日本でもガソリン車がなくなる日がくる?! ドイツの決断が及ぼす影響は

日本でもガソリン車がなくなる日がくる?! ドイツの決断が及ぼす影響は

2016.11.12

ドイツでガソリン車の販売が禁止になる可能性が出てきた。同国の連邦参議院が、2030年までに内燃機関(エンジン)を動力源とする自動車を代替するという決議を採択したもので、この方針をドイツ政府が採用するかどうかが今後の焦点となる。ドイツから欧州へと脱ガソリンの波紋が広がれば、ディーゼルから電動へ、エコカーの次世代化は一気に進展する可能性がある。日本にはどのような影響があるのだろうか。

アウディが提示した次世代エコカーの在り方

5年前の2011年初秋、アウディが催した「アーバン・フューチャー・イニシアチブ・サミット(Urban Future Initiative Summit)」では、2030年の未来都市を題材に、都市の住み方と、自動車の行方が論議された。2030年には世界人口が85億人に達すると予想される中、国際連合が世界人口の6割が大都市に住むようになると推計したことを受け、たとえば東京のような1,000万人都市で、どのような自動車が人々の役に立ち、求められるのかを検証しようというわけだ。

それを受け、直後のドイツモーターショーで提示された一例が、「アウディA2コンセプト」と呼ばれる車両である。日本の5ナンバーサイズのコンパクトカーであり、中身は電気自動車(EV)、なおかつ自動運転を想定していた。こうすることにより、東京都内の平均速度が時速20キロメートル以下とされることを踏まえ、大都市において自動車の利便性が損なわれるような状況から脱出し、自動車で移動する意義や価値を持続させようと模索しているのである。

アウディのA2コンセプト

国民の自動車というフォルクスワーゲンのような車種であれば、単に経済的なコンパクトカーでも事足りるかもしれない。だが、プレミアムブランドを自認するアウディに、どのような存在価値が残されるのかとの危機意識もあったはずだ。

“自動車の存在意義”が危機感の根本に

なぜ、そこまで彼らが危機感を覚えるのかといえば、ヨーロッパ各国の主要都市は、100万人規模におよぶ大都市が数えるほどしかなく、ドイツなら、ベルリン、ハンブルグ、ケルン、ミュンヘンの4都市しかない。しかも最大のベルリンで350万人だ。イギリスは、ロンドンとバーミンガムの2都市。フランスはパリだけで、わずか220万人。それは名古屋市ほどの規模だ。これに対し、日本は政令指定都市を中心に12都市も100万人規模の都会がある。

しかも東京を例にすれば、公共交通機関が発達し、運賃は大阪や名古屋と比べても安い。合理性を重んじるヨーロッパの人たちが東京に来てみれば、自動車に乗る意味を見いだせなくなるのである。

2030年は遠い未来ではない

別の視点では、ドイツ車を例にすると、新車へのモデルチェンジの周期が約8年で、2030年は2モデル先の新車が売り出される時期と重なる。4~5年周期でモデルチェンジを繰り返す日本車にとっての2030年は、3モデル先と、想像もできないほど遠い話だが、ドイツの自動車メーカーにとっては次の次という次世代構想の視野に入ることになる。

大都市化の課題だけでなく、当然ながら気候変動やエネルギー動向、それらによって影響を受ける食糧問題など、ヨーロッパの人たちにとっての2030年は、遠い未来ではなく、間もなくやってくる近い将来なのである。

2030年までに、どういう社会、都市、自動車作りが求められるのか、いま真剣に考え、模索しているのがヨーロッパであるといえる。なかでも、自動車産業の中心的存在であるドイツ、またカール・ベンツによってガソリンエンジン自動車を生み出した誇りあるドイツにとって、自動車の行方を左右しかねない2030年は、重要な意味を持っている。ここに、国の経済政策に関わる政治の動きも連動し、連邦参議院の採決にもつなかったのではないか。では、日本はどうか。

排ガス削減には日本勢も取り組んでいるが…

日本国内に、火力発電所で電力を賄っているのであれば、EVでもウェル・トゥ・ホイール(Well-to-Wheel)ではCO2を排出していることになり、エンジンの効率を高めていけば差はなくなるとの考え方がある。

しかし、温暖化の影響で海水温が上昇した結果、従来、フィリピン沖で発生してきた台風が、日本列島近くでも頻繁に発生するようになった。なおかつ日本海側へ進路をとっても勢力が衰えず北海道に上陸するといった事態が生じ、各地で秋の収穫前の農産物が壊滅的被害をうけるといった気候変動の影響がすでに現実のものとなっている。漁業では、秋のサンマが海水温の上昇で不漁続き、水揚げが大幅に減るなどの影響も出ている。

