トヨタは

トヨタは"コネクティッドカー"で何を実現するか - 通信とつながる車の未来

2016.11.07

トヨタ自動車は11月1日、同社のコネクティッド戦略について東京・お台場のメガウェブで発表会を行った。車両ではなく情報通信を主役とした、同社としては珍しい発表会。トヨタはそこで何を語ったのか。その戦略は成功するのか。発表された内容から読み解いていくことにしよう。

つながるクルマが重要なビジネス基盤に

これまでトヨタの発表会に数え切れないほど出席してきたけれど、その経験から言っても、今回のコネクティッド戦略発表会は変わっていた。

クルマそのものではなく、クルマとクルマをつなぐコネクティッド技術をテーマとしたことがそうだし、登壇したのが同社専務役員で4月に設立されたコネクティッドカンパニーのプレジデント、友山茂樹氏ただひとりであることも異例だった。モノだけでなくコトの分野まで踏み込んだ内容も興味を引いた。

コネクティッド戦略説明会に登壇したトヨタの友山専務

オープニングムービーに続いて姿を現した友山氏はまず、自動車業界のコネクティッド環境について言及。コネクティッドカーの登場、ライドシェアやカーシェアに代表されるクルマの利用形態の変化、ビッグデータによる新たなサービスやビジネスの創出を挙げ、ビッグデータを核とした「つながるプラットフォーム」が自動車メーカーにとって重要なビジネス基盤になっていると述べた。

もちろんトヨタはかなり前から手を打っている。2002年にはDCM(車載専用通信機)を実用化し、3年後にはレクサスに標準搭載を始めた。2008年には北米や中国にも展開。2011年には地域の電力の需要・供給を統合管理する「トヨタスマートセンター」を構築している。先日発表された、J.D.Powerの2016年日本ナビゲーションシステム顧客満足度調査では、レクサスがラグジュリーブランドで5年連続1位を獲得。その理由の1つがコネクティッド性能だとトヨタは考えている。

コネクティッド性能がレクサスの人気に一役買っているとみるトヨタ

しかしトヨタはこれだけでは不十分と考えた。そこで4月に設立したのがコネクティッドカンパニーだ。従来は別々に行っていた戦略企画、車載機開発、インフラ開発を一体で進めることで、クルマの新しい魅力や価値を作り出すとともに、期待以上のスピードとフットワークでモビリティ社会の発展に貢献し、自動車ビジネスの変革を目指すものだ。

コネクティッド戦略に3本の矢

友山氏はコネクティッドカンパニーの戦略として3つの矢を挙げた。全車コネクティッド化、新価値創造とビジネス変革、そして新たなモビリティサービスの創出である。

コネクティッド戦略で打ち出す3本の矢

第1の矢で掲げた全車コネクティッド化では、2020年までに日米で販売するほぼすべての乗用車にDCMを標準搭載するとともに、KDDIと共同でグローバル通信プラットフォームを構築する。車載OSにはAGL(オートモーティブ・グレード・リナックス)、スマーフォンとの連携では米Fordが提唱するSDL(スマート・デバイス・リンク)を採用することも明らかにした。

そのためのバックグラウンドとして、すでにトヨタはトヨタ・コネクティッド、トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)という2つの新会社を米国に設立している。Microsoftと共同設立した前者は、ビッグデータの集約と活用、TRIは現地大学と連携して人工知能技術の研究・ 開発を行う組織だ。

第2の矢では、東京都心のリアルタイムの道路状況が紹介された。クルマのスピードが赤、緑、青などで表示されるので、どこがどの程度渋滞しているか手に取るように分かる。また札幌市の初雪の日のデータを活用すれば、凍結路面も分かる。このようにビッグデータはすでに実用段階に入っており、全国をカバーする交通情報センターになりつつあると友山氏は語った。

東京都心の道路状況を示す画面。この範囲にいるDCM搭載車の状況がよくわかる

第3の矢としては、トヨタスマートセンターの上位にMSPF(モビリティサービス・プラットフォーム)を構築し、官公庁やライドシェア/カーシェア/タクシー事業者、保険会社などとの連携を図っていくことが表明された。トヨタはカーメーカーとしてだけでなく、モビリティサービス・プラットフォーマーとしても進んでいくと友山氏は明言した。

