ギネス世界記録に認定!

ギネス世界記録に認定! "変なホテル"は話題性だけのホテルなのか

2016.11.18

ハウステンボスに昨年7月オープンした「変なホテル~変わり続けることを約束するホテル~」が快挙を成し遂げた。ロボットが始めてスタッフとして働いたホテルとして、ギネス世界記録に認定されたのだ。注目のホテルがさらに反響を呼びそうだが、この先はどうだろうか。

変なホテルがギネス世界記録TMに認定。認定証を持つハウステンボスの澤田秀雄社長(写真右)

変なホテルとは?

変なホテルは、長崎県佐世保市のハウステンボス内に所在するロボットホテルだ。フロントでは4カ国語に対応したロボットがチェックイン・チェックアウトの手続きを行い、宿泊者の荷物はロボットクロークが預かり作業を行う。部屋まではポーターロボットが手荷物を運び、窓拭きや庭の芝刈りもロボットが担当する。

画像左上:受付、右上:ロボットクローク、左下:芝刈ロボット、右下:窓拭きロボット(画像提供:ハウステンボス)

現在、稼動するロボットは現在約180台。人間のスタッフも常駐するものの、人数は極力抑えられ、まさにロボットホテルと称するだけのことはある。その話題のホテルがこのほどギネス世界記録の認定を受けた。

認定を受けるまでも苦労話がありそうだが、いきさつは意外なものだ。ハウステンボス側が申請したのではなく、ギネスワールドレコーズから話が来たとし、「今年8月に先方(ギネスワールドレコーズ)から連絡が来て、審査を受けて認定された」と、あっけない。

ハウステンボスでは1300万球のイルミネーションを光の王国と命名し、世界一を謳ってギネス世界記録を狙ったが、こちらについては、審査が通っていない。ハウステンボスでは今回が初のギネス世界記録の認定となるが、ある意味ラッキーだったようだ。

ギネス世界記録認定で期待されること

今回の認定によって期待されるのは、変なホテルのブランド価値の向上だろう。変なホテルは現在、ハウステンボス内の1店舗のみ。来年には千葉県浦安市に、愛知県蒲郡市のラグーナテンボスにそれぞれ2店目、3店目を出店した後、アジア圏を中心とした海外に進出し、フランチャイズ運営を含んで今後3-5年以内に国内外で100店舗を目指すという。

世界一の称号を得たことで、国内外からさらに注目され、出店計画や集客力に弾みがつきそうだ。ただし、注目度という点では、今現在でもかなり高いという。澤田秀雄社長は「米ABCテレビや英BBCテレビなどメディアが取材に訪れている。今でも毎月、世界のメディアから取材依頼が寄せられている」と話す。

だが、メディアが注目するのは、新しさやものめずらしさだ。話題性が薄れてしまえば、見向きされなくなっていく。存在が認知されたことによる一時的な集客効果も薄れていく。集客力の低下はビジネスとしての継続性にとって良いことではない。

その意味で、変なホテルは今はいいが、これ先はどうなるのか、という不安もよぎる。

注目すべきはビジネスモデル

変なホテルで注目したいのは、そのビジネスモデルだ。澤田社長が徹底的にこだわったのは、ホテル経営における非効率な要素の排除である。

「4年前にハウステンボスのホテルヨーロッパに住んで、非効率なところがいっぱいあるなと。人件費、光熱費、建設費の3つを変えれば無駄のないホテルができると考えた。生産性の高いホテルがどうしたらできるのかを考えたらロボットになった」(澤田氏)

特に注目したいのは、人件費だ。変なホテルのオープン当初は、30数人のスタッフで運営していたが、ロボットを次々に導入することで、昨年12月にスタッフは12人に、現在は9人だ。さらに、今後数カ月以内に6人での運営を目指すという。

ロボット台数と従業員数の推移

6人というのは、朝、昼、晩のトータルの時間での1日当たりのスタッフの人数のこと。つまり、実質1人程度での対応になる。これ以上削減するのは無理だろうが、わずかな人数で切り盛りできるのは非常に大きな要素だろう。さらには、太陽子発電を導入して光熱費も削減している。

これらを実践した結果として生まれたのが利益だ。8月には単月利益1億円を達成。さらに人件費を削減できるため、その分が利益として計上される。

飽きられはしまいか

「将来はロボットにしゃべらせたい、冗談を言わせたいと思っているんですよ。ロボットには愛嬌も大事」などコメントした澤田社長。「舞浜の店舗は受付をジュラシック系にしたい。店舗によってタイプも変えていく」などといったことも明かした