暮らしに直結するこうした気候の異変が何だかのかたちで毎年身近に起きているにもかかわらず、温室効果ガスのCO2を排出し続ける発電に依存する事態こそ、憂慮すべき状態であることをまず認識すべきだ。

かといって、再生可能エネルギー率が急速に国内で増えているわけでもない。相変わらず、火力発電への依存が続き、地球温暖化対策の新たな国際的枠組みであるパリ協定の批准が、EUや米中、インドなどで進む中、日本が遅れる事態となっている。

単なる省エネルギーだけでは不十分であり、排ガスゼロによる発電をどう実現していくかを真剣に考える時が訪れている。

トヨタも環境対策を宣言

こうした情勢のもと、トヨタ自動車は昨年秋に「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表した。ここでトヨタは、2050年までに、グローバル新車平均走行時CO2排出量を、2010年に比べ90%削減するとした。これは、エンジンのみによって走る自動車が実質ゼロとなることを意味する。

環境チャレンジでは燃料電池自動車(FCV)の販売目標を設定。2020年頃以降、グローバルで年間3万台以上、日本では少なくとも月に1,000台レベル、年間では1万数千台程度を目指す

その実現のため、ハイブリッド車の技術を核とし、電動化技術の水準を高め、次世代電池開発を行うという。また、半導体の開発を推進し、パワー制御ユニットの高性能化・小型化を行うとしている。

排ガス削減には日本勢も取り組んでいるが…

2050年を目指して新車平均走行時CO2排出量の90%を削減すると、トヨタは宣言した。とはいえ、ドイツが14年後にエンジンを動力源とする自動車の代替を行おうとしているのに対し、34年も先で大丈夫なのだろうか。34年といえば、今年入社した新入社員が、あと何年かで定年を迎えるかもしれないという歳月を経ることになる。

すでに、台風のみならず集中豪雨、豪雪などで大きな被害を受けた地域が国内各地に生じているにもかかわらず、34年も先まで時間をかける猶予はあるのだろうか。

それに対し、ドイツ連邦参議院の採決や、EV、PHVの市場導入に積極的に取り組むドイツ自動車メーカーの動きには、危機感がみなぎっている。2モデル先の新車はEVにするというほどの意気込みがそれだ。

アメリカのEVベンチャー企業として知られるテスラは、太陽光パネル事業を行うソーラーシティとの合併を発表し、EVで使う電力の排ガスゼロを目指している。

テスラのソーラールーフ。再生可能エネルギーで発電した電力をテスラ車の動力源として使えるシステムだ

水素利用には時間、EVへの取り組みが急務

日本は、世界に先駆けて三菱自動車と日産自動車がEVの市販に踏み切り、今年9月に日産・ルノーのアライアンスは、世界累計35万台のEVを販売した。一方で、他の国内自動車メーカーはEV導入の動きが限定的で、トヨタでもプリウスPHVの発売に遅れが出ている。

水素の利用は、まだ越えるべき課題があり前途多難だ。トヨタのMIRAIや、ホンダのクラリティフューエルセルが発売されたとはいえ、それらが実効性ある台数を普及させるまでには長い時間を要するだろう。普及の難しさは、ホンダが燃料電池車だけでなく、PHVでも同じプラットフォームを活用する戦略をとっていることでも明らかだ。すなわち、燃料電池車のみで採算が合う見通しが立たないという意味である。

BMWが、最新のリチウムイオンバッテリーを搭載し、1度の充電で400キロメートル近い走行距離を実現するEV「i3」を発売した今、日産からも航続距離の長いEVが数年のうちに登場する予定と聞く。そうしたなかで、日産が三菱と提携し、EV発売の先駆けとなったメーカーが一本化されたことは、さらなるEV普及に向けた1つの注目すべき動きといえるかもしれない。

フィリップ モリスが新型アイコス発表、連続吸い対応でライバルに攻勢

フィリップ モリスが新型アイコス発表、連続吸い対応でライバルに攻勢

2018.10.23

フィリップ モリスが加熱式たばこの新型「IQOS 3」2機種を発表

ライバルひしめく日本市場で世界初公開、ユーザーの声を活かし改良

本体を小型軽量化し充電時間も短縮、待望の連続吸いにも対応

フィリップ モリス ジャパンは、加熱式たばこ「アイコス」の新型モデルとして、「IQOS 3」と「IQOS 3 MULTI」の2機種を11月15日に発売すると発表した。従来型では1本吸う毎に充電を必要としていたが、新型では連続吸いに対応し、本体も小型軽量化した。商品力を強化した新型を、競争の激しい日本市場へ先行投入することで、シェア獲得を狙う。

