"実質0円"禁止後も好調続く、携帯大手3社はこの先も安泰か

2016.11.08

携帯電話大手各社が第2四半期の決算を発表したが、NTTドコモが上方修正を発表するなど、各社とも増収増益の好調な業績を見せている。端末の実質0円販売の事実上禁止を受けてもなお、大手キャリアが業績を落としていないのはなぜか。そして今後も好業績は続くのだろうか。

国内事業の第2四半期決算は好調さを示す3キャリア

10月末から11月頭にかけて、携帯電話大手3社が相次いで第2四半期決算を発表した。各社の決算を改めてチェックすると、前年同期比でNTTドコモが売上高3.3%増の2兆2,883億円、営業利益が26.6%増の5,855億円。KDDIが売上高7%増の2兆3,016億円、営業利益が18%増の5,326億円。ソフトバンクグループは、ソフトバンクを主体とした国内通信事業に限った場合、売上高は3.1%増の1兆5,556億円、利益は9.4%増の4,659億円となっており、いずれも増収増益の好調な業績であることが分かる。

各社の業績好調要因を確認すると、1つはやはり本業である通信事業の収入拡大が大きく影響しているようだ。NTTドコモは「カケホーダイ&パケあえる」契約者のデータ通信利用が拡大してARPUが上昇傾向にあること、スマートフォンとタブレットを同時契約するユーザーが前年同期比11%増の3409万契約に伸びていること、そして固定ブロードバンドサービスの「ドコモ光」の契約者数が、前年同期比3.5倍の253万契約へと拡大していることなど、本業の通信事業が回復傾向にあることが、売り上げの伸びに大きく影響しているようだ。

NTTドコモのARPUは「カケホーダイ&パケあえる」導入後大幅に下がったが、データ通信の利用が伸びたことや、「ドコモ光」の利用拡大などによって導入前の水準に戻ってきている

KDDIも、auの通信ARPA(Average Revenue per Account、1人当たりの月間売上高)が前年同期比1.7%増の4472億円に達するなど通信料収入が伸びたほか、端末販売収入も増加。ソフトバンクも移動体通信事業は微減だが、固定ブロードバンドサービスの「ソフトバンク光」が伸びたことから、増収となっている。

そしてもう1つは、通信事業以外の収入拡大である。NTTドコモは「dマーケット」「dカード」などのスマートライフ領域が順調に成長しており、その売り上げが同社の成長に大きく寄与している。またKDDIも、今年3月にテレビ通販大手のジュピターショップチャンネルを連結化し、売り上げを大きく伸ばしたほか、12月にはディー・エヌ・エーから「auショッピングモール」などのEC事業を取得するなど、ライフデザイン事業の拡大に向けた取り組みを強化している。

KDDIは3月のジュピターショップチャンネルに続いて、ディー・エヌ・エーのEC事業の一部も取得。au経済圏の拡大に向けライフデザイン事業の強化を進めている

だがここ最近の携帯電話業界の動向を見ると、4月に総務省が「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」を打ち出して以降、大手キャリアがスマートフォンなどの端末を、実質0円やそれを割り込んで販売することを事実上認めない措置を打ち出し、端末価格が大幅に上昇。さらにMVNOやサブブランドなどによる低価格サービスが台頭してキャリアからユーザーを奪うなど、多くの逆風にさらされているようにも見える。

実質0円の事実上禁止はまだ逆風になっていない?

そうした逆風があるにもかかわらず、キャリアが好業績を上げているのは不思議なように見える。だが実は、少なくとも現在のところ、逆風と思われている要素の多くは、キャリアの業績にとって必ずしも逆風とはなっていない部分がある。

例えば端末の実質0円販売の事実上禁止措置は、キャリアにとっては端末の販売価格を上げざるを得ないため、端末数の販売数が減る要因となることから、一見不利になるように見える。だが一方で、割引に費やしてきた費用が必然的に抑えられることから、利益を高めることには貢献しているのだ。

例としてNTTドコモの、端末機器原価と代理店手数料の合計である「機器販売費用」を見ると、一昨年度の第2四半期にはプラス438億円、昨年度の第2四半期にはマイナス28億円であったのが、今回の決算ではマイナス269億円と劇的に下がっている。ここにはもちろん、端末の販売が減少して機器原価が下がった影響も含まれているのだが、2年間で700億円近く減少しているというのは、いかに端末の割引が減少し、それが利益の拡大に貢献しているかを見て取ることができるだろう。

