所で使いたい」というニーズの強さの証明ともいえよう。こうしたユーザー視点に立った機能の追加による消費体験の向上が、フリマ市場にどのような影響をもたらすのか、キャッシュレス決済市場への参入が期待される、メルカリの動向と合わせて注目したい。