東芝は本当に復活したのか? 度重なる業績予想の上方修正のわけ

東芝は本当に復活したのか? 度重なる業績予想の上方修正のわけ

2016.11.15

東芝は、2016年度の業績見通しを発表した5月から上期の上方修正で3回、通期の上方修正も1回発表している。不正経理の発覚から落ちた東芝が、急回復したのだろうか。今回の上期業績発表から理由が明らかになった。

業績の説明をする東芝代表執行役専務の平田政善氏

上期業績予想、3度上方修正の結果は……

東芝の2016年度上期(2016年4月~9月)の連結業績は、売上高が前年同期比4.3%減の2兆5789億円となったものの、営業利益は前年同期の891億円の赤字から967億円の黒字に転換し、税引前利益は60.1%増の675億円、当期純利益は209.2%増の1153億円となった。

期初となる5月12日に発表した2016年度の通期業績見通しは、11月8日に上方修正を発表。その間、同社は、8月12日、9月28日、10月31日と3回に渡って、上期業績見通しを上方修正してきた。

業績予想は上期3回、通期1回の上方修正

通期見通しは、期初計画に比べて、売上高で3000億円増の5兆4000億円、営業利益は600億円増の1800億円、税引前利益は450億円増の1300億円、当期純利益は450億円増の1450億円を目指す。

今回発表した好調な上期連結業績は、3度にわたる上方修正を裏付けるものになったといっていい。

大幅な構造改革でPC事業の自力再生

東芝の業績が回復している背景には、いくつかの理由がある。

原子力発電所建設子会社の新規連結化や、HDDの販売台数の増加、PC事業をはじめとする構造改革の成果などのほか、第1四半期に計上した家庭電器事業の売却益など非継続事業の利益も、最終黒字の大幅な増加に貢献している。

とくにPC事業の場合、東芝の不適切な会計処理の舞台となったこと、赤字体質からの脱却が進まないなどの理由もあり、一時は富士通のPC事業およびVAIOとの統合が検討されていた。

しかし、結果として、この統合話がまとまらず、東芝は、自力でのPC事業の再生に取り組み、大規模な構造改革を実行に移してきた。

東芝情報機器への事業移管や、海外のBtoC事業からの撤退、出荷台数の大幅な削減などがそれだ。

その結果、PC事業の売上高は、2016年度上期実績で、前年同期比59%減の996億円と半分以下にまで一気に縮小。営業利益は7億円の赤字となったものの、141億円もの改善を果たした。第1四半期だけをみれば、営業利益は2億円の黒字を達成している。

赤字となった上期実績についても、「前年度の構造改革費用として、37億円を遅れて計上していることを考えると、上期は実質的には黒字だと判断している」(東芝 代表執行役専務の平田政善氏)とし、PC事業の回復ぶりを強調する。

救いになったのはメモリ・HDDの需給環境

だが、上期の好業績の最大の理由は、メモリやHDDで構成されるストレージ&デバイスソリューションの好調ぶりだ。

ストレージ&デバイスソリューションの好調が業績上振れのけん引役に

同セグメントの売上高は1%減の7997億円と減益になったものの、営業利益は417億円増の783億円と大幅な増益となった。

HDDは、PCおよびゲーム向け需要が引き続き堅調なほか、構造改革効果によって、売上高は14%増の2217億円、営業利益は208億円改善して、138億円の黒字に転換した。デバイス他の領域においても、売上高は6%減の1735億円と事業撤退の影響があったものの、システムLSIの事業構造改革の効果により、489億円改善し、144億円の黒字を計上した。

さらに、メモリは、円高の影響もあり、売上高は前年同期比5%減の4045億円、営業利益は280億円減の501億円の減収減益となったが、旺盛な中国スマホメーカーへのメモリ供給の増加や、SSDの需要増により、売価は想定よりも高く推移。売上高、営業利益ともに、当初計画よりも上振れたという。

「メモリは、当初想定では、数%程度の営業利益率を想定していたが、旺盛な需要に支えられ、想定を上回る12%の営業利益率を達成。通期でも同様の利益率が見込まれる」とする。

このようにストレージ&デバイスソリューションには明るい材料が揃いはじめており、これが東芝の好業績を牽引している。

足をひっぱるのはテレビなどの映像事業

一方で、依然として厳しい状況にあるのが、テレビをはじめとする映像事業である。

映像事業の2016年度上期売上高は、前年同期比42%減の279億円、営業利益は110億円改善したものの105億円の赤字となった。

海外向けの事業を、ブランドライセンス化したことで、売上高が縮小。また、過去に発売した製品における品質対応引当や、ライセンス費支払いに関わる係争案件で、合計84億円の費用を計上。これらがマイナス影響となり、大幅な赤字の原因となった。

