目指すは究極の日常着! セミオーダージャケットに見るユニクロの未来像

目指すは究極の日常着! セミオーダージャケットに見るユニクロの未来像

2016.03.29

ユニクロが今年1月に始めた「セミオーダー感覚で作れるストレッチウールジャケット」(以下、セミオーダージャケット)事業の滑り出しが好調のようだ。そもそもなぜ、ユニクロが同事業に乗り出したのか。色々と気になる部分を探っていくと、行き着いたのは“究極の日常着メーカー”を目指すユニクロの姿だった。

セミオーダー導入店舗に勢い

従来から吊るし(既製品)のジャケットを取り扱っていたユニクロだが、1月からはサイズのカスタマイズを可能とする新たなサービスを始めた。シルエット(スリムフィットかレギュラーフィット)、色(各フィット3色ずつ)、身幅、着丈、袖丈を自分サイズに調整できるジャケットで、値段は既製品の2,000円増しとなる1万4,900円(税抜き)。程よい光沢が特徴の高級素材「Super110's ウール」を採用しており、同一素材のボトムスと合わせればセットアップのスーツとしても着られる。ボトムスと合わせても価格は2万円強だ。

スーツとして買っても2万円強の価格設定は驚きだ(画像はユニクロHPより)

これまでの売れ行きは上々の様子。ユニクロ商品本部メンズMD部の立石学氏によると、ジャケットを取り扱う同一店舗で比べた場合、既製品のみを置いていたときとセミオーダージャケットを導入した後では「勢いに違いがある」という。販売目標も達成しており、従来の製品に比べると顧客からの反響も大きいそうだ。セミオーダージャケットの取り扱いは10店舗でスタートしたが、当初の予定通り、この2月には取り扱い店舗を全国118店に拡大した。

ジャケット“も”ユニクロで

商品本部メンズMD部アウターMDチームのリーダーを務める立石学氏。MD(マーチャンダイジング)部はユニクロの商品企画を担う部署だ

ニット、シャツ、ボトムスなどはユニクロで揃えるが、ジャケットは別の場所で購入する―。立石氏によると、このような顧客からの声は非常に多かったという。インナーやボトムスなどに比べると、ジャケットはサイズ感に対する顧客の要求が非常にシビアなアイテム。S、M、Lという従来どおりのサイズ展開では、デパートや紳士服店との差別化が難しかったようだ。

ジャケットのサイズ感に対する顧客の不満を読み取ったユニクロが、その部分にニーズを見出して投入したのがセミオーダージャケットだ。洋服を選ぶうえで、「フィットするもの(を購入できるの)は最高の贅沢」と立石氏は語る。

セミオーダージャケットは大規模なビジネスを展開するユニクロのスケールメリットが詰まった商品だ。高級素材を使用している割に手頃な価格設定もそうだが、特筆すべきは「早さ」の部分。セミオーダーでジャケットを作る場合、手元に届くには早くて2週間、通常でも1~2カ月かかるのが一般的だというが、ユニクロは最速1週間で商品を届ける。早さの秘密は在庫管理と倉庫内作業にあった。

納期短縮を実現する倉庫内作業

セミオーダージャケットは、サイズや色などの組み合わせが全部で2,112通りに及ぶ。細かな注文を受けてから、1週間でジャケットを届けるのは至難の業だ。全パターンの在庫を倉庫に抱えておくのもリスキーに思えたため、その疑問を立石氏にぶつけてみると、倉庫には192通りのジャケットしか用意していないとの答えが返ってきた。在庫を少なく抑える秘訣はジャケットの袖にあるという。

ユニクロが在庫として持っているジャケットの袖にはボタンホールが付いていない。注文が入ってから倉庫内で袖丈を調整し、ボタンを付けたうえで出荷するのだという。立石氏は「(2,112通り)全てを在庫として持つことも可能だが、袖を直すほうが効率的だと判断した」と何気なく話すが、このようなビジネスモデルで全国展開を果たせるのは、倉庫と物流網を駆使して大規模な商売を手掛けるユニクロの強みといえるだろう。

専門人材の育成にはグループ内のノウハウも活用

セミオーダージャケットを全国展開すると聞いて、気になったのは人材の部分だ。採寸から着こなしの提案まで、ジャケットを売る店舗スタッフには特殊なノウハウが必要と思える。ユニクロは必要な人材をどのように確保したのだろうか。

商品本部R&D部東京デザインチームMen'sパタンナーの佐々木功氏。同氏と立石氏が着ているのは、「スリムフィット」の「グレイ」で作成したジャケットだ。R&D部にはデザイナーとパタンナー(デザイン画を型紙に起こす役割)が所属する

ユニクロ商品本部R&D部東京デザインチームの佐々木功氏に聞くと、セミオーダー事業の全国展開は既存スタッフのスキル向上により可能になったという。まずは全国の店舗から採寸担当を本社に呼び、パタンナーがジャケットの採寸に関する講習会を実施してノウハウを伝達。講習を受けたスタッフがノウハウを各地の店舗に持ち帰り、同一店舗のスタッフと共有したのだ。

