成長事業への期待がダウン? シャープ戴社長が有機ELに慎重なわけ

成長事業への期待がダウン? シャープ戴社長が有機ELに慎重なわけ

2016.11.08

アップルの次期iPhoneに搭載されるといわれている有機ELディスプレイ。シャープは、先日試作ラインを整備することを発表するなど、この分野に注力する姿勢をみせているのは先の記事で述べたとおり。しかし、今回の2016年度上期(2016年4~9月)の連結業績の発表の席上、有機ELディスプレイへの取り組みに対して、慎重な姿勢を見せていることを示唆した。

(左から)決算会見に臨む戴社長と野村副社長。11月1日

有機ELの市場性はまだ評価していない

会見に出席したシャープの戴正呉社長は、「私は有機ELの市場性はまだ評価していない。これが成功するかはわからない」と、将来の主流になるかどうかを見極めている段階であることを示した。

シャープは、有機ELディスプレイ事業関連で2,000億円の投資を計画しており、9月30日には、その一環として、約574億円を投資して、有機ELディスプレイの試作ラインを整備することを発表した。

同社では、「有機ELディスプレイの試作ラインへの投資は、成長軌道への転換に向けた施策のひとつであり、成長事業への投資のひとつ」というスタンスは変えていない。その点は、今回の決算発表のなかでも、シャープの野村勝明副社長の説明のなかで改めて言及されている。

だが、戴社長の考えは、極めて慎重だ。

会見の席上では、「シャープは有機ELの優れた技術を持っている。しかし、いまは、将来性を評価することはできない。まずは試作ラインを作ってみないと、どうなるかわからない。それが成功してから考えたい。全面的に参入する以外にも様々な方法がある」と語ったからだ。

そして、「いまの資金状況からみると、もっと慎重に考えていく必要がある」と、投資戦略にも釘をさす。

有機ELディスプレイが採用されているApple Watch。AppleHPより

また、アップルの次期iPhoneへの有機ELディスプレイ搭載において、シャープが供給するのではないかとの見方や、ジャパンディスプレイとも共同戦線を張るとの見方に対しては、「有機ELについての協業や顧客先については、一切決まっていない」とコメントを控えた。

業績回復のカギはやはりディスプレイ事業

戴社長が、有機ELディスプレイに対して、慎重な姿勢をみせる背景には、新たな領域への投資を加速させる将来戦略よりも、足元の液晶ディスプレイ事業の業績回復を優先させたいという思惑がある。

2016年度上期(2016年4~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比28.1%減の9196億円、営業損益は前年同期の251億円の赤字から7,900万円の黒字に転換。経常損益は前年同期の386億円の赤字から若干改善したものの、320億円の赤字。また、当期純損益は前年同期の836億円の赤字だったものが、454億円の赤字となった。営業黒字化、そして最終赤字の縮小は明るい材料であり、その理由として、「中国での液晶テレビ事業の体質改善などによる固定費削減効果があり、利益は大幅に改善した」(野村副社長)とし、今回からディスプレイデバイスのセグメントに含めたテレビの回復が貢献したことを示す。

また、初めて2016年度の通期業績見通しを公表。売上高は前年比18.8%減の2兆円、営業利益は257億円、経常損失は163億円の赤字、当期純損失は418億円の赤字としたが、「通期見通しについては、売上高ではディスプレイデバイスの販売減などが影響する」と、やはりディスプレイ事業の回復が重要な指標であることを示す。

つまり、シャープの業績回復の鍵を握るのは、やはりディスプレイ事業であるという構図はこれまでと変わらない。その点でも、まずは、先行投資よりも、足元の業績回復にフォーカスしかなくてはならないのは明らかだ。

戴社長は、ディスプレイ事業の黒字化について、「いつ黒字化できるかは言えない」」と発言し、具体的な黒字化の時期を明言することは避けたが、「シャープのディスプレイ技術は世界一であり、ディスプレイ事業の黒字化には、自信を持っている。差別化でき、有利なところをもっと発展させることができる」と述べる。

今回の決算は、ディスプレイ事業に含めたテレビの回復が貢献している。シャープHPより

さらに、「ディスプレイ事業については、経営の観点からもチェックをしていく。改善すべきところはまだまだある。コストダウンができ、さらに効率を高めることができる」とも語る。

野村副社長は、「垂直統合による競争力強化を図り、鴻海グループが持つコスト力、商品力、技術と、シャープの高付加価値を組み合わせることで、グローバルで通用する新規商品を創造し、ディスプレイ事業におけるシャープのブランド力を再び高めることを目指したい」と意気込んでみせた。

ディスプレイ事業の見極めが経営計画のキモ

関係者の間では、今年秋にも、新たな中期経営計画が明らかになるのではないか、との見方が広がっていた。

だが、2016年8月13日に社長に就任した戴社長にとっては、その期間はあまりにも短すぎた。会見の席上で、戴社長は、「就任からまだ2カ月半。中期経営計画については、2017年4月に発表したい」と語る。

