"実質0円"禁止後も好調続く、携帯大手3社はこの先も安泰か

2016.11.08

携帯電話大手各社が第2四半期の決算を発表したが、NTTドコモが上方修正を発表するなど、各社とも増収増益の好調な業績を見せている。端末の実質0円販売の事実上禁止を受けてもなお、大手キャリアが業績を落としていないのはなぜか。そして今後も好業績は続くのだろうか。

国内事業の第2四半期決算は好調さを示す3キャリア

10月末から11月頭にかけて、携帯電話大手3社が相次いで第2四半期決算を発表した。各社の決算を改めてチェックすると、前年同期比でNTTドコモが売上高3.3%増の2兆2,883億円、営業利益が26.6%増の5,855億円。KDDIが売上高7%増の2兆3,016億円、営業利益が18%増の5,326億円。ソフトバンクグループは、ソフトバンクを主体とした国内通信事業に限った場合、売上高は3.1%増の1兆5,556億円、利益は9.4%増の4,659億円となっており、いずれも増収増益の好調な業績であることが分かる。

各社の業績好調要因を確認すると、1つはやはり本業である通信事業の収入拡大が大きく影響しているようだ。NTTドコモは「カケホーダイ&パケあえる」契約者のデータ通信利用が拡大してARPUが上昇傾向にあること、スマートフォンとタブレットを同時契約するユーザーが前年同期比11%増の3409万契約に伸びていること、そして固定ブロードバンドサービスの「ドコモ光」の契約者数が、前年同期比3.5倍の253万契約へと拡大していることなど、本業の通信事業が回復傾向にあることが、売り上げの伸びに大きく影響しているようだ。

NTTドコモのARPUは「カケホーダイ&パケあえる」導入後大幅に下がったが、データ通信の利用が伸びたことや、「ドコモ光」の利用拡大などによって導入前の水準に戻ってきている

KDDIも、auの通信ARPA(Average Revenue per Account、1人当たりの月間売上高)が前年同期比1.7%増の4472億円に達するなど通信料収入が伸びたほか、端末販売収入も増加。ソフトバンクも移動体通信事業は微減だが、固定ブロードバンドサービスの「ソフトバンク光」が伸びたことから、増収となっている。

そしてもう1つは、通信事業以外の収入拡大である。NTTドコモは「dマーケット」「dカード」などのスマートライフ領域が順調に成長しており、その売り上げが同社の成長に大きく寄与している。またKDDIも、今年3月にテレビ通販大手のジュピターショップチャンネルを連結化し、売り上げを大きく伸ばしたほか、12月にはディー・エヌ・エーから「auショッピングモール」などのEC事業を取得するなど、ライフデザイン事業の拡大に向けた取り組みを強化している。

KDDIは3月のジュピターショップチャンネルに続いて、ディー・エヌ・エーのEC事業の一部も取得。au経済圏の拡大に向けライフデザイン事業の強化を進めている

だがここ最近の携帯電話業界の動向を見ると、4月に総務省が「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を打ち出して以降、大手キャリアがスマートフォンなどの端末を、実質0円やそれを割り込んで販売することを事実上認めない措置を打ち出し、端末価格が大幅に上昇。さらにMVNOやサブブランドなどによる低価格サービスが台頭してキャリアからユーザーを奪うなど、多くの逆風にさらされているようにも見える。

実質0円の事実上禁止はまだ逆風になっていない?

そうした逆風があるにもかかわらず、キャリアが好業績を上げているのは不思議なように見える。だが実は、少なくとも現在のところ、逆風と思われている要素の多くは、キャリアの業績にとって必ずしも逆風とはなっていない部分がある。

例えば端末の実質0円販売の事実上禁止措置は、キャリアにとっては端末の販売価格を上げざるを得ないため、端末数の販売数が減る要因となることから、一見不利になるように見える。だが一方で、割引に費やしてきた費用が必然的に抑えられることから、利益を高めることには貢献しているのだ。

例としてNTTドコモの、端末機器原価と代理店手数料の合計である「機器販売費用」を見ると、一昨年度の第2四半期にはプラス438億円、昨年度の第2四半期にはマイナス28億円であったのが、今回の決算ではマイナス269億円と劇的に下がっている。ここにはもちろん、端末の販売が減少して機器原価が下がった影響も含まれているのだが、2年間で700億円近く減少しているというのは、いかに端末の割引が減少し、それが利益の拡大に貢献しているかを見て取ることができるだろう。

