ジョナサン元社員が語る~すかいらーく吸収合併の舞台裏(下)

ジョナサン元社員が語る~すかいらーく吸収合併の舞台裏(下)

2016.11.08

ジョナサン元社員が語る~すかいらーく吸収合併の舞台裏(下)

約30年前、ファミリーレストランのジョナサンに入社したAさん。順調なサラリーマン生活を送っていたが、2012年1月、親会社のすかいらーくによるジョナサンの吸収合併で様相が一変する。アットホームで人を大切にする社風のジョナサンに対し、すかいらーくは売り上げ、数字を重視する経営スタイル。統合直後は準備不足もあってジョナサンの現場は大混乱に陥った。 そして、悪戦苦闘の日々が始まった。

 「すかいらーくはとにかく会議が多かった。1日中会議のときもありました。トップマネジメントに報告する資料をつくるだけでも数時間かかります。それが業績の悪いブランドだと毎週続きます。現場が混乱するなかでジョナサンの業績は落ちていきました」

 自由闊達な社風のジョナサンで育ったAさんは、経営管理を徹底するすかいらーく流に戸惑いを隠せなかった。激務とストレスから、胃が痛くなる日々が続いた。

 「本部へ行ってからは精神的にも肉体的にも苦しい日々が続き、体調を崩すこともありました。ただ、何とかしなければ、という思いから、気持ちを奮い立たせ、日々の業務に取り組みました」

 「負けてなるものか。必ず結果を出してやる」。奮起するAさんに強い援軍が現れた。2011年からすかいらーくの再建に乗り出した米投資会社ベインキャピタルだ。

マック流でジョナサンを再建

 「ベインの方々は非常にジョナサンに好意的でした。すかいらーく会長に就任したラルフさんは米マクドナルドで社長を務めたこともある人物です。ラルフさんはじめ、各部門にマック出身の方々が多く、ジョナサンブランドへの関心と援護が始まりました。ジョナサンはもともと店員をクルーと呼ぶなど、マック流の経営を取り入れており、相性もよかったのではないでしょうか

 本社のマーケティング部隊がフランス政府公認のフォアグラを使った「フレンチフォアグラ&ハンバーグ」を投入するとこれが大ヒット。ジョナサンの業績は回復に転じた。2013年の売り上げは前年を上回る成績を収め、2014年も目標を達成。すかいらーくは2014年10月、東京証券取引所第1部に再上場した。外部の投資家からは大成功に思えるが、それでもAさんはジョナサンの吸収合併に対して複雑な思いを抱いている。

ベインの傘下でジョナサンへの投資が始まり、業績回復につながった

 「世界一のファミリーレストランチェーン会社の傘下に入ったことをいいと思っている社員もいると思います。しかし長年、ジョナサンにいた立場からすると、自分たちが本当にやりたいと思うことが見つけにくい職場になっているのではないかと心配します。例えば昔のジョナサンでは社員の独立を応援するため、フランチャイズチェーン(FC)の運営に社員が応募できましたが、今ではFCの新規募集はやっていないようです」

 一方で、現場を重視するジョナサンの手法が認められ、すかいらーくの経営に取り入れられたこともあるとAさんは言う。

 「ジョナサンでは、社員がやったことに対して会社がきちんと認めてくれる風土がありました。ジョナサンでは優秀なアルバイトやパート従業員、優秀なマネージャーや店舗の表彰を毎年行っていました。店舗や従業員全員が目標を持ち、ジョナサン全体のモチベーションを支えていました」 

 「また、横川竟さんがジョナサンの社長時代の頃、お店を視察されると黄色い便箋にメッセージを入れ、マネージャーに置いていきました。私も受け取ったことがありますが、今でも宝物です。パート・アルバイトの表彰制度はその後、すかいらーくも導入しました。今も続いているといいのですが…」

現場の統合、悔やまれる準備不足

 Aさんは統合後3年間は社内に残り、すかいらーくの再上場と前後として定年前に同社を退職した。その直前には、サラリーマン生活で初めて人事異動の打診を断り、やめる覚悟を決めていたという。当時の心境をこう振り返る。

 「統合の混乱も次第に収束し、後輩も育てたので、自分としてはやりきった。後悔することはありません。しかしあんな大変なことは二度と経験をしたくないという気持ちは否定できません」

 それでは、もっとスムーズに統合するためにはどうすればよかったのか。

 「誰かが悪いのではなく、ひとえに準備不足につきます。2011年10月ごろに統合のチームができましたが、人員数が少なく、現場のオペレーションがどう変わるか、1つずつ洗い出す作業まで手が回っていませんでした。統合チームの人選も現場の実務担当者が十分に入っていませんでした。ジョナサンとすかいらーくの本部は歩いていけるほどの近い距離にありましたが、肝心の業務のオペレーションの統合については明らかに準備不足でした」

 ファミレス業界では、若年層の人口が減り苦戦を強いられている。ロイヤルホスト、デニーズなどの同業だけでなく、専門店との競争も激しくなっている。こうした中、ジョナサンを飛び出し、新業態にチャレンジする元「ジョナサンマン」は後を絶たないという。

 「すかいらーくによる吸収合併と前後して、多くの社員がジョナサンをやめていきました。それぞれの方々がジョナサンで学んだことに誇りと感謝の気持ちを持って、多くの分野で活躍しています。横川竟さんは、喫茶店チェーン「高倉町珈琲」を2014年に立ち上げました。高倉町珈琲には元ジョナサン社員が多く入社し、首都圏を中心に店舗数を増やしています」

横川竟氏が創業した高倉町珈琲。八王子市の高倉町が発祥

 Aさんはもともと「いつかは独立して自分の店を」と考えていたが、今後は「外食と少し距離を置いて、教育や人材育成にかかわる仕事をしたい」と語る。激務の影響か、病気が見つかり、しばらくは勉強をしたり、人と会ったりして鋭気を養うのだという。

 華やかに見えるM&Aの舞台裏では多くの社員の生活があり、さまざまな人の人生に影響を与える。誰か1人が悪いわけでもない。「現場の苦労をわかってくれる上司のサポートが欠かせない」。Aさんの体験談は「M&Aは買ってからの統合作業が重要」という事実を雄弁に物語っている。

取材・文:M&A Online編集部

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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○カレー沢薫の時流漂流
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最後になりますが、改めて皆様に感謝いたしますとともに、引き続き、マイナビニュースにてご愛顧いただけましたら幸いです。

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu