世界覇権に再挑戦? 三菱自を手にした日産ゴーン社長の野望

世界覇権に再挑戦? 三菱自を手にした日産ゴーン社長の野望

2016.11.17

日産自動車に乗り込み、2兆円を超える有利子負債を抱えた同社の復活を成し遂げたカルロス・ゴーン氏。聖域なきリストラなど、ゴーン氏が遂行した「日産リバイバルプラン」は日産のV字回復として結実した。次に取り掛かるのは三菱自動車工業だが、そもそもゴーン氏はなぜ、同社の再建という難題にチャレンジするのだろうか。同氏を突き動かす“野望”とは。

世界覇権への野望、再び

燃費不正問題で三菱自の経営が2000年代前半に次いで再び揺らぎ、その救済を電光石火で決めたのが日産のゴーン社長だった。今年の5月12日に日産による三菱自への資本参加(34%出資)を発表した。

日産による三菱自への出資(三菱自株の急落底値時の2,340億円)は10月20日に完了。それとともに、ゴーン社長自ら三菱自会長として乗り込むことになった。12月14日の三菱自臨時株主総会で決定する。これで名実ともに日産が三菱自を傘下に置き、三菱商事など三菱グループとも連携するルノー・日産グループが始動するわけである。

なぜ日産は、「リコール隠し」に続く「燃費不正」で信用が失墜した三菱自の救済に動いたのか。一言で言えば、「ゴーン、世界覇権への野望再び」ということだろう。

ゴーン氏は世界覇権へ向け再び動き出した

ゴーン氏は1999年、日産の事実上のトップとして仏ルノーから乗り込み、17年にわたり君臨し続けている。この間に日産をV字回復させた一方、親会社ルノーのトップも兼ねている同氏だが、いささか「ゴーン流経営」に停滞感が出ていたことも、同氏を三菱自の救済に突き動かした動機になっているかもしれない。

日産コミットメント経営に陰り?

日産はこの2016年度を最終年度とする中期経営計画「パワー88」を進めている。それは、グローバル販売での市場シェア8%と、売上高営業利益率8%の達成を目標とするものだ。

だが、中間決算(2016年4~9月)発表でもグローバル販売シェアは5.8%(前年同期6.1%)、営業利益率は6.4%(同6.7%)とポイントダウンしている。営業利益率については急激な円高での為替差損が大きく、「円高なかりせば」との見方もあるが、それにしてもゴーン流のコミットメント(目標必達)経営に陰りが出ていることは否めない。

電気自動車(EV)の盟主を目指し、日産はパワー88期間中にルノーとの合計で150万台の販売目標を打ち出していたが、主力のリーフは20万台強にとどまる。最近ではEVの主役の座をベンチャーの米テスラモーターズに奪われた感がある。

その意味では、ルノー・日産連合には停滞感があり、「現状に満足していない」(ゴーン社長)状況にある。だからこそ、三菱自を傘下に収めることは、グループとしてのグローバル販売の1,000万台規模入り、三菱自が強いアセアンなど新興国の強化、プラグインハイブリッド車(PHEV)で先行する三菱自の活用など、次の飛躍の足がかりになると判断したわけである。

しがらみ無視のリバイバルプラン

日産は1990年代後半に業績が悪化し、2兆円に上る借金(有利子負債)を抱えて海外提携を模索し始めた。最終的にはルノーとの資本提携を決め、1999年3月に提携調印を発表した。筆者はこの経過を著書「トヨタの野望、日産の決断」(ダイヤモンド社)に著している。ルノーから日産の救世主として送り込まれてきたのがカルロス・ゴーン社長である。

「日産リバイバルプラン(NRP)」。ゴーン流経営による日産復活を目指した中期経営計画の第一歩は、旧来の日産のしがらみを断ち切った聖域なきリストラとコミットメント経営だった。社内はクロスファンクショナルチーム(CFT、部門間の壁をなくす全社横断チーム)、V-upプログラム(部門横断的なラインマネジメントの問題解決)を推進し、外国人、女性社員の登用で日産の企業文化を大きく変貌させた。