端末の実質0円販売が全盛だった、NTTドコモの2014年度第2四半期決算の営業利益。機器販売関連費用は438億円に上っている
端末の実質0円販売が事実上禁止となった、2016年度第2四半期決算の営業利益。機器販売関連費用は269億円のマイナスと、大幅に減少していることが分かる

また、NTTドコモ代表取締役社長の吉澤和弘氏は、10月28日の決算説明会で「(総務省の)ガイドラインが出てすぐの頃は販売数が落ちたと思ったが、第2四半期からはほとんど計画通りになってきており、ものすごく影響を与えているということはない」と話している。iPhone 7/7 Plusの発売など季節的要因もあるだろうが、実質0円販売の事実上禁止による影響が、全てのキャリアに大きく出ているとは限らないようだ。

低価格サービスの台頭も、キャリアによっては必ずしも逆風となっているわけではない。例えばソフトバンクは、ワイモバイルブランドを展開することにより、他社から低価格を求めるユーザーを奪うことによって、メイン回線で利用するユーザーを増やしている。実際、ソフトバンクグループの決算短信を見ると、特にワイモバイルのスマートフォンの契約数が好調に推移したことから、契約者数の減少が著しいPHSやWi-Fiルーターなどを除く「主要回線」の純増数が約26万件増加したとしている。

行政の影響が業績に響くのはこれから

では、現在は逆風とはなっていない逆風が、今後も逆風とはならないのかというと、決してそうとは言えない状況にある。行政側は依然として携帯電話業界の商習慣に厳しい目を向けており、あらゆる手段をもってその対処に動いているからだ。

例えば、総務省のICTサービス安心・安全研究会が実施していた「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」では、端末の割引販売に対する制限を一層強化する方針が打ち出されている。具体的な内容はまだ明確になっていないが、11月7日の会合では新機種が旧モデルの中古価格を超えない価格を目安にするべきという案も出ている。実質0円販売の事実上禁止後も1万円程度で購入できるケースがあった高額端末の販売価格が、一層の値上げとなることは確実な情勢だ。

11月7日に開催された「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」の第3回会合では、端末割引補助の水準を一層減らす方策に向けた議論が進められた

端末価格が上がれば割引額が減るためキャリアの利益に対する貢献は一層高まるだろうが、ユーザーの買い替えサイクルは一層大幅に鈍ることとなる。そうすれば端末メーカーや販売代理店が受ける影響は現在よりも一層甚大なものとなるだろうし、高額な端末価格を嫌ってMVNOなどの低価格なサービスに流れるユーザーも一層拡大する可能性が高い。

低価格サービスの利用者が増えることは、ここ最近の傾向からある程度既定路線となっているため、キャリア側もその変化に対応する準備を整えてはいる。しかしその傾向が、予想を超えるペースで急激に進んだ場合、ARPUの大幅な低下をもたらし、経営にも少なからず影響を与えることになるだろう。

実際、今回の決算において、ワイモバイルが好調なソフトバンクの主要回線における通信ARPUを見ると、前年同期比マイナス170円の4020円と、大きな落ち込みを見せていることが分かる。現在は他社からのユーザー獲得が好調なことから、ワイモバイルの存在が売り上げを伸ばす要因となっているが、その流れが止まった時には逆に、ARPUを引き下げる減収要因にもなりかねない。

今回のフォローアップ会合では直接的な言及はなかったものの、総務省は依然、MVNOの拡大などによって、キャリアの収益の要である通信料金の引き下げに向けた競争を促進したいと考えているようだ。それゆえ大手キャリアは今後、通信事業による売り上げの拡大が今後一層困難になると見られ、NTTドコモの「スマートライフ領域」やKDDIの「au経済圏」のように、顧客基盤を生かしたビジネスの拡大など通信以外の事業をいかに広げるかが、売り上げ拡大の要になってくるといえそうだ。

NewsInsight 更新終了のお知らせ

NewsInsight 更新終了のお知らせ

2019.06.17

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放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

カレー沢薫の時流漂流 第47回

放置されていた不寛容? 国会まで届いた「パンプス強要」騒動

2019.06.17

最近女性の間で「#MeToo」ならぬ「#KuToo」運動がにわかに盛り上がっている。

「#KuToo」とは「靴」と「苦痛」をかけており、職場や就職活動で、足を痛めるパンプスやヒール靴の強要をやめようという運動である。

そもそもそんなの誰も強要してねえよ、と思われるかもしれない。確かに規定として靴の形状やかかとの高さまで定めている会社はレアだろう。しかし、私の元いた会社でも、規則があるわけでも、誰に言われたでもなく、みな一様に黒のパンプスを履いていた。それが「暗黙のルール」であり、それ以外は「非常識」と見られる風潮は確かにあるのである。