端末の実質0円販売が全盛だった、NTTドコモの2014年度第2四半期決算の営業利益。機器販売関連費用は438億円に上っている
端末の実質0円販売が事実上禁止となった、2016年度第2四半期決算の営業利益。機器販売関連費用は269億円のマイナスと、大幅に減少していることが分かる

また、NTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏は、10月28日の決算説明会で「(総務省の)ガイドラインが出てすぐの頃は販売数が落ちたと思ったが、第2四半期からはほとんど計画通りになってきており、ものすごく影響を与えているということはない」と話している。iPhone 7/7 Plusの発売など季節的要因もあるだろうが、実質0円販売の事実上禁止による影響が、全てのキャリアに大きく出ているとは限らないようだ。

低価格サービスの台頭も、キャリアによっては必ずしも逆風となっているわけではない。例えばソフトバンクは、ワイモバイルブランドを展開することにより、他社から低価格を求めるユーザーを奪うことによって、メイン回線で利用するユーザーを増やしている。実際、ソフトバンクグループの決算短信を見ると、特にワイモバイルのスマートフォンの契約数が好調に推移したことから、契約者数の減少が著しいPHSやWi-Fiルーターなどを除く「主要回線」の純増数が約26万件増加したとしている。

行政の影響が業績に響くのはこれから

では、現在は逆風とはなっていない逆風が、今後も逆風とはならないのかというと、決してそうとは言えない状況にある。行政側は依然として携帯電話業界の商習慣に厳しい目を向けており、あらゆる手段をもってその対処に動いているからだ。

例えば、総務省のICTサービス安心・安全研究会が実施していた「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」では、端末の割引販売に対する制限を一層強化する方針が打ち出されている。具体的な内容はまだ明確になっていないが、11月7日の会合では新機種が旧モデルの中古価格を超えない価格を目安にするべきという案も出ている。実質0円販売の事実上禁止後も1万円程度で購入できるケースがあった高額端末の販売価格が、一層の値上げとなることは確実な情勢だ。

11月7日に開催された「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」の第3回会合では、端末割引補助の水準を一層減らす方策に向けた議論が進められた

端末価格が上がれば割引額が減るためキャリアの利益に対する貢献は一層高まるだろうが、ユーザーの買い替えサイクルは一層大幅に鈍ることとなる。そうすれば端末メーカーや販売代理店が受ける影響は現在よりも一層甚大なものとなるだろうし、高額な端末価格を嫌ってMVNOなどの低価格なサービスに流れるユーザーも一層拡大する可能性が高い。

低価格サービスの利用者が増えることは、ここ最近の傾向からある程度既定路線となっているため、キャリア側もその変化に対応する準備を整えてはいる。しかしその傾向が、予想を超えるペースで急激に進んだ場合、ARPUの大幅な低下をもたらし、経営にも少なからず影響を与えることになるだろう。

実際、今回の決算において、ワイモバイルが好調なソフトバンクの主要回線における通信ARPUを見ると、前年同期比マイナス170円の4020円と、大きな落ち込みを見せていることが分かる。現在は他社からのユーザー獲得が好調なことから、ワイモバイルの存在が売り上げを伸ばす要因となっているが、その流れが止まった時には逆に、ARPUを引き下げる減収要因にもなりかねない。

今回のフォローアップ会合では直接的な言及はなかったものの、総務省は依然、MVNOの拡大などによって、キャリアの収益の要である通信料金の引き下げに向けた競争を促進したいと考えているようだ。それゆえ大手キャリアは今後、通信事業による売り上げの拡大が今後一層困難になると見られ、NTTドコモの「スマートライフ領域」やKDDIの「au経済圏」のように、顧客基盤を生かしたビジネスの拡大など通信以外の事業をいかに広げるかが、売り上げ拡大の要になってくるといえそうだ。

ファッション業界に新しい

ファッション業界に新しい"当たり前"、「airCloset」の挑戦

2016.11.08

女性向けの月額制ファッションレンタルサービス「airCloset」の勢いが止まらない。毎月9800円でプロのスタイリストによるパーソナルスタイリングを体験でき、制限なしで何度でもアイテムをレンタルできるサービスのことだ。

女性向けファッションレンタルサービス「airCloset」

2015年2月のサービスイン直後には2万5000人の登録希望者が殺到し、現在会員数は9万人を突破した。4月に開催された日本最大級のファッション&音楽イベント「GirlsAward」では、ファッションレンタル業界史上初めてランウェイに登場。10月14日には表参道にリアルショップ「airCloset × ABLE」をオープンするなど、オンラインにとどまらぬ展開を見せている。

エアークローゼットの代表取締役CEOである天沼聰氏は、海外の大学を卒業後すぐに帰国し、IT戦略系のコンサルタントを10年弱務めたのち、楽天でグローバルマネジャーを3年弱務め起業したIT畑出身。「私のバックグラウンドはすべてITとWeb」と語る天沼CEOに、ファッションレンタルサービスの戦略から今後の展開まで話を伺った。

同じ系統のショップで同じような洋服を買ってしまう女性たち

―― まずサービスを立ち上げた経緯を教えてください。

エアークローゼット代表取締役CEO 天沼聰氏

きっかけのひとつは、妻や友人の女性が感じるというショッピングへの課題感です。たとえば妻は出かけるとき、「着ていく服がない」とクローゼットの前で悩むのです。私の10倍くらい服を持っているのにも関わらず(笑)。買い物に出かけても、妻は同じ系統のショップで似たようなアイテムばかりを買おうとします。

もっといろいろなデザインを楽しめればいいのにと思うのですが、働く女性の環境は変化しており、ファッションに割ける時間が減っています。そのためアイテムやコーディネートに固定概念が生まれ、似たような組み合わせになってしまうのです。

そこでより多くの服と出会う体験を提供し、新しい服を試してもらう機会を増やせられれば、コーディネートの幅が広がり、新しい自分に出会えるのではと思いました。その手段として考えたのがレンタルです。働く女性やママは忙しいので、ライフスタイルは変えずに洋服との出会いを提供したい。それを実現するために、プロのスタイリストを導入し、月額制で自由に借りて返却できる形態にしました。

コーディネート例

――想定するターゲットを詳しく教えてください。

ペルソナは20代から40代後半の働く女性やママです。利用者は30代が最も多いですが、40代以上も増えています。洋服と出会う機会が減るのは、社会的に責任が増え、ファッションに使える時間がなくなっていく30代以降。40代になると広げる機会を見つけるほうが難しいです。だからこそ、洋服との出会いを提供できるairClosetに喜んでいただけているのかなと思います。

――同じ女性とはいえ20歳以上の年齢幅があり、さらにペルソナがシングル、既婚者、子持ちのママでは、かなりファッションの方向性が異なりそうですが?

利用者は働く女性が9割以上なので、アイテムはコンサバファッションなど、オフィスカジュアルを中心に取りそろえています。子持ちの方も4割以上いらっしゃいますが、共通点として「忙しい女性」「仕事やママ会で着られる」アイテムなので、枠組みとしては実はそれほど広くないのです。

好みのスタイルを「お気に入り」に保存しておけば、スタイリストがより自分の好みに合ったアイテムを選んでくれる

取り扱う300ブランドすべてと直接会って交渉

――日本で初めて、普段着にフォーカスしたファッションレンタルサービスとしてairClosetが誕生して以降、似たようなサービスが次々と生まれています。競合と比べairClosetの強みはどこにあるのでしょうか。

後発の競合他社は、レンタルを主眼にしたサービスの方が多いと思います。我々のテーマは「新しい洋服との出会い」なので、レンタルはあくまでもビジネスモデル。表面的にはファッションレンタルとうたっていますが、我々の特徴のひとつはスタイリングにあります。

また単にアイテムを買い集めているわけではなく、アパレルブランドの方と実際にお話をしないと取り扱わないと決めているので、その点も大きな違いだと思います。現在は300ブランドに参画していただいていますが、一社一社すべて直接お会いして共感をいただいております。理由は単純で、お客さまに自信を持って洋服をお届けしたいから。数百単位での交渉になるので、プラットフォームとオペレーションの構築に時間も労力もかかりますが、後発の他社との大きな差別化になっていると思います。

それがもし「"買う"から"借りる"に変えていきましょう」とレンタル特化で始まっていたら、「GirlsAward」でファッションレンタルサービスとアパレルブランドが横並びでランウェイを歩くことも、大手セレクトショップ「BEAMS」とコラボさせていただくこともなかったと思います。「既存業界との架け橋となりたい」という思いを各ブランドにお伝えしているからこそ、airClosetは成り立っているのです。

取り扱い商品一例

――サービスが始まり約1年半が経過しましたが、アパレルブランドからの反応はいかがですか。

営業部隊もほとんど人数がいないなか、300ブランドが参画してくださった時点で、理解していただけていると受け取っています。取り引きも継続してくださっているので、プロモーション効果は一定以上あるという証明にはなっていると思います。