ゴーン社長が日産で最初に手掛けた中計NRPは、当期利益の黒字化、営業利益率4.5%以上の達成、有利子負債7,000億円以下の3つのコミットメントだった。2000年4月~2002年3月の3カ年NRPを1年前倒しで達成した同氏の手腕は、ゴーン流V字回復として脚光を浴びた。続く「日産180(2002年4月~2005年3月)」では、さらに営業利益率8%、有利子負債ゼロ、グローバル販売100万台増加の3つのコミットメントを掲げた。

日産とルノーのトップに君臨して10年余のゴーン社長

当時、筆者はゴーン社長にインタビューしたが、社内改革とルノーとのシナジー(車台、エンジン、部品の共通化、購買調達の共同化など)効果を出せば、日産は復活できるとの明快な答えが返ってきたのを思い出す。ゴーン社長は、この日産V字回復という経営成果により、2005年5月からルノーの会長兼CEO(最高経営責任者)に就いてルノー・日産連合のトップに君臨し、現在に至っている。

ルノー・日産アライアンスのトップに君臨するゴーン氏

ゴーン社長がルノーから日産のトップに送り込まれて17年、ルノーのトップも兼任するようになってからは10年余が経過する。オーナーならいざしらず、いわゆる雇われ社長としては異例の長期政権だ。

ゴーン社長の代名詞ともなったコミットメント経営だが、ここへきてほころびも見えてきている。具体的には、今期を最終年度とする「パワー88」の目標が、急激な円高環境下とはいえ「必達」が難しくなってきていること、得意のEVが思うように市場に浸透しないこと、新興国向け戦略ブランド「ダットサン」を立ち上げたものの、成果が遅れていること、母国市場の日本での販売が低迷しており、シェアが1桁に落ちていることなどが不安材料だ。

一方でルノーは、43.4%出資の日産を持ち分子会社としており、その連結決算では、日産からの上納で何とか黒字を確保している現状にある。ルノーの株主である仏政府には、ルノーを通じて日産への経営関与を強めようとするなど微妙な動きもある。ゴーン社長の高額報酬は日本でも話題になるが、ルノーの株主総会では高額反対となり、報酬減額に追い込まれる状況さえでてきた。

つまり、ゴーン社長にとって停滞感というか閉塞感も漂う中で、三菱自動車の実質的買収は、その打開へ向けた乾坤一擲の決断だったのではないだろうか。

一方の三菱自。今期中間決算発表は、まず燃費不正問題のお詫びから入った。2000年代初頭の「リコール隠し」から立ち直った矢先の今回の問題。同社は信用失墜という「信用負債」を抱えて再生へと歩き出すことになるが、復活への道筋が全く見えないわけでもない。

中間決算で損失を一括計上、復活の準備に入る三菱自

三菱自の中間決算は、営業利益316億円の赤字。当期純利益では燃費試験関連損失1,662億円の特別損失を計上し、2,196億円の大幅赤字となった。今期の通期業績見通しでは、営業利益276億円の赤字、当期純利益2,396億円の赤字となる予想だ。

中間決算説明会に登壇した三菱自副社長執行役員の池谷光司氏は、「日産が2000年頃からやってきた改革の手法は(三菱自でも)全社的に活用できる」と話していた

つまり、三菱自は日産の出資完了を前に、将来発生しそうな損失を中間決算で一括計上し、業績の大幅下方修正に踏み切ったのだ。奇しくも三菱自の当期利益赤字幅は、日産の出資額2,370億円とほぼ同額である。

益子体制では一定の成果

三菱自動車といえば、1970年に米クライスラーとの合弁提携とともに、三菱重工業の自動車事業部門が独立した会社だ。当時は軽自動車から大型トラックまでを取り扱う、世界でも類を見ない総合自動車メーカーだった。1990年代半ば頃までは、トヨタ、日産に次ぐ日本車メーカー第三勢力の旗頭の位置づけを強めていた。一時はメインバンクが同じ三菱銀行であることから、「三菱自、ホンダを買収か」と言われたり、あるいは「日産の背中が見えた」と三菱自トップの発言で話題になったこともある。