この策定において、ディスプレイ事業の業績をどう盛り込むかが、現時点では不透明であることが影響しているのは明らかだ。

新たな中期経営計画のなかには、有機ELディスプレイへの投資戦略や、アップルへの供給契約などの影響が盛り込まれることが必至。つまり、来年4月までの間には、戴社長は、有機ELの将来性についても判断し、アップルとの契約にも一応の目途がつく可能性が高いといってもいい。

「これまでのシャープは、有言実行ではなかった。800億円の黒字にすると言いながら、結果は2,559億円の赤字(2015年度実績)。私は、わからないことは答えない。私は、有言実行を日々追求する」と戴社長。

有言実行を実現するためには、ディスプレイ事業の見極めが不可避だ。

言い換えれば、中期経営計画の発表は、ディスプレイ事業をどう復活させるのか、そして、有機ELに対してどんな姿勢で取り組むのかを明確化することにつながるといえよう。

Googleマップが突然の劣化、ゼンリン地図から自社地図に変更か?

Googleマップが突然の劣化、ゼンリン地図から自社地図に変更か?

2019.03.22

Googleマップが壊れた? 3月21日以降、表示がおかしい

地図のダウンロード機能でゼンリンと決裂したか?

新しい地図は機械学習で地図データ生成という指摘も

Googleマップの表示がおかしい。3月21日頃から、Googleマップの不具合を訴える声が各所で相次いでいる。道路の表示や建物の位置が正確でなかったり、地形すら間違っている場所もある。Googleマップにいったい何が起こったのか。

地図データの提供元がゼンリンではない?

Googleマップの日本地図データはこれまで、地図データで国内大手のゼンリンから提供を受けていた。両社の契約状況は公開されていないが、少なくとも不具合が発生している現在のGoogleマップ上からは、以前までは記載されていたゼンリン社の権利表記が消え、「地図データ (C)2019 Google」へと変更されている。

Googleマップからゼンリン社の権利表記が消えた

Google社は今月のはじめ、今後「数週間以内」に、日本のGoogleマップをアップデートすると予告していた。このアップデートでは、特にダウンロード可能なオフラインマップを追加することに注目が集まっていた。オフライン環境でもダウンロード済みの地図を利用できる便利な機能だが、地図データの契約上の課題があり、日本のGoogleマップでは制限されていた機能だからだ。結局、両社は契約の課題を解決できず、ゼンリンが地図データ提供から降りてしまったことが、今回の不具合の原因と見られる。

新しい地図は使い物になるのか?

現在のGoogleマップは、Googleが新規開発した自社製の地図データを利用しているようだが、いまだに不具合が報告され続けている状態状態であり、混乱が収束する目途は見えていない。

なお、この新しい地図は、航空写真で山脈の陰部分が湖になっていたり、並木の多い道路が公園になっていたりする間違いや、ほかにも交差点に面したコンビニエンスストアの駐車場が道路と語認識されていたりすることから、航空写真をもとにした機械学習や、スマホ位置情報の移動軌跡から地図データを生成しているのではないかと指摘されている。

航空写真では山の陰になっている部分が、川と湖になってしまっている
地図では鎌倉街道から大栗橋公園を抜ける道があるが、実態はただの公園広場だ。スマホ位置情報の移動実績をもとに道と認識したか?

新しい地図の仕組みや改善の見込みについては、Google側のアナウンスを待つほかないわけだが、GoogleマップはAndroidの標準地図として利用されており、影響を受けるユーザーがあまりにも多い。他の地図サービスを駆逐して大きな影響力を持っているのだから、責任も伴うはずだ。

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ペットボトルコーヒーに対抗? キリンが目指す「午後の紅茶」

ペットボトルコーヒーに対抗? キリンが目指す「午後の紅茶」"仕事のお供"戦略

2019.03.22

「午後の紅茶」に微糖のミルクティーが登場

新CMでは無糖・微糖を中心に新しい飲用シーンを訴求

ペットボトルコーヒーに対抗? 今後の戦略は

昨年まで、ビジネスマンの仕事のお供として「ペットボトルコーヒー」に注目が集まっていたが、今年は「紅茶」が主戦場になるかもしれない。

3月26日より発売されるキリンの「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」は、これまでの“ペットボトルのミルクティーは甘い”というイメージに反して、缶コーヒーでいちカテゴリを築いている「微糖」が特徴。また、同社が長らくカテゴリ内最大シェアを誇る「午後の紅茶 おいしい無糖」についても、あらたな消費イメージを打ち出す方針だ。

今春から「午後の紅茶」新CMに出演する新木優子さん、深田恭子さん、リリー・フランキーさん

ペットボトル紅茶飲料のトップブランドと言える「午後の紅茶」。この春から公開する新CMには、既存の紅茶飲料のイメージを覆す狙いが透けて見えた。

2つの軸で「紅茶」のイメージを変える

紅茶飲料のイメージと言えば、「午後の紅茶」の名前の由来となっている「アフタヌーンティー」(英国発祥の喫茶習慣)に象徴されるように、「女性の飲み物」であり、「時間的・金銭的余裕がある人の趣味」というところだろうか。それも紅茶という商品のひとつの側面だが、近年の消費者層のメインストリームではなくなっている。