さらに、2016年度下期には、海外拠点整理関連費用として100億円超を見込んでおり、通期での赤字は避けられない。

東芝の平田代表執行役専務は、「映像事業においては、さらなる構造改革を実施する必要がある。いまは決定したものはないが、あらゆることを検討したい」と語る。

映像事業は、最大の商戦期となる年末商戦を迎えていることから、「まずは、年末商戦にしっかりと注力し、その結果、どこまで行けるかを見てから考えたい」と発言。年明けにも映像事業の構造改革が発表されることになりそうだ。

構造改革費用を新たに600億円

東芝は、今回の上期決算の席上で、新たに600億円の構造改革費用を計上することを発表しており、ここからも大規模な構造改革になることが想定される。

完全復活とは言えない……予断を許さない状況は続いている

東芝の構造改革は道半ばである。

株主資本比率は、円高により外貨換算調整額がマイナス948億円と悪化したため、2016年3月末に比べて、1.4ポイントの改善の7.5%に留まり、財務体質の改善も課題のままとして残っている。

「財務体質は依然として厳しい状況にある。引き続き重要課題に位置づけている」と、東芝の平田代表執行役専務は語る。

また、子会社である東芝EIコントロールシステムにおいて、約5億2000万円の売上過大計上があったことを発表。「統制機能が生かされた結果」と自己評価してみせるが、今後も、こうした「膿」が出てこないとも限らない。

回復基調に転じているのは確かだが、先行きの不透明感は拭い切れていないのが実態だろう。

「グローバルスタンダードといえる収益性を実現するには、下期にもう一段の改善策が必要。残っている不採算事業を中心にさらなる構造改革を進め、最後の仕上げにつなげたい」と東芝の平田代表執行役専務。

手綱を緩めずに、この勢いを維持した形で改革を遂行できるかが鍵になる。

「選択と集中」が進みすぎた、日本の科学技術への投資

藤田朋宏の必殺仕分け人 第1回

「選択と集中」が進みすぎた、日本の科学技術への投資

2018.11.15

ちとせグループCEOの藤田朋宏氏による新連載

巷を賑わす”ヘンな出来事”の問題点を、独自の解釈で洗い出す!

第1回は、「日本の科学技術投資」について

バイオベンチャー企業群「ちとせグループ」のCEOを務める藤田朋宏氏による新連載。“手段と目的の違い”によって生じた「ヘンな出来事」の問題点を、独自の視点で語ります。第1回は、「日本の科学技術投資」について。日本の科学技術への投資の問題点とはいったい何なのでしょう?

才能と“伸びしろ”に投資する、日本サッカー協会

先日、クアラルンプールに出張したときのこと。宿泊先のホテルが偶然にもサッカーの日本代表と同じだった。「日本代表」と言っても、同じホテルに泊まっていたのは本田や長友ではなく、U-16アジア選手権に参加している若い選手たち。

そこで彼らを見ていて、ふと考えた。日本サッカー協会の「選手への投資」は、実は凄く効率がいいのではないか。どうしてそう思ったのか、順を追って説明したい。

ホテルに置いてあったU-16アジア選手権のバナー

チェックインを済ませ、「部屋の準備があるから、ちょっとだけそこで待っていて」と指示するホテルマンに従い、ひとりロビーに放置されている間、何となしに選手の情報を調べてみた。それから一時間半。23名の選手一人ひとりの顔だけでなく、利き足まで覚えるくらいの時間が経っても、僕はまだロビーで放っておかれたままだった。まぁ、東南アジアではよくあることなので、腹は立たなかった。

ところで、「過去のU-16日本代表がその後、何度も日本代表に選ばれる割合はどれほどだろうか」と疑問に感じ、調べてみたところ、各年20数名の代表選手のうち、現役で活躍している選手は約1人であることが分かった。確かに16歳の段階では身体の発達に差があるし、試合で活躍できるかは運の要素も絡む。コーチとの相性やケガの問題もあるだろう。

そうは言っても、16歳の時点で日本代表に選ばれるだけのポテンシャルを持つ選手のうち、その数%しか将来も活躍できる選手がいない、という事実には驚いた。実際、長谷部、本田、岡崎、長友……など、この10年で活躍している選手たちの多くは、16歳時点ではそこまで期待されていなかった選手ばかりだ。

ではなぜ、そういった選手が後に日の目を浴びられたかというと、それは彼らにも「チャンス」を与えられていたからだろう。日本サッカー協会は、16歳時点で選抜したトップ選手だけに集中投資するだけではなく、同年代の他の有望選手にもしっかりとチャンスを与え続けられるような仕組みをつくれたのだと思う。