だが、1996年に米国工場でのセクハラ問題、翌年に総会屋への利益供与事件、2000年にはリコール隠しと不祥事が続出する。2000年にはダイムラークライスラー(当時)の出資を受けてダイムラー傘下となったものの、2004年にリコール隠しが再燃したことで、ダイムラーは「三菱ふそう」のトラック部門を子会社化し、三菱自からは手を引くことになる。その後は三菱グループの主力企業である三菱重工、三菱商事、三菱銀行が再建支援に入り、2005年には三菱商事の自動車事業本部長だった益子修氏が三菱自社長に就任したという経緯がある。

益子体制となった三菱自は、タイを中心とするアジア戦略を強化するとともに、車種を軽自動車とSUV(スポーツ・ユーティリティ・ヴィークル)に絞り、合理化経営を徹底した。その結果、2014年3月期には三菱主力3社の優先株を解消するとともに、復配にこぎつけた。益子体制9年間の再建策は終わり、昨年には三菱自プロパーの相川哲郎氏が社長に就任。益子会長・相川社長体制に切り替わった矢先に「軽自動車燃費不正問題」が露呈したのだ。

ゴーン流改革の遂行に向けた人材配置

三菱自の燃費不正は軽自動車にとどまらず、ほぼ全車種に及んでいたことからブランドは地に墜ちた。さすがの三菱グループ支援もこの期に及んではままならず、相川社長の引責辞任により、会長兼社長となった益子氏は日産に助けを求めた。軽自動車の合弁生産で2010年から提携していた日産サイドは、ゴーン社長の即断で手を差し伸べた。

三菱自の企業体質は、おっとり型で「たこつぼ文化」と言われてきた。とくに開発部門でのそうした体質がリコール隠し、燃費不正につながったと言われる。一方で、戦闘機の流れを汲む技術力には定評があり、軽自動車で先駆けたEVと、これをベースとしたSUVのPHEVの商品力は評価が高い。加えて、三菱商事と連携し、タイを中心とするアセアン市場を開拓した三菱車は、三菱自の収益力に大きく寄与している。

日産は、資本提携発表とともに、いち早く三菱自のテコ入れに動いた。長らくゴーン体制で開発部門のトップだった山下光彦氏を三菱自の開発担当副社長として送り込んだのだ。まずは、問題の開発部門をゴーン流に改革するという意思がはっきりと読み取れる。

ゴーン氏は今後、渉外担当の川口均氏、経理担当の軽部博氏を取締役として、チーフ・パフォーマンス・オフィサー(CPO)のトレバー・マン氏を最高執行責任者(COO)として三菱自に送り込む。いずれもゴーンチルドレンの面々で、一気にゴーン流改革を進める構えだ。

三菱自は“信用の負債”を返済できるか

三菱自は日産と提携し、①共同購買コストの削減②車両プラットフォームの共有③技術の共有(PHEV、パワートレーン、自動運転)④発展途上市場および新興市場でのアライアンスチームのプレゼンス拡大⑤三菱自ユーザーに日産販売金融を活用⑥生産設備の共用といったシナジーを創出することで、まず2017年度で270億円、2018年度で約400億円のシナジー効果を上げ、1株当たり収益を2017年度で12円、2018年度で20円増加させる計画だ。営業利益率では2017年度で約1%、2018年度で約2%、2019年度で2%以上を目指す方針。シナジー効果を早期に取り込み、V字回復を図るプランだ。

まさに、ゴーン流の日産早期復活劇を三菱自に移した感があるが、日産の場合は多額の有利子負債を抱えていたのに対し、三菱自は大きな信用負債を抱えている違いがある。この信用負債の払拭には時間が掛かると見るのは筆者だけではないだろう。

手腕を振るう舞台が整ったゴーン氏

ともあれ、ルノー・日産連合に三菱自が加わることで、1,000万台クラブ参入ということになるが、ゴーン氏は「規模拡大が第一ではなく、グループ間シナジーを最大限生かすこと」が重要とする。また、三菱自のバックにある主力3企業も、日産に対し、3社と日産で51%以上の三菱自株式を向こう10年間保有することで合意し、安定株主化を進めた。