女性スタイリストの新しい働き方を提供

airClosetの特徴のひとつに、スタイリストによる詳細なコメントつきのコーディネート提案がある。アイテムを選んだ理由、おすすめコーデ、あわせたいアクセサリーの提案など細かく書かれており、オンラインサービスながらスタイリストの温度感がある

――「競合との違いはスタイリング」という話がありましたが、現在スタイリストは何名在籍しているのですか。

社内にはサービスのブランドイメージを固めるコンセプトチームが在籍しています。お客さまへアイテムをご提案するのは主に社外の登録スタイリストとなり、現在は100名以上が登録されフリーでプロとしてやられています。

――プロのスタイリストが100名以上! それだけ多くの人材をどうやってハンティングするのでしょうか。

人からの紹介や、サイトからの応募が多いですね。我々は一定の線引きとして、フリーで仕事をされているプロのスタイリストのみ登録できる形を取っています。テレビや雑誌、広告で活躍するスタイリストや、パーソナルスタイリストの方などですね。

興味を持っていただいた方には、まず我々のサービス内容を伝え、実際に洋服の選定を体験してもらいます。我々は独自のオンラインシステムを内製しているので、それを使い倉庫にある10万点のアイテムから3着を選んでいただきます。

約10万点の中から3点を選びボックスで届けてくれる

――一般的なスタイリングとまったく異なりますね。

OJT期間を設けてシステムを体験してもらい、レビュー期間を経て一定のレベルにあると判断した方のみ、登録スタイリストとして本採用となります。質としてお客さまに直結する部分なので、一定期間をかけて判断するなどかなり注力してやっています。

――スタイリストが使うシステムとは?

社内管理用のコンソールのようなものです。セキュリティがかなり重要なので、IDでログインしスタイリングするようになっています。

――ログインすれば、社外からもリモートで業務可能ということですか。

そうです。中には本業の合間や、帰宅後に自宅でスタイリングされる方もいらっしゃいますね。最近すごく多いのは、マタニティ期に入られたスタイリストさん。スタイリストは何十着もの服を担いで移動するようなハードな仕事ですが、「力仕事はできないけれど、airClosetならセンスを活かせる」と喜んでいただけます。海外からスタイリングされる方もいらっしゃいますよ。

――airClosetは女性スタイリストの新たな働き方も提供しているのですね。

スタイリング業界では働き方が注目されています。今夏はファッション専門学校からインターン生を呼び、スタイリングの仕事を体験していただきました。将来的にはスタイリングに関する人材育成も考えています。

エアクロエイブルはたった半年で誕生

――オンラインのサービスとして始まったairClosetですが、10月14日には表参道にリアルショップ「airCloset × ABLE(エアクロエイブル)」をオープンされました。利用者の反応はいかがですか。

オープン直後の週末の来客数は予想通りでしたが、3~4着借りられたり、2週間単位の長期間で借りられたりと、予想よりは"レンタル慣れ"されている方が多い印象を受けました。

エアクロエイブルでは、直接プロのスタイリストから「パーソナルスタイリング」を受けられる

――airClosetを始めた当初から、O2Oのイメージはあったのでしょうか。

オンラインサービスだけでライフスタイル領域は成り立たないと思っているので、当初から施策として考えていました。ただエイブルさんからお声がけいただいたことで、タイミングとしてはかなり早まりました。両者のトップ同士が結構な頻度で密にコミュニケーションを取ったこともありスピーディーでしたね。スタートアップベンチャーと大手不動産会社が組んだ形としては、最速ではないかと思います。

――具体的な期間はどの程度だったのでしょうか。

ゼロからスタートして、内装など全部含めてオープンまで半年です。業界変革の意味でも、意思決定を早くして動くのは両経営者の意向だったので、実現が早かったと思います。

――失礼ながら、大手不動産会社はスピード感とは正反対のイメージでした。

思いが一致していたのも、加速度的に企画が進んだ要因だと思います。元々エイブルさんには、一人暮らしの女性がファッションを諦めず、楽しめるように応援したいという思いがありました。我々も働く女性のライフスタイル応援がコンセプト。両者の思いが合致していたのでブレませんでした。