際立って目立つ選手だけではなく、将来の伸びしろがありえる選手にも、最低限のチャンスは回ってくることで、未来のトップ選手の育成が図れる。そうやって日本サッカー協会はこれまで、世界に通用するような選手を輩出してきた。

「科学技術に投資せよ」ではなく、予算配分の再考を

前置きが長くなってしまったが、ここから本題に入りたい。

先日、京都大学特別教授の本庶佑先生がノーベル賞を受賞したというニュースが流れた。「自分がバイオテクノロジー業界で働く人間だから」というのは関係なく、本庶先生と周りのチームの方々の長年にわたる科学に対する貢献が認められたこと、その事実に接した関係者の気持ちを想像すると、とても嬉しい気持ちになった。

ノーベル賞メダル(レプリカ)

 

近年、日本人のノーベル賞受賞が続いている。彼らのような日本の科学業界の仕組みをよくわかった方々は、これまで数多くのご苦労をされてきたことだろう。しかし、1つ残念なこともある。能力はもちろん、人格的にも優れたそういった先生方が、ノーベル賞受賞のタイミングでマスコミに発表する一世一代のコメントが「日本国の科学技術投資、科学技術教育のあり方についての憂い」であることだ。

僭越ながら、先生たちのコメントを解釈すると、よくニュースで取り上げられるような「科学技術にもっとお金を使え」ということではなく、その先にある「国家予算の配分」についての指摘をしていると認識している。

誰がなんと言おうと、日本の科学技術投資の選択と集中は年々進んでしまっているのが現状だ。しかし、先生方のいうような「選択と集中が進みすぎている」という指摘に対して、「日本にはもうお金がないのだから科学技術にばかり投資できない」と答えがずれてしまっている。

これこそが、日本の科学技術投資における問題ではないだろうか。

日本にはびこる「選択と集中こそが正解だよ病」

随分前からずっと不思議なのだが、そもそも「選択と集中こそが正解である」なんて、誰がいい出したのだろう。「選択と集中」の戦略で物事をうまく切り抜けられるようなことは、本当に生きるか死ぬか、背水の陣を敷いている時くらいだと思うのだ。

今の日本の「選択と集中こそが正解だよ病」はなかなか根深く、そもそもの目的を実現することよりも「選択と集中」を行うことそのものが目的になっているんじゃないかと感じることが多い。

今の日本で行われている多くの意思決定の場面で、サッカーの例で例えると、U-16日本代表を選んだ人のメンツを潰さないということが、強い日本代表をつくることよりも優先されてしまっているように思う。

そのため、16歳の時点で選んだ選手だけに集中投資し、16歳の段階で選ばれなかった他の選手のポテンシャルに賭けることもしないというような「選択と集中が正解である」という間違えた進め方で意思決定が行われているようなことが多いように感じる。

サッカー選手の育成でも、科学技術の投資でも初期の段階で選抜してそこだけに集中投資するという戦略を繰り返せば繰り返すほど、全体としての力は落ちる一方になるのではないか。歴代のノーベル賞受賞者の先生方も、そういうことを言いたかったのではないかと思う。

手段であるはずの「選択と集中」が、目的となっている?

私は、「16歳の段階で、将来素晴らしいサッカー選手になる人物を見分けられる」なんて言葉は、伸びしろのある選手に対しておこがましいと感じる。これは科学技術の研究にも同じことが言える。「その研究が将来素晴らしい成果を残すかどうか見分けられる」なんて言葉は、科学者に対しておこがましい。

もっと言ってしまえば、どの研究が将来化けるかの判断は、16歳のサッカー選手の成長を言い当てることより遥かに難しいだろう。なぜならば、サッカーという競技のルール自体は変わらないが、科学と言う競技はルール自体を決めているので、科学研究の将来性をあらかじめ予測するのは16歳のサッカー選手の将来性を予測するより難しいためだ。

そんな中、日本サッカー協会が幅広い底上げに力を入れ、紆余曲折も有りながらも右肩上がりの成長を維持できているにも関わらず、日本の科学技術投資は過剰な「選択と集中」を強めるが故に、科学技術力の相対的な低下を招いているように感じる。

その差はいったい何か? これは1つの仮説でしかないが、日本サッカー協会の強さの秘訣は、会長の独断で物事を決められる側面が強い組織であるために「目的」がハッキリしている点にあるのではないだろうか。

その一方で、日本の科学技術投資のような“数多くの人の善意の組み合わせの上になり立っている意思決定機構”では「選択と集中を進めることが正解である」という、本来手段の一つである価値観が「目的」となってしまっているように感じる。