中間決算説明会に登壇した日産共同最高経営責任者の西川廣人氏は、共同購買、工場の共用、プラットフォームの共通化、技術の共有などで三菱自とのシナジー効果を創出したいと語った

自ら三菱自会長を兼任することになるゴーン社長の野望は、「世界トップの自動車メーカーとして君臨すること」だという。かつて日産の復活を果たした時点で、米GMとルノー・日産連合との提携を模索し、GMも巻き込んだトップを狙ったいきさつもある。

あえて信用負債という難題を抱える三菱自の実質的買収に踏み切ったゴーン社長には、三菱自再建の難しさ以上に、三菱グループ(特に三菱商事)との協力関係による飛躍の方が魅力的に映ったのだろう。これをどう生かすか、久しぶりにゴーン氏自らが張り切っている姿が見える。

ポルシェの次に買うクルマ? 安東弘樹、ルノー「メガーヌ R.S.」に乗る!

安東弘樹のクルマ向上委員会! 第18回

ポルシェの次に買うクルマ? 安東弘樹、ルノー「メガーヌ R.S.」に乗る!

2019.03.27

ルノーの5ドアハッチバック「メガーヌ R.S.」に試乗

やっぱりMT車が好き! 高性能モデルの登場に高まる期待

もしも(好きなように)クルマが買えたなら…安東さんの人生設計

安東弘樹さんに同行した日本自動車輸入組合(JAIA)試乗会も、いよいよ最後の1台となった。残すはルノーの「メガーヌ R.S.」だ。愛車のポルシェ「911 カレラ 4S」から乗り換える候補の1台として、「ある程度は本気で」購入を検討しているというこのクルマを、安東さんはどう評価するのか。

MT車の日本導入を待って購入を検討?

「メガーヌ R.S.」は5ドアハッチバック「メガーヌ」の高性能モデル。「R.S.」はルノーのモータースポーツ活動を担う「ルノー・スポール」の頭文字だ。このクルマについては以前、モータージャーナリストの塩見智さんに試乗してもらったので、詳しくはこちらの記事をご覧いただきたい。

「メガーヌ R.S.」に乗り込んだ安東さん

安東さん(以下、安):(乗り込んですぐ)ドアヒンジは多くの日本車と同じでプレスですね、開ける時に軽い感じがします()。(しばらく走って、高速道路に入りつつ)さすがはFF(前輪駆動車)、急加速すると暴れますね(笑)。

【編集部注】ドアヒンジとはドアとクルマをくっつけている部品のこと。ここの作りによってドア開閉時の重厚感、ひいてはクルマの上質感に差が出ると安東さんは語る。細かいポイントのようだが、ドアヒンジについてはマツダミニの取材でも話題になった。

編集部(以下、編):今回、メガーヌ R.S.に試乗してみたいと思ったのはなぜですか?

:すごく気になっていたクルマなのですが、まだ乗ったことがなかったので、どうしても今回、運転してみたかったんです。今回のクルマはDCT(デュアルクラッチトランスミッション)ですが、MT(マニュアルトランスミッション)車を今、待っている状態です。ただ、急加速した時の“暴れん坊感”を体験してみて、いくら電子的に制御しても、FFには限界があるなとも感じました。じゃじゃ馬を乗りこなす、というところにカタルシスを感じる人もいるとは思いますけど。

「メガーヌ R.S.」のボディサイズは全長4,410mm、全幅1,875mm、全高1,435mm。価格は440万円だ

:MTだったら欲しいクルマですか?

:はい。もうすぐ、MTが日本に導入されるらしいのですが、欲をいえば、「メガーヌ R.S. トロフィー」というグレードを待ちたいです。R.S.は279馬力ですが、トロフィーは300馬力なんで。

:「待ちたい」っていうのは、真剣に購入を検討していて、待ち構えているという感じですか?