これが就職活動になると、パンプスを履いていないだけで「こいつは常識がない」と見なされ不採用になってしまうかもしれない、ということだ。そうなると女子学生は足を負傷してでもパンプスを履かざるを得なくなってしまう。

正直、パンプスは苦痛

パンプスがそんなに苦痛か、というと、靴の中では殺傷能力が高い方である。これは他人への、という意味ではなく自分へのだ。他人を殺傷したいならカウボーイが履いている、かかとにピザカッターがついている奴を履いた方が良い。

狭いつま先に足の指が密集されるため、私もよく爪で隣の指を切って足を血だらけにしていたし、伸縮性にかける素材のため、あわないパンプスだと試着の時点で靴擦れが出来るレベルなのだ。

世の中には素肌に荒縄で亀甲縛りを施し、その上に上等なスーツを羽織って出社している人も多いと思う。とても痛いだろうが、それは強制されたわけではなく、その人が好きで楽しいからやっているのだ。

つまり、好きでもない上にとても痛いパンプスを強制で履かなければいけないというのは、上等なスーツの下が亀甲縛りなことよりも「異常」なことというわけだ。

この運動はすぐに広まり、いきなり国会でも議論されたという。これにより「厚労相がハイヒール強要を容認」という見出しのニュースまで踊り出ることになった。

完全に自由と言われても困るのでは?

「厚生省に、女がハイヒールを履かないと死ぬ病の人が!?」と驚いたが、記事をよく見ると見出しほどのことはなく、厚労相の発言は「これは社会通念に照らして業務上、必要かつ相等な範囲かと、この辺なんだろうと思います」というかなりボンヤリしたものであり、どっちでも良い事を聞かれた私のリアクションに似ている。

しかし「ハイヒールが履けない女は何やってもダメ」などと強い事を言っているわけではないが、「業務上必要ならパンプス履くべきだろ」という「容認」に聞こえなくもない。すぐさま「業務上ハイヒールが必要な仕事って何だよ」という疑問が挙がり、「SMの女王様」「(ハイヒールでキレッキレに踊る)perfume以外ありえない」などの声が相次いだ。

この社会問題がすぐ大喜利になってしまうのは良くも悪くも「ザ・ツイッター」という感じだ。

確かに「業務上必要」となると、まだかかとにピザカッターがついている靴の方が「ピザを食う時」必要な気がする。

ただ、靴や服装を完全に自由化し、何でもOKにすれば良いかというと、それはそれで問題が起きると思う。ファッションに疎くコーディネートが苦手な人間からすれば、職場に何を着ていいのか全く「指針」がないというのは迷子になるし、接する側としても、車を買いにいってディーラーが、イモ―タンジョ―の完コスで出てきたら「キャデラックしか買うことを許されないのか」と委縮してしまう。就活マナー本に「俺の考えた最強の就活ファッションで挑みましょう」とだけ書かれていても逆に困るだろう

着る側としても、それに接する側としても、社会において服装にある程度規定や模範があるというのはメリットでもあるのだ。

そもそも規定や常識というのは、秩序を作ることにより問題を減らすためにあるものなのだ。しかしそれが元で「足を負傷する」という「問題」が起こっているなら本末転倒なので、やはり解消はすべきなのだろう。

極論に流れない寛容さが足りない

おそらく「#KuToo」を提唱している人も「ドラゴン柄のコンバースで就活したい」と言っているわけではないのだ。最近は「パンプスに見えるスニーカー」なども存在するし、パンプスでなくても地味な靴はいくらでもある。そのような靴を履いていても「パンプスじゃないから非常識」と見るのをやめてほしいという話だろう。

ちなみに私が会社員時代履いていたパンプスだが、黒の革靴ではあったが、つま先は限りなく丸く、ヒールはなきに等しい、今思えばあれはパンプスだったのか、70過ぎのババアが旅行に行くときに履くヤツなんじゃないか、という代物であったが、特に何も言われなかった。

「#KuToo」が求めるのも、そのぐらいの「寛容さ」なのではないだろうか。

【お知らせ】
連載「カレー沢薫の時流漂流」の掲載場所を変更します。
→ 新しい掲載場所はこちら https://news.mynavi.jp/series/jiryu_hyoryu