トヨタが目指すプラットフォーマーとしての姿

カーシェアの課題を解決するスマートキーボックス

ここで具体例として発表されたのがSKB、スマートキーボックスだ。より安全かつ便利なカーシェアを実現するためのデバイスである。

従来のカーシェアは、会員カードでドアロックの解錠を行ったあと、グローブボックスに隠されたキーを使いエンジンを掛けるという原始的な手法が主流で、セキュリティ面で問題があった。しかしSKBなら車内に設置するだけで、スマートフォンでドアロックの開閉、エンジンの始動が可能。カーシェアのスマート化を一気に進めることができる。

キーの受け渡しに関するセキュリティ問題はカーシェアの懸念材料。トヨタはSKBで課題解決を図る

トヨタではこのSKBを使ったパイロットサービスを、米Getaroundと共同で、来年1月から始めるとしている。日本ではトヨタ系レンタカーなどでの展開を考えているそうだ。

今回の発表会では、今年度中に発売が予定されているプリウスPHVについての言及もあった。プリウスPHVでは、ポケットPHVというサービスを提供予定としている。スマートフォンで乗車前のエアコン設定やバッテリー状況の確認、充電ステーションの検索などができる。

次のプリウスを「コネクティッドの先陣」(友山専務)と位置づける

ただ、同様のサービスは日産リーフなど、一部の電気自動車やプラグインハイブリッド車でも実用化されている。他の環境対応型自動車に並ぶデバイスを手に入れたという表現のほうが適当かもしれない。

プラットフォーマー宣言のトヨタ、ITの巨人達に対抗できるか

自動車メーカーでここまで明確なプラットフォームの構築に言及した会社は異例だが、課題もある。IT企業に目を転じれば、GoogleやAppleなど、すでに自前のプラットフォームを持っている会社がいくつもあることだ。

友山氏はこうした他社のプラットフォームに対して、協調できる部分では協調していきたいと述べた。しかし車載情報通信システムでも、AppleのCarPlayとGoogleのAndroid Autoは競合関係にあるなど、現実は厳しい。トヨタのMSPFも早々に、競争社会に直面するはずだ。

ではトヨタの強みは何か。筆者はやはり、ものづくりだと考える。今回の発表会でも、個人的にいちばん刺さったのはSKBだった。今のクリエイティブシーンはたしかに、モノよりコトのほうが注目を集めやすい。しかしトヨタは80年以上もの間、ものづくりでやってきた会社だ。コトよりモノのほうが得意という経歴が、SKBにしっかり表現されていた。

プラットフォームという漠然とした枠組みの中で、いかにして人々の心を掴むものづくりを表現していけるか。それがIT企業と対峙するうえでのトヨタの肝になるのではないかと、この日の発表会に参加して感じた。

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

カレー沢薫の時流漂流 第43回

大津の園児死亡事故で炎上した「マスコミ」批判

2019.05.20

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第43回は、大津の痛ましい事故で炎上した「マスコミ」問題について

滋賀県・大津市で散歩中の園児の列に軽乗用車が突っ込み、園児二名死亡、多くの負傷者を出す、という事故が起った。

池袋のプリウス事故の衝撃が冷めやらぬまま、また痛ましい事故が起ってしまった。池袋の事故では「高齢者の自動車運転問題」「上級国民疑惑」が大きく注目されたが、今回の事故では全く別のものが炎上した。

マスコミ問題である。

マスコミが保育園を追求したのは視聴者のため?

事件が起こった当日夕方、被害者の園児が通っていた「レイモンド淡海保育園」が記者会見を行ったのだが、そこで質問をした記者の血が青とか紫とかほとんど寒色系じゃないかと、大きく批判された。

記者会見が、どのような内容だったかというと「危険な場所という認識はあったのか?」「保育士が道路側にいたのか?」という、何としてでも保育園側に批があったようにしたくてたまらない質問、「園児たちの様子は普段と変わらなかったのか?」という意図のわからない質問、 「散歩したのは園に庭がないからか?」という「園に庭さえあればこんなことには…」という「ニ兆円さえあれば」に匹敵する、壮大なたられば論などが挙げられ、質問を受けた園長は号泣、それを記者がバッシャバッシャ撮影するという地獄絵図だったそうだ。

記者会見を見た多くの人が「何を食ったらそんな質問ができるんだ」と思っただろうが、この記者会見は、たまたまその場にプラスチックを食って育った選りすぐりのサイコパッシャーが大集結してしまったという、悪い意味でのアベンジャーズだったワケではないと思う。