今回、キリンが「午後の紅茶」新CMで打ち出したのは、大きく分けてふたつの飲用イメージだ。深田恭子さんが仕事で車を走らせ、駐車して一服するのに選んだのは微糖のミルクティー。一方、アーティスト然としたリリー・フランキーさんが飲んでいるのは無糖の紅茶。2本ともに「仕事のお供」としての訴求が挙げられる。

車を止め、「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」をひとくち飲む
絵を描く合間にのどを潤すのは「午後の紅茶 おいしい無糖」

もうひとつは、おなじくリリー・フランキーさんがカレーと紅茶飲料を一緒に味わうというCM。過去には同社の無糖紅茶が「おにぎりに合う」と訴求したこともあるが、あらためて食事中の飲料として「フードペアリング」を提案する。

カレーのような香りの強い食べ物とも合わせられる点を訴求
最年少の新木優子さんは、無糖紅茶を飲むようになった自分を「大人になった」と評するCMに出演。若者への無糖紅茶訴求を担う

紅茶を、コーヒーや緑茶と並ぶカテゴリに

カフェなどでは食後の飲み物をコーヒーか紅茶から選ぶのが定番だが、ペットボトル飲料市場では状況が異なる。コーヒーに次ぐ大規模市場は緑茶飲料で、紅茶はそこから比べるとかなり小規模だ。日本全体の清涼飲料市場で見れば、そのシェアは5%以下。仕事中の飲料としてメジャーなコーヒーが14.5%、緑茶飲料が13.3%という数字を見ると、半分以下という状況となっている。

清涼飲料市場において、紅茶はコーヒー、緑茶と比べて市場が小さい

こうした市場背景を確認した上で、今後「紅茶を、コーヒーや緑茶などの無糖茶と並ぶカテゴリに成長させたい」と意欲を示したのは、午後の紅茶を担当するキリンビバレッジ マーケティング部 商品担当 部長代理の加藤麻里子氏。世界での紅茶飲料と茶葉生産量の伸び、国内紅茶市場の回復傾向を論拠に、RTD紅茶のトップブランドとして、新しい紅茶文化を創っていきたいと語った。

「午後の紅茶」ブランド全体としては、既存の定番3種は甘さを求める若年層に対して継続投資を実施。甘さから離れる20代~30代の働く女性に向け、紅茶飲料としては珍しい「微糖」の新製品「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」を投入する。

午後の紅茶ブランドにおける年代別の主要商品マッピング

また、30代後半意以降の年代を健康意識や嗜好の変化から「糖離れ・無糖飲用層」と位置づけ、すでに市場で受け入れられている「午後の紅茶 おいしい無糖」の訴求強化を行っていく。

狙うはペットボトルコーヒーへの「対抗」ではなく…?

「2年前までコーヒーのCMをやっていたのにどのツラ下げて…というのはありますが」と茶化しながらも、自分のような「おじさん」にこそ紅茶は飲みやすいとコメントしたリリー・フランキーさん

製品ごとに異なる年齢層を狙って投入される新CM。「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」のCMでは、商品をことさらには誇張しない画面作りやキャスティング、出演者の自然体な演技とは裏腹に、「コーヒーから寝返っちゃおうかな」(リリー・フランキー出演「寝返り」編)、「ラテよりこっちかな」(深田恭子出演・「裏切られた」編)など、“コーヒー飲料からの転向”を示唆するようなセリフが目立つ。

働く大人がコーヒーから紅茶に「乗り換え」することを示唆するCMは、ここ2年でワーカー向けのペットボトル飲料の拡大を牽引し、ちょうど先日同ブランドから紅茶飲料を発売したサントリーの「クラフトボス」をはじめ、昨今増えているワーカー向けのコーヒーペット飲料に対する宣戦布告にも読める。だが、加藤氏にペットボトルコーヒー飲料のヒットに紅茶で対抗する構えかどうか尋ねると、決してそうではないという。

「今やひとつのカテゴリとなっているペットボトルコーヒー飲料も、複数社から新商品を展開し、協力して棚の広さを獲得した経緯があります。現状、紅茶飲料の棚は一段程度ですが、これを各社協力して2段へと増やしていきたいです」 

オフィス需要に対して、企業とコラボレーションし飲用機会を設ける試みも

また、「仕事のお供」需要を喚起する施策として、三菱地所に対して仕事中の飲料として「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」を提供。働き方改革推進企業とコラボレーションし、オフィスでの休息機会に手に取る飲料として配布する。今後、他の企業からオファーがあればそちらにも対応するとのこと。想定シーンに対して直接サンプリングすることで、需要の広がりを見込んでいる。

「午後の紅茶」は、日本国内の紅茶飲料としてはNo.1ブランドの地位を獲得しているだけに、紅茶飲用の文化を牽引して、先述の通りコーヒー・緑茶に並ぶ市場規模への拡大を狙っている。

昨今はスターバックスの「TEAVANA」、タリーズコーヒーの紅茶業態などが定着しており、タピオカミルクティーブームも依然続くなど、カフェ業界でも紅茶に追い風が吹いている。今後、午後の紅茶が「コーヒー党」や「緑茶党」をどれだけ引き込めるか、注目したい。

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