新型は正統進化の「IQOS 3」と、一体型の「IQOS 3 MULTI」

新型は2機種で、現行の「IQOS 2.4 Plus」を置き換える「IQOS 3」(価格は10,980円)と、新たにオールイン型へ本体形状を変更し連続吸いに対応した「IQOS 3 MULTI」(価格は8,980円)。ともに11月15日から、全国のIQOSストアおよびIQOSオンラインストアで発売する。

「IQOS 3」は従来のIQOSを踏襲する機種で、たばこを吸うためのIQOSホルダーを、充電バッテリーのIQOSポケットチャージャーに収めて充電し、1本吸う毎に充電が必要。IQOS 2.4 Plusと比較して充電時間を40秒短縮したほか、本体を軽量化し、壊れにくいよう設計と素材も見直した。

「IQOS 3」は従来のIQOSの使い勝手を踏襲した改良版。チャージャーの蓋は横開きになった

「IQOS 3 MULTI」は、IQOSホルダーに充電バッテリーを内蔵したオールインワン型。こちらは1回の充電で加熱式たばこ10本分の連続吸いに対応する。本体はポケットに入るスリムなスティック形状で、重量も約50グラムと軽い。

「IQOS 3 MULTI」はデザイン一新のオールイン型。こちらは連続吸いもできる

シェア争いはさらに激しく、喫煙そのものへの風当たりも課題

日本の加熱たばこ市場においてフィリップモリスは、アイコスを他社に先駆けて全国販売したことで多くのユーザーを獲得していた。同社によれば日本のアイコス利用者は500万人を越えており、国内たばこ市場全体におけるシェアは2018年上半期で15.6%(出荷ベース)だったという。

日本市場では、JT(日本たばこ産業)の「プルームテック」や、ブリティッシュ・アメリカン・タバコの「グロー」など、ライバル大手も相次いで製品を投入していることから、競争が年々激しくなっている。機能面では特に、1本吸う毎に充電が必要であったアイコスに対し、後発のライバルは連続吸いに対応していたことから、ユーザーの乗り換えも発生していたとみられる。

今後は、加熱式たばこの市場は拡大傾向にあるとはいえ、現在でも紙巻たばこに残り続けるユーザーに対する効果的な訴求や、喫煙そのものへの忌避感が高まる中で、その要因となっている健康面の懸念を払しょくできるかが、各社とも課題になってくるだろう。

ポストビッグデータ時代におけるプラットフォーマーの条件

阿久津良和のITビジネス超前線 第6回

ポストビッグデータ時代におけるプラットフォーマーの条件

2018.10.23

ポストビッグデータ時代に注目したい米Teradata社

Teradataの戦略やソリューションを紹介するイベントを取材

Teradata(テラデータ)という企業をご存じだろうか。1979年に米国で創業し、現在ではクラウドベースのデータおよびアナリティクス(分析)に特化したエンタープライズ企業である。

日本法人は日本テラデータとして活躍しているが、日本マイクロソフトなどグローバルIT企業と比較すると、日本での知名度はさほど高くはない。だが、Teradataが持つ潜在能力は実に高く、ポストビッグデータの時代を迎えた現在こそ注目すべき企業の1つに数えるべきだ。

今回は、米国日時の2018年10月14~18日にラスベガスで開催された「Teradata Analytics Universe 2018」を中心に、同社の戦略やソリューションをご報告したい。

データウェアハウスからデータインテリジェンスへ

イベント初日の基調講演では、50カ国3,000人以上が集まった会場の聴講者に対して、Teradataのビジョンが語られた。現在同社は1,200万ユーザーを抱えつつ、11兆のクエリを通じて840EB(エクサバイト)のデータが使われる状況下にある。そのようななか、講演ではTeradata COO, Oliver Ratzesberger氏が「パーベイシブデータインテリジェンスの新時代を切り開いていく」と述べた。

Teradata COO, Oliver Ratzesberger氏

抄訳すれば『意思決定者のために加工・分析したデータの普及』。これが新たなTeradataを象徴するキーワードだ。同社は従来のDWH(データウェアハウス)企業から、ユビキタスなデータインテリジェンスを届ける企業に生まれ変わるという。イベント開催直前に発表した新たなコーポレートロゴにも同様のメッセージが込められており、その意思は登壇時の発言「アナリティクスを買うのはやめよう」(Ratzesberger氏)にも通じる。