記者が何故あのような質問をしたかというと、決して趣味ではなく、おそらく「視聴者の見たい画」「聞きたい言葉」を引き出そうとした結果なのではないか。もちろん「あんなもの見たくなかった」という人が大半だと思う。

しかし、池袋プリウス事故で加害者が即逮捕されないことが大きく批判されたことからも、現在の我々視聴者に「悪が一刻も早く、俺たちの目に見える形で処されるところが見たい」という「ニーズ」が少なからずあることが分かっているのだ。

つまり「お客様に一秒でも早く悪が吊るされる様をお届けします!」というニーズに応えようとする企業努力が、「悪くもない保育園をとりあえず悪にして即斬る」という、完全に間違った「悪・即・斬」になってしまったのではないだろうか。

「マスゴミ」問題は視聴者の問題?

しかし、「被害者側への無配慮な取材はいらん」というのも、今回の件だけではなく、視聴者側が何度も言い続けている「ニーズ」である。

何故それが無視されてこのような会見が行われるかというと、被害者の声まではいらなくても、やはり我々が平素「センセーショナル」な物を求めてしまっているからではないだろうか。よって記者たちは「とにかく刺激的なものを撮ってこい」と言われ続け、感覚がマヒし、本来配慮が必要なはずの取材にすら「センセーショナルさ第一」で臨んでしまい、まるで不倫記者会見のようなノリの質問が飛ぶことになってしまったのではないだろうか。

やはり報道というのは「視聴者が何を見たがっているか」が反映されるものだ、需要がなければ供給はなくなる。このような記者会見が行われなくするためには、何度でも我々が「こういうのはいらんのや、見んし、お前らの雑誌買わんわ」と言い続けるしかないだろう。

ところで、「質問をした記者を特定して処してやろう」という動きも当然のように起こったらしい。やはり我々の「悪を処したい」「処されるのを見たい」という気持ちは根深い物があるのだ。

ちなみに、今回の事故では当初、車を運転していた52歳と62歳の2人が逮捕された。「また高齢者か」という声も上がったが、この年齢で高齢者と呼べるかは微妙なところだ。結局「車を運転する以上誰でも事故を起こす可能性がある」ということである。

車を運転しない人は「歩道を歩いていて車が突っ込んでくるなんてどうしようもない」という被害者観点から絶望したと思うが、車を運転する人は加害者観点でも恐怖したと思う。

もちろん安全運転に越したことはないが、人間には「限界」と「不測の事態」があることでおなじみである。持病もないのに運転中に突然何らかの発作が起こる可能性だってあるのだ。「どうしようもないこと」で被害者になることもあるが、加害者になることもあるのである。

つまり、車がないと生活できない土地で、私が週一ぐらいしか外出せず、引きこもり続けているのは、近隣住民の命を守る草の根活動でもあるのだ。しかし、それは無職だからできる事業なので、多くの人が、少なからずリスクを負って車を運転しなければいけない。

そのリスクを減らすには、運転者が気をつけることはもちろんだが、何せ限界がある。つまり、人間がこれ以上、進化することなく、むしろ高齢化で退化する一方だとしたら、無機物の方を整備していくしかない。

事故が起りにくい道路作り、そして車だ。

現に、車の事故防止機能はどんどん進化しており、自動運転化の開発も進んでいるという。自動運転が本当に安全なのか不安もあるが、少なくとも老が運転するよりは確実に安全になるだろう。

しかし、今のところそういった事故防止機能がついた車を買うか否かは、任意である。そして、そのような機能がついた車は高くなる。よって私の車は金銭的問題で、タイヤとハンドルがついているぐらいであり、運転手がミスったら、そのミス通り事故を起こしてくれる、素直な仕様である。

現在でも事故防止機能のある車を購入した場合、補助がもらえることもあるようだが、導入が任意な以上、つけない人はつけないだろう。これからの車には、タイヤ、ハンドル、事故防止機能を、もう屋根ぐらい忘れても良いから義務付けるべきではないだろうか。

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2019.05.20

トヨタが5世代目となる新型「スープラ」を発売

直列6気筒のFRで伝統を踏襲、最上級グレードに予約集中

BMWとの共同開発について気になる点を友山副社長に聞く

トヨタ自動車は新型「スープラ」(GR Supra)を発売した。先代スープラの生産終了から17年ぶりの復活だ。価格は3リッターの直列6気筒(直6)ターボエンジンを搭載する「RZ」が690万円、2リッターの直列4気筒ターボエンジンを積む「SZ-R」が590万円、同「SZ」が490万円。直6+FR(フロントエンジン・リアドライブ)という歴代モデルの伝統を踏襲した5世代目は、トヨタとBMWの共同開発で誕生した。