カフェやパウダースペースを備えており、借りた服に合わせたメイクやヘアアレンジに変えられるほか、待ち合わせ場所にも利用できる

――「エアクロエイブル」とオンラインの「airCloset」ではターゲット層が異なるそうですね。

違うというよりも、実店舗の方が若い層、オンラインはキャリア層と若干のズレがあります。実店舗には2つの要素があり、1つは直接コミュニケーションが取れること、もう1つは即時性です。直接のコミュニケーションを求めるのも、「今日合コンが入ったから服を着替えたい」など即時性を求められる機会が多いのも20代女性です。

30代以降の女性になると生活リズムが固定されますが、ファッションの固定概念を広めていきたいという思いが大きいので、オンラインにニーズがあります。20代後半は両方重なるイメージです。興味がある人には、まずは実店舗でパーソナルなスタイリングの魅力を体験してもらいたいですね。

ファッション業界に新しい「当たり前」を提供したい

――最後に今後の展望を教えてください。

まずはアパレルに加えアクセサリーもお届けできるようにしたいと思っています。スタイリスト視点でもコーディネートの幅が圧倒的に広がるので。小物類は洋服のクリーニングとは別のメンテナンスが必要となるので、倉庫物流でのメンテナンス体制が整えば提供したいです。

また今はレディースのみですが、メンズ、キッズ、シニア、マタニティとラインを増やしていこうと動いています。あとは海外展開、特に東アジアや東南アジアにサービスを届け、日本のファッション文化を伝播させたいです。

普段着にフォーカスしたファッションレンタルで、市場に新しい「当たり前」を提供したいと思っているので、まずは多くの人に試してほしいですね。サービスが始まりまだ1年半なので、お客さまと一緒に変化を作っていけたらと思います。

先進的な取り組みで業界をリード

働く女性の増加により、日々のファッションに割ける時間が減少する中、コンサバファッションを中心に、スタイリストによる幅広いコーディネートを提供するairClose。似たようなアイテムがいくつも並ぶクローゼットの前で「今日着る服がない」と悩む女性のニーズとマッチし、多くの共感を得た。

また、スタイリストがクラウドソーシングで働くという新たな雇用を創出。時間や場所などの制約を受けない新しい枠組みで、経済を活性化させたわけだ。

不特定多数の人々がインターネットを介して、モノやスペース、人などを共有するサービスをシェアリングエコノミーと言うが、矢野経済研究所の調査によると、これらの市場は年々拡大しており、毎年平均20%弱の成長率を見込むことで、2020年度には、国内市場規模が600億円に達すると予想されている。

一方、国内アパレル市場規模は、ここ数年間9兆円前後でほぼ横並びの推移である。成熟した市場に、新たな手法や業界を取り入れることで、ファッション業界に新しい風を吹き込むairClosetの挑戦は、まだまだ始まったばかりだ。

ジョナサン元社員が語る~すかいらーく吸収合併の舞台裏(下)

ジョナサン元社員が語る~すかいらーく吸収合併の舞台裏(下)

2016.11.08

ジョナサン元社員が語る~すかいらーく吸収合併の舞台裏(下)

約30年前、ファミリーレストランのジョナサンに入社したAさん。順調なサラリーマン生活を送っていたが、2012年1月、親会社のすかいらーくによるジョナサンの吸収合併で様相が一変する。アットホームで人を大切にする社風のジョナサンに対し、すかいらーくは売り上げ、数字を重視する経営スタイル。統合直後は準備不足もあってジョナサンの現場は大混乱に陥った。 そして、悪戦苦闘の日々が始まった。

 「すかいらーくはとにかく会議が多かった。1日中会議のときもありました。トップマネジメントに報告する資料をつくるだけでも数時間かかります。それが業績の悪いブランドだと毎週続きます。現場が混乱するなかでジョナサンの業績は落ちていきました」

 自由闊達な社風のジョナサンで育ったAさんは、経営管理を徹底するすかいらーく流に戸惑いを隠せなかった。激務とストレスから、胃が痛くなる日々が続いた。

 「本部へ行ってからは精神的にも肉体的にも苦しい日々が続き、体調を崩すこともありました。ただ、何とかしなければ、という思いから、気持ちを奮い立たせ、日々の業務に取り組みました」

 「負けてなるものか。必ず結果を出してやる」。奮起するAさんに強い援軍が現れた。2011年からすかいらーくの再建に乗り出した米投資会社ベインキャピタルだ。

マック流でジョナサンを再建

 「ベインの方々は非常にジョナサンに好意的でした。すかいらーく会長に就任したラルフさんは米マクドナルドで社長を務めたこともある人物です。ラルフさんはじめ、各部門にマック出身の方々が多く、ジョナサンブランドへの関心と援護が始まりました。ジョナサンはもともと店員をクルーと呼ぶなど、マック流の経営を取り入れており、相性もよかったのではないでしょうか