とはいえ、ロボットの対応に感情はない。おもてなしの精神もない。ロボットの活用という目新しさだけで宿泊者は本当に満足できるのか、という疑念も残る。

澤田社長は初期の宿泊者のイメージとして「物珍しさ、ロボットみたさから」としつつも、「ホテルは満足度、泊まり心地、プライスの3つが重要だと思う」とホテルのあり方について話す。そのために宿泊者にアンケートをとり、小さな改善を積み重ねて満足度を挙げているという。

先にも述べたように、ロボットはあくまで生産性を追求したうえでの選択肢に過ぎない。そもそも、変なホテルの"変"の字には、"変わり続けることを約束するホテル"という意味が込められている。様々な新技術や自然エネルギーを取り入れ、進化していくのがコンセプトだ。100店舗体制を目指すにあたり、国内3店舗(ハウステンボス、舞浜、蒲郡)の変なホテルでノウハウを蓄積し、ハウステンボス店はこれからも実験的な施設として様々なトライアルの場としても考えているという。

それでも、このビジネスに懐疑的な見方をする人がいるかもしれないが、筆者がビジネスの可能性を感じたのは、採算ラインだ。

現在、宿泊費は1泊約1万5,000円から約3万円だが、「1泊5,000円でも利益が出る。今は人気がありますからこの値段でやらせていただいていますけれども、ビジネスホテルでも、カプセルホテルでも戦えるようにしたいと思ってる」(澤田氏)という。

100店舗体制を目指すにあたり、真価が試されるのはこれからになるが、話題性が薄れ、集客力が衰えても、コスト面で十分戦える余地があるというわけだ。新たなホテルビジネスの試金石になるに違いにない。ロボットだらけの変なホテル、話題性だけでは終わりそうになさそうである。

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

森口将之のカーデザイン解体新書 第12回

日本車のインテリアには独創的な未来がある? 「1kg展」で感じた可能性

2019.01.18

国内主要メーカーの内装デザイナーが集まり展示会を開催

テーマは“1kgの価値”をどこまで高められるか

実車に応用できる? 独創的な作品の数々

国内主要自動車メーカー8社のインテリア・カラーデザイナーが参加する団体「JAID」が初の作品展を開催中だ。“1kg”という重さにこだわり、最新の3Dプリンターを駆使して各社のデザイナーが生み出した作品は独創的で、会場の「GOOD DESIGN Marunouchi」(東京・丸の内)は小さな現代美術館のような雰囲気になっている。

ダイハツ工業のデザイナーが出品した「受け継がれる樹脂」という作品

雑誌の対談が契機となり生まれた「JAID」

「JAID」という名前を初めて目にした人も多いだろう。「ジャパン・オートモーティブ・インテリア・デザイナーズ」の略で、「ジャイド」と読むそうだ。

創立のきっかけとなったのが、自動車雑誌「NAVI CARS」(ナビカーズ)での対談だったと聞いて、「あの号だ!」と即座に思い浮かんだ。クルマのインテリアを特集したナビカーズの2015年7月号で、筆者も別の対談に参加させていただいていたのだ。その号に国内メーカーのインテリアデザイナーが語り合うページがあったことは記憶の片隅に残っていた。

雑誌の売れ行きが落ちているといわれて久しい。それだけに、1つの雑誌の企画からJAIDのようなコミュニティが生まれたことは、モータージャーナリズムに身を置く者として嬉しい気持ちになる。

日産自動車のデザイナーが出品した「∞ Fluff」

価値ある1kgの創造に挑んだデザイナーたち

そのJAIDが企画したのが「1kg展」だ。なぜ“1kg”にこだわるかといえば、クルマの開発に携わる人たちにとって切実な「kg単価」という指標に理由がある。

「kg単価」とは、クルマの開発で使われる値段の単位だ。インテリアデザイナーとしてはkg単価が高い、いわゆる良い素材を使いたいという気持ちは大きいだろう。快適性や安全性の追求、さらには電動化への対応、重量の削減といった視点も持ちながら素材を選んでいるはずだ。

しかし、贅を尽くしてばかりでは車両価格の上昇を招くので、妥協が必要になる。おそらくインテリアデザイナーは、このような状況で悩みながら、新しい素材や仕立て、色などを取り入れるべく、奮闘の毎日を過ごしているのだろうと想像している。

では、そういった制約がなくなったとき、デザイナーたちはこのkg単価をどこまで価値あるものに仕上げられるのだろうか。これが、今回の展示会のテーマだ。最新の3Dプリンターを駆使し、時間や空間、物質としての限界などを飛び越えた作品を独自の着眼点で製作すると同時に、広くカーインテリアデザインの魅力を伝えたい。そんなメッセージのこもった展示会なのである。