本来考えるべきは、「日本の科学技術をどうするべきか」ということであるにも関わらず、その手段と目的が逆転しまっているのではないだろうか、と思うのだ。

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

2018.11.14

音楽に特化した「YouTube Music」が日本でスタート

有料会員になれば、広告なし再生やオフライン再生が可能

YouTube Premiumでは、オリジナルコンテンツの配信も開始

仕事や作業をする際、周りのノイズをカットして集中するために、音楽を聴くという人は多いだろう。わかる。よくわかる。フロアが騒がしいと作業に全く集中できない。周りで仕事している人がいるということがわからないのだろうか、と疑問に思うが、まぁそれは置いておいて、パソコンで作業する場合、手軽に好きな音楽を聴けることから、YouTubeで音楽を聴くという人も多いのではないだろうか。

そんなYouTubeユーザーに朗報である。11月14日、Googleは音楽に特化したストリーミング再生サービス「YouTube Music」を日本でローンチすると発表したのだ。

好みやシーンに応じて楽曲をレコメンド

YouTube Musicは、音楽再生に特化したアプリ。YouTubeにある公式の曲やプレイリスト、歌ってみた、弾いてみたなど、さまざまな音楽動画を視聴することができる。

また、機械学習が活用されているのも特徴の1つだ。視聴履歴などからユーザーの好みを把握するだけでなく、「いつどこで何をしているのか」を類推して、シーンに合わせた楽曲をレコメンド。家でリラックスしているときにお勧めの曲や、仕事中にお勧めの曲などを、自動でピックアップしてくれるという。

さらに、あいまいなカタカナ発音で洋楽を検索したり、CMタイアップ曲などから検索したりすることも可能で、聴きたい曲をスムーズに探すことができそうだ。

サービスの発表会において、YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏は「オーディエンスに着目した結果、今出ているアプリでは満足できていない層があることがわかり、そのユーザーに音楽サービスを届けようとこのサービスをスタートしました。YouTube Musicは、ユーザーの利用シーンや好みに合わせた曲を、YouTubeにある膨大なミュージックカタログからレコメンドするユニークさを持っています」と、サービスの魅力を強調した。

YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏

無料でも利用できるが、有料のYouTube Music Premiumに登録すると、「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」などが可能になる。料金はWeb/Androidが月額980円で、iOSが月額1280円(ともに税込み)だ。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏は「日本ユーザーの方は通勤通学などで音楽を聴くことが多いと思います。オフライン再生機能では、前日の夜に自宅のWi-Fiで翌日聴くべき曲を自動で更新し、通信なしで聴けるようになります。データの通信量などを気にする必要もないので、非常に便利な機能だと思います」と、オフライン再生のメリットを訴求した。

なお、同サービスには著作権管理システムが働いており、YouTubeと同様に適切な権利コントロールが可能だという。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏

「YouTube Originals」が日本でも始動

また今回、「YouTube Premium」という新しい有料プランもスタートする。料金はWeb/Androidだと月額1180円で、iOSだと月額1550円(ともに税込み)だ。YouTube Music Premiumの機能に加えて、YouTubeでも「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」機能が使えるようになる。

さらに、YouTube Premiumの会員は、12月から日本でも配信される予定のYouTubeオリジナルコンテンツ「YouTube Originals」を視聴することも可能だ。すでに世界30カ国でコンテンツを展開しているが、このたび、日本でも制作がスタート。SEKAI NO OWARIとMARVLEがコラボしたミュージックビデオ制作の裏側に迫るドキュメンタリー「Re:IMAGINE」、YouTuberのはじめしゃちょーが主演する連続ドラマ「The Fake Show」、YouTubeで人気のクリエイターが手がけた「隙間男:Stalking Vampire」の3つだ。

「YouTube Music Premium」と「YouTube Premium」で利用可能な機能
日本で制作される「YouTube Originals」のコンテンツ

発表会には「The Fake Show」に主演する、YouTuberのはじめしゃちょーが駆けつけた。

はじめしゃちょー

「今回僕が出演するのは、今までなかったYouTuberをテーマにしたドラマ。アカウント乗っ取りや炎上など、問題に直面しながらも夢に向かって進んでいく姿が描かれているので、僕の動画を見たことない人にも見てほしいですね」と動画の紹介をするとともに、YouTube Musicについて「普段、広く浅く、さまざまな音楽を聴くので、非常に楽しみなサービスです。ぜひ使ってみたいと思います」と期待を述べた。

なお、YouTube Musicは「Google Home」「Google Home Mini」にも対応予定。そのほか、現在「Google Play Music」を利用しているユーザーは、追加料金なしで移行することができるという。