:うーん、ある程度は本気で考えているっていう感じでしょうか(笑)。次もポルシェ「911 カレラ 4S」に乗るのが理想ではあるんですけど、それこそ、私の稼ぎ次第というか、買えない可能性もあるので……。今の911は、乗り始めてから10年になりますし、乗り換えたいタイミングではあります。

:その乗り換え候補の1つが、「メガーヌ R.S. トロフィー」だというわけですね。ただ、素人なので分からないんですけど、最近の安東さんの露出ぶりを見ている限り、次もポルシェで大丈夫なんじゃないですか?

:どうでしょうねー、想像もできません(笑)。今回の確定申告で、どのくらいの税金を払わなきゃいけないのかにもよりますし。フリーになって初めての確定申告なので、正直、怖いです。

:この間の「バラいろダンディ」(TOKYO MXで放送中のテレビ番組、安東さんは火曜レギュラー)で、「これから、税理士さんと話をする」っておっしゃってましたもんね(笑)

:いくらくらいの税金になるのか、それによっても変わってきます。ただ、フリーランスになってもうすぐ1年経ちますが、この収入では、新しい911には手が届きません(笑)

:本当ですか?

:今の911と同じように長期ローンを組めば、あるいは……。とは思いたいですが、新しい「911 カレラ 4S」を自分が乗りたい仕様で買うと、税金なども含めた乗り出し価格が2,200万円弱になってしまいます。日々忙しいのですが、薄利多売でやっているので、くどいようですが、本当に現状、購入は難しいです(苦笑)

1台はスポーツカーを所有しておきたいという安東さんだが、次に何を買うのかは将来の収入次第だそう。「メガーヌ R.S.」もMT車が気に入れば候補に入るようだ

:(メガーヌの走行モードを変更して)「レースモード」に設定すると、ESC(横滑り防止装置)がカットになるんだ……。自動ブレーキもオフになりますが、それは当然ですよね。サーキットを走っていて、前走車に近付くたびにブレーキが掛かったら、たまったものではないですから(笑)。このモードに入れても、そんなに乗り心地が硬くならないというか、不快感はないです。

法定速度で走っている限り、レースモードにする意味はあまりないでしょうけど、腕と環境が許せば、滑らせながら走ってみたいですね! MTだったら楽しいだろうなー。あと、パドルシフトは下まで伸びていて欲しいです。乗り始めてから、5~6回は空振りしてますから。

パドルシフトとは、指による操作でクルマのギアを上げ下げできる装置のこと。画像では分かりにくいかもしれないが、ステアリングの後ろに付いている
一般的にパドルシフトの操作部分は縦に長いが、「メガーヌ R.S.」のパドル(赤い十字マークが付いているところ)は上方向に長く、下方向に短い造形になっている。そのため、パドルの下の方を指で操作しようとして、何度か空振りしてしまったと安東さんは話しているのだ

:パドルシフトがステアリング連動式なので、コーナーを曲がっているときの操作も、少しやりにくいですね()。

【編集部注】パドルシフトには、ステアリングに連動して動くものと、ステアリングコラムに固定されているものがある。

:ステアリングと一緒にパドルシフトが動くのと、固定してあるのだと、どちらがいいんですか?

:メルセデスもそうですけど、ドイツ車はステアリングに連動して動く方が主流ですよね。ただ、ステアリングを切って(左右が)逆さまになっている時、パドルシフトの位置も逆になるので、どちらがプラス(ギアを上げる方)だか分からなくなることがあるんですよ。そこが難しいところで、だから「GT-R」(日産自動車)とかも固定式ですし、基本的にラリー用のクルマもコラム固定式ですね。

:ステアリングを切りまくるからですか?

:そうです。だけど、F1などのフォーミュラカーだと、ステアリングにシフトパドルが付いていて連動しますね。なぜなら、ステアリングを切っても最大で半回転ですから、左右の手を持ち替えないので、当然、その方が好都合です。

だから、このクルマ(試乗中のメガーヌ)は、ステアリングを大きく切っている時でも、シフト操作に迷わない事を優先させたんでしょうね。

:山道でヘアピンを抜ける時とかですか?