新たなTeradataロゴ

Ratzesberger氏の発言は過去の自社を含めた旧態依然としたアナリティクスツールを否定するものだった。その理由は、パーベイシブデータインテリジェンスを実現するソリューション「Teradata Vantage(以下、Vantage)」の存在が核にあるからだ。Vantageの導入事例として、オーストラリアのQantas Airways Limited(カンタス航空)が成し得た燃料消費率1.5%の改善や、米通信キャリアのVerizon Communications(ベライゾンコミュニケーションズ)の月間解約率を1.2%で抑制したことを紹介。また、米国の非営利民間医療保険の最大手であるKaiser Permanente(カイザーパーマネンテ)は、Vantageを活用することで、年間に亡くなる12万5,000人の10%を救い、3,000億ドルの経費削減に成功したという。

Teradata President and CEO, Victor Lund氏は「現在のビジネスで求められるのは、保有するデータを容易に取り出して活用できる仕組み」だと述べる。多くの企業は蓄積したデータを古いシステムで管理し、データアナリストはデータコネクターを通じて分析前の処理を行うだろう。TeradataはVantageについて、「常にすべてのデータを管理するため、分析プロセスや展開先、分析による洞察を容易に得られる」と説明する。

Teradata President and CEO, Victor Lund氏

Teradata Vantageで何ができるのか

TeradataはVantageのメリットとして「好みの言語やツールが使用できる」「分析関数とエンジンを単一化」「複数のデータセットをサポート」の3要素を得られると語る。「皆さんに適切なツールを使って頂きたい。Vantageは『適切なツールを適切な仕事に使う』という概念が背景にあり、データの形状や分析内容に応じて言語やエンジン、4D Analyticsなどを用いて、広範なビジネス課題を解決できる」(Teradata SVP of Marketing, Chris Twogood氏)という。具体的なSQLやPython、Rなどの開発言語、各種BIツールに加えて、SASやJupyter、RStudioといったプラットフォームで、JSONやBSON、AVRO、CSV、XMLといったデータを扱える。

Teradata SVP of Marketing, Chris Twogood氏

また、すべてのデータをいつでも活用できるのがVantageが備える特徴の1つ。データをスピンアップし、必要な場面でダイナミックに分析できる場面が増えているが、従来のデータを読み込んで変換する過程はトラブルを引き起こす要因に数えられる。この課題に対してVantageはデータを1つのクエリで取得し、そのまま分析を実行するNative Object Storeの実現を2019年リリース予定の次期Vantageで容易にするという。データサイエンティストやビジネスアナリストはAmazon S3やAzure Blob上のデータをシームレスに処理できる。

Native Object Storeのイメージ図
Teradata President of Teradata Labs, Oliver Ratzesberger氏(左)とMicrosoft General Manager of Azure Media and Entertainment, Azure Storage and Azure Stack, Tad Brockway氏(右)による対談も行い、良好な関係性をアピールした

データ分析の前のデータ準備に課題、全自動化で解決へ

イベントではほかにも著名な登壇者により、企業のデジタル化に向けた施策など多くの話題が語られたが、最後はTeradata VP of Technology and Innovation, Jacek Becla氏の発言に注目したい。同士は長年スタンフォード大学に在籍していたが、Teradataに席を移した理由の1つとして、「顧客視点でエンタープライズの仕事に携わっている。技術や分析エンジンに取り組み、具体的なソリューションを実現できる」と述べた。

Teradata VP of Technology and Innovation, Jacek Becla氏

Becla氏は主に研究的視点から技術に携わっているが、「データラングリング(飼育)とスキーマ設計に7割の時間が費やされる」と、分析に至るまでのデータ準備に多様な課題があると指摘した。その上で「速さや最適性といった議論ではなく、すべてを自動化する」(Becla氏)のがVantageの意義であると語る。前述したTwogood氏が述べたようにNative Object Storeの実装は来年以降だが、「単なるビジョンではなく、研究所には試作機もある。1つのクエリにデータを割り当て、PB(ペタバイト)級のクエリを実行できる」(Becla氏)と多様な分析に集中できることを強調した。合わせて機械学習に用いるGPUのマルチスケジューリングについて、解決策を検討しているとして、現在取り組んでいる研究成果もいくつか披露した。

今後の機能については実装後に機会があれば紹介したいが、強いて昨今のバズワードを用いれば、現在は「ポストビッグデータ時代」に突入している。大量のデータを処理するビッグデータプラットフォームは普遍化し、利用する企業側はもちろん分析ソリューションの提供側でも、データの集積方法や更新の容易性、アクセスの最適化が課題として挙げられてきた。これらの諸条件を解決するには我々の意識変革も伴うが、基盤となるデータ・分析プラットフォームの躍進は、課題解決の大きな近道となり得るだろう。

阿久津良和(Cactus)