新型「スープラ」。ボディサイズは「RZ」で全長4,380mm、全幅1,865mm、全高1,290mm。こだわったのは「短いホイールベース(前輪と後輪の間の幅、2,470mm)」「幅広いトレッド(左右のタイヤの幅、RZでフロント1,595mm、リヤ1,590mm)」「低い重心高」の3つの基本要素だという

儲からなければ儲かるまで“カイゼン”

新型スープラはBMW「Z4」のプラットフォームとエンジンを使っている。企画とデザインはトヨタが、設計はBMWが担当した。

トヨタでは月間220台の販売台数を想定していたが、2019年3月に予約注文の受付を開始すると、新型スープラには予想を超える数のオーダーが殺到した。事前受注は約1,400台に達したという。予約注文のうち、約7割が最上級グレードのRZに集中したことも予想外だったようで、トヨタは一時的に、同グレードの予約受付をストップしていた。

増産やグレード変更などの生産調整により、現在、RZの受注は再開している。とはいえ、今からRZを注文しても、納車は2020年1月ごろになるそうだ。

「マットストームグレーメタリック」をまとった新型「スープラ」(画像)は限定車。2019年度分の24台については、6月14日までWeb限定で商談の申し込みを受け付ける。商談順は抽選となるそうだ

「モビリティカンパニー」になると宣言したトヨタが、スポーツカーのスープラを復活させる理由については、最近、テレビやラジオのコマーシャルでもしばしば耳にする「馬がクルマに置き換わっても、競走馬は残った」という言葉の通りだ。つまり、電動化や自動化でクルマの在り方が変わっていっても、単なる移動手段ではなく、所有したり乗ったりすることで、喜びを感じられる存在として残るクルマもあるので、そういった製品を作り続けたいというのがトヨタの思いである。

新型「スープラ」はトヨタとBMWが2013年に包括提携を結んでから初の商品となる。生産はマグナ・シュタイヤーに外部委託し、オーストリアのグラーツ工場で行う

とはいえ、スポーツカーは年間何万台も売れるクルマではないし、採算が取れないおそれもある。その点については、新型スープラ発表会に登壇したトヨタの友山茂樹副社長も「スポーツカーは儲からない、売れないという冷ややかな見方があることは事実」と認めるところだ。しかし同氏は、「儲からなければ儲かるようになるまで、売れなければ買ってもらえるようになるまで、歯を食いしばってでもカイゼンを続ける」ことがトヨタ本来の姿であるとし、「クルマは五感で感じるものだというDNAを次の世代に継承しなければならない」との考えを示した。

新型「スープラ」は歴代モデルと違って2シーターだ

「BMW製では?」の声に友山副社長の回答は

気になるのは、スープラがBMWとの共同開発であり、エンジンとプラットフォームというクルマの中心部分がBMW製であるという点だ。「トヨタの思いは分かるけど、結局、BMWのクルマなのでは……」という見方があるのは、おそらく間違いないだろう。

こちらがBMW「Z4」。大きな違いはスープラがクーペでZ4がオープンカーであるところだ。「Z4」の価格を見ると、3L直6エンジンを積む「M40i」が835万円、2L直4エンジンを積むエントリーモデル「sDrive20i」が566万円となっている

そのあたりについて、友山副社長が語ったところをまとめると、まず、「スポーツカーは数(販売台数)が限られる割に、開発には莫大なコストがかかるので、単独で作るのは難しい」とのこと。今回のスープラは企画とデザインがトヨタ、設計がBMWと説明しているが、クルマの開発は「そんなに簡単なものではないし、(明確に役割を)区切れるものでも」なく、企画の段階で、トヨタとしてどんなクルマを作りたいか、どんな味を出したいかといった点については徹底的に詰めたという。それに、これは多少、冗談めかした発言ではあったものの、「BMWが作ったクルマだから」という理由でスープラを購入する顧客もいるそうだ。

トヨタの友山副社長。自身は先代「スープラ」を改造して乗っていて、トヨタの役員駐車場で警備員に止められたこともあるという

スープラを「BMW製」だと見る人たちに対して友山副社長は、「どこ製ということではなく、これは『スープラ』なんです。両社のいいところを組み合わせた最高の合作、それがスープラです。乗ると分かりますが、Z4とは全然違います」とのメッセージを伝えたいそうだ。

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