:そうですね。これ、好みは分かれると思います。

「メガーヌ R.S.」は1.8L直列4気筒16バルブ直噴ターボエンジンに電子制御6速ATのトランスミッションを組み合わせる

:このクルマ、小さいように見えて、幅が1,875mmもあるんですね。

:そう、結構あるんですよ。「Eクラス」(メルセデス・ベンツ)より幅が広い。

:メガーヌって、前のモデルまで3ドア(ハッチバック)が中心だったみたいですね。5ドアになって、見た目とかどうでしょう?

:このデザイン、僕は好きですね。先代よりも好きです。絶妙な“カタマリ感”があって、色もいい。シンプルなのに存在感があるという嬉しいデザインです。

:歴代のメガーヌ R.S.は、ニュルブルクリンクで素晴らしいタイムをたたき出してきたそうですが、そのあたりには惹かれますか?

:そこは、そんなに重視しません。ただ、メーカー同士が競い合ってくれる分にはいいんですけどね。ましてやFFですし、ちゃんと手なずけて走って、技術の革新というか、そういうところでメーカー同士が競い合ってくれているのは悪いことではないと思います。

:ただ、安東さんとしては、走りについては自分で確かめたい?

:そうですね。だから、こっちの方が数字が上だから買う、という感覚はありません。

:安東さんの頭の中にはクルマのスペックがたくさん入っていますけど、数字で比べて買おうというのではなく、ただ、好きだから頭に入っているだけなんですか?

:覚えようとしているんじゃなくて、スペック(諸元)表を見てると、自然に覚えちゃうんですよ。これ(試乗中のメガーヌ)だと、最大出力が279馬力ですよね?

:合ってます。

:それで、205kWじゃなかったでしたっけ?

:ごめんなさい、手元の資料にキロワットまでは書いてきてないです。

:206kWだと、280馬力になるんですけどね。

:……。

「メガーヌ R.S.」の最大出力は279ps(205kW)、最大トルクは390Nmだ。車両重量は1,480キロ

:数字的には見劣りしても、自分がいいと思えば買うというのが、安東さんのクルマ選びということですね。もし、次の911が何らかの理由で買えなかった場合は、メガーヌもアリだと思いましたか?

:MT車に乗ってみないと、何とも言えませんねー。急加速した時の暴れぶりを体験して、FFの限界は感じましたけど、MTなら、もう少し自分で制御できるかもしません。ただ、やっぱり楽しいクルマだなとは思いましたね!

:今回、たくさんの輸入車に乗っていただきましたけど、総評として、心に残ったのは?

:やっぱり、あの加速感も含め、テスラですね。何でも電気で動くので、後席のファルコンドアなんかが壊れたら目も当てられないとは思うんですけど、ただ、インパクトとしては「モデルX」になりますね。

もしも収入が激増したらどんなクルマに乗りたい?

購入を決めたメルセデス・ベンツ「E220d 4MATIC オールテレイン」には、何年乗る予定ですか?

:今の「F-PACE」よりも早いペースで走行距離が伸びる可能性があるので、2年で7万キロあたりが見えてくると、乗り換えを考えるかもしれません(※)。まあ、2年後に私の収入がどのくらいになっているかにもよりますけど……。

【編集部注】ジャガーのSUV「F-PACE」とポルシェ「911 カレラ 4S」の2台を所有している安東さんだが、通勤に使っているF-PACEは走行距離が伸びてきている上、大柄なサイズの問題で駐車場を見つけるのが大変なので、これをメルセデス・ベンツ「E220d 4MATIC オールテレイン」に乗り換える。サイズ的に駐車場が見つけやすい分、オールテレインの稼働率はF-PACEよりも高くなることが予想されるので、代替サイクルは早まるかもしれない。オールテレインが納車されるのは2019年5月の予定。その時点で、F-PACEには2年8カ月乗ったことになる。

:もし、収入がものすごく増えたら、所有するクルマの構成はどうしたいんですか?