ホンダのデザイナーが出品した「風速1kg」

素材と色のコーディネートが味わえる「ハンバーガー」

会場のGOOD DESIGN Marunouchiは、2013年度から通算5回、今年度も含めてグッドデザイン賞の審査員を担当している筆者にとってはなじみ深い場所だ。ところが、「1kg展」の内覧会を訪問した時には、状況がまるで違っていた。いつもは展示物をゆったりと眺めることができる空間なのに、この日はラッシュ時の駅のようにごった返していたのだ。それだけ、インテリアデザイナーの斬新な発想に期待する人が多かったということだろう。

日産のデザイナーが出品した「4D flower」。「1kg展」に作品を持ち寄ったのは、国内大手自動車メーカー7社(ダイハツ工業、ホンダ、三菱自動車、日産自動車、スバル、スズキ、トヨタ自動車)だ

作品の中には、クルマのインテリアデザインとは関係なく、最新の3Dプリンターならではの表現能力の高さをアピールするような作品も見られた。それらを業界の枠を飛び越えた独創的な作品と捉える人もいたようだが、クルマが好きで今の仕事に携わっている(はず)の方々だからこそ、もっとインテリアにこだわって欲しかった。

ただ、クルマのインテリアとの関連性が高い作品が大半を占めていることは確かで、中には独創的な発想や興味深いアイデアも見られた。本稿では独断と偏見で、そのうちの3つを紹介していこう。

まずは、会場の入り口近くに置かれていた「CMFバーガー」だ。「CMF」とはカラー、マテリアル、フィニッシュの頭文字で、ナビカーズでの対談が行われた頃から、自動車に限らずデザイン分野でひんぱんに使われるようになってきた言葉だ。造形だけでなく色や素材、仕立てにも気を配ることで、より完成度の高いデザインが生まれるというような意味が含まれている。

「CMFバーガー」はトヨタのデザイナーが出品

この作品は、CMFのコーディネートを1kgのハンバーガーに見立てて表現したもの。レザーのバンズ、クリアレンズのトマト、加飾素材のチーズやパティ、シート素材のレタスがさまざまな色で用意してあり、好みのバーガーを作り出せる。

3つの作例では、CMFの違いでかなり雰囲気の異なるバーガーを作れることが分かった。バンズを肉抜きタイプにすると総重量が1kgを切るなど、計量化を実感できる仕掛けも盛り込んである。ディーラーが車種別にCMFハンバーガーを用意すれば、顧客は楽しみながらカラーコーディネートを試すことができるかもしれない。

ディーラーに「CMFバーガー」が置いてあったら面白いかも

インテリアをボールにした斬新な作品も

続いて紹介するのは「トランスフォームステアリング」。自動運転が実用化された未来を想定した変形機構を持つステアリングで、手動モードでは伸びて操舵できる状態となり、自動モードでは縮めて格納しておける。全てがマットブラック仕上げだが、グリップ部分、変形部分、外枠部分を別のメーカーのプリンターで製作することで、素材の違いを表現している。

トヨタのデザイナーが出品した「トランスフォームステアリング」

製作したデザイナーはステアリング機能だけを想定していたようだが、左右のグリップをねじることでアクセルやブレーキの操作ができれば、この部分だけで基本的な運転操作ができる合理性の高いインターフェイスになると思った。ペダルがなくなれば、室内レイアウトの自由度も高まりそうだ。

伸ばせば手動運転に使えるし、自動運転中は縮んだ状態で格納しておける

最後は「インテリアボール」だ。写真を見てお分かりのとおり、クルマのインテリアを構成するパーツをボール状のアートとして表現したもので、多くのパーツをまとめ上げ、世の中というフィールドにデザインを“投げ”かけているインテリアデザイナーの仕事をボールの形に込めたのだという。

「インテリアボール」はホンダのデザイナーが手掛けた

展示してあるのは1個だけだが、スポーツの世界では競技によってサイズの違うボールを使うことにも製作者は着目している。使用する材料や加工方法を変えることで、同じ1kgでもサイズや見え方の違った表現ができるそうだ。

しかしながら筆者には、これがボールではなく卵に見えた。卵から生まれる前のクルマ、そのインテリアデザインは、こうなっているのではないかと想像したのだ。同じクルマのエクステリアデザインを卵の殻で表現することで、多くの車種を球形にできれば、一風変わったミニチュアになるのではないだろうか。

JAIDが企画した1kg展の作品群は、それ自体が柔軟かつ斬新な発想から生まれているだけでなく、見ているこちらも創造力が掻き立てられるものだった。この展示会を訪れて、日本の自動車メーカーにインテリアデザインの実力者が多いことに感心するとともに、メーカーには、この実力を引き出して製品に結び付ける能力が求められていることを教えられた。

1kg展の会期は1月25日まで。入場は無料だ。時間に余裕のある方は、一度訪れてみてはいかがだろうか。