ユニクロに行っても、店舗スタッフが商品の推薦などで積極的に声を掛けてくる印象はない。この距離感が心地よかったりするのだが、セミオーダージャケットを買う場合は、採寸も含めた客とスタッフのコミュニケーションが必須となる。例えば最適な袖丈など、スタッフが専門知識に基づくアドバイスを顧客に行う場面も増えるわけだ。佐々木氏によると、ジャケットのスタイリッシュな着方の提案を含む接客のノウハウは、多くの百貨店に出店しているファーストリテイリング子会社のセオリーから吸収した部分もあるという。

全国の店舗に専門人材を配置し、売り上げも上々のセミオーダージャケット。サービス拡充に向けた今後の展開が気になるところだが、ユニクロは現時点で同事業の大幅なバージョンアップを計画していない様子だ。紳士服業界に乗り込み、ジャケット市場を攻略するつもりであれば、カスタマイズ性を拡げるなど、ユニクロが導入可能な方策は色々と思い浮かぶ。しかし、セミオーダージャケット事業に参入した同社の思いは別のところにあったようだ。

サービスとニーズの“落とし所”を探る

ジャケットでカスタマイズしたい部分はサイズ感だけにとどまらない。スタイル(例えばダブルにするなど)、ラペル(襟)の形や幅、ボタン、裏地など、こだわりだしたら切りがないアイテムだ。

前出の立石氏は「ジャケットのカスタムは、やろうと思えばいくらでもできる」と認めつつも、自社のセミオーダージャケットについては「価格とクオリティのバランスはいいと思う」と自信を示した。カスタマイズの範囲については、ユニクロ側が提供できるサービスの範囲と顧客のニーズを分析し、丁度よい落とし所に商品を投入できたという実感があるようだ。ジャケットの隅々にまでカスタマイズを施したい顧客は他店へ行く。顧客からの要望が多ければ、ユニクロもカスタマイズ性の拡充について検討するという。

ジャケットのカジュアルな着こなしも提示するユニクロだが、ビジネス用途の売れ行きが好調な模様。「色々な着用シーンを想定して出した商品だが、結果的にビジネスに合った」(R&D部の佐々木氏)

サイズ調整が可能な約1万5,000円のジャケット。確かに魅力的な商品だが、この金額でジャケットを購入するのであれば、セール期にデパートを回ってみるのも面白いような気がする。同じような価格帯の競合は激しそうだが、ユニクロの目指す企業としての未来像を探っていくと、同社がセミオーダー事業に乗り出したのも当然だったような気がしてくる。

「LifeWear」の在り方を体現するサービス

セミオーダー感覚のジャケットに商機があると判断して同事業を進めてきたユニクロだが、顧客一人一人のサイズにこだわったサービスが具体化したのは、同社が打ち出している「LifeWear」というコンセプトによる部分が大きいようだ。

ユニクロ代表取締役会長兼社長の柳井正氏が語るところによれば、LifeWearとは「高品質でファッション性があるベーシックウエアであり、着心地が本当に良い、誰もが手の届く価格の日常着」のこと(ユニクロHPより)。前出の立石氏によると、「(LifeWearというコンセプトのもと)社内では究極の日常着を顧客に提供したいという大きな流れができている。ここを突き詰めていったら、『個』に寄り添うという考え方に落とし込めた」という。仕事も日常の一部と捉えれば、ジャケットはビジネスマンの日常着ということになる。

2度にわたる値上げにより、会社としての方向性に疑問の声も上がっていたユニクロだが、セミオーダージャケット事業からは顧客との関係性を深めようとする同社の姿勢が見て取れる。大規模な商売を展開する一方、顧客一人一人のサイズを把握し、細やかな商品提案を行うというビジネスモデル。これこそが、同社の追求する“究極の日常着メーカー”としての未来像なのかもしれない。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

2019.01.22

セブン、ローソンに続きファミマも成人誌を販売中止

インバウンドの増加、オリンピックの開催も影響か

コンビニ最大手のセブン-イレブンと業界3位のローソンが成人向け雑誌の販売中止を発表したのに続き、業界2位のファミリーマートも同様の方針を打ち出した。大手3社の足並みがそろい、日本国内のほとんどのコンビニ店頭から成人誌が消える。

国内のセブン-イレブン店舗数は2万店を超え、ローソンとファミマが1万5,000店前後でこれに続く。それぞれ今年の8月末までに取り扱いを原則中止するという。これまで一部店舗で成人誌の販売を中止していた例はあったが、今回は各社全店舗で取り扱いを中止する。業界では昨年1月から、ミニストップが他社に先駆けて全店で取り扱いを中止していた。

もともと諸外国にくらべ、女性や子どもの目につきやすいコンビニ店頭などに成人誌が置かれている日本のゾーニングの現状は特殊であるとの批判があった。また、インバウンドで訪日外国人が増え、この論調に拍車がかかっていたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、イメージ低下を防ぐ要請が強まっていたという背景がある。

コンビニでの成人誌の購買層は近年、高齢男性に偏るとともに売り上げの減少も顕著であったといい、ゾーニングの問題が取り扱い中止の大義名分になったという見方もある。ある出版関係者は、「一部では電子版などネット展開を強化している流れはあるが、今でもコンビニは重要な販路なので、相当な混乱があるだろう」と話す。どちらにせよ、日本の成人誌は岐路に立たされることになる。