:やっぱり「911」と、あとは「ヴェラール」(レンジローバー)のディーゼルエンジン車を買って、もう1台は小さいディーゼルエンジンのクルマで、それは「デミオ」(マツダ)なのか「ミニ」なのか分からないんですけど、そんな感じですかね。それか、プジョーの「308 アリュール」か……。

「308 アリュール」って、今までは税制的に中途半端な1.6リッターのディーゼルエンジンを搭載してたんですけど、それが1.5リッターになって、しかも、パワーアップしたんですよ。それに、何が嬉しいって、パドルシフトが付いたんですよ! 今までは上級グレードにしか付いてなかったんですけど。

プジョー「308 Allure」(アリュール)

:なるほど、収入が大幅に増えたら、クルマを2台にしておく必要もないですもんね。駐車場を借りて、3台持ってもいいわけで……。

:駐車場を借りるというか、3台のクルマを入れられる車庫が付いた家に建て替えるのが夢ですね。

:その可能性も、フリーになった今だと、高まってますよね。会社員でいるより、大きく稼げるチャンスがあるわけですから。

:そうですね、可能性は“ゼロ”ではないですね(笑)

:これも「バラいろダンディ」で聞いたような気がするんですけど、ある程度の金額を稼いだら、お仕事はやめるっておっしゃってましたよね? 好きなクルマに乗り続けられて、ご家族も安泰というような金額が貯まったとしたら。

:そうですね(笑)。3億円ほど貯まったら、やめると思います。家族を養えて、子供たちを学校に行かせられて、あとはクルマも、「ヴェイロン」とか「シロン」()が欲しいとは思わないので……。ポルシェのMTと、ヴェラールと、ミニか何かを所有して、スポーツ走行する時はポルシェ。長距離移動の時はヴェラール。そして、都内での仕事や移動の時は、コンパクトなディーゼルモデルか、電気自動車(EV)でもいいかもしれません。

【編集部注】どちらもブガッティのクルマ。1台で何億円もする。

:私の人生として、あと20年は責任があると思うんですよね。ただ、テレビ関係の仕事が続けられるとは思っていません。やっぱり、テレビの仕事って緊張するし、疲れますから(笑)。何より、ずっと私への需要があるとは思えません。

立て続けにクルマに乗った今回の取材も、かなりお疲れになったはずだと思っていたのだが……

他媒体が用意したクルマも含め、計11台の輸入車に立て続けに乗り、JAIA試乗会の取材を終えた安東さん。「仕事は疲れる」と言いつつも、メガーヌから降りるとすぐ、「ばらいろダンディ」の生放送に出演するため、試乗会の拠点となった大磯プリンスホテル(神奈川県)を愛車「F-PACE」で飛び出していった。

安東さんのコラムによれば、今回の取材はさすがにくたびれたものの、愛車を運転して帰ったおかげ(?)で、半蔵門(正確には東京都千代田区麹町)にあるTOKYO MXに到着する頃には、すっかり疲労感がなくなっていたというから驚きだ。

とにかく、多くのクルマに限られた時間で乗ってもらったので、時間配分がうまくいかず、弊紙では紹介しきれなかったクルマもある。具体的にはポルシェ「パナメーラ 4 E ハイブリッド」とBMW「X3 M40d」の2台なのだが、これらも安東さんが試乗を希望したクルマだったことに変わりはない。特に「X3 M40d」については、短時間の試乗ではあったものの、「もっと乗ってみたくなるいいクルマだった」とのコメントがあったことは、ここでお伝えしておきたい。

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メルセデス・ベンツの電動化戦略、「EQC」で本格化

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メルセデス・ベンツ初の市販電気自動車(EV)「EQC」が今年、いよいよ登場する。2019年半ば頃の日本導入が噂されているが、一体、どんなクルマに仕上がっているのか。モータージャーナリストの清水和夫さんは以下のように解説する。

メルセデス・ベンツのEV「EQC」

メルセデスの電動化を包括する「EQ」ブランド

メルセデス・ベンツは2018年9月、スウェーデンのストックホルムにおいて、バッテリーだけで走る電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)「EQC」を正式に発表した。それまでも、各国の国際的なイベントでは、同社の電動モビリティを包括する「EQ」(イーキュー)というサブ・ブランドを発信してはいたが、いよいよ、本格的なメルセデスの電動車両がEQCから始まるのだ。