 本社のマーケティング部隊がフランス政府公認のフォアグラを使った「フレンチフォアグラ&ハンバーグ」を投入するとこれが大ヒット。ジョナサンの業績は回復に転じた。2013年の売り上げは前年を上回る成績を収め、2014年も目標を達成。すかいらーくは2014年10月、東京証券取引所第1部に再上場した。外部の投資家からは大成功に思えるが、それでもAさんはジョナサンの吸収合併に対して複雑な思いを抱いている。

ベインの傘下でジョナサンへの投資が始まり、業績回復につながった

 「世界一のファミリーレストランチェーン会社の傘下に入ったことをいいと思っている社員もいると思います。しかし長年、ジョナサンにいた立場からすると、自分たちが本当にやりたいと思うことが見つけにくい職場になっているのではないかと心配します。例えば昔のジョナサンでは社員の独立を応援するため、フランチャイズチェーン(FC)の運営に社員が応募できましたが、今ではFCの新規募集はやっていないようです」

 一方で、現場を重視するジョナサンの手法が認められ、すかいらーくの経営に取り入れられたこともあるとAさんは言う。

 「ジョナサンでは、社員がやったことに対して会社がきちんと認めてくれる風土がありました。ジョナサンでは優秀なアルバイトやパート従業員、優秀なマネージャーや店舗の表彰を毎年行っていました。店舗や従業員全員が目標を持ち、ジョナサン全体のモチベーションを支えていました」 

 「また、横川竟さんがジョナサンの社長時代の頃、お店を視察されると黄色い便箋にメッセージを入れ、マネージャーに置いていきました。私も受け取ったことがありますが、今でも宝物です。パート・アルバイトの表彰制度はその後、すかいらーくも導入しました。今も続いているといいのですが…」

現場の統合、悔やまれる準備不足

 Aさんは統合後3年間は社内に残り、すかいらーくの再上場と前後として定年前に同社を退職した。その直前には、サラリーマン生活で初めて人事異動の打診を断り、やめる覚悟を決めていたという。当時の心境をこう振り返る。

 「統合の混乱も次第に収束し、後輩も育てたので、自分としてはやりきった。後悔することはありません。しかしあんな大変なことは二度と経験をしたくないという気持ちは否定できません」

 それでは、もっとスムーズに統合するためにはどうすればよかったのか。

 「誰かが悪いのではなく、ひとえに準備不足につきます。2011年10月ごろに統合のチームができましたが、人員数が少なく、現場のオペレーションがどう変わるか、1つずつ洗い出す作業まで手が回っていませんでした。統合チームの人選も現場の実務担当者が十分に入っていませんでした。ジョナサンとすかいらーくの本部は歩いていけるほどの近い距離にありましたが、肝心の業務のオペレーションの統合については明らかに準備不足でした」

 ファミレス業界では、若年層の人口が減り苦戦を強いられている。ロイヤルホスト、デニーズなどの同業だけでなく、専門店との競争も激しくなっている。こうした中、ジョナサンを飛び出し、新業態にチャレンジする元「ジョナサンマン」は後を絶たないという。

 「すかいらーくによる吸収合併と前後して、多くの社員がジョナサンをやめていきました。それぞれの方々がジョナサンで学んだことに誇りと感謝の気持ちを持って、多くの分野で活躍しています。横川竟さんは、喫茶店チェーン「高倉町珈琲」を2014年に立ち上げました。高倉町珈琲には元ジョナサン社員が多く入社し、首都圏を中心に店舗数を増やしています」

横川竟氏が創業した高倉町珈琲。八王子市の高倉町が発祥

 Aさんはもともと「いつかは独立して自分の店を」と考えていたが、今後は「外食と少し距離を置いて、教育や人材育成にかかわる仕事をしたい」と語る。激務の影響か、病気が見つかり、しばらくは勉強をしたり、人と会ったりして鋭気を養うのだという。

 華やかに見えるM&Aの舞台裏では多くの社員の生活があり、さまざまな人の人生に影響を与える。誰か1人が悪いわけでもない。「現場の苦労をわかってくれる上司のサポートが欠かせない」。Aさんの体験談は「M&Aは買ってからの統合作業が重要」という事実を雄弁に物語っている。

取材・文:M&A Online編集部