フェイスブックの急成長がいったん止まるのはなぜか

フェイスブックの急成長がいったん止まるのはなぜか

2016.11.14

米フェイスブックは2016年第2四半期決算を発表したが、驚かされるのはその収益額だ。直近で発表された四半期決算では、70億1000万ドルもの収益を計上した。ちょうど5年前にあたる2011年の1年間の売上高が37億1100万ドルであったことを考えると、驚異的な成長を遂げていることが分かる。フェイスブックは、いかにして高い成長を維持しているのか、そして今後もこの成長ペースが続いていくのだろうか。

好調な領域とは?

フェイスブックの2016年第3四半期決算について、もう少し詳しく見ていこう。企業サイトには、決算報告が掲載されている

前述の通り、売上高は70億1000万ドルで、前年同期比で56%増加した。これは主に、広告から得られる収益の成長によるもので、広告の収益は前年同期比59%増を記録している。

フェイスブックの売上は前年同期比で順調に推移(フェイスブック公開資料より)

ユーザー動向で注目すべきはモバイルユーザーだ。今期初めて、モバイル月間ユーザーが16億6000万人と、20%増加した。全体の月間ユーザー数は17億9000万人で、こちらも前年同期比で16%成長している。これにより、モバイルユーザーから得られる広告収益は全体の84%を占めるようになった。

売上増を支えるモバイルユーザー数も順調に増加(フェイスブック公開資料より)

こうしたことから、フェイスブックは、ユーザーのモバイル化と、モバイル広告の売上の好調さから、非常に高い収益性を確保するに至ったことが分かる。

この成長を自ら止めると宣言するフェイスブック

非常にめざましい結果を見せたフェイスブックの決算だが、カンファレンスコールでは、将来的な収益の見通しに対して、ネガティブな見方を崩していない。これは毎度のことだが、売上成長率の鈍化についての指摘がなされている。

現在の広告から得られる収益の成長を、自ら止める、という趣旨の発言をしているのだ。もう少し正確に言えば、「アド・ロード(Ad Load)」を減少させると宣言している。

ここで登場するアド・ロードとは、フェイスブックのタイムラインに広告が出現する頻度のことを指す。単純な話だが、広告出現の頻度が下がり、人々がフェイスブックのタイムラインに滞在しているときに広告が出にくくなれば、当然のことながら広告から得られる収益は減少することになる。つまり、人々が目にする可能性がある広告を減らすから、集積は今後いままでのようには成長しない、という意味なのだ。

ユーザー体験と信頼性のバランス

フェイスブックがなぜ、収益性に直結するアド・ロードを減らすと言っているのか。もしみなさんがフェイスブックのウェブやアプリに日常的にアクセスしていれば、さほど難しい推測ではないだろう。つまり、タイムラインが広告であふれて、そもそもの滞在時間を減らさないようにバランスを取ろうとしているのだ。

例えばテレビを見ていてCMばかりだと、飽き飽きとしてしまい、チャンネルを変えるきっかけを与えてしまう。フェイスブックでも同じで、友達の動向を見たいのに、広告ばかりが流れてくると、フェイスブックにアクセスする目的が何だか分からなくなってしまう。 そのためフェイスブックは、より広告出現頻度を減らす代わりに、より人々の注目を集めやすいコンテンツ、すなわち動画を主体とした広告ビジネスへの移行を進めていくことを考えている。

2016年4月に行われた開発者会議F8では、ライブ動画に関する取り組みを強化する発表を行っており、また機械学習によってニュースフィードに流れてくるコンテンツの理解を行いながら、より適切なコンテンツと広告のブレンドを目指していくことになる。

マーク・ザッカーバーグCEOはライブ動画を強化すると開発者会議F8でアナウンス

より文化的な側面を追求してみてはどうか?

フェイスブックの今後の成長余地は「動画広告である」という未来を予測している。

企業から広告としてアップロードされる広告や、企業や個人が配信するライブ動画をニュースフィード内でよりアピールすることも考えられる。動画と広告にまつわる取り組みにはまだまだ様々な可能性があることは、筆者も認めている。

ただ、例えば広告ビジネスを追求するのであれば、もう少し違った考え方をしても良いのではないか、という印象も持っている。

例えば、インスタグラムを考えてみてほしい。

インスタグラムにも、写真やビデオの広告が流れてくる。しかしフェイスブックに流れてくるそれとは違い、つい見入ってしまう美しい写真やビデオが多く、確かに自分のタイムラインに紛れてくる要素ではあるが、さほど嫌な感じはしない。

雑誌に入ってくる写真が美しい広告を楽しんでみている感覚に近いかもしれない。これは、今後フェイスブックが目指していくべき広告の姿を示唆していると考えている。生活を豊かにするような広告を作り出せれば、再びフェイスブック広告の収益を成長させるペースに持ち込めるだろう。

インフラとしてのフェイスブック

フェイスブックを取材すると、マーク・ザッカーバーグ氏に共感する従業員の多さに感心することが多い。そこでよく聞かれる言葉は「我々は儲からない面白いことをするために、儲けているのだ」という事だ。

公開企業としてこれを声高に言い放つのは問題があるかもしれないが、若いインターネット企業にして、非常にベイエリア(サンフランシスコ、シリコンバレーを包むサンフランシスコ湾一円の地域)らしいマインドを感じることができる。その地域に住む一員である筆者としても、とても気持ちの良い企業なのだ。

「儲かること」は、ここまで説明してきたインターネットのインフラで展開する広告ビジネスを指す。そして「面白い儲からないこと」には、例えば地域のアーティストの発掘や、インターネットが繋がらない地域に対して、接続する手段を提供する「Internet.org」の活動、マイノリティや多様性に配慮する社会づくりの活動などが含まれる。

そうしたマインドには共感できるし、応援したくなる気持ちも大きい。しかし、インフラとしてのフェイスブックの充実は、だんだん、我々の生活を左右する欠かせない要素を改めて認識すべきだろう。

例えばフェイスブックのニュースフィードやメッセンジャーは、友人との日々のコミュニケーションの「場」であると同時に、ニュースを得る場でもある。米国では、総人口の6割がSNSからニュースを得ており、フェイスブックユーザーの66%が、ニュースを得る手段として活用している

その一方で、デマや政治的に偏ったニュースを排除しきれていない現状がある以上、インフラとしての責任を技術的に全うしていく必要がある。「メディアではない」とフェイスブックは語ることが多いが、メディア以上にインフラの重要性は大きい。

インフラとしての充実と信頼を、いかにフェイスブックの収益性につないでいくか。壮大な世界的チャレンジに期待したい。

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。