ここでは混乱を避けるため、電動車両の定義とメルセデスが採用する「EQ」というサブ・ブランドについて説明しておく。

「EQ」とは「電動化」にフォーカスしたメルセデスのサブ・ブランドであり、バッテリーだけで走るBEVを「EQ」、バッテリーとエンジンを組み合わせるプラグイン・ハイブリッドを「EQ Power」、48Vのサブ電源を使うシステムを「EQ Boost」と呼ぶ。

このように、電動車両といっても、バッテリーとモーターだけで走るBEV、エンジン/バッテリー/モーターを組み合わせるプラグイン・ハイブリッド(PHVあるいはPHEVと略す)、あるいは、48Vを使う車両に見られるマイルド・ハイブリッドなど、クルマの在り方は多様化している。「〇〇社は20XX年までに全てのクルマを電動化する」というヘッドラインのニュースが世界中を駆け巡っているが、電動化の中身をきちっと理解する必要があるだろう。メルセデスの場合は「EQ」「EQ Power」「EQ Boost」の名前で整理している。

「EQ」ブランドのクルマたち

EQCは「GLC」相当のSUVをベースとするクルマだ。「Aクラス」相当のセグメントでBEVが登場すれば、「EQA」と呼ぶことになるだろう。

内燃機関はベンツの代名詞、EVはどう作る?

EQCの日本初公開となったイベントは、桜が咲く前の3月初め、メルセデス・ベンツのブランド発信拠点「Mercedes me」(東京・六本木)にて開催された。注目すべきは、メルセデス・ベンツ日本(MBJ)がEQCと家の電気をつなげる「EQハウス」という斬新なコンセプトで同車を発表したこと。EQCは自宅でも充電できるので、家との相性がよい。そこでMBJは、竹中工務店と組んで「EQハウス」という新しいアイディアを提案したのだ。クルマと家が電気でつながることを「V2H」(Vehicle to Home)と呼ぶ。日本では以前から取り組んできたシステムだ。

MBJと竹中工務店は、モビリティとリビングの未来の姿を具現化すべく、六本木の「Mercedes me」に体験施設「EQハウス」を設置した。ちなみに、「EQC」の展示はすでに終了している

ところで、EQCのカットモデルを見た時、面白いことに気がついた。EQCは「Cクラス」ベースのSUV「GLC」をベースとするが、BEVなのでエンジンとギアボックスが存在しない。そのスペースには、パイプ製のケージが設置されているのだ。パイプの内側にはフロントモーターとデフ(デファレンシャルギア)が置かれ、上部にはインバーターが配置されている。リアも同様にモーターとデフでリアアクスルが構成される。

エンジンがなくなる代わりに、「EQC」にはモーターとデフを納めたパイプ製のケージが入っている

バッテリーは床下のフロア内に格納することで重心を低く設定できる。と、ここまでは常識的なパッケージなのだが、衝突安全の剛体として、このパイプ製ケージにはエンジンと同じ強度を持たせてある。つまり、エンジン車と同じく、モジュールでデザインできるモデルベース開発(MBD)を取り入れているのだ。自動車業界で流行の手法は、EQCにも採用されていた。

EQCのボディサイズは全長4,761mm、全幅1,884mm、全高1,624mm、ホイールベース2,873mmとGLCに近いから、シミュレーションしやすい。性能を見ると、前後2つのモーターは合計で最大出力408PS、最大トルク765Nmを発生する。加速性能はV8ターボのエンジン車並みで、停止状態から時速100キロまでの加速は5.1秒と俊足だ。リチウムイオン・バッテリーの容量は80kWh。気になる航続距離は450キロとのアナウンスがあった。

「EQC」のボディサイズは「GLC」に近い。加速はV8ターボエンジン並みだ

EQCの試乗会は2019年5月に開催されるので、それまでは詳細なインプレッションをお届けできないが、スポーツカー並みの加速性能を誇るEQCは単なるBEVではなさそうだ。何か、もっとすごい仕掛けがありそうに思える。試乗会が楽しみになってきた。

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